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マツミヤ倶楽部

2007.06.24 00:04

呪いのバナナ その5


食育の世界でなにかしてみたい人、活躍してみたい人、必見!
人気「野菜ソムリエ」と「プロダクション・チーフ」が
食育の世界にご案内します。

◆◆◆

チーフの松宮園生です。

前回までのあらすじ)
バナナのムロ会社を買収しようと暗躍するテケテケ商事。腕利きのスパイ松宮園生の魔の手が、ムロ会社に迫る。大丈夫かムロ会社?
テケテケ商事の陰謀を防ぐため、メキマンが横浜に上陸。
テケテケ商事では、その知らせに怯えて大勢の社員が逃亡。残った数少ない社員でメキマンとの対決に挑む。

そんななか、僕の携帯にメキマンからメールが来ました…。

◆◆◆

メールをもらって驚きましたが、無視するわけにもいかない気がしたので、返事を書くことにしました。
「メキマン様。毎度お世話になりありがとうございます。ご依頼の件、検討させていただきたいと思いますが、その前にいくつか確認をさせてください。
貴殿はどのような方なのですか?
貴殿について質問すると、皆が顔を赤らめてモジモジするのはなぜですか?
それなのに貴殿が近づくと皆が逃げてしまうのはなぜですか?
なぜ貴殿はテケテケ商事がキトキト物産を買収するのを防ぎたいのですか?

メキマンからの返事はありませんでした。
返事がないまま、僕は最終調査地、松山に到着してしまいました。

◆◆◆

バナナは世界中で大量消費される果物です。
毎日莫大な金額の取引が、世界各地で行われています。
それもあり、バナナの貿易ビジネスには陰謀の噂が絶えません。

たとえば南米のコロ×ビアもそうで、あの国のマフィアさん(さん付けしちゃいました。怖いので)の資金源は麻薬だけではありません。
かつて、そんなことを知らない僕のところにコロ×ビアの会社から電話がありました。

「お電話ありがとうございます。食育プロダクション株式会社(http://shokuiku-pro.com/)です」
「バナナ・シンジケートちゅー者なんやけど、社長さん、おるかな?」
「社長の松宮です」
「さっそくやけどコロ×ビア産のバナナなんやけど、国として本格的に日本に売りこみたい思いましてな。マーケティングのプランニングをまっつんにお願いしたいんや。ご褒美やけど、バナナ1年分でどやろか? ええ話やと思いますけどなあ」

バナナ1年分って、サルかオレは。
それにまっつんて誰のことだよ。その呼ばれかた、キライなんだよ。トラウマ持ってるし。

なめるな、と答えて電話を切ると、またかかってきました。
「さっきのは冗談や」バナナ・シンジケートと名乗る人物は言いました。「報酬は×××万円くらいでどや思てます。期間は1か月。如何でっしゃろ」

1か月仕事して×××万円。
金額が僕の怒りをかき消しました。

僕はその仕事を引き受けました。
「世界中からこんなにたくさんバナナが日本に輸入されているにも関わらず、いまさら自国のバナナを売り込みたいコロ×ビア政府のために、彼らのバナナを上手にPRする方法を考え、企画書を作る」
そういう仕事でした。

しかし、そんな難しい仕事をたった1人でやる自信はありません。
報酬が×××万円ということは、2名でチームを組んで報酬を折半しても良い金額です。
というわけで、僕は仲間を募ることにし、知り合いに話を持ちかけました。

するとその知り合いが言いました。「あんたそれヤバイよ」
「どういうこと?」
「あんたが受け取るお金、マフィアの資金洗浄とかに使われるんじゃないの?」
「まさか」
「気をつけたほうがいいよ。実はオレも何年か前にコロ×ビアのバナナ会社とつきあいがあってさ…。直接の商売はなかったんだが、縁があってコロ×ビアのバナナ農場を見学に行ったのさ。そしたら本国に入れなくてさ、近くの島で1週間も待たされたんだよ」
「どうして?」
「農場はマフィアが仕切っててさ、よそ者が来たら殺すと言い始めたらしい。バナナ会社のエージェントがあいだに立って、マフィアをなだめようとしていたそうだけど、うまくいかなかった。で、そのまま日本に帰ってきた」
「そんなことがあったんだ」
「オレが知ってたバナナ会社のエージェント、日本人だけど、その何日かあとに行方不明になったよ」
「ひぇー(←死語)」
「あの国には関わらないほうがいい。くわばらくわばら(←死語)」

