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マツミヤ倶楽部

2007.08.08 20:54

食育体温計 第3弾 チェック編


ハローハロー日本の皆さん。
今どき恥ずかしいアメリカかぶれ、ドロンパ松宮です。

日本では「萌え」という言葉はいまも有効ですか?
それとも、もう死語ですか?
または半死半生ですか?

なんにせよ、あなたの食育に対する「萌え」度を
チェックしてみましょう。
「はい」「いいえ」でお答えください。
全17問。

<質問>
01) 牛乳論争(牛乳飲むなと主張する学者の方に、牛乳業界だったかが質問状を送った事件、ありましたよね)、その後どうなっているか、どっちが勝ったのか、じつは知っている。
02) 服部幸應さんの「いつもの服装」を思い出して絵に描くことができる。
03) 「外食」「中食」「内食」読み方を全部知っている。
04) 「薬膳」という単語を毎日10回は口にする。
05) 「五感」という単語を毎日10回は口にする。
06) 地元の都道府県の食料自給率を知っている。
07) 子どもの食育に使うグッズ(ゲームとか紙芝居とか)を作るのが好き。
08) 自分が死ぬまでにあと何回食事をするのかを数えたことがある。
09) カルシウムよりマグネシウムだといつも言ってるのに、誰も聞いてくれない。
10) トマトというとリコピン、タマネギというとアリシン、ニンジンというとベータカロチン、この3つは自分のなかで条件反射になっている。
11) 「食育食育っていうけどさあ、いったい食育って何なの?」と聞かれると困るが、答えられないと悔しくて涙が出る。
12) 食事バランスガイドの悪口を言ったことがある。
13) (食育の資格講座を受けた方のみ)受けたはいいけど、知ってることが多かった。それに、食育は大切だと思ったから受けたのに、食育の大切さを講座のなかで説教されてもさ、なんだかなあ。
14) (食育の資格講座を受けていない方のみ)そんなもの受けたって、食育できるの? と思う。
15) ファーストフードを子どもが食べたがるのは、子どもの味覚に問題があるからで、ファーストフードが美味しいからではないと思う。
16) 松宮園生は嬉しそうにアメリカの食育の話をするけどさ、なんかたいして使えないよね。
17) てゆーか、アメリカの話しかできないじゃん、あの人。

<判定>
「はい」の数で判定します。
0個:すみません。嘘でもいいからどこかで「はい」と言ってください。
1個-3個:ひきつづき、バランスのとれた日常生活を送ってください。
4個-6個:まあ病院に行く必要はありませんが、家族やお友達に迷惑のかからないように生きてくださいね。
7個-10個:食育病が進行しています。体にいいものばかり食べていてはダメだよ。
11個-15個:食育病の末期です。合コンに呼ばれなくなりますよ。
16個:ということは、最後の2つのどちらかが「はい」だったわけだよね、あんた。
17個(満点):ということは最後の2つは両方「はい」だったわけだよね、あんた。いちどじっくり話をせんといかんな。

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2007.08.07 22:12

食育は英語で何というの? その9


松宮園生です。

100年前からアメリカはすでにメタボちっくな国だった、
と書いたことがあります。
100年たった今も、この国はメタボちっくです。
100年間、何をやっていたの、あんたたち。
たしかに、この100年間に世界大戦が2度もあり、
メタボ対策どころじゃなかったのは、認めるけどねえ。

でもホントに100年前からメタボだったの?
そんな疑問を持っていましたが、調べてみるとこんなことが分かりました。

昔々、Voit(発音不明)という名の学者がいて、こんなことを言いました。
「アメリカ人は、タンパク質を1日118グラムとりなはれ」
で、「1日118グラム」のことを「Voitスタンダード」と呼ぶようになりました。

一般市民は118グラムなんて数字は意識していなかった、というか、知らなかったでしょうが、このころのアメリカはすでにそこそこ豊かだったので、普通の食事で118グラムは食べていたと思われます。

1902年になり、フレッチャーさんという人物(この人物が何者だったのか、学者だったのか何だったのかは謎です)が、こんなことを唱えました。
「ものを食べるときは、飲み込む前に32回、咀嚼しなはれ。そうしたら、Voitスタンダードの118グラムに足りなくても、タンパク質は十分に摂取できますねん」
なんで32回なのか不明ですが、32回、噛むそうです。

