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松宮園生です。
これまで何度か登場した
「浮気農家のジョン・ソイビーン」。
アイダホ州のはずれでトウモロコシを栽培しています。
こないだ久しぶりに彼のトウモロコシ畑を冷やかしに
行きました。
前日に珍しく雨が降ったためにその日は水量調節をしなくてよかったらしく、仲間で飲もうということになりました。
飲んでいると、村いちばんのインテリ農家(自称コーネル大学卒)が話しかけてきました。
「なあ松宮。先週、世界中の農業ジャーナリストが日本に集まってどんちゃん騒ぎ(←死語)したのは知ってるか」
「どんちゃん騒ぎかどうかはともかく、日本に集まったのは知ってるよ」
「おれの友人が農業ジャーナリストやっててな。日本に行ったらしい」
「ふうん」
「驚いてたぜ」
「何が」
「お前の国って、人口が1億人いるくせに、食料の6割が輸入らしいじゃないか。大丈夫なのか?」
「さあね。でもそのお陰でアメリカの農家は儲かっているんだろ。あんたとか」
「それはそうだが…。あとさ、田畑が複雑にいりくんでるのにも驚いてたぞ」
「狭い国土だからね」
「農家1軒あたりの平均農地面積も小さいらしいな。2ヘクタールもないんだって?」
「バカにしてんのか」
「すまんすまん。そんなつもりはないんだが…」
「まあ、あんたから見たら妙な国に見えるかもな、日本は」
「2ヘクタールという数字が信じられなくてな。アメリカの農家の100分の1だぞ。そんな狭い土地で農業やってて、ビジネスとして成立するのか?」
「しないと思うよ」
「2ヘクタールって、何エーカーでござるか?」ジョン・ソイビーンが口をはさみました。
「5エーカーだ」インテリ農家が答えました。
「うぬぬぬ。驚きもうし候。確かに狭すぎるでござる」
(アメリカ人はヘクタールよりエーカーを使って面積を表現しています)
◆◆◆
その後、自分の農地がいかに広いかについての自慢話が始まりました。
インテリ農家が言いました。
「オレはコーネル大学を出てジャガイモを作っているがね、このあいだ畑の端から端まで歩いてみたんだが、まる1日かかったぜ」
浮気農家のジョン・ソイビーンが負けじと言い返します。
「測ったことはないでござるが、拙者のトウモロコシ畑には繁華街が5つ、あるでござる。それぞれたいへんに賑わっているでござるよ」
すると、今まで黙っていた太り気味の男が言いました。
「おやそうかい。じゃあ、おめえたちの畑と、おらのトラックはだいたい同じ大きさだな」
松宮園生です。
日本に来ています。
時間を見つけてスーパーマーケットの食品売場を視察
したりしています。
「日本とアメリカの食品売場を比べて、どう違いますか?」
こういう質問もよく受けますが、
「いろいろ違います」
これが答です。
どっちが良いか悪いかではなく、単に違います。
ひとつ例をあげると、日本ではよく特売をしますが、アメリカではあまり特売はないです。
特売をする日本では、商品の価格は日によってよく変わります。
アメリカでは日本ほど頻繁に価格が変わることはありません。
これはなぜかというと、
* 日本人は毎日買物に来てその日の食材を買うが、
* アメリカ人は数日に一度来て、まとめ買いをする。
というところに理由(のひとつ)があるんじゃないかなと思います。
日本人はキホン毎日買物に来るので、店は飽きられないように毎日なにかしら変化をつけなくちゃいけない。
特売ネタもころころ変える。
アメリカ人は数日おきに来てまとめ買いするので、変化をつける頻度は少ない。
その結果、日本のスーパーマーケットの店員さん、特に食品売場担当の人は毎日大変です。
特売企画のたぐいをどんどん提案し、次々実行しなくてはなりません。
値段をかいたポップも毎日変えなくちゃいけないし、チラシもどんどん作らなくちゃいけないし、商品の配置も毎日変えなければなりません。
朝早くから夜遅くまで、へとへとになって働いてもまだ仕事が終わらないという状況が続きます。
◆◆◆
もうひとつ例をあげると、生鮮食品を買うとき日本人は品物を吟味する人が多いですが、アメリカ人はあんまり吟味しません。
日本のオバチャンは長ネギ1本買うにも、並んでいる長ネギをすべて手にして、どれを買おうか悩みます。
アメリカ人にはそういう人は少ないです。
今日 S というスーパーマーケットで見かけたオバチャン(推定年齢55歳)は、原木生シイタケを選ぶのに11分40秒を費やしていました。
並んでいる原木生シイタケのパックすべてに手をつけ、押してみたり強く握ってみたり匂いをかいでみたり、棚に戻してはまた同じパックを手にして吟味に吟味。
吟味したい気持ちは分かるけど、そのやり方だと商品が傷むんじゃね…?
