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皆様、明けましておめでとうございます。
いまどきアメリカかぶれになっているのが
ちょっと恥ずかしい食育オタク、
松宮園生です。
(じつはこの瞬間、アメリカ西海岸はまだ
2007年ですけど…。あと数時間です)
◆◆◆
これまでベジタリアンの合コンに2度ほど
誘われたことがあるのですが、集まって
いるやつらはいったいどこで出会っている
のか、最近まで謎でした。
(1回目の合コンの詳細はここを
クリック→「ベジタリアン・ババア」))
(2回目の合コンの詳細はここをク
リック→「萌えトマト」)
ところが見つけましたよ、おかみさん。
ベジタリアン専門の出会い系サイト。
これだ。
ここで知り合っていたのです、やつらは。
「グリーン・シングルス」
http://www.greensingles.com/
「ベジ・ラブ」
http://www.veggielove.com/
「エシカル・シングルス」
http://www.ethicalsingles.com/
最初の2つは、創立者が同じです。
* 1番目が「ゆるいベジタリアン」向けラブラブサイト
* 2番目が「気合ベジタリアン」向けラブラブサイト
となっているようです。
最後のやつは、ベジタリアンというより、
「動物愛護+環境保護」
の方々の出会い系サイトのようです。
日本語でいうと「出会い系サービス」ですが、英語では「マッチング・サービス」と呼ばれています。
日本でもビジネスの場面ではよく「マッチング・サービス」という言葉が使われていますね。
* 人と人が出会う(要は、恋人探しみたいなもの)
* 人と企業が出会う(人材派遣とか人材紹介とかですね)
* 企業と企業とが出会う(日本だとたとえば商工会議所なんかがそういうサイトをやってます)
これ全部、「マッチング・サービス」でありんす。
さて、その「恋人探し」ですけど、アメリカの人はおおっぴらに「恋人を募集」することにあまり抵抗がないみたいです。
フツーの新聞に「恋人探し」のコーナーがありまして、たとえばこんな自己PRと募集コピーが平気でサワヤカに書かれています。
* 44歳。女性。ITエンジニア。オレゴン州ユーレカ在住。筋肉隆々の男性を求めています。
* 36歳。男性。教師。マサチューセッツ州ネイティック在住。自分で言うのもなんだけど、かなりセクシーです。細身で背の高い女性を募集中。
* 70歳。女性。マイアミ・ビーチ在住。金銭には余裕があります。健康です。恋人は年下なら誰でもかまいません。
* 29歳。男性。ハーブ農園経営。UCLA卒。カリフォルニア州オークランド在住。年齢・性別問いません。
* 10歳。女性。ネブラスカ州在住。ハーマイオニーに似てます。そっと見守ってくれる人がいいです。
というわけで、
「なんだったら、アメリカ人のベジタリアンとおつきあいしてみようかしら」
「そうすっか!」
と思う老若男女は、登録するのも一興かも。
けっこう、素性のしっかりしたサイトのようですし。
(お勧めしてどうすんだ)
◆◆◆
では、今年もよろしくお願いいたします。
松宮園生です。
昨日(30日)のことです。
「松宮さんって、年末の忙しいときに長々と呑気なブログ書いてて、
じつはけっこうヒマなんですねえ」
なんてメールを数通、いただきました。
ししし、失礼な。
ななな、何を言うか!
