ホーム >

食育の世界でなにかしてみたい人、活躍してみたい人、必見!
人気「野菜ソムリエ」と「プロダクション・チーフ」が
食育の世界にご案内します。
◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
魔法使いステマグさんを探してアメリカはロサンゼルスにやってきたテケテケ村のマツオ。
NNFAのウェブサイトを調べてみると、そこにはサプリメント工場の一覧表が…。
◆◆◆
一般に「ロサンゼルス」というと、かなり広い地域を意味することが多いです。
この広い領域のことを「グレートロサンゼルス」ともいい、関東全域とだいたい同じ面積だそうです(測ったことないけど)。
ロサンゼルス市じたいは、広い「グレートロサンゼルス」のほんの一部に過ぎません。
したがって、一口にロサンゼルスといっても、スゴク広いわけです。
これ、頭では理解できるのですが、実際に距離感をつかむのはナカナカ大変です。
レンタカー屋さんでクルマを借りると、グレートロサンゼルスの地図をもらえます。
A3くらいの大きさの紙1枚です。
「なんだ、紙1枚でおさまる程度の広さなんだな」
距離感が分からないものですから、ついつい過小評価してしまいます。
ところが、地図上で数センチの距離を実際にクルマで移動しようとすると、思ったより遠かったと思うことはしょっちゅうです。
加えて、たいがい一度は渋滞にハマることもあり、その分、時間を食います。
おまけに、当然ですけど道に詳しいわけではないので、よく迷います。
高速道路の出口を間違えたり。
出口は間違えなかったけど、そこから先の「最後の数マイル」が悪夢だったり。
オレってよく迷うよなあ。なんでだろ?
でも、よく考えたら…。
「関東全域と同じ面積」なのに、A3くらいの大きさの地図1枚でなんとか走ろうということ自体、間違ってますね。
というわけで、マツオ少年はロサンゼルスにいるあいだ、ほとんどの約束に遅刻したのでした。
サプリメント会社の皆様。
そんなマツオをお許しください。
◆◆◆
NNFAのサイトにはサプリメントを実際に製造している会社が多数、掲載されていました。
よくみると、ほとんどが
ロサンゼルス(西海岸)
ニュージャージー(東海岸)
どちらかに工場がありました。
マツオはまずロサンゼルスにある工場を、いくつか訪問しました。
例によって、はげしく道に迷いながら…。
工場は、住宅地にまじって建っていたり、倉庫街のようなところに建っていたり、道路以外になにもない野原にポツンと建っていたりしました。
工場といっても、そんなに大きな工場ではありません。
また、大きな音を出すこともなく、強烈な匂いをまき散らすこともないため、建てる場所に制限があるわけではありませんでした。
(匂いがないわけではありません。そんなに匂わないということです)
興味深かったのは、どの工場もインド・パキスタン系の従業員が多かったことです。
インド・パキスタン系の社長も数多くいました。
どうやら、この業界はインド・パキスタン系がリードしているみたいです。
訪問するにはコツがあります。
<ステップ1>
まず、電話するとき、「おたくにサプリメントの製造を頼むかどうか検討しているが、その前に工場を見せてくれないか」という一言を伝える。
つまり、自分はお客さんになる可能性があるよ、と伝えるわけですね。
「日本からわざわざ来た」というと、彼らの期待感もふくらみます。
<ステップ2>
工場に着くと、まず大きな会社の場合はセールスマネージャーの、小さな会社の場合は社長さんの部屋に案内されます。
そこで、
「日本からわざわざ来てくれたのはうれしいが、どういう商売をお考えか?」
と聞かれるので、そのときは
「マルチビタミン」
と答えておくのが無難です。
「マルチ」と発音しても通じないので、「モーティ」と発音してみてください。通じる可能性が高まります。
マルチビタミンを作るのはなかなか難しいです。
工場の技術力、「腕」が問われます。
「マルチビタミンを考えているが、あんたの会社は、作れるのか?」
と、挑発するように言ってみましょう。
「つ、作れるに決まってるじゃないか。ま、任せとけ」
とムキになって答えてくるでしょう。
しかし、
日本には、本当はできるのに自分ではできないと思いこみ、「できない」と答える人が多いですが、
アメリカは逆で、本当はできないくせに、自分ではできると思いこみ、「できる」と宣言する人が多い。
気をつけましょう。
さて、ここで油断していると、今度は相手から質問が飛んできます。
「あんたが商品化したいマルチビタミンは、タブレット(錠剤)がいいのか、カプセルがいいのか?」
ここで答に詰まると「不勉強なやつ」と思われるので、平然とこう答えましょう。
「どっちにするかは、条件次第」
実際、タブレットがいいのかカプセルがいいのか、には、答がない場合が多い。
皆さんも、たとえば市販されているビタミンCを買ってみると、メーカーによって錠剤だったりカプセルだったりしませんか?