特にシイタケって、そういう手荒な扱いには弱いんじゃなかったっけ?
生鮮食品じゃないけど、たとえば牛乳を買うときなんかでも似たようなことが言えます。
日本人は賞味期限の日付をみながら「1日でも新しい牛乳」を選びますが、アメリカ人はあまりそういう行動はしません。
ま、こだわりの日本人 vs 大雑把なアメリカ人、という図式でしょうか。
むろん、いろんな例外はありますが。
◆◆◆
オバチャンの「原木生シイタケ吟味行動」を観察しながら、僕は思いました。
このオバチャンはちと極端だと思うけど、みんな大なり小なりこういう「吟味行動」をとるよね。
↓
日本人がみんな何らかの「吟味行動」をとる。
その結果どうなるかというと、
* 形のよくないもの
* 粉(ブルーム)を吹いているもの(農薬と勘違いされるようです)
* なんとなく汚れてそうなもの
* 袋が破れたりしているもの
が大量に売れ残ります。
↓
すると店側としては、物流業者や(産直品の場合は)農家に対して、
「曲ったキュウリを持ってくるのはやめてくれよ」
「粉を吹いているブドウはお断り」
と言うようになります。
↓
すると農家は、
「曲ったキュウリは捨てる」
「粉を吹いたブドウは捨てる」
ようになります。
「吟味行動」。
1人1人にとっては小さな行動だけど、これを1億2千万人が毎日やっています。
なにげなくやってます。
悪気はまったくありません。
かくいう僕も、グレープフルーツを買うときだけはたぶん日本人の平均より長時間、吟味していると思います。
その結果、農業の現場ではいろいろな変化が生まれるわけです。
松宮園生です。
これまで何度か登場した
「流しの料理人ラザフォード」。
彼との出会いについて書きます。
懐かしいなぁ…。
◆◆◆
あれはもう10年ちかく昔のこと。
アメリカ西海岸、オレゴン州
ポートランドからクルマで1時間、
仕事でとあるインディアン・リザ
ベーション(アメリカ先住民の町
のこと。住民は税金が優遇され
ています)
を訪問した帰り道。
さびれた国道沿いにポツンと
レストランがあり、こんな看板が
ついていました。
「お客様のあらゆる注文に応じます。応じられなかったら、500ドル差し上げます」
「マジかよ…」
そう呟いた僕は、ちょっとイジワルな気持ちになって店に入りました。
500ドル、もらっちゃお。
ウェイトレスがやってきました。
「お元気?」
「元気だよ」
「ご注文は何になさいますか?」
「どんな注文でもいいの? 看板見たんだけど」
「はい」
「じゃ、遠慮なく。日本の京野菜のサラダ、旬のもの限定で。ポルトガルのガレー船(クラゲの一種)を刻んだものをサラダに散らしてくれる? あと、シーラカンスのチャウダー。白でね。アフリカ象の耳のステーキをレアで。それからライ麦パンを」
そう言ってから、ライ麦パンだけ注文が普通だったな、と思いましたが、面倒なのでそのままにしておきました。
ウェイトレスは注文を書き込むと、厨房に引っ込みました。
すると、ほとんど間髪を入れず、
「チクショー! なんだと!」
と大声で叫びながらオーナーシェフが厨房から飛び出してきました。
この男が、ラザフォードだったのです。
彼はバン!と音をたてて、僕のテーブルに100ドル札を5枚、たたきつけました。
「今日はあんたの勝ちだよ、日本人」ラザフォードは言いました。「だがよく覚えておけ。いいか、オレの店がライ麦パンを切らしたのは、この10年で初めてのことなんだからな」
松宮園生です。
これまで何度かドクター・チイタッタについて書きました。
僕はチイタッタ先生のもとで栄養学をちょっとだけ学んでいました。
何年も前のことでだいぶ忘れましたけど(先生、ゴメンナサイ)。
そのチイタッタ先生、もともとはニューイングランドはハーバード大学のすぐ近所に居を構え、ビタミン療法の名医としてそこそこ名を馳せました。
今は1年のほとんどをフロリダで、ユーユージテキに過ごしています。