…なんて反論したいところですが、はい、ヒマっつーか、じつはその、アメリカの年末年始は日本みたいに「師走」状態ではございません。
正月の準備をする、なんてこともありませんで。
大晦日もフツーに仕事し、家に帰って夕飯食べるでしょう(←キムチ鍋の予定)。
忘年会もないし。
大晦日の夜はさすがにお祭り気分で人の集まるところに出かけ、集まったみんなでカウントダウンをします。
(僕の近所はゲイの方々がちょっぴり多いみたいなので、その後の「キス合戦」は逃げ回ることになるでしょう)
元旦はアメリカも祝日です。
日本同様、世の中の会社はお休み。
でもお休みなのは元旦だけ。
翌日(1/2)は、みんなもう、ごく普通に仕事をしています。
◆◆◆
話は変わりますが、イベントのご案内。
来年の3月に
「フーデックス」
という日本最大の食の展覧会が開かれます。
(毎年、3月くらいにやってます)
日本最大というだけでなく、食の展覧会としては世界第3位の規模です。
期間: 3/11(火) - 3/14(金)
場所: 幕張メッセ
ウェブサイト:http://www2.jma.or.jp/foodex/ja/index.html
かなり面白いし、情報収集とかにもなりますので、行ける方は行ってみてください。
オススメです。
僕もなんとかして行こうと思っています。
過去、この「フーデックス」の楽しみ方について文章をものしたことがあるので、ご参考に…。
↓
「世界の食べ物をタダで食べまくる悪の楽しみ」
◆◆◆
もひとつイベントのご案内。
「フーデックス」より少し早いですが、2月に
「健康博覧会」
という健康に関する大きな展覧会が開かれます。
自然食品とか、食事指導とか、あとサプリメントとか、そういう分野に興味のある方にはオススメです。
これも僕自身、何とかして行きたいと思ってます。
期間: 2/27(水) - 2/29(金)
場所: 東京ビッグサイト
ウェブサイト: http://www.this.ne.jp/
◆◆◆
皆様から叱咤激励をいただいて今日まで書き続けることができました。
ありがとうございました。
来年もまた、ご贔屓によろしくお願い申し上げます。
食育プロデュース委員会(www.shokuiku-pro.com)
松宮園生
松宮園生です。
パクチー好きの僕の夢は、生きているうちに
「パクチーによる太陽系支配」
を実現することです。
すなわち、
「パクチー太陽系連邦」
を建国するのです。
(いったい何歳まで生きるつもりなんだよ)
太陽系支配のあとは、権力を「日本パクチー狂会」の会長さんに譲り、
僕自身は
* 各惑星に呼ばれて講演活動をしたり、
* たまには銀河帝国の星々にでかけて宇宙の平和に貢献したり
したいと思います。
銀河帝国には、いろんな宇宙人がいるんだろうなあ。
(パクチーによる宇宙征服プランの詳細についてはここをクリック)
◆◆◆
地球から10光年の距離のところにテケテケ星があります。
人類よりも進んだ科学技術を持ち、地球になんどもUFOを送りこんでいます。
何の目的でUFOを送りこんでいるかというと、パクチーをこっそり持ち帰るためです。
テケテケ星人はパクチー好きなのでした。
そのテケテケ星人からメールが来ました。
あんたのブログを読んだよ。
「パクチーによる太陽系支配」のお手伝いをしたい。
今晩、あんたのアパートに行くから、会議をしよう。
掃除をして待て。
そんな内容のメールでした。
その夜、掃除が終わった僕のアパートの前に、宇宙船が降りたちました。
ノックがしたのでドアを開けると、テケテケ星人が立っていました。
テケテケ星人は、昭和中期に流行った宝ビニール(現タカラトミー)のあの「ダッコちゃん人形」が、逞しくなったような姿をしていました。
「ハイル・パックチー」と宇宙人は言いました。
「は、ハイル・パックチー」あわてて僕も答えました。
そのテケテケ星人、いきなり断りもなく僕のアパートに入りこんだかと思うと、冷蔵庫を開き、中をのぞきこみ、狂ったように笑いはじめます。
「な、何がおかしい」