話を聞いてすっかりビビってしまった僕は、その仕事を断ることにしました。

ところがです。その夜にバナナ・シンジケートのほうから電話がかかってきて、
「報酬、前金で払うたるわ。まっつんの口座に振り込んでおいたさかいに。期待してまっせ」
「ちょ、ちょっと。あの、じつはですね」
「金は払うたよ。しっかり頼んまっせ。逃げたら、あかんで」
電話が切れました。
機先を制された感じです。

気がついたら失禁してしました。

洗濯機を回し、床を掃除しながら僕は泣く泣く決心しました。
生きていたかったら、仕事しよう。
失禁して、かえって気持ちが落ち着いたようです。

いやまてよ。
生きていたかったら、仕事しよう。
これって、普通のことじゃん、よく考えたら。
恐怖で鼻水まみれになりながら、自分にツッコミを入れる松宮でした。

で、それから必死に仕事をしまして、企画書なんかも山のように作って彼らに渡し、1ヶ月後に契約は終了しました。
とりあえず無事に1か月がたったわけです。

あれから数年をビクビクしながら過ごしましたが、今のところバナナ・シンジケートから連絡もなく、刺客が送られてくることもなく、国税局やFBIやCIAに追われることもなく、まだ生きてます。
コロ×ビアのバナナも、たまにスーパーマーケットで見たりします。

◆◆◆

いやー、あの1か月間は生きた心地がしなかったなあ。
でも、あれから連絡がないということは、
「松宮の仕事(企画書)はあきまへんな。あんなアホに仕事頼むのは、もう止めときまひょ」
ということなのかもしれません。
それはそれで悔しい話です。
連絡がほしいのか、ほしくないのか、複雑な心境です。

松山の路面電車に乗りながらそんなことを思い出していると、携帯にメールが届きました。

差出人:メキマン

ようやくメキマンから返事が来たようです。

(以下次号)

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2007.06.23 03:44

ホットドッグとおばあさん


食育の世界でなにかしてみたい人、活躍してみたい人、必見!
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◆◆◆

チーフの松宮園生です。

早朝のアンカレッジ空港の出発ロビーでこれを書いてます。
(日記をアップするのはもっと後になると思いますが)

アラスカでいちばん大きな都市はアンカレッジです。

大きいつっても、人口30万人程度。
日本の都道府県の県庁所在地の人口ランキングにアンカレッジが「参戦」したら、48都市中、30位くらいです。
那覇市(沖縄県)とか盛岡市(岩手県)とかと同じくらいです。

人口30万人程度、つっても、アラスカ州全体の人口が60万人くらいですので、その半分がアンカレッジに住んでいることになります。
残りの30万人は、広大なアラスカの大地に「散らばって」います。

この散らばっている30万人にとって、アンカレッジは
「大都会」「人が多すぎて住みにくいところ」
なんだそうで。
アンカレッジの南数百キロのところににピーターズバーグという、住民が3000人の小さな町があるのですが(そんな町のくせに、生意気にも空港があってジェット機が離着陸します)、そこに住んでいる知り合いがこのあいだ、
「ここ(ピーターズバーグ)も人口が増えて住みにくくなったよ。すっかり都会になっちまった。そろそろ田舎に引っ越そうと思うんだけど」
てなことをほざいていました。

話を戻しますが、アンカレッジ空港で売っているホットドッグはまずい。
パンはぼそぼそしてるし、ソーセージもイマイチ。
うーむ。
これを書いている今は朝の6時半。
ほぼ白夜のせいで外は真昼のように明るいし、早朝だというのに空港ロビーは人だかりがしています(年配のカップルが多い)。
にも関わらず、カフェテリアとかはどこもまだ開いてなくて、唯一売っていたのがこのホットドッグでした。