ちなみにオクスフォード大学やケンブリッジ大学と並び世界でもっとも格の高い大学といわれるハーバード大学。
(マサチューセッツ州ケンブリッジというところにあります。近くにはマサチューセッツ工科大学すなわち MIT もある)
僕の記憶が正しければ、ハーバード大学には栄養学部があったはずです、たぶん…。
東大や京大には栄養学部はありません。
でもハーバード大学にはある。
それくらい、アメリカでは栄養学の地位が高いようです。
◆◆◆
さて、チイタッタ先生が学生だったころ、こんな教授がいたそうです。
教授「諸君、わたしは世紀の大発見をした」
学生「おめでとうございます。どんな発見でしょうか?」
教授「いくつか質問をするからよく聞きなさい。アメリカ人やイギリス人は日本人と比べてすごく太っているね? なんでだか分かるかね?」
学生「日本人は脂っこいものを食べないからでしょうか」
教授「ふむ。わたしも最初はそう思った。たしかにそう思ったのだが、メキシコ人のことを考えてごらん。メキシコ人はアメリカ人やイギリス人より脂っこいものを食べている。にも関わらず、メキシコ人よりアメリカ人やイギリス人のほうが太っている。どういうことだろうか?」
学生「アメリカ人やイギリス人は甘いものを食べます。それが原因でしょうか」
教授「わたしもそう思った。しかし、フランス人はどうだろう? デザート狂いの国民だよね? しかしフランス人はアメリカ人やイギリス人ほどには肥えていない」
学生「飲酒はどうでしょうか? アメリカ人やイギリス人はウイスキーも飲みますし、ビールも飲みます」
教授「いい線いっているが、それも違う。イタリア人をごらん。あの連中はワインをがぶ飲みするくせに、肥満はアメリカ人やイギリス人より少ないのだ」
学生「アメリカ人やイギリス人は脂っこいものも甘いものも酒も全部好きなのが理由でしょうか。複合的な要素で太るのでは?」
教授「だったらドイツ人のことを考えてみなさい。ドイツ人の食べ方を。彼らはソーセージを平らげ、ビールを飲みまくる複合的な国民だね。にも関わらず、アメリカ人やイギリス人のほうが太い」
学生「分かりません先生。ギブアップです。アメリカ人やイギリス人に共通のもので、日本人やメキシコ人やフランス人やイタリア人やドイツ人にないような要素って、何なのでしょうか?」
教授「あきらめが早いね。もう降参かい。では教えてしんぜよう。ここまでの推察から、わたしはひとつの結論を得た」
学生「何でしょうか?」
教授「人間は脂っこいものを食べても大丈夫だ。甘いものもまったく問題ない。酒も好きなだけ飲めばよい。ただし、英語だけはしゃべってはならん、ということだ。納得したかね? 世紀の大発見だ。わあっはっは!」
翌日のニューイングランド・インテリジェンス紙に、ある大学教授の死亡記事が小さく載りましたが、気にとめる人は誰もいなかったそうです。
松宮園生です。
来年から始まる特定保健指導。
(特定保健指導についての説明はこちら)
何年かしたら、こんな世の中になってたりして。
↓
オペレーター「お電話ありがとうございます。
ジャックポット・ピザでございます。まずお電
話番号からいただけますか?」
松宮「電話番号ですか。えっと、03-XXXX-
XXX です」
オペレーター「松宮様ですね。住所は目黒区
で間違いありませんか?」
松宮「はい、そうです」
オペレーター「ご本人確認をさせていただきます。正確な BMI を小数点以下6桁までおっしゃってください」
松宮「は?」
オペレーター「BMI でございます。特定保健指導ノートはお持ちですよね」
松宮「あ、あるけど…」
オペレーター「松宮様の身長と体重が載っているはずです。そこから BMI を算出していただき、その数字を教えてください」
松宮「そんなこと言われても…」
オペレーター「電卓はお持ちですよね? BMI の計算のしかたはお持ちの特定保健指導ノートに書いてあります」
松宮「やだなあ、そんな面倒なの」
