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食育の世界でなにかしてみたい人、活躍してみたい人、必見!
人気「野菜ソムリエ」と「プロダクション・チーフ」が
食育の世界にご案内します。
◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回のあらすじ)
人間の健康維持に欠かせないミネラルのひとつ、カリウム。そのカリウムは、もとをただせばカナダの地下1000メートル深くに眠る巨大なカリウム鉱脈から来ているものだった。
流しの料理人ラザフォードは、そのカリウム採掘キャンプにあるレストランで働きはじめる。そこにはなんと「オーガニックは御法度」という不思議なルールがあった。
◆◆◆
採掘キャンプはちょっとした地下都市のようになっていました。
商店街のようなところもあり、ラザフォードのレストランもそこにあります。
キャンプとはいいながら、普通に商品を売ったり買ったりの「経済活動」が行われていました。
ちなみに使われている通貨はカナダドルです。
カナダドルは、貿易にたずさわる日本人のあいだでは
「キャンドル」
と呼ばれています。
俗称ですね。
アメリカのドルのことを米ドル(ベイドル)と呼んだりするのと同じです。
ろうそくの「キャンドル」とはイントネーションが違っていまして、
ろうそくのほうは「キャン」のところにアクセントを置きます。
これに対し、カナダドルのほうはどこにもアクセントを置かず、平坦な口調で発音します。
カリウムのキャンプ一帯はトンネル状の坑道で結ばれ、人々はクルマで移動しています。
複雑に繋がったり延びたりしている坑道の随所に、採掘マン(文法的に正しくは採掘メン)が住居を構えていました。
キャンプ全体の人口は2200人だったそうです。
太陽に縁のないところです。
最近は少しずつ光ファイバーによる採光システムが導入されつつあるようですが、ラザフォードがいたころは普通の電灯が坑道や商店街を照らしていました。
坑道のところどころに
「もっと光を」
というスプレーの落書きがありましたが、これはゲーテの最期の言葉を借用したものです。
地下は温度の高いところでもあります。
通常、地面を100メートル掘るごとに摂氏で3度、熱くなるそうです。1000メートルの深さにあるカリウム・キャンプは、60度ちかい温度になります。
ですのでエアコンは思い切り動いていますし、地上の空気を取り入れるための空気循環システムもフル稼働です。
圧力の問題も無視できません。
地下に降りれば降りるほど気圧が上がります。
まあこれは人間のほうが慣れるしかないのですが。
エレベーターなどは昇降スピードが速すぎないように配慮されていますし、わざと乗り換えを多くしています。
気圧の変化に体を慣らすためです。
圧力で怖いのは気圧よりも地面そのものの重さです。
もの凄い重量がかかっていますので、いつ坑道が潰れてぺしゃんこになるか分かりません。潰れるのは一瞬です。
坑道が潰れなくても、温泉やら天然ガスなんかが突然噴き出したら、これもキャンプ滅亡です。
だれひとり助からないでしょう。
ま、場所がら温泉だの天然ガスだのが出る確率はゼロに近いですが。
そんなところでラザフォードはレストランを開いていたのでした。
だいぶ稼いだはずです。
◆◆◆
カリウムは農作物の成長に欠かせない要素ですし、クドイですけど人間のカラダにとっても不可欠なものです。
しかしそれとは別に、工業用原料としてのカリウム需要というのがありまして、世界各地の工場で塩化カリウムが大量に消費されています。
錫(すず)や金のようなミネラルは(こいつらもミネラルの仲間です)、単独で存在しているケースがほとんどです。
「水酸化錫」
みたいなもの(化合物)はめったにありません。
「塩化金」
に至っては、まず皆無です。皆無どころか、作ろうとしてもなかなか作れません。
逆にカリウムとかナトリウムとかは、ほとんどの場合、
「塩化ナトリウム(食塩のこと)」
「水酸化カリウム」
みたいに、化合物として存在しています。
