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松宮園生です。
「ワークサイト・ヘルス・プロモーション」
という言葉を聞いたことありますか?
(ある人は少ないと思うけど)
ワークサイトは「職場」
ヘルスは「健康」
プロモーションは「促進」
を意味しています。
つまり、ワークサイト・ヘルス・プロモーションを直訳すると
「職場での健康促進」
という意味になります。
ここでいう「健康増進」とは、体の健康、メンタルな健康、両方を意味してます。
「しょ、職場での健康増進だあ? 職場は仕事をするところだろーが。健康になる場所じゃねえ。健康増進活動やりたかったら、放課後か週末にだな、各自で好きなだけやればいいじゃん。会社はそんなこと、面倒見ねえよ。幼稚園じゃねえんだから」
という考え方もあります。
(かつては僕もそういう考えの持ち主でした)
しかし一方で、
* 働きすぎの社員が突然倒れたり、
* うつ病になる社員が増えたり
しているのも確かです。
放っておくと社員やその家族から訴えられたりします。
不健康な社員が多いと、たぶん会社の士気のためにもよくないでしょう。
だから社員の健康増進活動を会社としても応援するべきだ。
そう考える会社もあります。
ワークサイト・ヘルス・プロモーションとは職場での健康増進活動のことを言うわけですが、具体的には何をするのでしょうか?
具体的には
■いまいちダサい社員食堂。メニューなんかもチャーシューメンとかカツカレーとかハンバーグ定食とか、「とってもヘルシーよン」とは言いがたい中身だった
りする社員食堂。それを、もちっとこう、21世紀っぽくキレイで洗練された感じにして、メニューも
「たっぷりキノコの黒ガーリックソテー」
とか
「10種類の秋野菜のグリル。レモン汁を絞って」
とか
なんかそういう、ヘルシーな聞こえのするものに替える。
(ビミョーに腹の立つネーミングだったりするけど)
■社内であまり使用されていない会議室とかあったら、そこに気軽なエクササイズ機械を何台か入れたりして、社員が好きなときに体を動かせるようにする。可能なら更衣室を、さらに可能ならシャワー設備を置く。
むろん、料金はタダ。
■忙しい会社員が、忙しいなかでもひと工夫すればできる運動とか、栄養バランスのよい食事をとるためのレストランの選び方、みたいなことを学ぶ「社内健康セミナー」を定期的に、頻繁に開く。
■食育のイベントを開催する。社員を対象に行ったり、社員の家族にも来てもらって行ったりする。
…こういうことを、「計画的に」するわけです。
個人が自分で食事に気をつかったり近所のジムに行ったり本を買って食育の勉強をしたりするのは、ワークサイト・ヘルス・プロモーションとは言いません。
それは単に個人の健康管理です。
じゃなくて、会社が社員のためにわざわざお金を使い、社員がヘルシーになれる仕事環境を作ってあげることをワークサイト・ヘルス・プロモーションと言います。
◆◆◆
ワークサイト・ヘルス・プロモーションという言葉が存在していることからお分かりのように、アメリカの会社ではこのワークサイト・ヘルス・プロモーションが盛んに行われています。
言い換えると、会社が社員の健康増進のためにわざわざお金を出すことが盛んに行われています。
ワークサイト・ヘルス・プロモーションの専門家もアメリカには大勢います。
専門家は何をするかというと、
「ワークサイト・ヘルス・プロモーションのプログラム作り」
をします。
会社の社長さんが
「わが社もワークサイト・ヘルス・プロモーションちうのをやってみるべ」
と思ったときに、
「ほんで、何をするべ? 何をどんな手順でやればいいべや? お金はいくら払うべや? 誰に払うべ?」
という問いに答えるのが、専門家の仕事です。
専門家は会社の規模や業態などを考慮しながら、ワークサイト・ヘルス・プロモーションの年間計画を立てます。
* いつ、社員食堂をリニューアルするか
* どのように社員食堂をリニューアルするか
* いつ、エクササイズ・ルームを作るか
* どのようなエクササイズ・ルームにするか
* どんなセミナーをどんなタイミングで開くか
* どんな食育イベントをどんな頻度で開催するのか
…といったことを計画します。
そのうえで、全部でお金がいくらかかるかを計算します。
計算するわけだけど、エクササイズ・マシンのメーカーなどを相手にちゃんと値引き交渉なんかもやる。
で、そのプログラムを社長に説明し、お金がいくらかかるのかも説明し、社長がウンといったら実行に移ります。
やってみると思いどおりいかないこともあります。
* せっかくお金をかけて社員食堂を変身させたのに、社員があまり利用してくれない。
* せっかくお金をかけてエクササイズ・ルームを作ったのに、社員があまり利用してくれない。
* セミナーを開いたのに、聞きにくる人がまばら。
* 食育イベントをしたのに、参加者がまばら。
…こうした問題を解決し、社員をヨイショして参加者を増やすのも専門家の仕事です。
◆◆◆
なぜアメリカではワークサイト・ヘルス・プロモーションが盛んなのでしょうか?
