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松宮園生です。
「寿司ポリス」という言葉じたいは農林水産省の発案では
ありません。
たしかワシントンポスト紙の記者が言った言葉です。
(記憶がウロですけど)
言葉とは恐ろしいものです。
寿司ポリスなんて名前をつけられたおかげで、悪いイメージが先行し、
言いだしっぺの政治家と農林水産省は国内外から火炎放射を浴びました。
気の毒に、日本食のスタイルを守ろうという提案をしただけのつもりが、まるで犯罪者扱いです。
あれから年月が流れました。
この話はなくなったのでしょうか?
◆◆◆
どうやら、舞台裏でこういう会話がなされたようなのです。
<シーン1 議員会館>
農林水産省(以下「農」) 「先生、やっちゃいましたねえ。世間から非難ごうごうっス。どうしましょ。海外の日本食レストランを認定する計画、やめますか」
政治家(以下「政」) 「ばかもん。お前は日本文化をなんだと思っとるんだ。男が口に出した以上、そう簡単に引き下がれるか」
農 「そんなこと言ったって、寿司ポリスなんて言われてしまっては、もうダメすよ。先生の次の選挙もヤバくないスか?」
政 「あれはお前が悪い。ワシは正しい真面目な日本食屋を守れと言っただけだ。ニセモノをやっつけろとは言っとらん。世間にちゃんと説明して誤解を解け」
農 「そ、そんな」
政 「とにかく世間の誤解を解け。なんとかしろ。計画は進めるぞ」
<シーン2 霞が関>
農 「困ったなあ。先生も勝手だよなあ。どうしよう。…そうだ、有識者会議を開いて学者さんたちにダメ出ししてもらおう。世間の非難には動じない政治家の先生も、学者さんの反対にあえば、あきらめてくれるんじゃね?」
<シーン3 有識者会議>
農 「みんな集まってくれてありがと。そういうわけでさ、政治家の先生の顔もたてながら、世間の非難もかわして、丸く収めたいんだけど、いい知恵ない?」
有識者(以下「有」) 「そんなの簡単ら。責任転嫁すればいいのら」
農 「責任転嫁?」
有 「こうするんら。(声を低くして)ひそひそひそひそ」
農 「(顔を輝かせて)なるほど。そのテがあるじゃんよ」
翌週、農林水産省はウェブサイトでこんな発表をしました。
「はーい国民のみなさん。
日本の文化が海外でもきちんと守られることは大事なことですよね?
日本人はコーラぶっかけうどんを食べてる、なんて思われたくないでしょ?
みんなにはいろいろ言われたけどさあ、政府としてはそこんところを強調したいんだよね。
だってそうじゃん。
イタリア政府だって、タイ政府だって、似たようなことやってるんだよ(←これ、ホントです)。
なんでオレたちだけ文句言われなあかんの?
でも有識者会議で学者さんたちに言われたんだ。寿司ポリスなんて乱暴なことはやめとけってね。
まあ、そうかもね。
そこでだ、ものは相談だけど、今後は民間のボランティア団体に寿司ポリスをやってもらいたいんだ。
民間が自分らの判断で好きにやるぶんには批判とか出ないと思うんだ。
どうだろう、われこそはと思うボランティア団体はぜひ日本食のために立ち上がってくんね?
おれたち政府は口出ししねーと思うし。
民間の自発的な愛国心に期待、つーことで。
あとは任せた! 頼むわ」
…というわけで、いつのまにか寿司ポリスは民間のボランティア団体の役目ということに決まってしまいました。
その後、こういう民間団体が設立され、寿司ポリス事業を粛々と進めています。
「NPO 日本食 レストラン 海外普及推進機構」
http://jronet.org/
<参考図書>
「実戦 食品輸出読本―世界に広がる日本の味」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4822408752
松宮園生です。
昨年4月に
「特定検診・特定保健指導」
の制度が始まりました。
しかし、食育に関心のある方は知っているようですが、一般にはあまり知られていないようです。
業界(ヘルスケア業界とか、医療業界とか)や、専門家(保健師とか、管理栄養士とか) は、数年前から大騒ぎしてこの制度の対応に追われていたんだけど。
◆◆◆
「てやんでぃべらんめぃ」
というセリフ、現実に誰かが口にするのを聞いたことはありますか?