ビタミンEやコエンザイムQ10のようなものは酸化を防ぐためにソフトカプセルにしている場合がほとんどです。
しかし、ビタミンCやマルチビタミンのようなものは、「どっちでもいい」のです。
ですので、あとはいろんな条件を吟味しながら、どっちがいいか決めていきます。
「あんたが商品化したいマルチビタミンだが、年間でどのくらいの数量をオレたちに作らせたいと思っているのか?」
という質問もきます。
ここで答につまると「こいつ、冷やかしでやって来たのか?」と思われるので、平然とこう切り返しましょう。
「あんたのところの製造最少単位(minimum quantity requirement)はどれくらいか?」
すると、たいていの場合、
「ウチの製造最少単位(minimum quantity requirement)は60,000ピルくらいだ」
という答が返ってきます。
製造最少単位(minimum quantity requirement)というのは、「これ以上小さい注文には応じない、最低レベルの数量」という意味です。
どの工場にも、その基準があります。
「ビタミンCのサプリ、1粒だけ作ってくれ」なんて注文には応じられないわけです。
60,000ピル、というのは、タブレット(錠剤)であれカプセルであれ、60,000粒、という意味。
<ステップ3>
「そうか、マルチビタミン作れるのか。だったら工場を見せろ」
と言ってみましょう。
すると、工場を案内してくれます。
サプリメントの工場は、工場というより研究所のたたずまいをしています。
たとえば自動車の製造工場だと、巨大な倉庫のような空間のなかで大勢の工員が動き回って自動車を組み立てています。
サプリメントの工場はもっとこじんまりとしており、学校の校舎のような建物のなかに、たくさんの部屋があって、それぞれの部屋でいろんなことをしています。
工場に入る前に、白衣を着せられ、マスクと白いキャップを被ります。
「いいよいいよ、ウチはあまりうるさくないから、白衣なんか着なくても見学できるよ」
そんなことを言う会社は、ダメです。衛生管理がなっていないと判断しましょう。
「おたくはGMPに準拠しているのか?」
という質問もしてみましょう。
たいがいの場合、「もちろんだ」という答が返ってきます。
そうしたら、
「それは、アメリカのGMPなのか、オーストラリアのGMPなのか」
と突っ込んで聞いてみましょう。
「こやつ、デキルな」と思われるはずです。
GMPとは、Good Manufacturing Practiceの略で、「適正製造規範」と訳されています。
原料の入庫→製造→出荷にいたるすべてのプロセスで、
* 製品が安全に作られる
* 一定の品質が保たれる
ように定められた規則とシステムのことです。
医薬品のメーカーはすべてGMPを守っています。
サプリメントのメーカーも、GMPを守るところが増えてきました。
で、GMPにはアメリカ型とオーストラリア型というのがあり、オーストラリア型のほうが厳しいとされています。
◆◆◆
マツオはいくつかの謎を解くためにアメリカに来たわけですが、
「アメリカにはサプリメントの聖地が2つある」
この謎は解けました。
カリフォルニア州とニュージャージー州です。
まだ解けていない謎は
「熱を出さない打錠技術がアメリカにあり、それを知るには筆のような野球のような土地に行かなければならない」
「魔法使いステマグさんがテケテケ村を攻撃する計画をたてている」
の2つです。
この2つ、サプリメント工場を訪問して回って、答が見つかるでしょうか?