というわけで、長年の悪友である流しの料理人ラザフォードから聞いたホットドッグの話を思い出したので紹介します。

◆◆◆

ラザフォード自身はアメリカ生まれですが、彼の母方の祖母はちょっと気取った感じのイギリス人でした。
祖母と孫の交流は年に2回くらいありました。
夏は祖母がアメリカを訪れてきましたし、冬はラザフォードがイギリスを訪問していました。

ラザフォードが10歳のころの夏。
事情は忘れましたが、祖母と2人でホットドッグを食べることになりました。

イギリス人である祖母は、ホットドッグを食べたことがありませんでした。
しかも彼女は、ホットドッグという名前から何やら勘違いをしていたらしく、
「犬を食べるなんて、野蛮な話だこと」
と眉をしかめて言っていたそうです。

それでも、アメリカ人の「伝統食」といわれているホットドッグを、いちどは経験しておこうと思ったのでしょう。
あまり浮かない顔をしながらも、ホットドッグを2つ買いました。
1つは孫のラザフォードの分、もう1つは自分の分です。

2人は公園のベンチに腰かけました。
自分のホットドッグの袋を開けたとたん、祖母の顔が赤くなりました。
彼女はラザフォードに言いました。
「あんたのホットドッグは、どこの肉だったの?」

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2007.06.20 21:47

ホケンシドー年代記 その1


食育の世界でなにかしてみたい人、活躍してみたい人、必見!
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◆◆◆

チーフの松宮園生です。

40歳以上の皆さんへ。
あと10か月です。

なにが10か月かというと。

あと10か月したら、皆さんのところに健康保険組合からたぶんこんな通達が来ます。
「○月×日に健康診断を行います。40歳以上の方は、全員かならず健康診断を受けましょう」

今までもそういう通達が来ていると思いますが、来年はもっと切羽つまった感じで、こういう通達が来ます。
「頼むから健康診断に来てくれ。キミが来てくれないと、オレたちが困ったことになるんだ」

なぜかというと、国の命令でこういうことが決まったからです。

あー。えへん。
全国 1600 のかわいい健康保険組合たちよ。
わたしは厚生労働省である。
ひざまずいてよ?く聞け。
日本はメタボ大国になりつつある。
アメリカやイギリスほどひどくはないが、このまま何もしなければ彼らの仲間入りだ。
なんとかせねばならん。
そこでだ。
諸君のところに加入している大勢の組合員、ようするに保険証を持ってる人たちのことだが、諸君の力で内臓脂肪を減らしてほしいのだ。
自分のところの組合員の内臓脂肪は、自分のところで責任を持て、ということだ。
メタボを減らした組合には、苦しゅうない、褒美をとらす。
メタボを減らせなかった組合には罰金を科す。
来年の4月から、このメタボ撲滅作戦を開始する。
以上である。
諸君の健闘を祈る。

「宇宙戦艦ヤマト」を知っている人は、ガミラスのデスラー総統が軍人を集めて演説しているところを想像してください。

デスラー総統(=厚生労働省)の言葉に、集まった軍人(=健康保険組合)のなかからざわめきが起きました。
(そんなこと急に言われたって、できっこねぇよ…)
(無理だよ…)
そんなささやきがあちこちで交わされます。

ひとりの軍人が立ちあがって言いました。
「総統陛下。いや、総統閣下。いや、総統殿下」
となりの軍人が慌てて耳打ちしました。「総統は閣下だよ。閣下」
「総統閣下。ご命令とあらば必死にやりますが、どのようにやればよろしいのでしょうか?」