僕はいちどだけ、あります。
衝撃的でしたね。
(てやんでぃべらんめぃ、って、死語じゃなかったんだ…)
死語研究家として、涙ながらにそう思ったのを覚えています。
さて、世間で実際に行われている食育活動は、たいていが子供向け、または母親向けのものです。
オヂサン向けの食育教室、みたいなものはあまり見かけません。
理由はわりと単純で、オヂサンは「てやんでぃべらんめぃ」ばかりなので、食育教室をやったところで聞く耳をもたないと思われているからです。
てか、そもそも食育教室に来ない。
やっぱり心の素直な子供に食育を施すほうがよほどいい、誰もがそう思うでしょう。
ところが、だんだんそうも言っていられなくなってきました。
てやんでぃべらんめぃの人たちは、メタボだらけだからです。
厚生労働省の推定だったと思いますが、てやんでぃべらんめぃ男性の4人に3人がメタボの疑いがあるとのことでした。
皆さん、健康保険証は持ってますか?
ほとんどの方がお持ちだと思います。
健康保険証、正式には健康保険組合被保険者証というようですが、これは皆さんが健康保険組合の組合員である証(あかし)です。
保険証があると、病院にいったときに保険がききますよね。
多くの場合、治療にかかる費用の3割を負担するだけです。
のこりの7割は、健康保険組合が負担しています。
これは皆さんがふだんから健康保険にお金(健康保険料)を払っているからですね。
現在、全国にはおよそ1,600の健康保険組合があります。
その健康保険組合に対して、政府から、たいへん難しい指令が出ました。
その指令というのはこうです。
「てやんでぃべらんめぃ男性のメタボを減らしなさい。減らすことができた健康保険組合にはご褒美をあげます。しかし、減らせなかった健康保険組合には、罰を与えます」
こういう指令です。
これが、
「特定検診および特定保健指導の義務化」
と呼ばれるものです。
健康保険組合は、組合員(皆さんのことです)のために健康診断を定期的に行っています。
これまでの健康診断は、
「健康保険組合は診断結果を組合員に渡すだけ。渡された診断結果をみてどう判断しどう行動するかは組合員個人の問題」
だとされてきました。
つまり、かりに健康診断でメタボリック・シンドロームの疑いがでてきたとしても、健康保険組合が皆さんの生活習慣に口を出すようなことはありませんでした。
メタボは皆さん個人の問題であり、健康保険組合の知ったことではなかったからです。
今までは。
健康診断を受けた人は、診断結果の通知をもらいます。
たいてい、目は通しますが、分かるのは
「ああ血圧高いんだ」
とか
「血糖値、ちょっと高いかな」
といった程度で、あまり詳しいことは分からないし、
明日からどうすればいいのかも分かりません。
で、たいがいの場合、診断結果に目を通しただけで、あとはポイです。
今までは。
しかし昨年の春からそれが一変しました。
厚生労働省は、全国すべての健康保険組合に対し、
「組合員個人の生活習慣に口を出しなさい。ウザイと言われるくらい口を出しなさい。その結果、メタボを減らすことができた健康保険組合にはご褒美をあげます。しかし、減らせなかった健康保険組合は、月にかわってお仕置きよ」
という秘密指令を出しています。
(いや、秘密ではないんだけど)
具体的には、こうです。
(1)まず、40歳から74歳までを対象に健康診断を行いなさい。
(2)その結果、メタボの疑いのある人をリストアップしなさい。たいがい、てやんでぃべらんめぃ男性だと思われます。
(3)その人の生活習慣を改善するような個別の保健指導を行いなさい。
ということが健康保険組合に「義務」として課せられるようになりました。
これを、「特定検診および特定保健指導の義務化」と言います。
ところが、個別の保健指導(=個人の生活習慣を変えるための指導)をやりなさい、と言われても、なまやさしいことではありません。
健康保険組合はこれまで保健指導を行った経験がないところがほとんどですし、
ましてや、保健指導をする相手は、てやんでぃべらんめぃオヂサンなのです。