錫や金と正反対で、単独で存在することはまずありません。
つまり、カリウム鉱脈と言っているのは、単独のカリウムが固まっているのではなく、
「?化カリウム」
という形(化合物)で固まっているのです。
地下1000メートルの採掘キャンプで掘り出された「?化カリウム」は、そのまま地上に運ばれ、精製されます。
「精製」とは、いろんなものが混ざっているカリウム鉱石から、混じりけ無しの純粋な
「塩化カリウム」
や
「水酸化カリウム」
などを取り出すことです。
このときうまく精製できたものは、工業用原料になります。
じゅうぶんに精製できず、混ぜ物が残ってしまったものは肥料の材料になるのです。
◆◆◆
またまたアラスカのメトラカトラに場面を移します。
「そこまでは分かったよ」僕は言いました。「で、オーガニック禁止の話はどうなったの」
「慌てんなよ」ラザフォードはまたコーヒーをおかわりしました。「その話をするためにだな、あらかじめ塩化カリウムの精製の話をしとかなくちゃいかんのだ」
というわけで、オーガニック御法度の話は次回に持ち越しです。みなさんごめんなさい。
(以下次号)
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
日本・韓国・アメリカは何だかんだ言って政治的な価値観を共有している3国です。
この3国の、「食育」「保健指導」事情をカンタンに比べてみました。
(「食育」と「保健指導」は違う意味の言葉ですが、ここでは「健康増進の方法」という観点から同じように扱いたいと思います)
「食育」や「保健指導」という考え方がもっとも早くから一般に普及したのはアメリカです。
1977年に「マクガバン・レポート」と呼ばれる報告書が発表されて以来、アメリカでは食育や保健指導に関する法律が次々と整えられ、また民間企業が事業として積極的に取り組むようにもなっています。
重要なのは、これまで多くの企業が食育や保健指導に取り組んだ結果、
多くの成功
多くの失敗
を経験しているという点です。
その結果、
「どうしたら成功するのか、どうしたら失敗するのか」
の知識が蓄えられています。
日本はどうかというと、「食育」という言葉じたいは明治時代にすでに一部の専門家が使っていた記録がありますので、その意味ではアメリカよりも早かったといえます。
しかし当時の食育はまったく普及せず、成功の秘訣や失敗を防ぐノウハウなどが蓄積されるようなことはありませんでした。
その後100年のブランクがあり、近年になって「食育」という言葉があらためて注目されるようになりました。
2000年に「健康日本21」が発表され、
2005年に「食育基本法」が制定され、
2008年(来年)には特定保健指導の制度がスタートします。
「食育」「保健指導」の成功例・失敗例がこれからどんどん蓄えられていくことでしょう。
お隣の韓国はどうなっているでしょうか?
韓国は「伝統的な薬膳料理の国」として最近注目されています。
しかし国民の平均的な食生活の実態はわれわれが抱くイメージとは異なり、日本と同様に西洋化がどんどん進んでいます。
たとえば、韓国の青少年の4割以上は、ハンバーガー・インスタントラーメンといったファーストフード・加工食品を週3回以上食べています。
このように国民の食生活がどんどん西洋化してきているにも関わらず、まだ韓国では「食育」に該当するような活動はほとんど行われていません。
ただ、2005年に日本が「食育基本法」を定めたというニュースは韓国でも話題になったようで、
「韓国も食育に力を入れるべきだ」
という意見がぼちぼち出てくるようになりました。
このように、「食育」「保健指導」といった分野のノウハウがどのくらい進んでいるか、という切り口で言うと、大雑把には
アメリカ > 日本 > 韓国
といった進み具合だと思われます。
これはあくまで技術的なノウハウの蓄積という意味です。
もともとの食文化を比較するものではありません、念のため。
今回はここまで。
次回は、「韓国のゴルゴ13 イムさん」の話をします。
食育の世界でなにかしてみたい人、活躍してみたい人、必見!