ときは1991年。
湾岸戦争があった年です。
心理学者のロバート・H・ローゼン博士が
「ヘルシーカンパニー」
という本を出しました。
この本にはこういうことが書いてあります。
* 社員の健康増進は、会社の経営の重要なファクターであるぞよ。
* 社員がその活力をいかに発揮するかで、会社の業績が違ってくるぞよ。
* ストレスの少ない職場づくりをせんとあかんぞよ。
* 社員が健康でいたいと思うのを、会社は応援せんとあかんぞよ。
* 社員の健康のために努力した会社は、報われるぞよ。
日本の諺でいうと、
「情けは人のためならず」
てな感じ。
社員の幸せのためにワークサイト・ヘルス・プロモーションをするわけだけど、結果として会社の業績も上がり、社長さんの株も赤丸急上昇!
人のためにやったけど、自分のためにもなった。
よかったよかった。
こんな感じです。
社員の健康増進に会社がわざわざお金を出すことが、実は会社のためにもなる。
要は、儲かる。
これは画期的な考え方でした。
「ヘルシーカンパニー」は話題になり、会社の社長さんたちのバイブルにもなりました。
そんなわけで、アメリカはワークサイト・ヘルス・プロモーション王国になっているのです。
(以下次号)
松宮園生です。
「食育オタクの心得」
と書かれた詩を見つけましたので、紹介します。
「食育オタクの心得」
ハンバーガーにも負けず
牛丼にも負けず
コーラにもアイスクリームにも酒のあとのラーメンにも負けぬ
強靭な意志を持ち
深夜番組など無視して早く寝て
ジイサンバアサンよりも早く起き
朝ごはんは欠かさず食べ
夜ごはんはほどほどに
おやつは食べないか食べるとしたら旬の果物を食べ
いつも静かに笑っている
塩分控えめ
炭水化物控えめ
脂質控えめ
水溶性ビタミンたっぷり
脂溶性ビタミン適量
食品成分表とにらめっこしながら毎日栄養計算をし
適量って何だ?と疑問に思いながらも酒は適量飲み
あらゆることを
昭和のセンスで考え
80回よく噛みゆっくり食べ
結婚記念日は忘れても「いただきます」「ごちそうさま」は決して忘れず
「家族団らん家での料理」と書いたTシャツを着
「旬の食材を使った簡単レシピ」という言葉が大好きで
「まごはやさしい、ははきとく」を念仏のように唱え
曲ったキュウリもまっすぐなキュウリも一緒だと主張し
青虫の食べた穴だらけの有機キャベツを美味しい美味しいと食べ
東にピーマン嫌いの子どもがいれば
行って紙芝居やエプロンシアターを使って食は命だと言い含め
西に疲れたサラリーマンがいれば
行ってワークライフバランスという呪文を唱え
南に生活習慣病予備軍がいれば
行って恐がらなくてもいいと言い
北に偽装表示食品があれば
つまらないからやめろと言い
地産地消を力説し
エコな食卓を力説し
フードマイレージって知ってるか? と各地で聞いて回り
お腹回りに一喜一憂し
メタボ対策は毎日欠かさず1万歩
BMIを日々計算し、
週末は食育カルタを作るために標語を考え
晴れた日曜は子どもたちを引率してイモ掘り大会
みんなに食育ヲタクと呼ばれ
合コンには行かず
残業もせず
なのに給料はたんと貰う
そういうものに
わたしはなりたい
(無理です)
松宮園生です。
「農業バウムクーヘン」という言葉があります。
農業を始める決心もついていないのに農業のことを嗅ぎまわり、
耳年増になっている人。
バウムクーヘンが中心部に何もなく、外側(周辺部)が豊かな状態になっているところから来た言葉です。
ではさっそく、あなたの「農業バウムクーヘン」度を測ってみましょう。
◆◆◆
いくつ当てはまるかな?
