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マツミヤ倶楽部

2007.07.31 23:36

過去船長 前編


松宮園生です。

ふだんはマサチューセッツ州のボストンにいる
ターザン栄養学の大御所、ドクター・チイタッタ。
(チイタッタ先生については以下を参照)
「ターザン栄養学 その1」
「ターザン栄養学 その2」
「ターザン栄養学 その3」
「メタボ最北端 番外編」
「食の世界のスーパーパワー その3」
「農業コンチネンタル その3 風雲編」
「ナチュロパシー」

そのチイタッタ先生からから久しぶりに電話をもらいました。
「フロリダに別荘を買った。最近は激しいハリケーンが多いんでな、安く買えたよ。羨ましいだろう。そのかわり保険料がバカ高くてな、差し引きゼロだ。意味ねえっつーの。わっはっは」
「はあ」
「フロリダはいいぞ。松宮はグレープフルーツ好きだったよな。うちの庭に大きいのが成っているから1個1ドルで食べていいぞ。有機だ」
「はあ」
「広い家だから、泊まる部屋はある。1泊99ドルにしといてやる。朝食つきだ。ただし作るのはおまえだ」
「はあ?」
「察しの悪いやつだな。遊びに来いといっとるんだ。自腹でだぞ。遊びに来い。食事代を払うやつが足りんのでな」
「いやです」
電話を切りました。

するとメールが来ました。
「××を入手したんだが。そうか、来れないとは残念だ。チイタッタ・MD」
(MDというのはメディカル・ドクターの略。ただのドクターではないぞよ、メディカル・ドクターであるぞよ、というのを強調する場合に使います)

えっ、××を入手?
僕はあわてて電話をかけようとしましたが、フロリダの番号を聞いてませんでした。
やむなくメール。
「チイタッタ先生。先ほどは失礼しました。電話が切れてしまいましたねえ。なぜだろう、あはははは。フロリダ、いいですねえ。グレープフルーツ(有機)いいですねえ。照りつける太陽、ビキニのおねえさんたちとおしゃれなゲイの方々。キーウエスト。マイアミ・バイス(死語)にドン・ジョンソン。さっそくお邪魔します」

すると返事。
「現金とクレジットカードは忘れるな。とくに宿泊代は現金オンリーだ。迎えにはいかないので、自分でレンタカーしなさい。こちらの住所はかくかくしかじか(←死語)。ちなみに、グレープフルーツは世間で値上がりしとるらしいから、2ドルにしとく」

◆◆◆

そんなわけでフロリダにむかった松宮です。
フロリダはカリブ海に面しており、カリブ海独特のノーテンキな香りがそこらじゅうに漂っています。

フロリダ行きの飛行機で、妙な乗客を見かけました。
遠くの座席に座っているのでよく見えなかったのですが、ナポレオンみたいな帽子をかぶり、宇宙戦艦ヤマトの沖田艦長のような制服を着ており、背が僕より低く、黒い眼帯をしていました。
なんか昔の海賊みたいです。
マイアミの空港に着陸したらもっと近くで見てやろうと思いましたが、人ごみのせいで思うように動けず、とうとう見失ってしまいました。

その話をチイタッタ先生にしたところ、
「それはキャプテン・パストだろう」
「誰ですか、それ?」
「古くからフロリダに住んでる人でな、ちょっとした有名人だよ。本名は知らんが、みなキャプテン・パストと呼んでいる」
「過去(パスト)ですか?」
「そう、そのパストだ。なぜそう呼ぶかというと、昔のことをやたらよく知っているらしい。本人が言うには、若いころはビクトリア女王に仕えていたそうだ」
「ビクトリア女王って、19世紀のイギリスの女王ですよね?」
「そのビクトリア女王だ。もしそれが本当だったら、いまごろ150歳くらいだぞ」
「そんなバカな。先生は医者なのに、そんなことを信じるんですか?」
「問題はそこだ」チイタッタ先生は人差し指を立てて言いました。「おれの言うとおりの生活をすれば、人間は150歳まで生きることができる。おれが勧めるものを食べ、おれの言うとおりに運動し、おれが処方したサプリメントを飲み、たっぷり眠ることだ」
「じゃあ、キャプテン・パストは先生のクライアント(患者というと叱られるので、クライアントと呼んでいます)ですか?」
「問題はそこだ」チイタッタ先生は溜息をつきました。「おれはここ(フロリダ)では開業しておらん。他に主治医がいるのかもしれん」