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
(前回のあらすじ)
1600人の軍人(=1600の健康保険組合)に対し、デスラー総統(=厚生労働省)から命令が下りました。
「特定検診」と「特定保健指導」を実施せよ、任務に失敗したら罰金ぞ。
という恐ろしい命令でした。
すっかり途方に暮れる軍人たちの前に、謎の集団が現れました…。
◆◆◆
集団はイナゴの大群のように、軍人(健康保険組合)に襲いかかります。
「特定検診はわが社にお任せを」
「保健指導はぜひわが社に発注を」
口々に叫ぶイナゴたち。
松宮園生も仕事が欲しかったのですが、もともと競争に慣れていないのと、
(ここでわめき散らしても仕事にはならんなあ)
と思ったのもあり、声を張り上げるのをサボっていました。
ただ、自分だけ白けていると同業者から何を言われるかわからないので、口パク(くちぱく)だけは、やりました。
その場はひとしきり伊○丹のバーゲンセールみたいな様相を呈していましたが、イナゴのやかましさに辟易したのでしょう、軍人のひとりがとうとう、
「あーウルサイ! おれたちは聖徳太子じゃないんだ。一人ずつ順番に喋れ!」
と叫びました。
へー。ガミラスにも聖徳太子っていたんだ。
いずれにせよ、イナゴたちはその一声でおとなしくなりました。
集団のなかから、比較的落ち着いた感じの女性が進み出ます。
「みっともないところをお見せして失礼しました。私どもは保健指導専門の武器商人の集まりで、アウトソーサー連合と申します」
「なんだその、大リーグ選手みたいな名前は?」
「それはサミー・ソーサ選手のことでございます。しかも彼はソーサです。ソーサーではありません。サミー・ソーサのサは伸ばさないのです」
女性は穏やかに、しかし間髪を入れずに知的なツッコミ。
「おお、そうか」赤面する軍人。
「私どもはアウトソーサーです。アウトソーサーというのは、『業務委託を受ける下請け』という意味です。つまり、私どもは皆様のしもべでございます。デスラー総統から難しいご命令が下ったと耳にしております。ぜひ、皆様のお手伝いをしたいと思ってやって参りました」
「こんなに大勢で、か?」
「私だけでご挨拶に参ろうとしたのですが、他の者も来たがりまして」その声には、迷惑そうな響きが少し、含まれていました。
「おれたちが困っているのにつけこもうというわけだな」と、別の軍人がいいました。
女性は落ち着き払って答えました。「つけこもうとしているのか、お役に立とうとしているのかは、私どもの話をお聞きになってから、お決めいただきとうございます」
「わかったよ」別の軍人がいいました。「で、あんたは代表者かい。おれたちはあんたと話せばいいのかい」
女性が「そうです」と答えようとした瞬間、集団がまた騒ぎだしました。
「わが社の話も聞いてください!」
「ぜひわが社にブレゼンさせてください!」
口々に叫びはじめました。
いつまでたっても収拾がつきません。
その様子に軍人たちはげんなりした表情を見せました。
しかし、デスラー総統の命令を実行するには、この連中に頼らなくてはならないのも事実です。
そのうち、軍人たちと武器商人たちは、思い思いに無秩序に名刺交換を始めます。
運のいい武器商人は商談の約束をすることができたようですし、そうでない商人も大勢いました。
◆◆◆
健康保険組合を軍人にたとえましたので、彼らにサービスを買ってもらいたいアウトソーサーたちは武器商人というたとえになります。
彼ら武器商人は何を売るのかというと、例えば、
「検診の結果(何万人、何十万人分)を記録するデータベースや解析ソフト」
「1対1の保健指導面談ができるカウンセラーみたいな人材」
「メタボ人間むけ体質改善レシピブック」
「メタボ人間に使ってもらう健康小道具。例えば生活習慣測定器とか体脂肪計」
「メタボ人間に参加してもらう健康イベント。例えば、ガミラス星を歩け歩け大会とか、みんなでやろう朝のラジオ太極拳」
「生活習慣病を予防するためのセミナー」
「スポーツジムでの、メタボ撲滅トレーニングメニュー」
「毎日の食事をデジカメで撮影し、画像をクリニックに送ったらクリニックからアドバイスがもらえるサービス」
「カスタムメイドのサプリメントを選ぶサービス」
「温泉(ただし爆発しない)を活用したストレス癒しメニュー」