デスラー総統は気を悪くしたようすもなく、答えました。
「うむ。そういう質問が出ることは予想しておった。では教えてしんぜよう。まず、加入している組合員全員に健康診断を受けさせるのだ」
「閣下、それは今までもやっておりますが…」
「そうではない。『特定検診』という名前のついた、メタボ専門の健康診断をするのだ」
「はあ…」
「40歳以上の者は、すべてこれを受けさせるのだ。全員だぞ、全員」
「閣下。ぜ、全員でありますか?」
「全員だ」

またもや軍人のあいだでざわめきが広がりました。

「しかし閣下。全員に受けさせるということは、その『特定検診』を受けなかった個人は命令違反で射殺してもよいのでしょうか?」
「ばかもの」デスラー総統は言いました。「射殺してよいわけがなかろう。『特定検診』を受けるか受けないかは、本人の自由だ」

さっきよりはるかに大きなざわめきが起きました。
(意味が分からん…)
(全員に受けろと言っておきながら、受ける受けないは自由? どういうことだ…?)

デスラー総統はざわめきが収まるのを辛抱強く待ち、それから言いました。
「受ける受けないは個人の自由だ。ガミラス憲法により、個人の自由は保証されている。しかし健康保険組合である諸君は、全員が進んで受けるように、あらゆる努力をせねばならん。そういう意味だ」

今度は、その場がしん、と静まりかえりました。

デスラー総統は続けました。
「まだ先があるぞ、諸君。『特定検診』を受けてメタボだと判明した者がいたとしよう。おそらく、全体の何割かはメタボに違いない。メタボ人間が見つかったら、保健指導をするのだ」
「ほ、保健指導とはなんでありますか、閣下?」さっきとは別の軍人が立ちあがって言いました。「今までそんなことはやったことがありません、閣下」
「ではこれから研究したまえ。保健指導とは、メタボ人間を相手に食育をしたり、運動させたりすることだ。生活トレーナーと言ってもよい。この指導のことを『特定保健指導』と呼ぶことにする。諸君は『特定保健指導』のプログラムを作り、メタボ人間にそれをやらせるのだ」

(そんなこと急に言われたって、できっこねぇよ…)
(無理だよ…)
軍人たちはそう思いましたが、声にすることはできませんでした。

また別の軍人が立ち上がりました。「閣下。そのメタボ人間たちですが…。素直に保健指導を受けるとは思えません。『特定保健指導』のプログラムを嫌がった場合は、命令違反で射殺してもよいのでしょうか?」
デスラー総統はその軍人をジロリとにらみましたが、声はおだやかでした。「射殺はならん。プログラムを受けるかどうかも個人の自由だ。ガミラス憲法により、個人の自由は保証されている。しかし健康保険組合である諸君は、全員が進んで受けるように、あらゆる努力をせねばならん」
「し、しかし閣下。その努力もむなしく、メタボ人間がプログラムを拒んだ場合は…」
「その場合は、諸君に罰を下す。処刑はせぬが、罰金を科す」

その言葉に、立ちあがっていた軍人は気を失って倒れてしまいました。

「たとえて言うなら」デスラー総統の声が強まりました。「諸君は学習塾と同じだ。塾生が受験戦争に勝てば、諸君の評判は上がる。だが受験に失敗したら、諸君もただでは済まない。学習塾である諸君は、塾生の合格率を上げるために、あらゆる努力をせねばならん。よいか、メタボ対策は諸君の手にゆだねられている。作戦開始は来年の4月だ。健闘を祈る!」
演説を終えたデスラー総統は、満足げにその場を去っていきました。

残された1600人の軍人(=健康保険組合)はしばらくのあいだ、呆然としていました。
「全員に検診を受けさせろだと? どうやったらそんなことができるんだ?」
「メタボ人間は全員、食育だと? 保健指導だと? そんなの、やったことないぞ…」

不安そうに言葉を交わす軍人たち。

彼らがデスラー総統の宮殿からぞろぞろと外に出てくるのを、待ち構えている集団がありました。
何百人という集団です。
その何百人が、わらわらといっせいに軍人たちのところに駆け寄ってきました。
ほとんど目立ちませんが、松宮園生の地味な姿も、そのなかにありました。

「うわー。なんだこいつらは」
パニクる軍人たち。いやほんと、この集団はいったい何なのでしょうか?