オヂサンは、なかなかタバコをやめません。
脂っこいものを控えて野菜を食え、といってもなかなか改まりません。
味噌汁だって塩分の濃いのを好む人たちです。
酒も好きなだけ飲みます。
運動も、してるんだかしてないんだか。
説教しようとすると、「俺は仕事中だ」と叫んで逃亡してしまいます。
でも去年から、それをしなくちゃならなくなった。
そんなわけで、健康保険組合はこのところアタフタしているのです。
「特定検診・特定保健指導」の制度はそういう内容なのですが、あまり知られていないのはちと残念なことであります。
(追伸)
ウワサによると、苦労して保健指導をちゃんとやってご褒美もらうより、むしろ「月にかわってお仕置きされたい」というエム的なことを考える健康保険組合がいるとか、いないとか…
食育というテーマでセレクトしています。
「未来型食育書店」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22
松宮園生です。
近所の野球クラブで4番ピッチャーをしている小学生のマツオ君。
練習の帰りに、コーチに呼ばれました。
コーチのかたわらに、背の高い男の人が立っています。
「マツオ。この人はな、この人はな」コーチが言いました。「プロ野球のスカウトの人だ」
マツオ君は目を丸くしました。
「えっ僕がプロ野球? 小学生なのに、いいんですか?」
早合点するマツオ君に、コーチは苦笑い。
「そんなわけねーだろ。でもな、スカウトさんが言うには、おまえには素質があるんだってよ。今のうちに目をつけて、青田買いをしたいらしい」
「あおたがい?」
「稲がまだ実らないうちに、田んぼを買うことだ」
「でもうちには田んぼなんかないよ」
「いや、それはたとえ話でな。要するに、若いうちに唾(つば)をつけておこう、というわけだ」
「知らない人の唾なんて嫌だよ。汚いじゃん」
「いや、これもたとえ話だから。おまえ、学校でちゃんと国語の勉強してんのかよ」
「だってコーチ、コーチはいつも、学校の勉強なんかしててもいい大人にはなれないって、言うじゃん。いつも言うじゃん」
「屁理屈こねんじゃねえ、このクソガキ」
「まあまあまあ」スカウトの男性が言いました。「とにかくマツオ君、将来プロ野球選手になりたくないかい」
「なりたーい」
「だったら、今のうちから食事に気をつけなくちゃいけないよ。僕はスカウトの中でも食育担当でね。きみのお母さんに会いたいんだけど、おうちまで案内してくれるかな」
「いいともぉ!」
「すみませんな、倉本さん」コーチが心からすまなそうに言いました。「こいつ、平成生まれの小学生のくせに、ギャグセンスが昭和なもんで…」
◆◆◆
ドアチャイムを鳴らすと、マツオ君の母親、園子さんが玄関に出てきました。
倉本さんは名刺を差し出しながら言いました。「倉本と申します。プロ野球のスカウトをしておりまして」
「まあ…。わたしなんかでいいのかしら」
頬を染める園子さん。
「なんでやねん。違うよ、母さん」倉本さんの大きな体に隠れていたマツオ君が飛び出します。「僕のことを言ってるんだよ」
「なんだ、そうだったのね」
倉本さんは苦笑しながら言いました。「お母さん、お宅のマツオ君には素質があります。ぜひ立派なプロ野球選手に育ってほしいのです。そのお手伝いにやって来ました」
「まあ、そうですか。主人が聞いたら大喜びしますわ。…で、お手伝いをしていただくというのは、どういうことでしょうか? うちはそんなにお金はないので、高い学校とかにはやれないんですけど…」
「ご心配なく。学校は変わらなくて結構ですし、野球もいまの野球チームで練習していただければ十分です。僕が気にしているのは食育です」
「はあ?」
「スカウトマンとして、マツオ君の食育をしに参りました」
「食育ですか」
「はい、食育です」
園子さんは少し機嫌を損ねたような顔をしました。
「ふうん、食育ね。でもわたし、こう見えても佐久間象子先生のもとで食育プリーチャー1級の資格を取ったんですのよ。あなたに教わることはあまりないんじゃないかしら」
