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松宮園生です。
以前、「不機嫌な食育」という題名の文章を
ものしましたが、
今回はその農業バージョンです。
(「不機嫌な食育」についてはここをクリック)
ところで、いま「文章をものしました」と
書きましたが、この「ものする」という言い方は死語でしょうか、それとも古語でしょうか?
いずれにせよ、「ものする」という表現は僕のなかでなんとなくマイブーム(←死語)になってます。
余談でした。
ちなみに、農業の不機嫌さは食育の不機嫌さに比べてかなり難解です。
食育の場合、不機嫌さの原因はプライドだったりオバチャン心理だったりして、まあある意味微笑ましいというか単純なケースが多い。
ところが農業の場合は難解なので、じつは的を得た不機嫌(=お怒りごもっとも、というやつ)なのかもしれませんが、しがない勉強不足のバウムクーヘン野郎の僕には判定不能だったりします。
例えば。
◆◆◆
葉竹さんのライバル多賀安さんのところに打合せに行ったときのこと。
多賀安さんはワンマンオフィスなので、お邪魔してもお茶など出てきません。
それを知っていたのと、多賀安オフィスの近所に自然食品店ができたのもあって、そこで飲み物のジュースを2人分、買っていきました。
有機のリンゴジュースです。
JASマークもついています。
そしたら多賀安さんてば、不機嫌になってこう言いました。
「こんなの、有機JASじゃねえよ。オレは飲まねえ」
有機JASについて説明します。
(以下、農林水産省ウェブサイトからの引用)
有機JASマークは、厳しい生産基準をクリアして生産された、有機食品の証です。
有機食品のJAS規格は、以下のような生産の方法を定めています。
…中略…
この有機食品のJAS規格に適合した生産が行われていることを登録認定機関が検査し、その結果、認定された事業者のみが有機JASマークを貼ることができます。
この「有機JASマーク」がない農産物や農産物加工食品に、「有機」「オーガニック」などの名称の表示や、これと紛らわしい表示を付すことは法律で禁止されています。
(引用終わり)
↑
ここに「登録認定機関が検査し」と書いてありますが、この登録認定機関というのはいくつもありまして。
たいてい、有機JASマークの横にその登録認定機関を示すマークが貼られています。
話を戻します。
「こんなの、有機JASじゃねえよ。オレは飲まねえ」
わがままな多賀安さん。
ま、そんなことを言いそうな予感がありましたので、実は僕、缶コーヒーを予備に買っておりました。
それを差し出すと、多賀安さん、機嫌が直りまして
「悪いな。ありがとよ。ところで最近、葉竹の阿呆はどうしてる? 何をしとるかは知らんが、女にモテておらんのは確かだな、わははは」
とかなんとか言って、缶コーヒーをぐびぐび(←死語)。
このシーンの突っ込みどころを整理してみましょう。
(1)「こんなの、有機JASじゃねえよ」っていうけど、ちゃんと容器に有機JASマーク貼ってあるじゃん。
(2)「オレは飲まねえ」っていうけど、仮に有機JASじゃなくてもさ、それっぽいジュースのほうが缶コーヒーぐびぐびよりは100倍カラダにいくねえ?