「でも先生」僕は言いました。「150歳には見えなかったですよ、その人。ホントは50歳くらいで、ビクトリア女王なんて嘘っぱちで、100年ほどサバを読んでいるんじゃないですか?」
「150歳に見えないことは確かだ。しかしおれの言うとおりの生活をすれば、人間は150歳になっても50歳の見かけでいることはできる。なにしろおれは、アンチエイジングの権威だからな」

アンチエイジングの権威だなんて、まあよくも自分でヌケヌケと。
でもまあ、ある意味それは当っていました。
アメリカにはアンチエイジングの有名な学会が2つあるのですが、チイタッタ先生はそのうち片方(ただし人数の少ない方)の会長を務めたことがあるのです。

ちなみにチイタッタ先生の流儀は「メガビタミン」と呼ばれ、
* 食事をきちんと取る
* その後、日本人がびっくりするほどの大量のサプリメントを飲む
というスタイルを信条としています。

「で、どっちなんですか。チイタッタ先生は、キャプテン・パストが150歳だと思ってるんですか?」
「よく分からん。やたら昔のことに詳しいから、ホントにその頃から生きていたんじゃないかと思うほどだよ」
「とっつかまえて検査とかしたらどうですか?」
「なんでだ? そんなことをしても、カネにはならんぞ」
「不老長寿の秘密が探れるかもしれないじゃないですか。うまくいけば、ノーベル賞ですよセンセ」
「その逆もあるぞ。本人がただ大ボラを吹いているだけで実は見かけどおり50歳だとしたら、骨折り損だね」
「まあ、それはそうですけど…」
「おれはいいよ、ノーベル賞なんて。取りたかったら、おまえ取れ」
そういってチイタッタ先生は寝室に引っ込んでしまいました。

と思ったらひょいと顔を見せ、
「明日の朝食だが…もう分かっていると思うが、おれはおまえと違って上級ベジタリアンだから、そのつもりで」
(上級ベジタリアンて何? と思った方はここをクリック)
「は? 僕が作るんですか?」
「ほかに誰が作るんだ。せっかく日本人が来たんだ、ミソ・スープと、ヒヤヤッコも作ってくれ」
と言ってまた引っ込んでしまいました。
よい子はおねんねの時間でした。

よい子はおねんねなのですが、僕は眠れませんでした。
べつにキャプテン・パストが気になったわけではなくて、時差のせいです。
僕が住んでいるシアトルと、フロリダとでは時差が3時間ありまして。
フロリダで午後10時というと、シアトルではまだ午後7時なのです。
ですので、まだぜんぜん、眠くないわけで。

酒でも飲みにいくか。

フロリダの空気がそうさせたのでしょうか、基本ひきこもりの僕でしたが、なぜか外出したい気分になりました。
近くにマリオット・コートヤードというチェーンホテルがあり、そこのバーがよさげな雰囲気だったので入ってみました。

すると、そこに海賊姿のキャプテン・パストがいました。

(以下次号)

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2007.07.29 22:56

ホケンシドー年代記 その3


前回までのあらすじ)
デスラー総統(厚生労働省)から、特定検診・特定保健
指導の実施を命じられた軍人(健康保険組合)たち。
勝手がわからず右往左往する軍人たちに、どっと群がる
武器商人(保健指導プログラムのベンダー)たち。
混沌とした状況から逃げるように、松宮園生は故国
ガミラス星を脱出し、隣国イスカンダル星に向かったの
でした…。