倉本さんの柔らかな物腰は変わりませんでした。
「そうですか。食育プリーチャー1級とは、なかなか手強いですね。あれは稽古が厳しいと聞いてます。そうですか。1級ですか」
「ま、それほどでも」
自慢げに鼻をひくひくさせる園子さん。
「じゃあ僕の出る幕なんかは、ないかな。参考までに教えてください。ご家庭では、どんな食育をなさっているんでしょうか」
「食育プリーチャー1級として、当然のことをしています」
「といいますと?」
「早寝早起き朝ごはん。いただきますごちそうさまは愛言葉。語り合おうその日のでき事食卓で」
「3つとも内閣府の食育標語ですね。その通り実行しているということですね?」
「それだけじゃありませんわ。まごはやさしい、ははきとく。三角食べに口内調味」
「はあ、なるほど」
「それからね、バランスを保って3:1:2弁当法を実行しています」
「はあ」
「それから、家のなかには地産地消とフードマイレージのポスターが貼ってありますのよ」
「なるほど。さすが、佐久間象子直伝の食育プリーチャーだけありますね」
「1級です」
鼻をひくひくさせる園子さん。
「たいへんお見それしました。僕の負けです」倉元さんは頭を深々と下げました。「確かに僕なんかの出る幕はありませんね。すごすご退散いたします。じゃ、マツオ君、またね」
爽やかに、マツオ君に手を振る倉本さん。
去っていくスカウトマンの後姿を見ながら、
「勝ったわ」
つぶやく園子さんなのでした。
◆◆◆
翌日。
倉本さんの携帯電話が鳴りました。
「もしもし」
「あのう。及川マツオの母ですけど。昨日はたいへん失礼しました」
「といいますと?」
「主人に叱られました。せっかくスカウトが来て世話を焼いてくれると言ってるのに、つまらん食育勝負なんかで追い返してどうすんだ。カモがネギしょってやってきているのが、分からんのか、と言われまして」
苦笑する倉本さん。
「それで、倉本さん、あらためてマツオの食育をみていただきたいのですが…」
「いいですよ」
「ほ、ほんとですか。ありがとうございます」
「そのかわり、お願いが2つあります」
「なんでしょう」
「1つめのお願いは、マツオ君にプロ野球の試合を見せたいのです。連れて行っていいですか」
「それはもう、ぜひお願いします。マツオも喜びます。2つめは、なんでしょう」
「2つめは、お母さん、あなたにもプロ野球の試合に来ていただきたいのです。構いませんか?」
「はあ…? でもわたし、結婚してますし…。でも、こんなわたしでよければ…」
苦笑する倉本さん。「いえ、デートのお誘いではありませんから」
「そ、そうですよね。わたしったら」
「マツオ君と一緒に、来てほしいのです」
「わかりました。では参ります」
「じゃあ決まりだ。あとでチケットを送りますから、必ず来てください。これも食育です」
「試合を見に行くのが、食育なんですか?」
「そうです、食育です。詳しくは球場で説明します」
(野球の試合を見るのがなぜ食育なのか? 次号に続く)
<参考図書>
「野球食Jr.」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4583100116
「サッカー食」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4583037570
松宮園生です。
こんばんは。
真夜中の食品安全ニュースです。
◆◆◆
最初に、輸入レモンから大量のアスコルビン酸が検出されたというニュースです。
本日未明、横浜の大黒埠頭にカリフォルニアから運ばれたレモン2万トンが到着しました。
到着した輸入レモンを抜き打ち検査したところ、大量のアスコルビン酸が出たとのことです。
輸入元の○×フレッシュ貿易株式会社は対応に追われており、まだコメントを出しておりません。
(画面が切り替わる)
大黒埠頭の現場から中継です。
ここに停泊している巨大な船。
大きいですよね。
今回入荷したレモンですが、この巨大な専用船「マリタイム・オーキッド」号によってカリフォルニアのフィトバレーから運ばれたものです。