こんなものを開発し、ひとつの「健康プログラム」にまとめあげ、武器として売るわけです。
効果的な武器を上手に有機的に組み合わせることができれば、立派な「戦略兵器」になります。
そうでないものは、ただの武器の集合体に過ぎません。
しかしほとんどの武器商人(=アウトソーサー)は、
「武器を上手に組み合わせて戦略兵器にする」
ことができませんでした。
というか、「戦略兵器」という概念がまったくありませんでした。
手近な適当な武器を集めて売ろうとしているだけだったのです。
例えばある武器商人は、たまたま知っている
「リンボーダンス振興協議会」
なる団体と組み、
「リンボーダンスを週に3回行い、管理栄養士▽※先生の考えた食事メニューに従って食べ、内臓脂肪を落とすプログラム」
を作りました。
それをある軍人(健康保険組合)にブレゼンしたわけです。
すると、相手はこんなことを言いました。
「リンボーダンスが体に悪くないのは何となくわかるし、管理栄養士の▽※先生のメニューが良さそうなのも確かにそんな気はするよ。でもさ、いろいろある中からリンボーダンスを選ぶ理由は何なの? 阿波おどりじゃ、ダメなのかい。食事メニューもさ、あんたは▽※先生のメニューを勧めるけど、☆△先生のメニューじゃ、だめなの?」
こんな厳しい(でもまともな)質問を受けて答えられず、凹んでしまいました。
正確にいうと、
「リンボーダンスの素晴らしさ」
「管理栄養士▽※先生のメニューの素晴らしさ」
は説明できたのですが、
「じゃあリンボーダンスは阿波おどりより優れているのか?」
「管理栄養士▽※先生のメニューは、☆△先生のメニューより優れているのか?」
には答えられなかったのです。
実際、同じ軍人のところに
「週に3回の阿波おどり、プラス、管理栄養士☆△先生の考えた食事メニュー」
という提案が、別の武器商人(=アウトソーサー)から出されていたのです。
その武器商人は、たまたま知り合いが役員をしている
「全国阿波おどり普及協会」
と提携していました。
リンボーダンスに阿波おどり。
うーむ。
なんつーか、何だって工夫すれば健康プログラムになってしまう感じだな。
「1日の半分を逆立ちで過ごすプログラム」とかテキトーに作れそうだな。
いいのか、そんなことで?
で、気の毒な健康保険組合さんたちは、
「リンボーダンスをとるか阿波おどりをとるか」
「▽※先生をとるか☆△先生をとるか」
を自分で決めなくてはならないハメに、陥りました。
「困った」全国の健康保険組合からボヤキが漏れました。「どのサービスを導入するか決めなくてはならないのに、決められない…」
「仕方ない、サイコロを振って決めよう」
「美人の営業マンがいるほうにしよう」
「見た目の値段が安いほうを選ぼう」
うーむ。
◆◆◆
デスラー総統が
特定検診
特定保健指導
の大号令を発表した数日後、松宮園生は仕事の都合でイスカンダルに引越をしました。
「宇宙戦艦ヤマト」を見ていらい、いつかは行きたいと思っていた憧れの星イスカンダル。
そこで彼が見たものは…。
数々の「戦略兵器」が蓄えられた保健指導先進国、イスカンダルの華麗な姿でした。
(以下次号)
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チーフの松宮園生です。
僕は大和男児ではありますが、しぶしぶとはいえ一時的にアメリカに住んでいるので、どこか
「アメリカかぶれ」
の部分がいろいろあると思います。
世の中には
「ヨーロッパかぶれ」
の人もいます。
ラザフォードではないけど、日本人で「流しの料理人」をしている人と出会ったことがあります。
場所は東京で開かれた、どこかの食関係のパーティだったと思います。細かいところは忘れました。
その人は、世界のあちこちにでかけてさまざまな食材を口にして、帰国すると講演会をしたり出張料理教室をしたりしているのだそうです。
なんだかピリピリしている雰囲気の人でした。
目が怒っているのです。
なんで怒っているのかなー。
恐る恐る会話をしてみると、
「こんなくだらないパーティは不愉快だ」
ということでした。
(じゃあ、無理にいなくても、帰ればいいじゃん)
そう思いましたが、言うと暴れそうだったので言いませんでした。
その人、僕より頭ひとつ背が高かったし。