「宇宙戦艦ヤマト」を知らないヤング(←死語)の皆様、
分かりにくくてゴメンネ。

◆◆◆

イスカンダルの人々は早くから保健指導に取り組んできました。
多くのトライ&エラーを経験しています。
その結果、さまざまな経験とノウハウが蓄えられています。

イスカンダルでの、保健指導の歴史について説明しましょう。

イスカンダルは建国230年という若い星ですが、今から100年前にはすでにだいぶ、メタボな人が目立つ国になっていました。
当時、メタボな人のことを「チャンキー」と呼んでいたそうですが、地球の日本語に直すと「ぽっちゃり」とか「ふくよか」という感じのようです。
「ぽっちゃり」って言うと、あまり悪いニュアンスはありませんね。
「ぽっちゃり型のかわいこちゃん(←死語)」が好きな男性はたくさんいます。
「チャンキー」も同様に、わりといい意味で使われていました。
とはいえチャンキーも度を超すと不健康だ、という意識もあったみたいで、
「チャンキー・ゴーホーム」
という「反戦ソング」ならぬ「反肥満ソング」をジェシー・ビブカという人が一生懸命歌っていましたが、ぜんぜんヒットしなかったそうです。

その後、イスカンダルはガミラスと戦争を始めてしまったので、メタボについてはどうでもよいと考える時代が半世紀も続きました。
生活習慣病で亡くなるより、戦争で亡くなる人のほうが圧倒的に多い時期でしたから、ある意味、やむを得なかったのかもしれません。

戦争の時代がようやく終わります。
勝ったイスカンダル星は、ガミラスから戦利品をガバチョ(←死語)と奪い取り、たいへん栄えました。
豊かさにあぐらをかいたイスカンダル人は、今度は遊びはじめました。
食べたいものを食べ、飲みたいものを飲み、行きたいところに行くようになったのです。
すると、肥満が増え、医療費もずるずると増加していきました。
遊びはじめてから10年もたったころ、人々は
「なんだかおかしいぞ、この星は?」
と思うようになります。
肥満が増え、いわゆるガンや心臓病に苦しむ人が増えている事実に、ようやく気がついたのです。

ここで、目ざとい商人たちは「チャンスだ!」と考えました。
メタボを治療したり、予防したりするサービスを売れば、儲かるぞ。

商人たちは、こうも考えました。
メタボの治療は、医者の領域だ。商人が素人頭でやれることじゃねえ。手を出すのはやめとこう。
しかしメタボの予防は、素人でもサービスを作れるんじゃねえか?
だって要するに、
「やたらと食うな」
「運動しろ」
「規則正しく生活しろ」
こんな訓練をする道場でも作って、月謝を取って商売すればいいんだろ?

というわけで、そんな道場がイスカンダル星の随所にオープンしました。

不思議な現象が起こりました。
月謝の高い道場には、会社の社長さんたちがこぞって「入門」してきたのですが、
月謝の安い道場には閑古鳥が鳴いたのです。
つまり、このころ保健指導サービスとして生き残ることができたのは、
「企業の経営者個人を対象としたもの」
つまり、パーソナル・ケアでした。

ガミラスとイスカンダルには大きな違いがあります。
ガミラスでは、
「企業の業績と社長の力量にはあまり関係がない」
とされていました。
むしろ組織の力がものを言う星でした。
その証拠に、ガミラスでは、有名企業の社長の名前はあまり知られていません。
これに対し、イスカンダルでは
「企業の業績は社長の力量に大きく左右される」
と認識されていました。
イスカンダルの大企業の社長はヒーローのように扱われ、有名人が多く、社長としての報酬も莫大なものでした。

つまり、イスカンダルでは「社長の価値」がものすごく高いとされていたのです。
そのため、社長にもしものことがあったら企業業績にマイナスの影響が出る。
したがって、社長個人の健康管理が特別に重要視されました。

当時のイスカンダルの保健指導は、この考え方にもとづいて行われています。
次のような特徴を持っています。
* 企業経営者の健康管理を主な目的としている
* 内容が手厚い
* 価格が高い

しかしこの情勢は、20年ほど前を境に、大きく変わりました。
戦略兵器が生まれてくるのです。
どう変わったかについては、次号にて。

(以下次号)

<追伸>
アメリカの権威ある医学雑誌「New England Journal of Medicine」に、
「肥満は伝染する」
という記事が載りました。
日本でも話題になったかもしれません。
「最近、太っちゃった」
「肥満って、伝染するのよね」
なんて会話はときどき耳にしますが、まさかマジでそれを研究している学者がいたなんてちょっとビックリです。
その学者によると、
あなたの同性の友人に肥満の人がいた場合、あなたもつられて肥満になる確率は60パーセント。
肥満の人と恋に落ちたり結婚したりした場合、あなたもつられて肥満になる確率は40パーセントだそうです。