大黒埠頭に到着したあとは、すべてこの倉庫に保管されています。
倉庫に入ってみます。
(倉庫に入る)
倉庫の中はレモンの爽やかな香りが充満しています。
少し暗いのですが見えますでしょうか。
ここにある何千何万という箱はすべてレモンの箱です。
抜き打ち検査が行われたのは昨日の夕方でしたが、検査早々からL体のアスコルビン酸が見つかったとのことで、関係者のあいだに衝撃が走っています。
◆◆◆
(再びスタジオ)
次のニュースです。
東京都の調べによりますと、都内のイタリア料理店の9割以上が、硫化アリルを含有した食材を意図的にスパゲティ料理に添加していることが判明しました。
添加している理由は、そのほうが味も香りもよくなるからだそうです。
これに関し、東京都板飯協会ははまだコメントを出しておりません。
東京都は、東京都板飯協会のコメントを待って、対応を検討することにしています。
(画面が切り替わる)
「銀座三越前に来ています。都民の感想を聞いてみましょう。…あ、すいません。ちょっといいですか? 硫化アリルってご存知ですか?」
「いえ、知りません」
「都内のイタリア料理店の9割以上が、硫化アリル含有食材を意図的にスパゲティ料理に添加しているっていうのもご存じないですか?」
「えっ、そうなの? よく分からないけど、怖いわねえ」
「硫化アリルってご存知ですか?」
「知らねーけど…硫化水素みたいな?」
「都内のイタリア料理店の9割以上が、硫化アリル含有食材を意図的にスパゲティ料理に添加しているのは知ってましたか?」
「まじ? やべーよそれ。さっきスパゲティ食ったばっかだし」
◆◆◆
(再びスタジオ)
政府広報です。
(画面が切り替わる)
「花子さん、このパン、全粒粉らしいんだけど、食べて大丈夫かなあ」
「太郎さん、心配だったら検査してもらったら? 食品分析センターに行けばやってもらえるよ」
「食品分析センター?」
「ええ。食品にどんな成分が含まれているか、詳しく調べてくれるところよ」
「そうなんだ、どこにあるの」
「全国8か所に事業所があるのよ」
「じゃあ。そのうちのどれかに頼めばいいんだね」
「各事業所と試験室はコンピューターネットワークで結ばれ、迅速に、正確に、きめの細かいサービスが提供されています」
「なるほど。…てか、誰に向かって話してるの?」
(数日後)
「太郎さん、検査どうだった?」
「うん、花子さん…。微量だけど無視できない量のセレニウムが検出されてさ…」
「ええーっ」
「おまけにマンガンまで検出されたよ」
「そうだったのね。食品分析センターに調べてもらってよかったわね」
「うん、よかったよ」
「この食品大丈夫かな? あれ? おや? もしかして? と思ったら食品分析センター。食品分析センターにお電話ください。待ってまーす」
「だから誰に向かって話してるの?」
◆◆◆
(再びスタジオ)
今日の報道で、食べものには危険がいっぱいだなーと思った皆さん。
種明かしをしましょう。
アスコルビン酸とは、ビタミンCのことです。
レモンを検査したら、ふつービタミンCは大量に検出されます。
硫化アリル含有食材とは、ニンニクのことです。
スパゲティ料理には、たいがいニンニクが入っています。
セレニウム、マンガンはともに体に必要な微量ミネラルです。
無視できない量のセレニウム、マンガンが検出されたら、ふつー文句はありません。
ではまた、明日のこの時間にお会いしましょう。
(会いません)
<参考図書>
「食料の世界地図」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4621076426
松宮園生です。
アメリカ西海岸に住んでいたころの話ですが、
シアトルからクルマで30分くらいのところに
フェデラルウェイという町があります。
そこのショッピングモールにある日本食屋「ハニコ」で昼食をとりました。
ラルフという、運送会社の社長と一緒でした。
ハニコはかつてはハナコという名前でしたが、みんなハニコと呼ぶのでハニコに改名したそうです。