その後、1907年。
つまり今からちょうど100年前に、エール大学のチッテンデン教授という人が「ヒトの栄養」という本を出し、こんなことを提唱します。
「タンパク質1日118グラムは多すぎる。つまりアメリカ人は食べ過ぎだ。毎日118グラムのタンパク質を摂っていたら、腎臓がやられてしまうぞ。タンパク質は半分でいい」
教授はさらにこんなことも言いました。
「ホワイトカラーの人は、3000カロリーも食べれば十分だ。それ以上、食べてはならん」

科学者の方々がこういうことを言うということは、それだけアメリカ人はずいぶん食べてて、ずいぶんメタボだったんでしょうね。

ちなみにエール大学のチッテンデン教授はずいぶんエライ先生だったみたいで、日本(当時は明治時代の終わりごろ)から栄養学を学びにきた留学生も、この先生に教わったようです。

(今回はここまで)

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2007.08.06 19:29

魔のレシピ学 その2


食育プロダクション・チーフの松宮園生です。

前回のあらすじ)
畑の隣にレストランを作ってさ、自分の畑でとれた作物を
そこで美味しく料理して出せたらいいよね。
そんな夢を持つ若い農家はけっこう大勢いるんじゃないかな。
ただしそうするためには農家にレシピを考える力がほしい。
料理技術じゃなくてレシピ開発力だ。
料理技術じゃない。ダイコンのかつらむきは下手でもいい。
しかしレシピ開発力はほしい。自分の畑でとれたダイコンをどうやったら一番美味しく食べられるのか、を考える能力は必要だ。
「レシピ開発力」を身につけるにはどうしたらいいか、そういう講座を作りたいよね。
…農業コンサルタントの葉竹乃木夫さんからそんなことを言われ、レシピ開発力ゼロの松宮園生が調査を始めたのでした。

◆◆◆

まずは瀬戸内海の淡路島に出かけました。

僕には小判大介という舎弟がいまして、テケテケ村でイチゴを作っています。
じつは舎弟はもう1人いまして、タピ岡秋彦といい、淡路島でタマネギをせっせと作っています。

このタピ岡君の話では、彼の近所に「レシピ女王」が出没するらしい。
「捕まえて話を聞きましょう」タピ岡君は目を輝かせて言いました。「ああ、腕が鳴るなあ」

なぜ腕が鳴るのかはよく分かりません。
久しぶりに松宮師匠と会えたのが嬉しかったのか。
僕が持ってきたお土産(女優○○○○の等身大フィギュア。ただし風船仕様。特殊な使い途があるという噂だが、未確認)が嬉しかったのか。

いずれにせよ、タピ岡君と僕は「レシピ女王」を捕まえる罠を作りました。
「痛くない罠にしような」と僕は言いました。「こう見えても生き物には優しいんだよ」
「同感です。じゃあこうしましょう。北海道の友達がメロンを送ってきたんです。これを餌にして、メロンをつかんだ瞬間に上からカゴが落ちてくる」
「そんなベタで原始的な罠にひっかかるか?」
「まあやってみましょう」

翌朝、驚いたことに「レシピ女王」が罠にかかっていました。
30歳前後くらいの女性でした。

「だましたんね」メロンを抱えたレシピ女王は毒づきました。「わたしをどうするつもりやの?」
僕はカゴをどけながら言いました。「すみません。じつは教えてほしいことがあったので」
「教えてあげてもええけど…。このメロンはもらえるんやろね」
すると、タピ岡君が頬を赤らめながら
「もちろんです。差し上げます」
なぜか必死の口調で答えました。

レシピ女王はふだんは神戸に住み、神戸市内の飲食店にレシピを提供する仕事をしていました。
料理の本もたくさん出版しています。
ときどき淡路島にあらわれ、農家をまわっては食材の勉強をしているそうです。