(以下次号)
食育の世界でなにかしてみたい人、活躍してみたい人、必見!
人気「野菜ソムリエ」と「プロダクション・チーフ」が
食育の世界にご案内します。
◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回のあらすじ)
小判大介君の元カノ(別途、妹が2人います)は観月ありさに少し似ていたそうですが、まるでブルーチーズやカラスミのような、濃厚な食育一家の出身でした。
◆◆◆
小判大介の話によると、元カノの家族構成はこうでした。
父親:大工の棟梁。星一徹が食育に興味をもったらこんなお父さんになる、という感じだそうです。
母親:もとミス福岡。なんでこのお父さんと結婚したかは誰にもわからないらしい。
元カノ(長女):観月ありさ似。OL。東京在住。
次女:姉には似ていない。大学3年生。医学部。
妹(三女):観月ありさ似。大学生1年生。文学部。
◆◆◆
元カノの親父さんが定めた、実家の家訓です。
第1条:「いただきます」を言い忘れた場合、食後に空気椅子15分。
第2条:「ごちそうさま」を言い忘れた場合、ブリッジ30分。
第3条:正当な理由なく食事を残した場合、腕立て伏せ100回。
第4条:食事中、すべての料理について母親に何かコメントをすること。コメントできなかった場合、アルジェリアン・スクワット100回。
第5条:1度言ったコメントは2度と使わない。毎回表現を変えること。同じコメントを2度使ったことが分かった場合、腹筋100回。
第6条:食事マナーに反した場合、違反1回につき空気椅子15分。
第7条:背筋を伸ばして食卓につくこと。姿勢が悪い場合、倒立1時間。
第8条:原産地を知らない食材があった場合、必ず母親に聞くこと。聞かずに無視した場合、踏み台昇降30分。
第9条:味つけが変わった場合、ただちに気がついて母親にコメントすること。気がつかなかったり無視した場合、素振り1000回。
第10条:昼食の場で、必ず1度は農業を礼賛する話題を提供すること。忘れた場合、グラウンド10周。
第11条:夕食の場で、必ず1度は栄養学についての話題を提供すること。忘れた場合、ななめ懸垂100回。
おかげで元カノ3姉妹は、全員がスポーツでインターハイ出場を果たしました。
◆◆◆
元カノの親父さんが定めた、実家の教育方針です。
6歳までに、国産野菜の産地をすべて覚えること(地理)
7歳までに、近所の寿司屋で出てくるすべての魚の名前を漢字で覚えること(国語)
8歳までに、100年以上続く老舗の食品会社の名前と商品をすべて覚えること(社会)
9歳までに、100種類の果物の名前を英語で覚えること(英語)
10歳までに、主要ミネラルの元素記号をすべて言えるようになること(理科)
11歳までに、調味料はなぜ「さしすせそ」の順番で入れるのか、科学的に説明できるようになること(理科)
12歳までに、「なぜ日本の食料自給率はカロリーベースで40パーセントに下がってしまったのか」を説明できるようになること(歴史)
13歳までに、「食品成分表」の見方と使い方をマスターすること(算数)
14歳までに、100人のエコファーマーと知り合いになること(総合学習)
15歳までに、「美味しんぼ」全70巻(当時)を暗唱すること(漫画)
おかげで元カノ3姉妹は、全員が九州大学に現役で合格しました。
◆◆◆
そんな一家だそうです。
説明が終わったあと、小判大介は嘆願するように言いました。
「松宮師匠。というわけで、一緒に九州に行ってくれませんか」
「あははは。いや、おれは忙しいから…」
「師匠は食育の人材育成をしてるんですよね。師匠の理想の家庭を見れるんですよ」
「いやいや、残念だけどオレはいいよ。オレに遠慮せずに結婚してこい」