<A (各1点。6点満点)>
* 「レンサクショーガイ」 漢字で書ける。
* JAS有機の認証マークを見ないで描ける。
* 「硝酸態窒素」 舌をかまずに5回連続で言える。
* 「アグリズム」 創刊号を持っている。
* アイガモ農法の、可愛いアイガモの「収穫シーズン終了後の運命」について知っている。
* 会社の上司から「ホウレンソウを欠かすな」と言われ、スーパーにほうれん草を買いにいったことがある。
<B (各1点。6点満点)>
* 「カテイサイエン」はウイスキーの銘柄だと思っていた。(それをいうならカティサークです)
* 「GAP」と言ったらアパレルを連想する。
* 「F1」と言ったら鈴鹿だのモナコだのを連想する。
* 「コンパニオン・プランツ」と言われたら、プランタン銀座周辺にいるきれいなお姉さんを連想する。
* 「農業戦隊アグレンジャー知ってる?」と言われて、新聞のテレビ欄(とくに早朝)をチェックしてしまった。
* JAのことを「ジャー」と呼んだことがある。
<得点計算>
Aで獲得した点数から、Bで獲得した点数を引いてください。
つまり
AひくB=あなたの点数
です。
Aも6点満点、Bも6点満点ですから、AひくBの最高点は6点、最低点はマイナス6点になります。
◆◆◆
<判定>
6点: 超上級バウムクーヘン。ほんとにホウレンソウを買いにいったのですか?
4点: 上級バウムクーヘン。ラッキーカラーは黄色。
3点: 中級バウムクーヘン。那須に旅行すると、いいことあるかも。
2点: 初級バウムクーヘン。この秋は食べ過ぎに注意しましょう。
1点: バウムクーヘン見習。このブログをよく読み、立派なバウムクーヘンを目指してください(笑)。
0点以下: あなたはバウムクーヘンではなく、立派な現代人です。
マイナス6点: ほんとに「ジャー」って言ったの?
<おススメ書籍>
「イラスト図解 農業のしくみ」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4534035403
松宮園生です。
人類を解放するため、エージェント・スミスと戦う
モーフィアスとネオ…。
今回の話は、映画「マトリックス」の設定を借用しています。
まだ「マトリックス」観てない人は、入場を御遠慮ください。
もう1つ。
今回の話は、「グルメ2.0」の続編です。
まだ「グルメ2.0」を読んでない人は、そちらを先にお読みください。
「グルメ2.0」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2009/01/20_6.html
◆◆◆
マトリックスのグルメ化に成功した、「料理系プログラマー」の真野史郎。
彼がマトリックスのプログラムを改良したおかげで、マトリックス内の食事の味がぐんとアップしました。
どこで何を食べても、旨いのです。
「メシがよければすべてよし」
という諺にもあるように、食事が良ければたいていの不満は解決する。
マトリックスの住民も、そのままマトリックスに住み続けることを選んでしまいます。
「これで、モーフィアスやネオとの戦いも有利になったでござる」
とエージェント・スミスもすっかりご機嫌。
史郎はそのご褒美として、あこがれの女性と恋愛結婚ができるように設定を変えてもらい、幸せに暮らしていました。
そんなある日。
夜も更けてきた時分に史郎の家のインターホンが鳴りました。
出てみると、長身のエージェント・スミスが立っていました。
「遅くにお邪魔するでござる。久しぶりでござるな」スミスが言いました。「新婚生活はいかがでござる」
「まあまあだね」史郎は照れながら答えました。「あんたには感謝してるよ。コーヒーでも飲んでくかい?」
「せっかくだが、御断り申す。こう見えても、世界をコントロールする仕事はなかなか忙しいものでござるゆえ」
「そりゃそうだね」
「ときに、今日は奥方は御在宅でござるかな?」
「いや、仕事で遅くなると聞いてるけど?」
「そうでござるか」
「なんだよ、なにを言いたいわけ?」
「実はでござる。さっき合コンに行ったのでござるが…」
「はあ? 合コン? あんた世界をコントロールするのに忙しいっていま言ってたじゃん。合コンにいく余裕はあるのかよ」
エージェント・スミスは顔を赤くしました。「これも仕事でござる」
