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松宮園生です。
帰国したら、次期テケテケ村の村長に
立候補しようと考えています。
当選したら、宮崎県知事みたいに、
テケテケ村のセールスマンとして
全国行脚してテケテケ村の宣伝に
はげみます。
その練習として、まず今回は
テケテケ村の産業のひとつ、
サプリメント産業について説明しましょう。
テケテケ村はキホン農業の村ではありますが、村おこしでサプリメントも作っています。
村の土産物店をのぞいてみてください。
土産物としてご当地サプリメントを販売しています。
品揃えはこんな感じ(↓)。
■商品名:「テケテケ眼力」
目のサプリ。
視力アップではありませんが、夜盲症を防いだり、白内障を防いだりするのに役立つビタミンAやルテイン(カロチノイドの一種)などが入ってます。
■商品名:「テケテケ脳」
記憶力のサプリ。
イチョウ葉のエキスが入っています。
イチョウ葉エキスのアレルギーを持つ人もいるので、飲むときは気をつけて。
■商品名:「テケメン」
ヌードルではありません。
前立腺ガンを防ぐと言われるノコギリヤシのエキスが入っています。
このあいだ、共和党の大統領候補がある著名な支持者と一緒に壇上に立ち、「私達2名のの共通点は前立腺ガンから回復したことだ」と自慢していましたが、なにが自慢なのか、意味不明でした。
■商品名:「初動テケテケ」
風邪じゃないけど、風邪の予感がしたときに向いているサプリ。
エキナシアというハーブのエキスが入っています。
ただし、毎日飲むのではなく、あれ?と思ったときだけ飲みましょう。
飲み続けるのはよくないと言われています。
■商品名:「日々テケテケ」
いわゆるマルチビタミン・ミネラルと呼ばれているものの類。
ビタミンAやらBやらCやら、カルシウムやらマグネシウムやらいろいろ入っています。
毎日飲む、日常生活サポート型サプリです。
■商品名:「緑黄色テケテケ」
野菜をすりつぶしたパウダーをベジキャップ(植物性のカプセル。かつては動物性のゼラチンで作ったカプセルが主流でしたが、最近はベジキャップが主流になりつつあります)に収めたもの。
食物繊維ほか、いろいろな機能性成分が盛りだくさん。
■商品名:「テケテケ・カルマグ」
カルシウムとマグネシウムの混合サプリメントです。
ところで、サプリメントに興味のある方は、知ってるお店に出かけ、サプリメントに含まれるカルシウムとマグネシウムの比率を調べてみてください。
ほとんどのサプリメントは、カルシウムとマグネシウムの比率が2:1になっているはずです。
しかも、
「カルシウムとマグネシウムが2:1というのは理想的な比率です」
なーんてもっともらしい説明もついていると思います。
↓
でもこれは理想的でもなんでもありません。
カルシウムとマグネシウムの原料を一度に集めようとしたら、たいていの場合、2:1で集まってくるからに過ぎません。
理想的とかそういうものではなく、実態は製造する側の都合です。
ネタバレでした。
■商品名:「テケテケ・デトックス」
体内毒素排出型サプリ。
セレン(セレニウム)酵母入りです。
なぜ酵母なのかというと、「酵母を使ったほうが効果が高い」というもっともらしい説明が書かれていたりしますが、ホントは作る側の都合です。
細かい理由は長くなるので省略しますが。
■商品名:「抗酸化テケテケ」
フリーラジカルを退治する抗酸化物質、ビタミンEやコエンザイムQ10が入っています。
アンチエイジング型サプリです。
ビタミンEもコエンザイムQ10も非常に酸化しやすい物質なので、体内に入るまで酸化しないよう、ソフトカプセルに包まれ密閉されています。
■商品名:「テケテケ・ハングオーバー」
ハングオーバーとは二日酔いのこと。
ターメリック(ウコン)とマリアアザミが入っています。
マリアアザミには肝機能改善物質のシルマリンが含まれています。
■商品名:「味わいテケテケ」
味覚障害によいとされる亜鉛。
その亜鉛酵母のサプリです。
さっきのセレン(セレニウム)同様の理由で酵母が使われています。
以上です。
商品名はどうでもよいですが、使われている物質(成分)がどのような効能効果が持つのかはマジメに書きましたので、よかったら覚えちゃってください。
知ってるとトクです、たぶん。
◆◆◆
サプリメントを開発する専門家のことを
「フォーミュレーター」
といいます。
どんな物質(成分)とどんな物質(成分)とをどのように組み合わせ、どんな魅力を持つサプリメントを開発するか。