オペレーター「BMI 確認は法律で定められております。ご理解ください」
松宮「しかたねえなあ…えっと、ピ・ポ・パ(←死語)…。23.908121。これでいいわけ?」
オペレーター「ありがとうございます。ご本人確認ができました。ではご注文をどうぞ」
松宮「43番の、チーズカルテットの B サイズをお願いします」
オペレーター「松宮様。そのご注文はお勧めできません」
松宮「は?」
オペレーター「松宮様の特定保健指導の詳細は、私どものシステムとつながっているのです。チーズカルテットを入力しましたら、画面に警告が出ました」
松宮「なんだよそれ。どうでもいいじゃん。僕はチーズカルテットを食いたいんだ」
オペレーター「警告が出た場合、その注文をあきらめてもらうよう説得するよう、販売する私どもに義務づけられているのです」
松宮「何を食べようと、勝手だろ」
オペレーター「おっしゃる通りです。しかし法律では、最低1分18秒以上、私は松宮様の説得に努めなければなりません。チーズカルテットは松宮様の食生活を改善するメニューには該当していないのです」
松宮「じゃあ、僕は1分18秒以上、粘ればいいわけだよね。でも何だよ、その18秒なんて中途半端な数字は?」
オペレーター「松宮様。お体のことを考えて、ご注文を変えていただくわけにはいきませんか?」
松宮「分かったよ。しかたねえな、じゃあ10番の大豆ピザにするよ。サイズは B で」
オペレーター「賢明な選択です。すばらしい。日常のちょっとした選択で、松宮様の未来が変わるのです」
松宮「は?」
オペレーター「説得に成功したら、お客様をほめちぎるよう、法律で定められていますので」
松宮「はいはい。お好きなようにやってください。飲みものも注文したいんだけど」
オペレーター「ご注文をどうぞ」
松宮「コーラを」
オペレーター「松宮様。画面にまた警告が出ました。音楽が鳴っているのは聞こえますか? これは警告ミュージックです」
松宮「警告ミュージックって…。ダース・ベイダーのテーマソングじゃん、これ」
オペレーター「松宮様。飲みものもヘルシーなものに変えることをお勧めします」
松宮「コーラはやめとくよ。コーヒーならいいわけ?」
オペレーター「ホットコーヒーですね? 砂糖とミルクはおつけしますか?」
松宮「砂糖をください」
オペレーター「松宮様。申しわけありません。砂糖を入力しましたら警告が出ました。この音楽、聞こえますか? 蒲田行進曲です」
松宮「…砂糖はあきらめるよ」
オペレーター「賢明な選択です。すばらしい。松宮様のランチメニューはとてもヘルシーになりました。では出来上がりまで45分ほどお時間をください。お越しをお待ちしております」
松宮「えっ、行くの? 宅配じゃないの?」
オペレーター「松宮様には、宅配ではなく来店していただくよう、画面に指示が出ております。法律により、松宮様に来店していただくよう説得することが、私どもに義務づけられています」
松宮「それもまた1分18秒なの?」
オペレーター「おっしゃる通りです」
松宮「要するに、歩けということだろ」
オペレーター「45分間しっかり歩いていただきたいので、ご来店の場所は品川とさせていただきます」
松宮「えっ品川? 目黒から品川まで歩くの? それって遠すぎるよ」
オペレーター「ちゃんと歩いてきていただいたことを確認するために、松宮様の万歩計をチェックさせていただきます。チェックが済みましたら、おほめいたします」
松宮「別にほめてほしくなんか、ねえよ」
オペレーター「お会計ですが、大豆ピザの B サイズにホットコーヒーを砂糖なし・ミルクなしでおつけして、全部で8,570円いだだきます」
松宮「えっ? 8,570円。それ、高すぎない?」
オペレーター「松宮様は私の保健指導を受けて注文が変わりましたね? 計算によると、松宮様の健康寿命はこれで2日、伸びました。この価格は保健指導料込みのお得な価格となっております」