「どーだかね」
「それより貴殿の奥方がその合コンに参加しておったでござる。自己紹介のときに独身だと申しておったが…」
「えっ、嘘だろ」
「嘘ではござらん。信じられぬと申すなら、いまから合コンの現場に参ろう。エコエコアザラシ、エコエコアザラシ…」
「なんだよその呪文は。それを言うならエコエコアザラクだろ。エコエコアザラシって、あんた、地球温暖化が止まって大喜びしている南極の生き物か! そりゃ、おれだって地球温暖化は止まってほしいけどさ。ていうか、エコエコアザラクだって、古くね?」
エージェントスミスはすました顔で答えました。「ツッコミが長いでござるよ」
気がつくと、史郎は合コン現場に立っていました。
◆◆◆
そこは千代田区丸の内の一角にある、イタメシ屋でした。
ほぼ満席でしたが、不思議なことに音もなくシーンとしていました。
音がなかっただけではありません。
動きがありませんでした。
時間が止まっていました。
客も、店員も、まるで蝋人形のように、動きを止めていたのです。
「こ、これは…」
史郎が目を丸くしていると、背後にいたエージェント・スミスが言いました。
「どうやら、プログラムがフリーズしているようでござる。…ああ、あそこにいるのが、貴殿の奥方ではござらんか」
スミスが指さす方向には、3人の女性と2人の男性が固まって座っているテーブルがありました。
なぜ男性が1人足りないかというと、その足りない1人というのが、エージェント・スミスだったわけです。
スミスだけは、フリーズを免れて動き回ることができたわけです。
合コン用テーブルの隅っこには、俳優の阿部寛によく似たイケメンが座っていました。
右手にビールの入ったグラスを、左手に携帯電話を持っています。
その笑顔が、さわやかなまま、文字通り凍りついていました。
阿部寛の隣には女性が座っていましたが、よく見ると史郎の妻、弥生でした。
左手に赤ワインのグラスを、右手には同じく携帯電話を持ち、動きが止まっています。
この2人、どうやら電話番号とメールアドレスをお互いに交換しようとしているようでした。
なんだか弥生の化粧が濃いような気がするのは、史郎の思い込みでしょうか。
ショックのあまり、その場にうずくまる史郎。
スミスが言いました。「貴殿をここに連れてきたのは、合コン現場を見せるためではござらん。例の『マトリックス・グルメ化計画』が成功して以来、こういうフリーズ事件が多いのでござる。要するに、バグというやつでござるな。貴殿にトラブルシューティングを頼みたいのでござるが…。おや、どうしたでござるか?」
史郎はこうつぶやくのが精いっぱいでした。「弥生が合コンだなんて…」
「気持は分からぬでもござらぬが」とスミス。史郎の肩に手を置きました。「バグを直すついでに、この合コンもなかったことにするがよいでござろう。設定を変えればよいだけのことでござる」
史郎の目から涙がこぼれます。「おれは弥生の自然な感情を大事にしたいんだ。設定を変えるなんて不自然じゃないか」
もともと設定を変えて、弥生をモノにしたのはオメーだろ。
◆◆◆
合コンをなかったことにするために、マトリックスの「グルメ・システム」のデバッグに猛然と取り組んだ史郎。
当初は、かつて自分が組んだプログラムに欠陥があるのではないかと考えていましたが、追及してみると、そうではないことを発見しました。
ウイルスが侵入していたのです。
ウイルスを作ったハッカーをつきとめた史郎とエージェント・スミスは、犯人を逮捕するために現場に急行します。
ハッカーは、文京区小石川のマンションに潜んでいました。
「1005号室。ここでござる」
スミスが呼び鈴を押しました。
「はあい。どなた?」
意外にも、女性の声でした。
しかも、年配の女性のようです。
すると、スミスが慌てたような小声で「逃げるでござる」
「え?」
「いいから、逃げるでござる」
「逃げるって?」
「説明している暇はござらん」
「だっていま逃げたら、ただのピンポンダッシュじゃないか」
「問答無用」
スミスに引きずられるようにしてその場を去った史郎。
エレベーターを待つ余裕がないため、階段を駆け下ります。
マンションの外に出るや、息を切らせている史郎にむかってスミスは言いました。
「あの声は、オラクルの声でござった」
「は?」
「オラクルに間違いござらん」