「航空券も用意しました」
「いやいや、お熱いふたりの邪魔はしたくないし」
「ほら、妹たちの写真です。ほらほら」
「いやいや、オレのタイプじゃないし」
「なに遠慮してんですか、写真見もしないで」
「いやいや、ちらっと見えたし、それで十分だし」
「それは嘘ですね。まったく見てませんよ。現実から逃げずにちゃんと見ましょうよ」
「いやいや、見たってば」
「じゃあ、2人がどんな髪形してたか言えますか?」
「そ、それはだな、片方がワンレン(←死語)で、片方はボディコン(←死語)だったな」
「ほらやっぱり見てないじゃないスか。2人ともワンレンじゃないし、ボディコンは髪形じゃありません。第一、そんな昭和な単語、よく覚えてますね」
「年齢がバレるってか。あはは」
「そうスよ。あはは」
「おあとがよろしいようで。そろそろお開きにしよか」
「甘いス。その手には乗りません。師匠は僕と一緒に食育一家を視察してください。航空券は用意しました。2人の美人の妹たちも師匠を待っています。ここで逃げたら男がすたります」
「男はもう、すたっているからいいよ。師匠に九州旅行をプレゼントしようという優しい気持ちは嬉しいが、気持ちだけ頂戴するよ」
「師匠! トイレに逃げ込むつもりスね。そうは問屋がおろさじ」
◆◆◆
ドタバタ(←死語)な会話、まだ続きそうですが、このへんでおしまい。
小判大介は松宮園生を引きずりこむことに失敗、ひとりで福岡に向かいました。
その後の運命は、ご想像のとおりです。
(このシリーズはここまで)
食育の世界でなにかしてみたい人、活躍してみたい人、必見!
人気「野菜ソムリエ」と「プロダクション・チーフ」が
食育の世界にご案内します。
◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
葉竹さんと多賀安さんは学生のころからの天敵でした。
その2人が、アグリドラゴンの経営を巡ってついに激突しました。
◆◆◆
さっさと種明かしをしましょう。
この2人は学生運動に参加し、大学のキャンパスで放水したり、ゲバ棒を振り回したりしていました。
その点は共通していたのですが、参加していた学生組織が別々で、お互い主義主張が対立していたのです。
彼らが大学生になって3年目に、学生運動は下火になりました。
下火にはなりましたが、あきらめ切れない一部の学生は、運動を続けます。
ただし放水やゲバ棒は使わず、ビラを配ったり街頭演説をしたりというソフト路線に転換していました。
葉竹さんも多賀安さんも、大学生になって3年目ではありましたが、留年していてまだ1年生でした。
学生運動が下火になって学業に専念するかと思えば、両名ともその気配はまったくなく、今度はビラ配りと街頭演説に精を出すようになります。
ゲタを鳴らし、腰に手ぬぐいという「留年型学生」風貌も板についてきました。
しかしここでも主義主張の対立は相変わらずでした。
片方がビラを配れば、もう片方がそれを妨害せんと同じ場所でビラを配ります。
片方が街頭演説すれば、もう片方も負けじと同じ場所で演説します。
よせばいいのに、わざわざ同じ場所で活動するものですから、いつでも衝突していました。
◆◆◆
そんな彼らにも、大学を卒業する日が近づいてきました。
バリバリに学生運動をしていた学生は、卒業しても就職しないことがほとんどでした。
企業のほうがそういう学生を採用しないというのもありましたし、学生のほうでも
「就職なんかするやつは脱落者だ」
と考えていたようです。
ところが2人とも、農業資材を扱う会社に就職します。
農業系は学生に不人気だったため、
「学生運動してようと遊び呆けていようと、バカでもチョンでもなんでもいいから採用する」
という会社が多かったのと、学生のほうでも、