(以下次号)

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2007.06.19 21:47

ナチュロパシー


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◆◆◆

チーフの松宮園生です。

アメリカにはナチュロパシック・ドクターという専門家がいます。
食育と東洋医学を足したような領域のお医者さんです。
ナチュロパシック・ドクターについての詳しい説明はここをクリック。

シアトルにバスティーア大学という有名な大学があります。
ナチュロパシック・ドクターになりたい人が通う大学です。
日本人留学生もちらほらいます。

友人の1人、ドクター・ヨロオネが2年前、念願のナチュロパシック・ドクターのライセンス試験に合格し、昨年開業しました。

ナチュロパシック・ドクターのところに来るのは、
「病気を治したいが、西洋医学には頼りたくない人」
「病気ではないが、専門家の力を借りて病気予防をしたい人」
こんな人たちです。

ある日、
ターザン栄養学の大家チイタッタ先生(メディカル・ドクター)
ヨロオネ先生(新進気鋭のナチュロパシック・ドクター)
松宮園生(バウムクーヘン野郎)
3人で食事をしました。

食事中、チイタッタ先生は
「誰にどういう口実でここの食事代を払わせるか」
を考えていました。
ホントにそう考えていたかどうかは本人じゃないので分かりませんが、そうに決まっています。

その証拠に彼は一計を案じ、食後のデザートが終わったあたりでヨロオネ先生にこんな提案をしました。
「なあヨロオネ先生。今まで診たクライアント(=患者)のなかで、もっとも風変りなケースを比べてみないか。ただし、治った話だけだ。で、相手より風変りな患者の話をしたほうが勝ちだ。負けたほうは、勝ったほうの食事代を払う。審判は、マツミヤ、お前がやれ」
で、そういうことになりました。

先攻はチイタッタ先生でした。
彼は、ネスレという大企業と契約をしていたころの出来事を話しました。
その話は一度書いているので、ここでは省きます。
(その話について知りたい人は、ここをクリック)

チイタッタ先生の話に大笑いしたあと、今度はヨロオネ先生の番でした。
ヨロオネ先生は話しはじめました。

◆◆◆

ヨロオネ先生の診察室に、派手な格好の年配の女性がやってきました。

「今日はどうしましたか、ミセス・メープル?」患者に安心してもらうため、優しく話すヨロオネ先生。
「オナラがでるのよ、先生」と、ミセス・メープル。「オナラが出るんです」
「人間なら誰でもオナラくらいしますよ」
「わたしの場合は、1分に1度、オナラがでるのよ。1分に1度ですよ。昨日の朝からずっとこんな感じで」
「そうでしたか。それはお困りでしょう」
「ホントですよ。理由は分からないんですが、音も匂いもしないのがせめてもの救いですわ。これで音や匂いがしようものなら、恥ずかしくて外出できませんもの」
「はあ」
「なんとかしてください先生。オナラが出続けるなんて情けなくて、情けなくて」
「分かりました」ヨロオネ先生は何種類かの薬草を混ぜ合わせる処方箋を書き、ミセス・メープルに渡しました。「バスティーア大学の付属薬局にこれを渡してください。ハーブのサプリメントを処方しておきました。3日たったらまた来てください」

3日後、ミセス・メープルが眉をつりあげて診察室に入ってきました。

「先生。先生の処方したサプリメントを飲みましたよ。そしたら症状が悪化したじゃないですか」
「悪化しましたか?」
「そうですよ。オナラは相変わらず続いてます。1分に1度、出てます」ミセス・メープルはメガネの奥からヨロオネ先生をにらみつけました。「悪化したように見えるのは好転反応です、なんて怪しいことを言うんじゃないでしょうね」
「どう悪化したんですか?」
「音が出るようになったんですよ、今朝から。昨日まで音がしなかったのに。音が出るんですよ。どうしてくれるんですか。医療ミスですか」
「そうですか。それは良かった」
「なんですって?」
「ミセス・メープル。これであなたの耳は治りました」ヨロオネ先生は言いました。「次はあなたの鼻を治すハーブを処方しておきましょう」