「ちょっと待って」史郎はその場に座り込みました。「オラクルっていうと、預言者のこと? たしか映画のなかでは、キアヌ・リーブスにいろいろアドバイスをしてたオバサンだよね」
「そのオバサンでござる」
「オラクルが、ハッカーの正体だってこと?」
「そのようでござるな」
「でもどうして…?」
「拙者にも分からぬ」スミスは言いました。「どうやらこの事件、一筋縄ではいかぬような気がしてきたでござるよ」
(以下次号)
<オススメ書籍>
「やんごとなき姫君たちの饗宴」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4041938112
松宮園生です。
「ファイター栄養士 その2」
で、昭和型の管理栄養士、佐久間象子が仲間2名(Aさん、Bさん)と一緒にグリーンツーリズムと洒落こんだときのエピソードを書きました。
http://www.shokuiku-pro.com/production/2009/09/2_40.html
今回は、その同じ3人が帰り道で不慮の事故に遭い、 天国に行ったときの話です。
◆◆◆
3人は飛行機で天国に運ばれました。
「天国行きユナイテッド航空1059便」
はつつがなく目的地に到着。
3人が飛行機の外に出ると、そこに天使が待っていました。
「いらっしゃい、おねえさんたち」天使が言いました。「機内食、どうだった?」
「まあ、おねえさんだなんて」佐久間象子がまんざらでもなさそうに答えました。「機内食はおいしゅうございましたよ」
「それはよかったね。…はい、この書類に必要事項を書いて、サインして返してくれる?」
3人が書類を書いているあいだ、天使が言いました。
「ここは天国だから、おねえさんたち好きに暮らしなよ。食育教室開きたいんだったら、開けばいいしさ」
3人は書類にサインをし、天使に手渡しました。
「おっといけねえ」別れ際に天使が言いました。「書類に書いてない規則がひとつだけあるのを言い忘れてた。リンゴを踏まないようにね」
「リンゴを踏まない?」
「リンゴを踏んじゃいけないんだ。…じゃあ、おいら、次の仕事があるから、もう行くよ。おねえさんたち、またね」
天使が飛び立つと同時に目の前のドアが開き、3人は天国に入りました。
なるほど…。
天国ではリンゴがそこらじゅうに転がっていました。
王林、紅玉、ゴールデン・デリシャス、ふじ、ジョナゴールド…。
(分かるんかい)
足の踏み場もないくらいです。
足の踏み場もないくらいに転がっているリンゴを踏んではならん、というのが天国の掟のようでした。
踏まないようにするには、かなり気をつけなければなりません。
さっそく、Aさんがリンゴを踏みつけてしまいました。
すると、どこからともなく天使が男の人を連れてやってきました。
とんでもないブオトコです。
天使は、そのブオトコとAさんを鎖でつないでしまいました。
「リンゴ踏むなって言ったろ」天使の声は不機嫌でした。「罰として、あんたはこの男と100年間、鎖でつながったまま暮らすんだからね」
Aさんはショックで気を失い、佐久間象子とBさんは震え上がりました。
その後の数日間、佐久間象子とBさんは足元を警戒しながら過ごしました。
それでもついに、うっかりBさんがリンゴを踏んでしまいました。
ほどなく天使がやってきて、Bさんをとんでもないブオトコと鎖でつないでしまいました。
Bさんは嫌だ嫌だと泣き叫び、佐久間象子は震え上がりました。
佐久間象子は外出をやめました。
外に出なければ、リンゴを踏むこともありません。
それに天国ですから、外で働かなくったって食べものは手に入るのです。
佐久間象子は、自宅で食育教室を開きながら、毎日を過ごしました。
1か月もたったころ、天使がジョージ・クルーニーそっくりの美男子を連れて佐久間象子の家に入り、2人を鎖でつないでしまいました。
「あらまあどうして」ホホを赤らめる佐久間象子。「リンゴを踏まなかったご褒美なのかしら?」
うなだれるジョージ・クルーニーを尻目に、天使が不機嫌に言いました。
「リンゴを踏んだのはこの男なんだ」
<オススメ書籍>
「時間栄養学―時計遺伝子と食事のリズム」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4789554333