以下、レシピ女王とのインタビューです。

松宮「なんでレシピ女王って言われてるんですか?」
女王「なんでやろねえ。寝ても覚めてもレシピのこと考えているからかなあ」
松宮「毎日レシピ書いてるんですか?」
女王「毎日作っとるよ」
松宮「今までいくつ作ったんですか?」
女王「そんなん数えたことないけど…」
松宮「毎日3個書いたら年間1000個ですね」
女王「その計算やったら、10年近くやってるから1万個くらいかな」
タピ「すげえ」
女王「そやけどね、書くだけじゃダメなんよ。人の書いたレシピも読まんと」
松宮「どのくらい読みました?」
女王「書いた数と同じくらいやろか」
松宮「1万個くらい」
女王「1万個くらいやね。出版されてるレシピ本は全部読んどんのよ」
松宮「全部ですか?」
女王「全部」
松宮「それだけ読んだら、レシピの良し悪しとかって、分かりますか?」
女王「それはすぐ分かるなあ」
松宮「たとえばどんなレシピが悪いんですか?」
女王「書かれたとおりに作ってもそのとおりにならへんレシピは、悪いレシピやんね」
松宮「そんなレシピ、あるんですか?」
女王「いっぱいあるよ。火を入れるタイミングが変やとか、作る順番がおかしいとか」
松宮「いちいち作って確認するんですか?」
女王「作らんでも、読めば分かります」
松宮「なるほど。良いレシピってどんな感じですか?」
女王「そうやねえ…。説明するの難しいけど…」
松宮「2つのレシピを比較して、どっちがいいとか言えます?」
女王「そうやねえ。いえる場合といえない場合があるかなあ。プロの作家の小説どうし比べてもどっちがいいとか言えへんでしょ。でもプロとアマチュアの書いたのを比べたら違うって思うやん。そんな感じ」
松宮「僕なんかどのレシピ見てもおんなじに見えちゃいますが」
女王「それは駄目やんね。目を養わんとね」
松宮「目ですか」
女王「とにかくたくさんレシピ考えて、人のレシピたくさん見て、それでだんだん目が肥えてくるんよ」

◆◆◆

レシピ女王は「レシピの目利き」のような人でしたが、感覚とか経験とかを重視する人でしたので、「よいレシピを作るコツ」みたいなものは何度聞いても分かりませんでした。
というわけで、インタビューは終わり。
レシピ女王はメロンを抱えて去っていきました。

その去り際、タピ岡君が真っ赤な顔をしてレシピ女王に携帯の番号とメールアドレスを教えろと迫っていましたが、成功したのかどうかは不明です。

(以下次号)

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2007.08.02 22:04

魔のレシピ学 その1


チーフの松宮園生です。

自分は料理を基本やらない人間
です。
どうもその辺の才能はまったくない
みたいで、自分では何を作っても
マズイ。
お湯を注ぐだけのカップラーメン
ですら、自分でやるとマズくなって
しまいます。

レシピを作ることもありません。
つーか、できません。

食べ方に関しての想像力もキレイに
欠如してます。
どういうことかと言うと、飲食店で、
「お好みの食べ方でお楽しみ
ください」
と言われるのが苦手。
明確に
「塩を軽くふって食べなはれ」
「味ついてるから、なにもつけずにそのまま食べなはれ」
と言われるのがありがたい。

でも想像力のある人って、「どうしたらもっと美味しくなるか」という目で料理を見るみたいで、
「この料理さあ、お酢をかけてみたらもっと美味しくなるって思わない? 店員さーん、お酢ください」
「このままでも美味しいけど、ワサビをつけてみるのもいいかも。すみませーん、ワサビあります?」
というようなことは日常茶飯事らしい。
僕の頭からはゼッタイに出てこない発想です。
自分には味を想像することができないのかもしれません。

したがって、生まれてこのかた、レシピを作ったことは一度もありません。

料理好きの人にこの話をすると、
「あらン、レシピ作りなんてカンタンよ」
「自由に考えたらええのんよ、あ・ん・た」
と軽くエロくあしらわれます。

でもそれって、僕に言わせると、長嶋茂雄さんの野球教室と同じなんだよな。
「ヒットの打ち方? それはね、ピッチャーがビュッと投げてきたのを、スパン! と打つんだよ」
そりゃ、そうなんだろうけどさ。

さて、最近気づいたのですが、
* 実際に食育活動をしている人には、レシピ作りをやらない人が多いようです(僕みたいなケースは極端ですけど)。
* 逆に、いわゆる「料理好き」でレシピ作りを面白がる人には、食育活動をしている人は比較的少ないような気がします。
あくまで、漠然とした傾向です。