で、思い切って突っ込んでみました。
すると多賀安さんは言いました。
「そりゃ、缶コーヒーよりリンゴジュースのほうがいいとはオレも思うよ。でもよ、あんな中身で有機JASだなんて言われてもなあ、ちゃんちゃら可笑しくってさあ、飲む気にならねえんだよ」
「でもこのジュース、有機JASのマークついてますよ」
「分かっとるわいそんなこと」
「じゃあ、何が気に食わないんですか?」
「何ってお前、いいか、有機JASなんてな、オレは昔からおかしいと思ってたんだ」
「おかしいんですか?」
「おかしいよ。正しい有機が正しく認定されるようにはなってないんだ。お前、ちゃんと勉強してるか?」
「いや勉強してるかと言われると…」
「有機JASなんてな、穴だらけなんだよ。専門家ならみんな知ってる」
「穴だらけなんですか」
「そうだ。あんなもの、有機じゃねえ」
「有機JASは有機じゃないんですか」
「違うさ。有機JASは有機JAS、有機は有機だ」
「いやでも多賀安さん、有機かどうかを認証するのが有機JASのマークですよね。有機だと認められたら、有機JASなんじゃないですか?」
「ばーか。なに言ってんだよ。さっきから言ってるだろ。違うんだよ。穴だらけなんだよ。勉強の足らんやつだな」
みるみる不機嫌、多賀安さん(字余り)。
「このジュースは有機JASですよね?」
「そうだよ。有機JASのマークがついてるからな。でもこのジュース、有機かどうかは分からんぞ」
「有機かどうか分からんということは、有機じゃないかもしれないけど、有機かもしれないですよね」
「有機なわけあるかい」
「なんで分かるんですか?」
「農業の現場をよく知るとだな、分かるんだよ」
それを言われると弱い。
「有機JASは有機じゃないということですよね?」
「そのとおり。有機JASなんて、有機じゃねえ」
「つまりこのジュースは、有機JASのシールが貼ってあるけど、有機じゃないと」
「そのとおり」
「逆にいうと、有機じゃないけど、有機JASではあると」
「そのとおり。有機じゃないけど、有機JASではあるな。シールがあるから」
「でも多賀安さんはさっき、こんなの有機JASじゃねえ、って言いましたよ」
「そりゃそうだよ。こんなの有機JASじゃねえ」
「えっ? どっちなんですか」
「なにが?」
「だって多賀安さん。10秒前に、このジュースは有機じゃないけど有機JASだって言いましたよね。で、5秒前に、有機JASじゃないと言いました。どっちなんですか」
「お前ね。んなことどうでもいいじゃねえか。なんだよその10秒だの5秒だのって。こんなくだらない会話につきあってるヒマはねえんだ。お前はもっと有機の勉強をしろよ」
「はあ」
「農業は奥が深いんだよ。分かるかなー。分っかんねえだろうなー」
また出たよ、この死語。
(以下次号)
松宮園生です。
(前回のあらすじ)
終生の農業ライバル、
葉竹乃木夫さんと多賀安秀夫さん。
その戦いの歴史は、学生運動にさかのぼります。
そして21世紀の今日、アグリドラゴン社のクレーム
処理を巡って2人はふたたび激突。
血で血を洗うバトルが始まったのでした。
果たして勝利の女神はどちらに微笑むのか?
◆◆◆
2人はアグリドラゴンの会議室で口論をはじめました。
「中国野菜を国産と偽って納めるとは、テメーも落ちたな」葉竹さんは言いました。「潮時だよ。神様が待ってるぞ。ジョン・レノンも待ってるぞ。そろそろ引退したらどうだ」
「そういうセリフはな、中国野菜の知識が足らんやつに限って偉そうに言いやがる」多賀安さんも負けていません。「おめ、中国行ったことあんのか」
「何度も行ってら。行きすぎてパスポートがニセモノになってしまったよ」
これには多賀安さんも吹いてしまいました。