「おかしい?」ダッコちゃん人形は急に真顔になりました。「そんなことは、どこにも書いてないぞ」
「は?」
「まあいい。たまには大目に見るとしよう」
「は?」
テケテケ星人は冷蔵庫を閉め、考え込むように腕を組みました。「久しぶりに来たのだが、立派になったもんだ」
「来たことがあるのか?」
「あるわけないじゃない。なんでそんなことを言うんですか」テケテケ星人は泣きはじめました。「ひどい。ひどすぎる」
僕は混乱しました。
泣きやむと、宇宙人はテーブルの上にぴょんと飛び乗り、仁王立ちになりました。「パクチーはどうする」
「どうするって? 欲しいってことか? ここにはないよ。買ってこようか」
「なぜ買うのだ」
「え? だってあんた、パクチーが欲しいんだろ」
「パクチーが欲しいのか? そんなことはどこにも書いてなかったが…」
「は?」
「まあいい。それはあとで思い出せば何とかなるだろう。ところでパクチーはどうする」
「だからここにはないってば」
「そいつは傑作だ」仁王立ちのダッコちゃん人形の両眼から、涙がこぼれました。「生きるのは素晴らしい」
テケテケ星人はテーブルから降り、またもや冷蔵庫をあけ、今度はくすくす笑いました。
「もう1回聞くけどさ」僕は言いました。「冷蔵庫の何がおかしい」
「あなたの冷蔵庫はおかしいのか?」
「おかしいわけねーだろ」
「じゃあ心配しなくていいじゃないか。ところで、これは何だ」テケテケ星人は、冷蔵庫のなかからアイスクリームを取り出しました。「バカにしているのか」
「は? それはアイスクリームだろ」
「バカにしている」テケテケ星人はアイスクリームをなめながら言いました。「許し難い暴挙だ」
「ただのアイスクリームだろ。どこがバカにしているんだ? てゆーか、人のアイスクリームを勝手になめるなよ」
「なんだと? 誰かがアイスクリームを勝手になめているのか? それは誰だ? なんとも許し難い暴挙ではないか」
「それはあんただろ」
それには答えず、宇宙人はアイスクリームをなめ続けました。
コーンまできれいに食べてしまうと、
「そうだったのか…。わたしがアイスクリームをなめていたのか。うーむ。許し難い暴挙だ。同情の余地はない。死刑に処すがよかろう」
テケテケ星人はポケットから毒薬のようなものを取り出すと、その液体をごくごくと飲みほしました。
数秒後、その体がコトンと倒れ、ぴくりとも動かなくなりました。
呆然と立ちすくむ僕。
「生きるのは素晴らしい」って、いま言ってたんじゃないの?
ふたたびノックがし、べつのテケテケ星人がアパートに入ってきました。
いやーな沈黙。
「ち、違うんだ」僕はあせりました。「この人が勝手に…」
「だから腹は空かせておくべきなのだ。あれほど言ったのに」宇宙人は溜息をつきました。「それにしても地球とは恐ろしい星だ。うまいこと言う」
動かなくなった仲間の死体(?)をひきずって、テケテケ星人は出て行きました。
◆◆◆
翌朝、またテケテケ星人からメールが来ました。
昨晩の会議が決裂したのは残念でならない。
今晩もういちど出向くから、それまでに白か黒か、はっきりさせておけ。
そんなメールでした。
(以下次号)
松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
繁栄にあぐらをかき、飽食をむさぼる先進国。
彼らに鉄槌を下すことにした全能の神様は、
「ウエルネス天国」
「メタボ地獄」
を作りました。
ストイックに生涯を全うしたらウエルネス天国行き。
飽食におぼれメタボのまま死んだらメタボ地獄行き。
一方、人間社会のほうでも
「メタボ基本法」
が可決され、メタボな人は
「メタボ刑務所」
に送られて保健指導を受けるようになりました。
「刑務所に送られてたまるか」と逃げ回るメタボな人々を、
「メタボ警察」
が執拗に追い回します。
このシリーズ(21世紀神様の悩み)は、そうしたちょっとすごく怖い時代を懸命に生きる人々を描く、壮大なヒューマン・ドラマです。
(そうだっけ?)
◆◆◆
「最後の審判の日」時計(Doomsday Clock)
というのが本当にあるのをご存じでしょうか?