「農業だったら脱落したことにはならない」
という認識だったようです。
なぜ農業だったら脱落したことにならないのかは僕も不勉強でよく知りませんが、当時の工業(第2次産業)や商業(第3次産業)には「資本主義の悪魔」みたいなイメージがあったみたいで、それに対して農業(第1次産業)には「資本主義に毒されていない純粋なイメージ」があったのかもしれません。
彼らが就職したのは別々の会社です。
「お約束」というかなんというか、お互いライバル企業でした。
今度は「商売敵」としての衝突が始まります。
しかし2人とも数年後には独立していました。
葉竹さんは上司と喧嘩して会社を飛びだし、農業コンサルタントを名乗りました。
多賀安さんは社長と喧嘩して会社を辞め、同じく農業コンサルタントを始めます。
「北の多賀安、南の葉竹」時代が開幕したのでした。
(以下次号)
松宮園生です。
松宮園生にはテケテケ村に舎弟がおります。
小判大介という名前です。
ふだんは結婚しており、イチゴ農業をしてます。
ふだんは結婚してイチゴ農業、とわざわざ書くということは、いざというときにはそうじゃないのか、と思いませんか?
いざというときにも結婚してイチゴ農業です。
(参考記事)
農家の嫁と山羊のメリー 前編
農家の嫁と山羊のメリー 後編
結婚してイチゴ農業を始める前は、東京でふつうのサラリーマンをしていました。
大介はサラリーマンとしての給料は安かったのですが、いくぶん株式投資の才能があったおかげで、暮らしに苦労することはあまりなかったようです。
独身時代は合コンにも行きましたし、ごくたまにはモテたそうです。
勝負パンツとしてちゃんと新しいものを準備するだけの余裕もありました。
いちど履いた勝負パンツは、「勝ち負け」にかかわらず、2度と勝負には使わない。というのが彼の美学だったようです。
それが、パンツに対する彼のこだわりでした。
ただし、「勝負」には2度と使いませんが、もったいないので「ふだん履き」には使っていました。
◆◆◆
これは彼が妻のゆかりさんに出会う前につきあっていた、元カノの話です。
まだ松宮が東京のテケテケ商事でメキマンと闘っていたころ、松宮のアパートにやってきた大介からある相談を受けました。
こんな相談です。
「じつは師匠」大介は顔を赤くして言いました。「恋に落ちまして」
それを聞いて、松宮は大介にも渡そうとしていたテキーラのグラスを、引っこめました。
「そうか。それはよかったな。若いやつは若いだけが取り柄だからな。で、相手は人間か。性別は女か」
持ち帰り作戦(詳細はこちら)に失敗続きの松宮師匠の返事は、冷やかです。
「相手はですね」舞い上がる大介には、師匠の皮肉が通じません。「人間の女っす。5歳下っす。福岡生まれ福岡育ち。スポーツをたしなみホラーを愛でるお嬢さんです」
「ふーん。ホラーね」
「ですが師匠」大介の顔がここで曇りました。「こんど彼女の親父さんに会うんですけど、怖くて怖くて」
「ナヌ、結婚するのか?」
「いちおう、そう思ってます」
「美人か?」
「そりゃあもう。美人です」
「芸能人だと誰に似てる」
「観月ありさに似てます」
「そ、そうなのか。もうちょっとイマドキな名前を出すかと思ったが、まあいい。観月ありさもたいへんな美人だからな。姉か妹はいるのか」
「妹が2人います」
「そうかそうか。まあ飲め」松宮はうれしそうに、いったんひっこめたテキーラのグラスを大介に手渡しました。
それを受けとった大介が心配そうに言いました。「でも師匠、そんなことより彼女の親父さんの話なんですが」
「そんなことより観月ありさの2人の妹はいまどこにいるんだ」
「彼女の親父さんの話を先に聞いてください。じゃないと紹介しませんよ」
「…しょうがねえ。早く話せ」