パーティが不愉快だったら、ふつう帰りますよね。
主催者じゃない限り、居残る義理はないわけだし。
でもその「流しの料理人」、苦虫をかみつぶしたような表情をしながら、いつまでもポツンとそこにいました。
不思議に思って恐る恐る会話を再開してみると、どうやら彼はこのパーティだけが不愉快なわけではないらしく、日本の食環境全体に対して不快感を抱いているらしいことが分かりました。
それを主張したいのに誰も聞いてくれないので、このパーティはくだらない、ということになったようです。
なにを主張したいかというと、たとえば、
「食料を海外から輸入しないと生きられない日本人は、馬鹿だ。もっと地元の食べ物を食え」
てなことを、おっしゃっておりました。
次に、
「自分は世界中の食材を食べた。ヨーロッパの有機農産物は素晴らしい。それに比べて日本の有機農産物のマズイことといったら、腹が立つ。日本では料理をする気にならない」
こんなことも仰せになりました。
同じ有機農産物なのに、どう違うのかと聞くと、
「ヨーロッパの有機野菜は味が濃く、深い。日本のは味が薄く、深みがない」
のだそうです。
その違いはどこから来ているのかと聞くと、
「ヨーロッパの土壌は固い。固い土地で固いまま農業をするので、野菜も鍛えられる。ヨーロッパの農家は野菜を厳しく育てるので、有機肥料をやりすぎたり、水をやりすぎたりしない。だから野菜が鍛えられ、濃く深い味になるのだ」
これに対して、
「日本の土壌は柔らかい。さらに農家がせっせと土壌改良をして柔らかくしている。ふわふわの土が素晴らしいと思っている。そんなところで育てた野菜は甘っちょろい。だから薄味で深みが出ない」
のだそうです。
「ああそうでしたか。よくご存じの方なんですねえ。よい方に出会えて、大変勉強になります」弱気な僕は丁寧にヨイショしました。「日本がヨーロッパのような美味しい有機農産物を作ろうと思ったら、土を固くすることが大事なんですね?」
するとその人はふふんと鼻を鳴らして「無理だよあんた。日本の土ではヨーロッパのような味の農産物はできないね」
「じゃあ、どうしたら?」
「美味しい野菜を食べたかったら、ヨーロッパに食べに行くか、ヨーロッパから輸入しなきゃダメだよ。日本はもっと、ヨーロッパの農産物を輸入するべきだ。そうしたら、自分も日本で料理をしようという気になれる」
「なるほど、日本はもっとヨーロッパの野菜を輸入するべきなんですね」弱気な僕は丁寧に言いました。「でもさっきあなたは、食料を海外から輸入しないと生きられない日本人は馬鹿だ、もっと地元の食べ物を食え、とおっしゃっていましたが…」
するとその人は顔を真っ赤にして、
「自分の言いたいことはそういうことじゃないんだ。分からん奴だな」
と怒りだしました。
◆◆◆
この「流しの料理人」、扱いにくい性格の人だなー、ということは別として、
「ヨーロッパの有機野菜は味が濃い。日本のは味が薄い」
というのはひょっとしたら事実なのかもしれません。
僕自身はヨーロッパの有機野菜を食べたことがないので、何ともいえませんが、
先日、僕を「バウムクーヘン野郎」と名づけた葉竹乃木夫さんからこんな話を聞きました。
レ○ル・マ○リードという有名なプロサッカーチームがスペインにありますね。
彼らがかつて来日したときのこと。
食事中に選手たちが、
「日本の野菜はイマイチおいしくない」
と言い始めました。
レ○ル・マ○リード専属の栄養士がそれを聞き、僕の師匠の葉竹乃木夫さんのところに相談がありました。
葉竹さんはレ○ルの選手が何を不満に思っているか知るために、インタビューをすることにしました。
レ○ルの選手はいいました。「もっと美味しい野菜を食べさせてくれ」
「美味しい野菜って、どんな野菜なわけ?」と、葉竹さん。
「そりゃ、オーガニック(有機)野菜だよ」
「ふーん。でもあんたら、オーガニック野菜とそうでない野菜の区別、つくんかい? 食べて分かるんかい?」
するとレ○ルの選手は目をまるくして言いました。
「えっ? あんたには分からないのかい?」
つまり、オーガニック野菜とそうでない野菜、レ○ルの選手には食べて違いが分かるということです。
しかも、
「えっ? あんたには分からないのかい?」
と驚いたということは、
「ふつう、食べたら誰だって違いがわかるだろ?」
という意味がこめられています。
皆さんはどうですか?