宇宙戦艦ヤマトじゃないけど、
「人類滅亡まで、あと××分」
というのを示す時計です。
シカゴ大学にあります。
「原子力科学者ブレティン」
という名前の科学雑誌がその時計を管理しています。
時計の針は進んだり後退したりします。
核戦争の可能性とか、地球温暖化などの環境問題とかを考慮して、
「人類滅亡まで、あと××分」
が決められています。
ちなみに、今日現在は
「人類滅亡まで、あと5分」
となっています。
本当に5分後に滅びるという意味ではありませんが、
「あと5分しかない、くらいに人類や地球のことを真剣に考えなさい」
ということを警告しているわけです。
◆◆◆
死んだばかりのある男が「メタボ地獄行き」を天使から宣告され、空港に到着しました。
これからメタボ地獄行きユナイテッド航空459便に乗るのです。
指定された搭乗口にむかって、男はしょんぼり(←死語)と歩いています。
「そんなに落ち込まないでよ、おじさん」見送りの天使が男の肩を軽くたたきました。「模範囚として認められたら、メタボ天国に行けるからさ」
「そんなこと言うたかて、わて、情けないわ」
男がなにげなく顔をあげると、コンコースの壁に無数の時計がかかっているのが目に入りました。
「時計がぎょうさんありまんなあ」男は言いました。「なんの時計でっしゃろか?」
「ああ、それはね」天使が答えました。「食育時計っていうんだ」
「食育時計?」
「神様が眉をひそめるような食事をしたら、時計の針が進むんだよ。暴飲暴食したりとか、ジャンクフードを食べたりとか、野菜を食べなかったりとか、寝る前に甘いものを食べたりとかすると、針が進む」
「そりゃまた、ごっつい時計でんなあ」
「あそこにロココ風のデザインの時計があるでしょ?」
「あれでっか」
「そう。あれはマザー・テレサの時計だよ」
「マザー・テレサでっか」
「マザー・テレサの時計はまったく針が動かなかった。彼女の食生活は完璧だったんだ」
「はあ…」
「それから、向こうに大きな振子時計があるの、分かる?」
「向こうの、あれでっか」
「あれはドクター・チイタッタという人の時計だよ」
「チイタッタゆうたら、ターザン栄養学で有名なアメリカの先生でおまんな?」
「えっ? ドクター・チイタッタを知ってるの?」
「知り合いに松宮園生いう変なやつがいてまんねん。その変なやつがチイタッタ先生、チイタッタ先生といつもやかましゅうて」
「へえ、そうなんだ。ドクター・チイタッタの時計はね、まだ2分しか針が動いていない」
「2分」
「要するに、今まで2回だけ、メタボな食事をしたことがあるってこと。あとは全部、立派な食事をしている」
「わてには真似できまへんわ」
「大丈夫。メタボ地獄に行ったらできるようになるから」
「ひー」
「そっか、おじさんは松宮園生の知り合いなんだね」天使が言いました。
「そうでんねん。恥ずかしうて言わんでおこう思っとったんやけど」
「その気持ち、わかるよ」
「そや。そういえば松宮園生の時計は、どれでっか?」
「うん、それがね」天使は言いました。「ここには、ないんだ」
「どこにありまんねん?」
「うん。近ごろは天国も温暖化しててね。神様のオフィスで、扇風機がわりになってる」
松宮園生です。
食育ロボは正式名称を
「アンドリュー77」
といいます。
日本食育大学のロバート・シトピッチャン教授
が開発し、玩具メーカーから発売されました。
少々、
「猟奇的な彼女」
タイプのロボットでしたので、そういう「プレイ」
が好きな人のあいだでヒットしたようです。
どのくらい「猟奇的」だったかについては
以下を参照。
「食育ロボ発進! 前編」
「食育ロボ発進! 後編」
◆◆◆
「なになに、食育ロボット? そりゃ便利なものができたなあ」
そう思ったのは地方自治体に勤める方々でした。
理由はこうです。
2005年に「食育基本法」が制定されました。