しかし彼はふたたび厳しい顔になって言いました。「だったら分かるだろ。いまの中国野菜はマトモだぞ。オレが調達したやつなんか特にな、日本みたいに硝酸態窒素が過剰なわけでもねえ、草むしりの労働力などなんぼでもあるから除草剤も撒いてねえ。土だって水だって綺麗なもんだ」
「テメーはバカか。毎日なに食ってんだ」と、葉竹さん。「やつらはな、甘っちょろい日本人に見せるための畑を1枚だけ用意しててな、来客を待ってんだよ。テメーが見たのはそれだよ。何のことはない、まともな畑はそこだけだ。テメーはそこに案内されて、すっかり感激して鼻水たらして、中国のいいカモになってるめでたい奴ってわけだ。テメーが見せてもらえなかった大部分のところはな、見るも悲惨なグジャグジャ状態。テメーの顔よりひどいとは言わんが、同じくらいだ」
「ああ」多賀安さんはわざとらしく天を仰ぎました。「これだから情報の古いやつは困る。お前が言ってるのは10年前の中国だ。中国だって馬鹿じゃねえ。学習してんだよ。農薬まみれの手抜き野菜を作ったって日本人は買わないと分かってる。だから日本人が買ってくれるような野菜を作ってんだよ。これは経済原理だ。ケイザイゲンリ。お前には難し過ぎるかな」
「何が経済原理だ。テメーこそ口では言っても、漢字書けるんか? 確かにテメーの言うとおり中国は馬鹿じゃねえ。やつらはな、日本の食料自給率が低いのをちゃんと知ってんだよ。食料を自給できないからな、品質が悪くても、日本は泣く泣く野菜を買うのさ。そのことを中国人は知ってるんだぞ。そんな国が、丁寧に野菜なんか作るわけねーじゃんか」
「よしよし。かわいそうに。そんなに興奮したら硬くなった血管が破裂するぞ。いいか、落ち着いてよく聞け。日本の食料自給率は低いがな、野菜は騒ぐほどには低くない。少なくともお前の知能指数よりはましな数字だ。つまり中国は、安かろう悪かろうの手抜き野菜を日本が買うなんて思っちゃいねえよ。手の込んだちゃんとした野菜を日本人は高値で買うっつーのを知ってる。だからそういう野菜を作る」
「どーだか」
「中国人てのは商売人だ。手の込んだ野菜を作ったほうが高く売れて利益も大きいとなったら、喜んで手の込んだ野菜を作るんだよ。これが経済原理だ。分かるかなー、分っかんねえだろうなー」
とんでもない死語が出ましたね。
「中国人てのは商売人だ」葉竹さんも言い返します。「テメーをだますなぞ、お茶の子さいさい(←これも死語)なんだよ。ま、ウナギ以上の頭があれば、テメーをだますのは簡単だけどな」
「なんかやけに中国人を嫌ってんな。お前、もしかして中国人の女にふられたか?」
「そういうテメーは、品川あたりのチャイナドレスにせっせと貢いでんだろう」
「いいじゃねえか。それが男の甲斐性ってもんだよ、バカめ。つーか、なんで品川なんだよ」
「つーかよ、そもそもこの騒動の原因を作っておきながら、テメーのその態度はなんだ。いいか、テメーのおかげでオレはな、入社初日に客先に頭を下げに行くことになったんだぞ」
「かかか。頭を下げたか。お前の頭にも使い道があると分かってよかったじゃないか」
「あのなあ多賀安。テメまさかそれ、本気で言ってるんじゃないだろうな。だったとしたら、テメーはプロじゃねえぞ」
「なにを言う!」多賀安さんは顔を真赤にしましたが、なんとか自分を押さえました。「そうだな。言い過ぎた」
「分かればいいよ」
このあたりは、なんと2人ともなんだかオトナでした。
「しかしだな」多賀安さんはふたたび鋭い目つきになりました。「おれが選んだ中国野菜に間違いはねえ。そこは信念を持ってやってんだ。品質管理も、おれが自分の目でやってるんだ。葉竹、お前がやるべきことはな、客先に頭を下げることじゃねえ。野菜の品質に心配はいりませんって、客先を説得することだったんじゃねえのか」