どうやらこういうことのようです。
* 料理好きの人は、料理の分野で活躍したいと思う。料理教室の先生やったり、レシピを発表したり。
* 食育好きの人は、料理やレシピそのものにはわりと興味が薄く、それより食の「知識」を伝えることに情熱を持つ。
(むろん例外はありますが)

◆◆◆

何年か前から、疑問に思っていることがあります。
「優れたレシピとは、どんなレシピのことをいうのか?」
「逆に、下手くそなレシピとは、どんなレシピのことをいうのか?」

農業コンサルタントの葉竹乃木夫さんがあるとき電話をかけてきました。
「なあ、バウムクーヘン野郎の松宮よ。自分の畑の隣にレストランを開いて、とれたての食材で料理を提供できたら、いいと思わんか」
「いいすね」
「そういう夢を持っている若い農家がオレのまわりには多い」
「多いと思います」
「彼らの”料理力”を磨いてやりたいんだが」
「それは、”料理の腕”を磨くということすか?」
「うーん、それよりむしろ、”レシピを考える力”を磨くって感じだな。ダイコンのかつらむきが上手じゃなくったっていいわけよ。しかしだ、自分の畑でとれたダイコンをもっとも美味しく食べるレシピを作れると、いいよなあ」
「なんとなく分かります」
「で、どうだい。農家が優れたレシピを作れるようになる。そんな講座を開きたい。松宮、カリキュラムを考えてくれないか」
「そんなの、僕じゃなくって、料理のプロの人に頼むものでしょう?」
「それが違うのだ。あの人たちはな、自分がなぜ優れたレシピを考えることができるのか、人に説明できないんだよ」

なるほど。長嶋茂雄さんの野球教室と同じだ。
「ヒットの打ち方? それはね、ピッチャーがビュッと投げてきたのを、スパン! と打つんだよ」

「というわけで松宮」と葉竹さん。「お前みたいな素人が料理のプロを何人かインタビューしてだな、優れたレシピを作るコツは何かを見出してくれたらありがたいんだが。で、それをもとにだな、2時間かける5回くらいの講座を組み立ててくれ。いいか、くどいようだが、料理の腕を磨くんじゃない。レシピの開発力を磨くんだ」

「あのー」
「なんだ? ん?」
「それって、仕事の依頼すよね。報酬とか、もらえるんですか?」
「お前ね」葉竹さんはゆっくりと言いました。「アスコルビン酸って、別名なんというか分かるか?」
「ビタミンCですよね」
「分かってるじゃないか。そういうことだよ」

電話が切れました。

(以下次号)

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2007.08.01 23:13

過去船長 後編


前回のあらすじ)
ターザン栄養学の権威チイタッタ先生は、庭に成っている大玉
(おおだま)の有機グレープフルーツを可愛い弟子の松宮に
1個2ドルで食べさせようと、松宮を呼びつけました。
そのたくらみが分かっていながら、フロリダまで来てしまった松宮。
そこで彼が出会ったのは、海賊のなりをした謎の人物キャプテン・パスト。
噂では150歳と言われています。
そのキャプテン・パストに、松宮園生はとあるバーで出くわしました…。

◆◆◆

皆さんの好きな果物のランキングはどんな感じですか?
僕はですね、順番は気分で入れかわりますけど、トップ2は、
グレープフルーツ
日本の梨
で、3位はいつもマンゴーです。

そのグレープフルーツですが、ご存じのとおり日本で食べるグレープフルーツのほとんどは輸入です。
たいがい、フロリダ(アメリカ)か、カリフォルニア(アメリカ)か、南アフリカからやってきます。
(フロリダのインディアンリバーというところが有名な産地です)
なかでもフロリダは、グレープフルーツやレモンなど柑橘類は世界一だという自負があるため、カリフォルニアや南アフリカを敵視しています。

さて、日本に来るグレープフルーツは今でこそ赤(ルビー)と白は半々くらいですが、かつては白ばかりでした。
グレープフルーツの産地では、赤と白はだいたい半分ずつ生産されていたようです。
つーことは、日本人が白ばかり食べていたとすると、赤が余りますよね?
じつは、アメリカ人は赤ばかり食べていました。
白は日本人が、赤はアメリカ人が食べていたので、バランスがとれていたわけです。