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2007.07.29 00:14

食育三国志 外伝5


チーフの松宮園生です。

前回までのあらすじ)
「食育▽△アカデミー」の魔の手に落ちかけた
小判大介君を、「凸凹プロフェッサー養成講座」
の強力チームが救い出す。
しかしその勢いで、小判君は
「凸凹プロフェッサー養成講座」
に囲い込まれてしまった…。

◆◆◆

オチャラケを始める前にマジメな話。

自分自身もたまに食育講座で講師をしたりすることがあります。
その経験からいうと、ほとんどの食育講座は安全です。
資料請求した人を追いかけ回すようなことはありません。
たいがい上品ですし、言い方を変えれば「あまり営業に向いてない」地味な人々が地味に主催していたりします。
「営業に向いている」人々のなかでも、イメージ作りやブランディングの上手なところは、追っかけ回すような野暮なことはしていません。

しかし一部に「マーケティング下手だけど営業が命」な食育講座がありまして、こういうところが力技で小判君を追い回すわけです。
その「営業命」な食育講座どうしの、まチョット行儀の悪い争いを、オチャラケでレポートしてます。
(数々の証言にもとづき、構成させていただいております)

◆◆◆

小判君を追いかけ回していた、
「食育★★講座」
「食育▽△アカデミー」
この両者は、受講者獲得をめぐって激しく火花を散らす間柄でした。

同じ海域で漁獲高を競う2隻の旧型漁船を想像してみましょう。
船の大きさはだいたい同じ、ともに同程度の魚群探知機(昭和レベル)を持ち、船員(昭和風)の訓練具合も同じくらい。
そんな2隻の漁船が、昭和レベルの投網を繰り返し、漁獲高を争っています。
昭和な船長が、星一徹のように叫んでいます。
「根性だ。根性があれば何でもできる! 根性さえあればなあ、ミンキーモモ(←死語)と結婚だってできるんだぞ」

といいつつ、一応、両者ともベタなりに「基本戦略」というのがありまして。
バスケットボールに例えると、
「食育★★講座」は、「ゾーン・ディフェンス」
「食育▽△アカデミー」は、「マン・ツー・マン・ディフェンス」
でした。

どういうことかというと。

「食育★★講座」は、地域ごとに「受講者集めの責任者」がいます。
この責任者は、地域のあらゆるメディアを狙って広報活動を行い、大量のビラを配ります。
大量にビラを配れば、そのうち何パーセントかは「釣りあげられる」わけです。
下手な鉄砲、数打ちゃ当たる
まさにこれです。
下手な鉄砲を、地域密着型で打つ。
したがって、「ゾーン・ディフェンス」と呼ばれます。

「食育▽△アカデミー」は、下手な鉄砲は打ちません。
その代わり、狙った獲物は逃がさない。
まず、食育の世界の有名人を招き、大都市で講演会をします。
講演会1回につき、たとえば30人の参加申込があったとしましょう。
すると、「食育▽△アカデミー」は31人の社員を動員します。

講演会前日、31人の社員を集めて作戦会議が行われます。
「どの社員が、その講演会参加者(=獲物)を落とすか」
が決められるわけです。
作戦会議の場には、どうやって入手したのか、参加者(=獲物)全員のさまざまな情報が…。
どの参加者(=獲物)にどのような攻め方をするとよいのか、という戦術が練られます。
なお、社員31人?参加者30人=社員1人。
つまり1人余りますね。
この余った1人は何をするかというと、無垢な講師を「黙らせる」役割を担います。
通常は、出世した社員がこの役割をもらいます。

講演会当日、会場には演壇と客席のほかに、30個のブースが設営されます。
時間が迫り、講演会参加者(=獲物)が三々五々、入場し、客席に座ります。
30人が入場しました。
すると、ドアが閉まり、鍵かかけられます。

鍵のかかる「ガチャ」という音に、入場した参加者(=獲物)から不安そうなどよめきが…。
すると社員の1人が演壇に立ち、
「ご安心ください。これは皆さんを外敵から守るためです」
わけのわからない説明をします。