この法律により、自治体(県庁や市役所や町役場など)はそれぞれ独自に
「食育推進計画」
を立てることが決められています。
計画を立てたはいいですが、立てたら実行しなくてはなりません。
何を実行するかというと、
* 食育の教室
や
* 食育のイベント
などです。
こういうのは参加する側は「学ぶため・楽しむため」に来たりするわけで、もちろんそれでよいです。
が、開催する側はタイヘンです。
普段から人員不足で忙しいのに、食育までやりなさいと言われても人手が足りません。
ネコの手も借りたいです。
そんなところに、食育専門のロボットが発明されたわけですから、自治体の方々も大助かりというわけです。
さっそく購入し、
「食育料理教室」
の講師をやってもらうこととなりました。
名づけて
「地元の食材を食べよう。食育ロボット、アンドリュー先生のちょっぴりエスな料理教室(副題:ちょっぴりじゃないけど)」
◆◆◆
ところがです。
料理教室の当日の朝、トラブルがありました。
アンドリュー77が1人で開講準備をしていると、地元の食育ボランティア団体が文句を言いに教室までやって来たのです。
団体の代表と称する女性が、腕組みしてふんぞり返りながら言いました。
「あなたが食育ロボットね。わたくしは『食育の大切さを考える母の会』代表、佐久間象子です。管理栄養士です。管理栄養士であると同時に、栄養教諭の免許をもっており、フードコーディネーターの資格も持っています」
「管理栄養士であり、栄養教諭であり、フードコーディネーターでもある佐久間象子ですね」相槌をうつアンドリュー先生。
「それだけではありません。食育必死講座1級でもありますし、食育プリーチャーの資格も取っています」
「食育必死講座1級で、食育プリーチャーですか」
「それだけではありません。食育推進士試験はムラサキ合格しています」
「ムラサキ合格」
「ムラサキ合格が最上位です。次がキイロ合格。その次がアオ合格です」
「ムラサキ合格が最上位、次がキイロ合格、その次がアオ合格ですか」
「それだけではありません。炭水化物のソムリエでもあり、日本カルパッチョ協会認定カルパッチョ講師の免状も持っているのです」
「炭水化物のソムリエであり、カルパッチョ講師ですか」
「認定講師です。ただの講師ではありませんから」
「ただの講師ではなく、認定講師ですか」
「そうですよ」
「なるほど」とアンドリュー。「『食育の大切さを考える母の会』代表、管理栄養士、栄養教諭、フードコーディネーター、食育必死講座1級、食育プリーチャー、食育推進士ムラサキ合格、炭水化物のソムリエ、認定カルパッチョ講師の佐久間象子。その佐久間象子が何の御用ですか」
さすがロボット、記憶力は完璧です。
「何の御用ですか、ですって? 決まっているじゃありませんか。ロボットなんかに食育はできないと言いに来たんですよ」
「そうですか。言いに来たのですか。いま、佐久間象子は言いたいことを言いましたね。ということは、これで御用は終わりですか」
「なんですって」佐久間象子の腕に血管が浮き出ました。「あなた、誰にむかって話をしていると思ってるのかしら」
「『食育の大切さを考える母の会』代表、管理栄養士、栄養教諭、フードコーディネーター、食育必死講座1級、食育プリーチャー、食育推進士ムラサキ合格、炭水化物のソムリエ、認定カルパッチョ講師の佐久間象子にむかって話をしていると思っています」
佐久間象子の額から血がぴゅっと飛び出ました。「この出来そこないロボット! 市長に言いつけてやる。わたくしは市長とも話ができるんですからね。市長に話せば、あなたなんてすぐに潰されてしまいますわよ」
アンドリュー77の採用を決めたのはその市長さんなんですけど。
「ようするに佐久間象子はロボットが食育料理教室をするのを嫌っているわけですね?」と、アンドリュー。「いつの時代にも、機械化に反対する人はいます」