ところがここ数年、日本人は赤も好んで食べるようになりました。
アメリカ人は相変わらず赤を食べています。
どうなるでしょうか。
赤が足りなくなり、白が余りますよね。
ここ数年は、そういう状況が続いていると聞いています。

◆◆◆

キャプテン・パストを発見したバーに戻りましょう。

基本ひきこもり、引っ込み思案の松宮です。
押しにも弱いです。
自己主張が強く解放的なアメリカに馴染めないのも無理はありません。

そんな松宮ですが、このときばかりは何かにとりつかれたのか、ふらふらとキャプテン・パストのテーブルに歩み寄ったのでした。
キャプテン・パストはひとりでサミュエル・アダムズを飲んでいました。
薄暗いバーの照明でしたが、彼が片腕の男であることはすぐに分かりました。
右手が、カギツメ(「?」の形)になっていたのです。

(そんなベタな)

皆さんそう思うでしょう?
僕もそう思います。

しかしベタなのはそれだけではありませんでした。
キャプテン・パストの左足は義足でした。
足の形をした義足ではありません。
先の尖ったやつです。

ああ、お約束ですね。
眼帯にカギツメに義足。
ディズニーランドに「カリブの海賊」というアトラクションがありますが、あの音楽をご記憶の方は歌いながら読んでください。

「座ってもいいですか」僕は言いました。
「座れ」と、キャプテン・パストは答えました。「見かけない顔だな」
「シアトルから来ました。あんたと同じ飛行機でフロリダに着たんですけど」
「おおそうか。わしは滅多に西海岸には行かんのだが、今回はキノルト族の祭に招待されて行ってきたのだよ」
「キノルト族?」
「インディアンの部族のひとつだ。おぬし、シアトルの住人ならアバディーンという町をご存知か」
「オリンピック半島にある町ですよね。行ったことはありませんが…」
「そのへんにいるインディアンだよ。南北戦争のころにな、彼らが戦争に巻き込まれないようにわしがいろいろ手を打ってやったのだが、それを今でも感謝してくれてな、毎年、祭に招待してくれるのだよ」
「南北戦争って、1850年くらいの頃ですよね?」
「うむ。時のたつのはあっという間だ。…それよりおぬし、何か聞きたいことがあったのでなないかな? ワシのことは船長と呼ぶがよい」

「それでは船長。その左足のことをきいていいですか?」
「いいとも」
「どうして義足になったんですか?」

「それはだな」キャプテンは気を悪くしたふうもなく、言いました。「まだ女王陛下に仕えておったころのワシは船乗りでな、あるときインド洋で喧嘩をしてなあ。相手を海に放り投げたはいいが、ワシもバランスを崩して落ちた。たまたま足に傷があって血が出ておったようだが、そこをサメに食われた。1855年のことだ」

「そうでしたか…。そのカギツメはどうしてですか?」

「セポイの乱というのがインドであってなあ」
「あ、それ知ってます。学校で習いました」
「ふん。学校で何を習ったのか知らんがな」キャプテンは言いました。「ひどい混乱だった。ワシの腕を切りおったのは同胞のイギリス人だったよ。やつは盗賊だった。火事場泥棒というやつだ。戦争をいいことにワシの船に乗り込んできおって、ワシの財産を奪おうとした。ワシはやつの胸を刺したが、やつはワシの腕を持っていきやがった」

「そうでしたか…。キャプテンの目は、どうして眼帯なんですか?」
「グレープフルーツのせいだよ」
「グレープフルーツ?」

キャプテンはサミュエル・アダムズをおかわりし、バーテンダーにチップを渡しました。
「初めてグレープフルーツを食べたときの話だ」キャプテンは言いました。「当時のグレープフルーツは今よりずっと硬くてな。ずっと酸が強かった。硬いグレープフルーツを切れの悪いナイフで切ろうとしたのが失敗だった。力任せに切ろうとしたら、ナイフがいきなり入って、果汁が飛び出して目に入ってしまった。いやあ、痛かったのなんの」
「果汁が目に入って失明したんですか? 痛かったとは思いますが、そんなことで失明するなんて」
「そんなことでは失明せんよ。問題はだな、若いの」キャプテンはしみじみと言いました。「問題は、その日が、ワシの右手がカギツメになった初日だったってことだ」

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