「鍵がかかる」なんて、招かれた有名人(=無垢な講師)も聞いていませんでした。
(ヤバイ組織に関わってしまったのか…)
有名人も不安顔になります。
しかし時間が来てしまい、なしくずし的に有名人の講演会が始まりました。

講演会終了後、「担当の社員」が有名人を会場の外に連れ出します。
「いやー先生、ありがとうございました」社員は言います。「これであなたの役目は終わりました。とっととお帰りください」
「わたしの話を聞きに来てくれた参加者の皆さんはどうなるのですか?」
「先生」社員の目がつりあがります。「好奇心は猫を殺す、というアメリカのことわざをご存知ですか?」

そのころ、閉じ込められた参加者(=獲物)に、前日の作戦会議で決められたとおりに、担当社員が「襲いかかって」1人1人をブースに連れ込みます。
そこには、「食育▽△講座」のパンフレットと、受講申込書と、ボールペンが…。

ある参加者(=獲物)が、担当社員の手を振り切って逃げだしました。
するとどこからか、予備社員が現われて逃亡者を連れ戻します。
泣き出す逃亡未遂者。

以下、省略します。
これが有名な、「食育▽△アカデミー」の「マン・ツー・マン・ディフェンス」です。

有名な、と書きましたが、かつては知られていませんでした。
脱北者、もとい、亡命者が少しずつ増え、その証言によって明るみに出てきたものです。

◆◆◆

これを読んでぞっとした方もいらっしゃると思いますが、初めに書いたように、ほとんどの食育講座はマトモです。
むしろ地味すぎて心配なくらいで、まったく怖くありません。

ただほんの一部、ちょっと困った組織があるようで…。
「このままでは食育講座業界全体のイメージダウンになる」
心配した「穏健派」食育講座の方々は、協議のうえ、傭兵部隊に問題の解決を依頼しました。

依頼されたのが、「凸凹プロフェッサー養成講座」です。
「凸凹プロフェッサー養成講座」は最新兵器を使った巧みな作戦と、業界随一の武闘派「小太りオバチャン」の投入により、「食育▽△アカデミー」に捕らわれた小判大介君を電光石火、救出しました。
(この救出作戦の模様を知りたい人は、ここをクリック)

「さすが、傭兵部隊はすごいなあ」
「穏健派」食育講座の方々は大喜び。

しかし、喜んでばかりもいられませんでした。
傭兵部隊は、両刃の剣です。
昭和風の漁船が争っているところに、「平成レベルの魚群探知機」「平成レベルの船員」を備えた最新の漁船が、「平成風の投網技術」をもって攻めてきたところを想像してみましょう。

そう、食育講座業界は新たな脅威にさらされることになったのでした。

(以下次号)

テレビドラマ風に。

「この物語はフィクションです。登場人物や組織の名前は、現存するいかなる人物・組織の名前とも関係ありません」

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2007.07.27 22:30

牛と浮気農家


チーフの松宮園生です。

浮気農家のジョン・ソイビーンはアイダホ州で
トウモロコシを作っています。
もとは大豆を作っていたのですが、このところ
バイオエタノールの需要がすごく、
食用でなくエネルギー用としてトウモロコシが
売れるので、ジョンも去年あたりから
トウモロコシを作り始めました。
それがけっこう儲けになったので、今年から
完全にトウモロコシ栽培に切り替えたの
でした。

しかし、本格的にやってみるとナカナカ
たいへんでした。
なによりトウモロコシ栽培は大量の水を
使うらしく、水を確保するのに設備やら
なにやら、いろいろお金がかかったそうです。

「バイオエタノールはエコっぽいエネルギー源だと思うでござろう、松宮殿?」と、ジョンはあるとき僕に言いました。「しかしでござる。この水の消費量をみたら、貴殿も考えなおすでござろう。ま、作っている拙者が申すセリフではござらんが」

さて、アイダホのこのあたりには牛も多く、なぜか放し飼いにされています。
規模の大きな有機酪農家が、なにか独自の理論、たとえば名づけて「放任無頓着農法」みたいなことでもやっているのかもしれません。
(そんな農法があるかどうかは知りませんが)