◆◆◆
大介の話では、彼女の実家はどうやら食育一家のようでした。
それも、まるでブルーチーズやカラスミのような、濃厚な食育一家だというのです。
たとえばまだ観月ありさが家族と九州に住んでいたころ…
(以下次号)
食育というテーマでセレクトしています。
「食育的な心を満たすオンラインストア」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22
松宮園生です。
食(育)の世界には「謎の不機嫌な人」が多いです。
先日、「不機嫌な料理人」についてちょっと書きましたが
(詳細はここをクリック)
もう少し書いてみます。
■謎の不機嫌な八百屋
何年か前に、友人Aが大阪で八百屋業を始めました。
それまでそんな仕事をしたことがなかった人なのですが、何を思ったか八百屋を始めました。
経験がないせいで大胆なことができたのかもしれません。
ちょっと新しいタイプの八百屋を始めたわけです。
東京のある老舗の八百屋さんがいまして、そこの3代目は●●大学ラグビー部出身のいかつい人でした。
その3代目が僕に電話をかけてきまして、こう言いました。
「Aさんって、松宮さんの知り合い?」
「知り合いですけど」
「ふーん。で、あの八百屋、うまくいってんの?」
「僕の知るかぎり、まあまあですかねえ」
「ふーん」声のトーンが、みるみる不機嫌になっていきました。
(みるみる、という表現はヘンですね。電話ですから。きくきく、が正しい?)
3代目の不機嫌な声は続きました。「あんなやり方でうまくいくわけ、ないよ」
「うまくいきませんか?」
「いかないよ。世の中そんなに甘くないもん」
「インターネットの注文が、けっこう忙しいって言ってましたが」
すると、声はますます不機嫌になりました。「なに言ってんだよ松宮さん。そんなのウソに決まってるじゃん。あんたも大したこと、ないね」
電話が切れました。
どうやらこの3代目、
「いやー、Aさんも苦労してましてね。自分のやり方は間違ってた、そろそろ廃業するって言ってましたよ」
という答を僕の口から聞きたかったようです。
ところが期待してた答じゃなかったので、不機嫌になったみたいで。
大阪のAの店が繁盛しようと廃業しようと、東京の3代目には関係ないと思うけどなあ…。
ライバルでもないわけだし。
■謎の不機嫌な農家
何年か前に、友人Bが群馬で農業を始めました。
外資系企業に勤めていたのをすっぱり辞め、夫婦で農業を始めたわけです。
イチゴなんかを作ってます。
なかなか元気よくやってまして、遊びにいくのが楽しみでした。
同じく群馬でコンニャク栽培をしている農家さんがいます。
この人は2代目です。50代後半の方です。
ある日、僕に電話をかけてきて、こう言いました。
「Bさんっつーのは、あんたの知ってる人かい?」
「そうですけど」
「どんな奴?」
「どんな奴って、そうですね、頭のいい人だと思います」
「ふーん」声のトーンが、きくきく不機嫌になりました。
2代目の不機嫌な声は続きます。「そいつ、儲かってる?」
「まあまあじゃないでしょうか」
「あんた、おかしいと思わんか」
「は?」
「農業ってのはな。土地を守ることなんだ。儲けたりとか、稼いだりとかは間違ってる」
「間違っていますか」
「あたりまえだ。土地を守る気持ちのないやつに、農業なんかできねえ」
「Bさんも、土地を守る気持ちはあると思いますよ」
「なにを言ってるんだあんたは。儲かってるやつに、土地を守る気持ちなんかあるわけねーだろが」
「はあ、そういうもんですか…」
2代目は電話を切るまえに、はき捨てるようにこう言いました。
「そんなこと言ってるから、農業人口が減ってくんだよ」
■謎の不機嫌な食育オバチャンたち