「それは違う」葉竹さんは答えました。「はじめから中国野菜を納める話だったら、テメーの言うとおりだ。だが今回は違う。国産を納めますと約束したところに、中国産を納めたところが問題なんだよ。中国産の良い・悪いではねえんだよ」
「なるほど。話の食い違いはそこだな」
多賀安さんはとつぜん穏やかな口調になりました。
会議室には若手社員も何人かいて2人の口論をはらはら見守っていましたが、多賀安さんはその若者たちに向って言いました。
「あんたら、悪いけどちょっと席を外してくれんか。葉竹のおっさんとサシで話したい。そのへんの武器もいらないから、持ってってくれ」
若者たちはぞろぞろと出ていきました。
全員が出ていってドアが閉まるのを確かめた後、多賀安さんは口を開きました。「なあ葉竹。オレもプロのはしくれだ。お前も分かるとおりこのところ国産野菜を集めるのがたいへんなのでな、中国産のいいのを持ってくるからそれでカンベンしてくれ、という話はちゃんと事前に伝えたはずなんだ」
「誰にだ」
「お前のところの社員にだよ。電話して、心配だからメールして、それでも心配だから FAX も送った。メールも FAX も証拠がある」
「どの社員に送ったんだ」
「陽に当たらなくて真っ白な顔をしてる長髪のやつだよ。貞子みたいなのがいたろう」
「あいつか…」
「心配だったからあらためて電話をかけてな、客先に説明するのも忘れんなよ、なんだったらオレが出向いて説明するよ、って念押しまでしたんだぜ」
「ちっ。しょうがねえなあ」
「そういうわけなんでな」多賀安さんは立ち上がりました。「お前に非はないが、お前んところの社員には非がある。オレに落ち度はない。だから、金は返すわけにはいかん」
「くそっ」
「大事なことは、再発防止だ」
「分かっとるわい、テメーに言われんでも」
ふたたびバトルか?
「へー、そうかい。せいぜい頑張りな。オレは帰る」
多賀安さんはそう言い残して、去って行きました。
バトル回避。
ひとり残された葉竹さん。
敗北感に打ちひしがれながら、彼はぽつりとつぶやきました。
「貞子め…」
ホンモノの貞子が聞いたら、怒って井戸を上ってくるだろうな…。
(以下次号)
松宮園生です。
(前回のあらすじ)
世界陰謀連盟ネオ。
仰々しい名前の組織だったが、
やることはロンドンでインド料理
を食べる、という他愛のないもの
だった…。
◆◆◆
こんな話を聞いたことがあります。
(親と子の会話)
子「天国ってどんなところなの?」
親「神様がいるところだよ」
子「地獄ってどんなところなの?」
親「イギリス人のコックがいる」
ことほどさように(←死語)
イギリスの食事はまずいと
よく言われますが、
かたや
「とんでもない。イギリスの食事は美味い」
と主張する人も少なくありません。
どっちなんでしょう。
いまだに決着はついていないようですが。
そういえば、3年ほど前に「世界創作寿司コンテスト」というのがロンドンで開かれました。
テレビでその審査会の様子が放映されていました。
優勝した作品は鳴りもの入りで日本に上陸してくるという話でしたが、いったいどこに上陸したんだろう?
◆◆◆
ロンドン行きの飛行機が離陸して数時間後、太刀槌タツオが思い出したように言いました。
「なあ松宮。お前、ガイドブック持ってきた?」
「ないけど」
「オレも持ってない」
「ロンドンは何回くらい行ったの?」
「初めてだ。松宮は?」
「初めて」
太刀槌タツオは笑いだしました。「おれたち2人ともロンドン初心者なのに、ガイドブックなしかよ」
「買うの忘れてたね」
「ロンドンに着いたらさっそくインド料理店に行きたいんだが、行き方がわからんな」
「つーか、行く店は決めてあるの?」
「決めてない。お前は?」
「決めてない」
「ロンドンについて事前学習とか、したか?」
「ロンドンの歴史の本を読んだ。タツオは?」
「インドの歴史」
今度は僕が笑う番でした。「この無計画さがいいよね。ちょっと聞くけど、泊まるとこ予約してある?」