よく、散歩している牛と道ですれ違います。
行儀のよい牛ばかりらしく、畑作物を食べられたりすることは全然ないそうで。
で、村の人々はそれぞれの牛にアレキサンダーだのライディーンだのゴルゴーンだの、勇ましい名前や怖い名前を勝手につけて親しんでいました。

◆◆◆

ある旅行者がこの地域を通過している途中、クルマが動かなくなってしまいました。
なんとかしようとこの旅行者、悪戦苦闘しましたが、どこに原因があるのか分かりません。

そこへ、牛が通りかかりました。
牛はフンと鼻を鳴らし、「あらンお兄さん、いい男ね。さしでがましいようだけど…キャブレターをチェックしたほうがいいんじゃないかしら?」

旅行者はびっくり仰天(←死語)。
ひいい、と甲高く叫ぶと、クルマを置いて逃げ出しました。

しばらくすると、彼は道端でビールを飲んでいるジョン・ソイビーンに出会いました。
旅行者はどもりながら、いま起きた出来事をあたふたと説明しました。

するとジョンはニヤニヤしながら「嘘でござる。そんなはずはござらん」
「ほほほ、本当なんです! たしかに牛が、キャブレターをチェックしろと言ったんです」
「どの牛でござる? 今時分に散歩しておるのはチムールか、それともエカテリーナか」
「名前言われたって分かるわけないじゃないですか、僕はここの人間じゃないんだから」
「斑(ぶち)は黒だったでござるか、茶色だったでござるか?」
「そんなこと、覚えていませんよ」
「それはそうでござる。ちょっと待つでござる」
ジョンは携帯電話を取り出し、誰かに電話をかけました。

「…チムールはそちらにいるでござるか? 左様か、かたじけない」
そういって彼は電話を切ると、旅行者に向き直って
「貴殿が出会ったのはエカテリーナでござる」
と言いました。

「だから何なんですか? エカテリーナでもなんでもいいです!」旅行者は両手を広げてわめきました。「いいですか。牛がですよ、キャブレターをチェックしろと僕に言ったんですよ」
「そんなはずはござらぬ。貴殿もしつこい御仁でござるな」
「本当ですったら!」

その真剣な眼差しを見て、ジョンは表情を変えました。「本当でござるか?」
「本当です」
「嘘だったら腹を切るか?」
「切ります」
「そこまで申すなら…」ジョンは腕組みをして言いました。「しかしでござる。エカテリーナは機械が苦手でござる。クルマのことはいつ勉強したのでござろうか?」

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2007.07.25 21:58

食育三国志 外伝4


チーフの松宮園生です。

前回までのあらすじ)
真面目なイチゴ農家だったのに、食育の勉強をしてみようとカルク考えたばっかりに、受講生獲得大戦争に巻き込まれた小判大介君。
ミッション・インポシブルか、とツッコミたくなる状況に陥ってしまいました。

◆◆◆

小判大介君が目覚めたのは、地味な小さなオフィスででした。
目覚めたといっても、横になっていたわけではありません。
小さな会議テーブルを囲んで4人の人間が座っており、小判君はその1人でした。
つまり、彼は会議中に突然目覚めたわけです。

しかしそれは会議ではありませんでした。
なぜなら、小判君の前には
「凸凹プロフェッサー養成講座」の申込書

太い4色ボールペン
が置かれていたからです。
4色ボールペンだったのは、好きな色で記入できるように、という配慮だと思われます。

なお、「凸凹」のところには、本来はある食べものの名前が入ります。
何の食べものか、具体的に実名を書くと命が危ないので、伏せ字にさせてもらいます。

目覚めたとき、小判君の向かいに座っていたのは、細身でやや枯れた感じのオバチャンでした。
その隣で、さっきの武闘派・小太りオバチャンが黙って腕組みをしています。

この2人、ともにオバチャンながら対照的でした。
おそらく食生活も違うでしょう。
(服装のセンスは同じようなものでしたが)