ハニコはわりと気に入りの店でした。
松宮はラーメンとかお好み焼きとかもけっこう好物でして。
ハニコはその辺のメニューがなかなか旨かったのです。
お好み焼きはガイジンに説明しやすい料理です。
「ジャパニーズ・ピザ」
と言えばいいので。
それに比べたら「西京焼き」とか「かぶら寿司」とか「ゴリの佃煮」とかは、説明がめちゃ大変です。
(説明する羽目におちいったことはないけど)
さて、ラルフは日本食屋にはあまり詳しくない人間でした。
「何を食べればいいんだ? おすすめは?」
と聞かれたので、
「あんたはジャパニーズ・ピザを食え。僕はラーメンを食う」
こういうのは、迷える子羊のために、決めつけてあげることも重要です。
案の定というか、ピザ好きのラルフは迷うことなくジャパニーズ・ピザを注文しました。
僕は醤油とんこつラーメンを注文しました。
醤油とんこつラーメンが運ばれてきました。
「なんだそれは」とラルフが聞いてきました。
僕は割り箸を割りながら「ヌードルだ」といいました。
するとラルフは、
「そんなことは分かっている。なんのヌードルか知りたい」
困りました。
醤油とんこつなんて英語で説明できません。
「ピッグ(豚)ボーン(骨)スープ・アンド・ソイソース(醤油)ラーメン・ヌードル」
なんて知ってる単語をテキトーに並べました。
ラルフは神妙にうなずいていましたが、分かったのか分かってないのか。
次に、アツアツのお好み焼きが運ばれてきました。
ところが、ラルフは眉をしかめて食べようとしません。
「どしたの?」
と聞くと、彼はなにか質問しました。
質問されているのは分かったのですが、英語が理解できなかったので、短気なヤマトダンジ松宮もメンドくさくなり、
「イエス。イエス。ノープロブレム」
とかなんとか、テキトーに返事しました。
長々と説明してたら、ラーメンのびちゃうし。
するとラルフの顔色が変わりました。青くなったのです。
ラーメンをすすりながら横目で見ると、ラルフ社長、なにやら祈りながら恐る恐るお好み焼きを食べています。
いや、食べるというよりは、隅の方を少しずつかじっている感じです。
ちょっと涙目にもなっていました。
結局ラルフちゃん、お好み焼きをおおかた食べ残してしまいました。
会計を終えてチップも払い、ハニコを出た後、駐車場にとめてあるクルマまで歩きながら、僕はラルフに聞きました。
「ジャパニーズ・ピザだけど、美味しくなかった?」
「いや味はよかったのだが」ラルフは言いました。「でも××××を食べるのは、ちょっとオレには難しい」
××××の部分がよく聞き取れなかったので、僕は紙とボールペンを取り出して言いました。
「あんたがいま何ていったのか分からないので、ここに書いてよ」
「いいとも」
ラルフが書いたのは、
「バグ(昆虫)の羽」
という言葉でした。
◆◆◆
あちゃー(←死語)。
今度は僕の顔色が変わりました。
(自分で分かるのかよ)
アツアツのお好み焼きに振りかけられたカツオブシが、熱のせいで変形して動き回っているのが、彼には昆虫の羽が動いているように見えたらしい。
で、
「これは何か? 昆虫の羽か?」
とラルフは僕に質問し、僕ってば、
「イエス。イエス。ノープロブレム」
といい加減に答えてしまったわけです。
困ったことになりました。
このまま訂正せずに放っておくと、「日本人はピザに昆虫の羽をかけて食べる」という大誤解がラルフに定着してしまいます。
かといって訂正すると、あのときに「イエス。イエス。ノープロブレム」と答えて彼の食欲を奪ってしまった松宮は、極悪人になってしまいます。
ど、どうしよう…。
立ち尽くす松宮。
遠くにそびえたつリーニア山(※)が、僕を笑っているように見えました。
(※)シアトルのあるワシントン州でもっとも高い休火山。
富士山とよく似た美しい形をしているので、在米日本人にも愛されています。
標高は富士山より500メートルほど高い。
<おすすめサイト>
「アメリカ食通信」
http://www.myfood.jp/w_myfood/us_foodnews/