あるカルチャースクールが、主婦・OL向けの食育講座を開こうとしたそうです。
ふだんから食育活動をしている人を集め、どんな内容の講座にしたらよいかという会議をもちました。
どういう基準で人選したのか分かりませんが、メタボ気味のオバチャンが集まってきました。
こんな会話になったそうです。
司会者「大人向けの食育講座ですから、栄養学の話は欠かせませんよね」
オバチャンA「なによりまず、食育といえば朝ごはんでしょ。朝ごはん食べなきゃ」
司会者「なんで朝ごはんが大事なんですか?」
オバチャンA「そ、それは、朝ごはん食べない子どもはキレやすくなるのよ」
司会者「なんで朝ごはん食べないとキレやすくなるんですか?」
オバチャンA(不機嫌になる)「あんたね。日本人は朝ごはん食べなくていいって言うつもり?」
オバチャンB「土に触れることが大切なんじゃないの。都会の子は土のことを知らなさすぎ」
司会者「農業に触れなさい、ということですね?」
オバチャンB「今の子どもって、ナスは知ってても、ナスの花がどんな形をしているのかを知らない。それって悲しいわよね」
司会者「ナスの花って、どんな形をしてるんですか?」
オバチャンB(不機嫌になる)「た、たとえばの話よ。あたしが言いたいのはナスの形がどうとかじゃないの。理解しなさいよ」
オバチャンC「農業といえばさ、有機野菜のおいしさも伝えなくちゃね。安くておいしい有機野菜」
司会者「有機野菜って、高いんじゃないですか?」
オバチャンC(不機嫌になる)「なに言ってんの。有機野菜はすごいのよ。おいしくて、安いのよ。有機野菜はね、農薬を使ってないから、その分、安いのよ」
オバチャンD「牛乳も飲まなきゃだめよね。カルシウム入ってるんだから」
司会者「牛乳はダメだっていう医者もいるみたいですが…」
オバチャンD(不機嫌になる)「な、何言ってんのよ。温めて飲めば大丈夫よ」
司会者「大人向けの食育講座ですから、もう少し内容を濃くしたいんですけど。栄養学の話は欠かせませんよね」
オバチャンA「子どもにはまだ早いんじゃないの」
オバチャンB「そうよそうよ」
司会者「あのー、食育講座を受けにくるのは大人なんですけど…」
オバチャンC「えーっ、そうなの? 早く言ってよ」
司会者「あのー、最初からそう言ってるんですけど」
でも、みんな聞こえないふりをしました。
オバチャンD「残さずに食べるのって、大事よね」
オバチャンA「家族で会話しながらの食事。これも大事」
オバチャンB「必ずちゃんと、いただきます、ごちそうさまを言う」
オバチャンC「嫌いなものも、料理のしかたでおいしくなるわよね」
司会者「栄養学の話は…」
「いつまで栄養学にこだわってるのよ!」オバチャンDがいっそう不機嫌な口調で言いました。「食育と栄養学は違うのよ」
ほかのオバチャンたちもさらに不機嫌になって同調しました。
(この人たち、食育やってるっていうけど、栄養学とか農業のこととか、じつは知らないんじゃ…)
司会者はそう思いましたが、黙っていました。
口にすると殺されそうだったので言わなかったそうです。
結局、オバチャンたちの圧力で、司会者は食育講座の内容をこんなふうにさせられてしまいました。
1時間目:朝ごはん食べて今日もキレない
2時間目:土に触れようナスの花
3時間目:おいしく安いよ有機野菜
4時間目:牛乳あたためカルシウム
5時間目:残さず食べる家族の会話
6時間目:いただきますと、ごちそうさま
7時間目:嫌いなものも、おいしく料理
これ、主婦とOL向けの食育講座です。
(次号に続きません)
<おすすめDVD>
「やさいのうた」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/B000IY0ABW
↑
ビミョーにホラー入ってます。