さらに、小判君の隣には「いかにも事務員」といった風情のオイチャンが、「こんなところでスミマセンねえ」といったたたずまいでチョコンと座っておりました。

つまり、小判君は
* 枯れた細みオバチャン
* 武闘派・小太りオバチャン
* スミマセンンねえ型オイチャン
に囲まれてチェックメイト寸前だったわけです。

正面の枯れたオバチャンが、猫なで声で言いました。
「あなた危ないところだったわねえ。食育▽△アカデミーは勧誘がえげつないことで有名だから。それに、私たちに言わせると、食育って嘘っぽい、ていうか、薄っぺらいのよね。…どうしたの? それ(申込書)早く書きなさいな」
「これ書くんですか?」
「当たり前じゃない。さっきからあなた、私の話をコックリ、コックリうなずきながら聞いていたじゃないの。ほら、ここに名前を書いて。住所を書いて。ここに電話番号。あなたメールはできるわよね、じゃあ、メールアドレスをここに書いて。そうそう。…へえ、小判さん、字がきれいねえ」

えっ? 小判君、申込書、書いちゃうの?

「字がきれいな人って、心はそれほどじゃないって言うけど、あなたは素直ないい子ねえ。…講座の日程はいくつかあるから、都合のいいのを選んでちょうだいな」
小判君はそのうち1つを選んでマルをつけました。

小判君が書いた申込書にはカーボン紙がはさまっていました。
下の紙にも写るようにです。
枯れたオバチャンは下の紙のほうを抜いて小判君に返しながら、言いました。
「お疲れさま。手続き終わりです。あとは、この講座にこの金額を振り込んでおいてね」

言い終わると、彼女は携帯電話に向かって
「イーグル・ワン、任務終了です」

かくして、難攻不落の小判君も、「凸凹プロフェッサー養成講座」の受講生になってしまいました。
しかも、凸凹エキスパート養成講座は食育の講座じゃないのに…。
いいのか、小判君。

◆◆◆

凸凹プロフェッサー養成講座は、凸凹(ある食べ物の名前)について勉強する講座です。
前述したように、何の食べものか、具体的に実名を書くと命が危ないので、伏せ字にさせてもらいます。

開講当日、小判君が教室に入ると、早くから受講者が集まっていました。
小判君は気がつきませんでしたが、集まった受講者は3つのグループに分かれていました。

<グループA>
いかにも農業をしている感じの、ラフな服装のオニイチャンたち。
小判君はここに属します。
バウムクーヘン野郎の僕としては、もっとも気が休まる人たちです。
この人たちは普通の食育講座にはあまりいません。
なぜなら、彼らは忙しくて街中にはなかなか出てこれないのです。

<グループB>
調理師見習いと思われる、茶髪の女の子たち。
年齢もかなり若い。
若いですが、キヒシイ料理の修行を早くからしているので、キャピキャピ(←死語)した雰囲気はありません。
通常の食育講座には滅多にいないタイプの人たちです。

<グループC>
枯れた感じだが目つきの鋭いオバチャンたち。
このタイプは「薬膳」「全粒紛」「身土不二」あたりの用語が大好きで、
「食育という言葉は明治時代からあった」
みたいなフレーズにシビレます。
このグループの人はたいていカタカナ嫌いですが、
「マクロビ」
という言葉には珍しく好意的です。
また、レベルが高くなると
「ゲルソン」
という言葉にも慣れてくるようです。
しかし、
「食事バランスガイド」
という単語にはいつまでたっても拒絶反応を示しています。
このタイプの人たちも、最近の食育講座では見かけなくなりました。
「いまどき食育講座に行く人なんて、どうせ流行りでやってんでしょ」
「あたしたちはね、何年も前からやっているのよ」
と思っているからです。

以上、3グループにキレイに分かれていました。
まるで三国志のように。

しかしこの三国志は、<グループC> の圧勝で終わりそうな雰囲気です。
というのは、<グループA> や <グループB> は別に他グループに敵対心など持っていなかったのですが、
<グループC> はどうやら違っていたみたいで…。

◆◆◆

しばらくすると定刻になり、凸凹プロフェッサー養成講座が始まりました。

このままでは、小判君は「凸凹プロフェッサー」になってしまいます。
いいのか、小判君。

つーか、いくない理由はなんだっけ?

(以下次号)

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