「さすがにそれはした」
「何ていうホテルで、どこにあるか分かってる?」
「どこだっけな」太刀槌タツオはカバンのなかをごそごそ物色しまし、しわくちゃの紙を取り出しました。「これだ。住所が書いてあるから、タクシーに見せれば問題ない」
「空港から市内まで、近いの?」
「さあ。近いんじゃないの」
「成田空港みたいに遠かったら、タクシー代がかさむよ」
「それは困る。余計なお金はできるだけケチって、食事代に回したい」
「そうだよね。向こうに着いたら、英語でいいからガイドブック買おう」
「そうするべい」太刀槌タツオは悲しげに言いました。「お前、英語できる?」
「受験英語なら。関係代名詞とか」
「オレも受験英語だ。前置詞とか」
「辞書、ある?」
「ない」
「オレもない」
「ガイドブック、読めるかな」
「英和辞書、買おう」
「空港にあるかな」
「ないだろう。本屋に行かないと」
「英和辞書、あるかな」
「ないだろう。でも腐ってもロンドン、紀伊国屋書店とかあるんじゃね?」
「あると思うけど、どこにあるかな」
「そりゃ、ガイドブック見れば分かるんじゃね?」
「英語のガイドブックに紀伊国屋書店とか載ってる?」
「ないかもな。日本語のガイドブック買わないと」
「それ、どこに売ってるの」
「紀伊国屋書店」太刀槌タツオはまた笑いだしました。「こりゃダメだ。おれたちの間抜けぶりはロンドン観光の歴史に残るぞ」
「偶然なんだけど」しばらくして僕は言いました。「これ(機内誌)にロンドンのインド料理店が紹介されてるよ。ほら、ここ。レッドフォートっていう店みたいだけど、なんか良さそうだよ」
「ふーん」
「読むかい」
「だって英語だろ。お前読んどけよ」
「受験英語だって、読むことは読めるよ」
「どれどれ(←死語)。あ、知ってる単語で書かれてる。この単語とか覚えてるぞ。でる単(←死語?)にあった。魅力的な、って意味だ」
「とりあえず、今日はこの店に行くことにしない?」
「オーケー、そうしよう」
「で、その店に、他のおすすめインド料理店を教えてもらおうよ」
「教えてくれるか? ライバルを教えるようなもんだぞ」
「頼みこめばなんとかなるんじゃない?」
「そっか。やってみるか」
というわけで飛行機はやがてロンドン・ヒースロー空港に到着し、
「世界陰謀連盟ネオの陰謀料理作戦」
がやっとこさ(←死語)始まったのでした。
(オチはないけど、以下次号)
チーフの松宮園生です。
「食の世界のスーパーパワー」シリーズ
なんつてカッコつけて、
カーギル(自前の人工衛星を持ち、世界の穀物を牛耳る)
モンサント(遺伝子組換えの世界企業)
ネスレ(世界一の加工食品会社)
ウォールマート(世界一売上高の大きな会社)
の話を書きました。
今後は、
ドール(世界一の果物会社)
GNC(世界一のサプリメント会社)
ヘイン(オーガニック系のお菓子の世界企業)(←だったかな)
あたりの話を書こうと思ってます。
このシリーズのテーマは、
「世界企業は陰謀をたくらんでいるのか?」
です。
なぜそんなテーマにするかというと、僕自身が陰謀オタクだからであります。
陰謀オタクがよく口にする単語の例です(順不同)。
イギリス王室
フリーメイスン
ユダヤ人
ロスチャイルド
ロックフェラー
モルガン
カーネギー
ハプスブルグ
キッシンジャー
石油メジャー(セブン・シスターズ)
デビアス
リオ・チント・ジンク
個々の説明は省略しますね。長くなるので。
陰謀オタクは本当なのかどうかも分からない世界の陰謀についての情報を収集して楽しんでいるわけですが、
陰謀を防ごうというわけでもなく
陰謀に加担しようというわけでもなく
あくまでも趣味として陰謀情報を楽しむという、変わった人種です。
ま、防ぎたくても防ぎ方は分からないし、加担したくてもどうしていいか分からんけど。