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2007.06.18 22:33

バウムクーヘン宣言 その5


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◆◆◆

チーフの松宮園生です。

前回までのあらすじ)
「丸投げ鵜呑み」のアグリドラゴン。しかもそのツケが入社初日の葉竹さんのところに回ってきました。
葉竹さんはいきなりクレーム処理におおわらわ。
どうやら事件の背後には、怪しげなコンサルタントがいることが分かりました。
「丸投げ鵜呑み」もイカンけど、そこにつけこむコンサルタントもイカン。
コンサルタントをどやしつけようと考えた葉竹さん、コンサルタントを呼びつけます。
あらわれた相手をみてびっくり仰天。
なんとそやつは、30年来の仇敵、宿命のライバルありました。

◆◆◆

「き、貴様か!」
お互いを指さして叫ぶ2人の男。
その場の気温が5度、上昇しました。
周囲の若者たちが、「なにが起こったんだ」と目を白黒させています。

最初に攻撃をしかけたのは葉竹さんでした。
「やいてめえ」葉竹さんは言いました。「相手が素人だと思ってなめたマネしやがったな。このオレが来たからにゃあ、てめえの思うようにはさせねえぞ」
「なに言ってやんでい」コンサルタントも負けずに言い返します。「少しでも安い野菜を持ってきてやろうと思った親心よ。人の好意はありがたく頂戴しやがれ」
「親心だと? 好意だと? てめえの脳みそのどこに親心だの好意だのがあるんでい。おかしくてヘソが茶をわかすわ(←死語)」
「ヘソが茶をわかすだと? けっ。やってみやがれ、この田舎もんが」
「やってやろうじゃねえの」(←やるの?)

お茶といえば、妙にドンピシャのタイミングで、若くてきれいな女性社員がお茶を持ってきました。

「おう、ありがとよ。別嬪さんだねえ」コンサルタントはうれしそうに言い、お茶をひとくちすすりました。
ずずず。
「おめえも茶、飲めよ」

「言われんでも飲むわい」
葉竹さんも、お茶をすすりました。
ずずずずずず。

なんだか間延びしたケンカです。

◆◆◆

彼らがお茶をすすっているあいだに、ちょっと解説しましょう。

このコンサルタントは多賀安秀夫という名前で、農業の世界では知る人ぞ知る人物です。
葉竹さんも同様に、知る人ぞ知る人物です。
知名度は、だいたい同じくらいでしょう。

葉竹さんが九州出身、多賀安氏が東北出身であるため、
「北の多賀安、南の葉竹」
と僕は勝手に呼んでいます。

この2人、じつは同じ△▽大学の出身です。
△▽大学といえば、名の知れた大学です。

同じ農学部の、しかも同学年でした。
受験に1度失敗し、浪人していた点も、共通しています。

このころから、2人はいがみ合っていました。
卒業してもいがみ合いは続き、2人とも農業コンサルタントの世界に身を投じたものだからたまりません。
どこにいっても衝突していました。
女性をめぐっていがみ合うこともあったと聞いていますが、真偽の程はわかりません。

じつはこのいがみ合い、かなり大勢の農家さんを巻き込んだ「勢力争い」になっています。
「葉竹とつきあう農家は、農家じゃねえ」
「多賀安に味方する農家は、ぜんぶ敵だ」
などとお互いのグループで吹いてまわるものですから、肥料メーカーや農薬メーカーも巻き込まれてしまい、あっちの陣営と商売したらこっちの陣営から嫌われる、なんてことになっています。

いがみ合いに「参戦」しているのは年配の農家さんが多く、
どっちでもいいじゃんよー。とにかく仕事してくれよー。
若い農家さんの本音はこうでした。

なぜそんな昔からいがみ合っているのでしょうか?
それには深いわけがありました。

話は1970年代にさかのぼります。

(以下次号)

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