ブラインド・テスト(目隠しをして、テイスティングをする試験)で、有機野菜とそうでない野菜、区別できますか?
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◆◆◆
チーフの松宮園生です。
2000年に厚生労働省(実際には、当時はまだ『厚生省』だったと思います)は「健康日本21」という政策を発表しました。
国民のあいだで広く健康に対する意識を高めるために、国をあげてさまざまな活動を行う、というものです。
「健康日本21」のなかでは、「2010年の日本はこうでありたい」という目標が設定されています。
たとえばこうです。
メタボ男性の比率が15パーセント以下になっているといいなあ。
メタボ女性の比率を20パーセント以下になっているといいなあ。
メタボ小学生の比率が7パーセント以下になっているといいなあ。
みんなが塩分控えめで、1日あたりの塩分摂取量がひとり10グラム未満になっているといいなあ。
野菜を毎日ひとり350グラム以上食べるようになっているといいなあ。
朝ごはんを食べない大人が減っているといいなあ(20歳代・30 歳代の男性の15パーセント以下)。
中学・高校生は全員、朝ごはんを食べるようになっているといいなあ。
その後、2005年に「食育基本法」という法律ができました。
「国も自治体も、それぞれ予算をとって、食育政策を考えて実行しなさい」
という意味の法律です。
同じタイミングで、「食事バランスガイド」というものが発表されました。
タレントの優香さんの CM で知った方が多いと思いますので、
「食事バランスガイドは最近できたもの」
という印象があるかもしれませんが、作られたのは2年前です。
さらに2008年(来年です)には、「特定保健指導」という制度が動き始めます。
これは、40歳以上のメタボな国民に対して、生活改善のための指導を行うというものです。
「健康日本21」
「食育基本法」
「食事バランスガイド」
「特定保健指導」
こうした一連の動きは、じつはある程度アメリカの歴史を参考に作られています。
◆◆◆
というわけで、健康についてのアメリカの歴史をみてみましょう。
マクドナルドが現れる前からアメリカ人にはメタボ傾向があったようで。
100年前のある文献に、
「この国(アメリカ)が肥満社会になっていくのが心配だ」
というようなことが書いてあります。
実際にアメリカ政府も当時から肥満対策をやるつもりがあったようです。
ところが1929年にウォール街で株が暴落し、あの世界恐慌が始まりました。
肥満対策どころではなくなってしまいました。
世界恐慌 → ヒトラー出現 → 第二次世界大戦。
この間、肥満対策はなされませんでした。
生活習慣病よりも戦地で亡くなる人のほうが多かったわけですから、無理もありません。
戦争がおわり、アメリカは「世界一豊かな国」として繁栄を謳歌します。
すると、ふたたび生活習慣病の脅威がムクムクと頭をもたげてきました。
ガンや心臓病で亡くなる人が急増したのです。
当然、治療にかかる費用も増えていきました。
大統領でいうと、ケネディとか、ジョンソンとか、ニクソンとか、フォードとか、カーターといった顔ぶれの時代です。
世界恐慌から半世紀ほどたったころの話です。
この5人のうち誰だったか忘れましたが(たぶんニクソンかフォードです)、
「どうもこの国はおかしいぞ」
と思ったのでしょう。アメリカ国民の生活調査というのを実施しました。
その調査のリーダーになったのが、上院議員のマクガバンという人です。
マクガバン上院議員は2年ほどかけて調査を行い、その結果を議会で発表しました。
有名な「マクガバン・レポート」です。
このレポートが公表されたとき、全米は大騒ぎになりました。
「アメリカ人の食生活はひどすぎる。そのせいで心臓病やガンなどの病気が増えた。このままでは、今世紀(20世紀)の終わりまでに、アメリカは医療費だけで破産する」
という内容だったからです。
どっひゃー(死語)。
大変です。
大統領もふくめ、政治家の皆さんもビビりました。
資本主義の盟主国であるアメリカが、医療費ごときで破産するわけにはいきません。
あわてて政府は、生活習慣病を減らすために「食育政策」を始めたのでした。
その食育政策には「ヘルシーピープル」という名前がついており、今でも実施されています。
(以下次号)