◆◆◆
さて、僕がこの陰謀オタクになって間もないころ、僕にはオタク仲間がいました。
今はいません。
行方不明になっています。
この男は太刀槌タツオという舌をかみそうな名前で、むかしはエリートでした。
ナントカ省の役人だったのです。
役人になって数年後、ある大企業のオーナーに気に入られてその会社に転職し、なんだか羽振りの良い生活を送っていました。
行方不明になるまでは。
その大企業があるとき不祥事を起こしまして新聞にも載ったのですが、それ以来、連絡がとれなくなりました。
実家にも連絡がとれません。実家ごと、行方不明です。
太刀槌タツオと僕にはもう1つ共通点がありました。
いや、正確にはあと2つかな。
* インド料理に目がないこと
* 辛いのを食べた数時間後、腹痛に苦しむこと
彼と僕とは東京都内のインド料理店をつぶさに食べまわったあげく、
「ラージマハール」
という名の店をいちばん気に入り、そこに通い始めました。
インド料理を食べながら、陰謀のウンチク話を交換するのです。
「ラージマハール」では、こんなふうに食べていました。
まず、グロールッシュ(発音、これでいいのかな?)というオランダのビールを注文する。
ミントソースをもらってちびちび舐める。
マンゴーのピクルスをもらって、夢中になって食べる。
グロールッシュを飲み終えたら、赤ワインを注文する。
同時にチキンのカレーを1品、マトンを1品、野菜を2品、注文します。
マトンは、「マトンチョップマサラ」という、メニューに載っていないものを無理やり頼みます。
これ、唇が麻痺するくらいに辛いのでメニューには載せていないそうですが、注文するバカが現れたときはシェフは喜び勇んで作るらしい。
野菜は、タマネギ、オクラ、マッシュルーム、カリフラワーあたりから選んでいます。
(オクラが日本語じゃない、というのを知ったのもこのころです)
ヒヨコ豆とかレンズ豆などもメニューにはありますが、ある意味男性のつねで、豆類を選ぶことは少ないです。
ナンを注文することはあまりなく、たいてい、サフランライスにするか、「インディアンプラオ」というインド米を使ったピラフを食べています。
赤ワインとインド料理はよく合います。
ただし、辛さを和らげてくれることはあまりありません。
「マトンチョップマサラ」に痺れた唇は、痺れたままです。
「マトンチョップマサラ」を食べて唇の痺れが治まるころ、こんどは食道あたりが痺れはじめるわけですが、
「喉元過ぎれば熱さ忘れる」
の言葉どおり、あまり感じません。
ところがその痺れは
食道→胃→小腸→大腸
とカクジツに進行してきまして、僕の経験では唇が痺れた6時間後に、大腸が痺れます。
そうなると、腹痛に七転八倒することになります。
「イテテテテ。こんなに痛いんだったら、もうインド料理は食べるもんか」
と思うんですけど、痛みが治まったらそんなことは忘れています。
よくある話ですね。
◆◆◆
さて、あるとき太刀槌タツオがこんなことを言い出しました。
「なあ松宮。ロンドンに行こう。ロンドンは陰謀の中心地だしさ」
陰謀オタクのあいだでは、世界の中心は東京でもニューヨークでもなく、ロンドンにある、ということで意見が一致しています。
外国に行くときに成田空港や関西空港で日本の円を海外の通貨(お金)に換えますよね。
アメリカに行くときは、日本円をアメリカのドルに換えます。
この交換の比率のことを為替レートといいますね。
新聞なんかに、よく為替レートが載っています。
日本円を海外のお金に換えるときの交換レートです。
このとき必ず、
「1$(ドル)=120円」
という感じに、左側に$(ドル)が、右側に日本円が書かれています。
で、いつも$(ドル)の数字が1になっています。
このことは世界のたいがいの国でもそうで、
「1$(ドル)=その国の通貨でいくらになるか」