「食育の教室が機械化できるわけ、ないでしょう」
「確かに人間にしかできない食育教室はあります。しかしロボットで足りる食育教室だってあるのではないでしょうか」
「そんなの、あるわけありません」
「食育教室が終わったあとの生徒さんの感想を聞いてみてください。『あの先生、素晴らしかった。またあの先生に教わりたい』という感想をロボット講師が引き出すことはたしかに難しいです。人間にしかできません。でも『地元の野菜は美味しいね』という地産地消絶賛型リアクションを引き出すだけなら、わたしのようなロボットでもできます」
「ずいぶんな自信ねえ」
「地産地消を伝えるだけの教室ですから、ロボットでもできるのです。その証拠に、人間が講師をやってもギャラは安いでしょう。ギャラが安いということは、難易度が低いということです」
「あなた、よくもそんなことをヌケヌケと」
理屈で攻められ、いきりたつ佐久間象子。
一触即発の危機です。
映画「エイリアン vs プレデター」を連想したあなた。
その連想はまともです。
どっちが勝っても、人類に未来はたぶんない。
「ちょっとあなた、逃げるるのですか?」
佐久間象子を無視してふたたび料理教室の準備をはじめたアンドリューに対し、無視された佐久間象子が吠えました。
アンドリューは聞こえたのか聞こえていなかったのか、食材の数を数えたりしています。
「まあ。返事もしないなんて。何ですか、あなたは」
「何ですかと言われても困りますが、食育ロボット、アンドリュー77です」
「そんなことは分かっていますよ。なんでロボット風情のあなたがここにいるかと聞いているのです」
「ここで親子料理教室を開くのです。『野菜オムレツのカレー風味』をみんなで作るのです。あなたも参加しますか。2000円です」
「プロのわたしが参加するわけ、ないでしょう。わたしは管理栄養士、栄養教諭、フードコーディネーター、食育必死講座1級、食育プリーチャー、食育推進士ムラサキ合格、炭水化物のソムリエ、認定カルパッチョ講師なのですよ」
「それは知っています。さきほど伺いましたので」
「口の減らないロボットですわね。いったい何様のつもりなのですか」
「食育ロボット、アンドリュー77です。それより、御用がお済みなら帰っていただけませんか? 準備がたてこんでいるのです」
「そうじゃなくて!」佐久間象子はわなわなと震えだしました。「あなたなんかに食育はできないんですったら。食育ならわたくしがやります」
「他人の食育を妨害するつもりはありません。ですので、お構いなくご自由に食育をなさってはいかがですか?」
「食育はわたくしの領域なんです! わたくし以外の者がこの町で食育をすることは許しません。あなたはさっさと片付けて帰りなさい。あとはわたくしがやります」
アンドリューは初めて、佐久間象子の顔をまじまじと見ました。
「なるほど、人間の心理は複雑なものですね。そうですか。あなたはこの町の食育を独占したかったわけですね」
「そんなことは言ってないでしょう!」と佐久間象子。頭が熱を帯びているのか、上空の空気が揺らいでいます。「わたくしが言いたいのは…」
「見苦しいわよ、佐久間さん」
背後から声がしました。
年配の小柄な女性が立っていました。
「谷口先生…」佐久間象子がつぶやきました。「先生、どうしてここに…」
「佐久間さん。今日のところはわたしたちの負けです。いったん退却しましょう」
うなだれる佐久間象子。
谷口先生と呼ばれた謎の年配の女性は、アンドリューにむかって静かに言いました。
「アンドリューとやら。これだけは言っておきますよ。わたしたちに刃向って無事だった人はいないのです。よく覚えておきなさい」
立ち去る谷口先生。
「わたしたちを甘く見るんじゃないわよ」
捨て台詞を残し、それまでうなだれていた佐久間象子も谷口先生の後を追って去ってゆきました。
(以下次号)