と表現されています。
いつも左側が$(ドル)です。
いつも$(ドル)の数字が1になっています。
このことは、
「1$(ドル)を買うために、自分の国の通貨がいくら必要なのか」
を表すわけですが、これは言い換えると
「世界の多くの国にとって、アメリカの通貨のほうがエライ」
ということを意味しています。
ヤマトダンジとしては悔しいですが、金融の世界ではそうなっているのです。
したがって、多くの国にとって世界のお金の中心はアメリカであり、アメリカのお金の中心はニューヨークになります。
ところがです。
アメリカの$(ドル)とイギリスの?(ポンド)では力関係が逆になっています。
「1?(ポンド)=1.5$(ドル)」
という表示が普通で、
いつも左側が?(ポンド)です。
いつも?(ポンド)の数字が1になっています。
このことは、
「アメリカにとって、イギリスの通貨のほうがエライ」
ということを意味しています。
いろんな国がアメリカに頭を下げてて、アメリカはイギリスに頭を下げてる。
そういうわけで陰謀オタクのあいだでは、世界のお金の真の中心はイギリス、イギリスの中心はロンドン、ということになってます。
話を戻りましょう。
太刀槌タツオは言いました。「こうやって陰謀の話をするのもいいが、ロンドンに行ったことがないとバレたら、世界陰謀連盟ネオから追い出されてしまう」
「世界陰謀連盟ネオ? そんな連盟、あんの?」
「こないだオレが作った」太刀槌タツオはシレッと言いました。「略してネオだ。とにかくロンドンに行こう。旅費はネオの予算から出すよ」
「えっ、そんな予算があんの?」
「あるとも。心配すんな。そのかわり、おまえ入会しろよ」
「うん、するする」
「それとな、ロンドンに行きたいのにはもうひとつ理由がある。インド料理を食うんだ」
「インド料理を」
「インドはイギリスの植民地だったし、何百年も前からイギリスの東インド会社の陰謀に巻き込まれてた」
「そだね」
「だから、インド料理は陰謀ちっくなのだ」
「インドという国が陰謀ちっくなのは分かるけど、インド料理がなんで陰謀チックなわけ?」
「フィーリングだ」太刀槌タツオはシレッと言いました。「インドがイギリスの植民地だったということはだぞ、イギリスにはインド料理店がゴマンと(←死語)あるということだ」
「そだね」
「ゴマンとあればだな、まずい店もあればメチャクチャ美味い店もあるはずだ」
「そだね」
「そのメチャクチャ美味いインド料理を、食べに行こう。食費も出す」
「食費も出るの?」
「大丈夫だ。予算があるからな。しかし楽しみだな。フランスはベトナムを植民地にしてたことがあった。そのおかげで、フランスのベトナム料理は美味いらしい。同じように、ロンドンのインド料理も美味いはずだ」
「それだったら、インドに食べにいったほうがいいんじゃないの?」
「何を言う。おまえは全然わかってないな。陰謀の中心地で、陰謀料理を食べるのが美味いのだ。とにかくロンドンに行くぞ」
(陰謀料理なんて、インドのみなさん、ゴメンナサイ)
そういうことで、ロンドン行きが決まりました。。
予算から旅費も食費も出るんだったら、悪くない話です。
◆◆◆
しかしアレだね。世界陰謀連盟ネオとやらは太っ腹だねえ。
おカネ出してくれるっていうんだから、マジありがたい話です。
なんて鼻歌うたいながら生きていたら、数日後、郵便物がとどきました。
差出人は、世界陰謀連盟ネオでした。
「飛行機のチケットが送られてきのかな」
そう思って開封してみると、なかから出てきたのは請求書でした。
「世界陰謀連盟ネオ 入会金 250,000円」
えーっ。入会金25万円? なんだよこれ。
太刀槌タツオに電話すると、彼はシレッとこう言いました。
「うん。ロンドン研修の費用がかさむんでな、入会金を値上げした」
(以下次号)
日本は夏休みですね。
オトナも自由研究ということで、近所のスーパー
マーケットの生鮮品売場を朝から晩まで観察
してみましょう。
果物売場の写真をとったり、野菜売場の絵を
書いたりしてみるのです。
どうなるでしょうか。
答。店員に襟首をつかまれて追い出されます。
ライバルの会社が、偵察にくるのを防いでいるんだそうです。
べつにいいじゃんね。
写真くらい撮らせろよ。絵くらい描かせろよ。
でも、こういうのにウルサイのはアメリカも同じ。
あのホールフーズ・マーケットもこのテの「観察行為」にはまったく寛大ではありません。
(ホールフーズ・マーケットに関してはここをクリック)
ホールフーズ・マーケットには、珍しい食材がよく並んでいます。
皆さんに紹介したいのに、写真を撮ろうとするとカラダのごついオニイサンがどこからともなく現れ、
「ヘイ、そこのバッド食育ボーイ。写真ノーノー。ノー写真プリーズ」
と叫ぶわけです。
ですので写真を撮るときにはオニイサンに見つからないようにこっそり、素早くやらなくちゃいかんのですが、それがまた難しくて。
焦れば焦るほど、ピントのボケた写真になってしまいます。
ではありますが、なかには「つわもの」もおりまして、そういう人は監視の目を盗んで見事な写真を撮るんですよね。
このあいだ和歌山県の知り合い(食品メーカーの社長さん)がシアトルに来まして、ホールフーズ・マーケットに行きました。
そのときに彼の撮った写真が後日メールで送られてきて、開いてみて驚きました。
画像の多さにびっくり。バレずによくこんなに撮れたなあ。
画像がしっかりしているのにもびっくり。監視がいつ現れるか知れないというのに、よく焦らずに撮れたなあ。
その写真のひとつを、載せておきますね。
…それはいいんだけど。
和歌山県の社長さんから送られてきたメール、本文がなかなか挑発的でした。
こんな内容です。
◆◆◆
食育プロダクション(株)
松宮社長(でも社員ゼロ)殿。
毎度お世話んなっとります。
先日わてがバツイチの娘を連れてシアトルにお邪魔したとき、ヒマなくせに多忙なフリをする松宮君のみえすいた演技にはたいへん感心感心。
シアトル・マリナーズのイチローとはひそかに親友なんだよねー、と娘の前で豪語されとりましたが、いざとなるといろいろ理由をこじつけて、とうとう紹介してくれへんかったね。
(そもそもイチローの話をしても娘はなびきまへんで)
「あの人かわいそうな人なんだから、言ってること真に受けちゃだめよ。そっとしてあげましょうよ」
という娘の言葉に、得心がいっております。
優しい娘に育ちましたわ。
娘はバツイチやし痩せとりますが、男を見る目は肥えております。
ま、アンタにはちょっと無理や思いますが、邪魔はしまへんので、娘に近づきたいんやったらご随意にやんなはれ。
そんな松宮君でしたが、おかげさんで、人のふり見てわがふり直せというか、他山の石というか、勉強させてもらいましたわ。
海外出張ゆうんは、それなりに意義ありますなあ。
あらためて御礼申しあげます。
松宮君がおるにも関わらず、シアトルはいい街やね。
ところで、ウチの社員(推定29名)に読ませようと思い、出張報告書を作ってみましたので、添付いたします。
松宮君も虚しく合コンに明け暮れるのもほどほどに、たまにはわての報告書を読み、残り少ない人生についてマジメに考えてみたらよろしいな。
アンタにも幸せになる権利は、たぶんあるやろし。
今後ともよろしく頼んますさかいにな。
グローバル超ウルトラ美味食品(株)
代表取締役、右大臣進一。
◆◆◆
「なんだこの手紙は。失敬(←死語)な!」
怒りにまかせて手紙をベリベリと引きちぎりました。
いや待てよ。
よく考えたらそれは手紙ではなくメールだったわけで。
ということは、僕はいったい何を引きちぎったの?
(続きません)