これを考える人のことです。
フォーミュレーター(formulator)とは「フォーミュレート(formulate)する人」という意味。
フォーミュレート(formulate)とは、「成分などを組み合わせて新しいものを作る」という意味です。
つまり、いろんなビタミンとかミネラルとかフィトケミカルとかを組み合わせ、なにかの目的を持ったサプリメントを作る、ということです。
ただ単に組み合わせるだけではありません。
もしかしたら組み合わせた物質同士が、どうしても混ざり合わなかったりします。
あるいは、混ざり合ったら毒になるかもしれないし。
混ざり合ったら爆発するかもしれません。
そういうのもちゃんと、考えながら開発するのです。
アメリカには
「独立してフリーで仕事をするフォーミュレーター」
がたくさんいます。
彼らは、サプリメント販売会社から商品開発の依頼を受けます。
「報酬としてン万ドル(ン100万円)払うから、なにか質の良いサプリメントをわが社のために開発してくれないか」
という依頼です。
とくに昨今は、ある種の「非凡な」サプリメントを作ってほしいという依頼が多いようです。
(もはや非凡とは言えなくなった例)
* 美肌サプリメントなんて、いまじゃどこにでも売ってますね。たいがい、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEにコラーゲンかガンマ・リノレイン酸を加えたものが多い。
* よく眠れるサプリメントも平凡になりましたね。メラトニン(ホルモン)を使うか、バレリアン(きわめて臭いハーブ)あたりが使われています。
* 花粉症予防のサプリメントも多いですね。トマトの抽出物を使っているものとか、ケルセチン(フラボノイドの一種)を使っているものとか。
(非凡な例)
* 浮気現場をごまかすサプリメント。ソッコーで言い訳を考えることができるように、脳のエネルギー源であるブドウ糖が、あっという間に脳に吸収されるようなサプリ。
* オヤジギャグを言ってしまったあとのサプリメント。「あの恥ずかしさを忘れてしまいたい」人のために気分を落ち着けるセント・ジョンズ・ウォート(ハーブの仲間)が入っています。
こういう、非凡であり、かつ、生活に密着したサプリメントの開発が望まれています。
通常のサプリメント会社(販売会社)は、自社工場を持っていません。
ですので、フォーミュレーターは知り合いの工場(サプリメント製造工場)と相談しながら、クライアント(販売会社)のためにサプリメントの新商品を開発していくわけです。
彼らの収入はよく分かりませんが、サプリメントの商品開発はなかなか高度なスキルを要求されるので、それなりに多くのお金をもらっているんじゃないかと思います。
日本では「フリーのフォーミュレーター」は極めてまれです。
日本でフォーミュレート能力を持っている人は、たいてい、どこかの製造工場に所属しています。
ところが、サプリメントが日本に普及してくるにつれ、フォーミュレーターの数が不足してきているみたいです。
その証拠に僕のところに
「フォーミュレーター、探してくれんかのう。あんた(松宮)が自分でやってくれてもええんじゃけど」
という問合せが、日本のサプリ製造会社からときどき来ます。
もちろん僕はフォーミュレーターではありませんので、あんたが自分でやってくれと言われても困るのですが。
じつはテケテケ村もフォーミュレーターが不足しています。
今後はもっと不足するんじゃないかと思っています。
誰か、この仕事に興味のある方いたら、ご一報ください。
松宮園生です。
「ワークサイト・ヘルス・プロモーション」
という言葉を聞いたことありますか?
(ある人は少ないと思うけど)
ワークサイトは「職場」
ヘルスは「健康」
プロモーションは「促進」
を意味しています。
つまり、ワークサイト・ヘルス・
プロモーションを直訳すると
「職場での健康促進」
という意味になります。
ここでいう「健康増進」とは、体の健康、
メンタルな健康、両方を意味してます。
「しょ、職場での健康増進だあ? 職場は仕事をするところだろーが。健康になる場所じゃねえ。健康増進活動やりたかったら、放課後か週末にだな、各自で好きなだけやればいいじゃん。会社はそんなこと、面倒見ねえよ。幼稚園じゃねえんだから」
という考え方もあります。
(かつては僕もそういう考えの持ち主でした)
しかし一方で、
* 働きすぎの社員が突然倒れたり、
* うつ病になる社員が増えたり
しているのも確かです。
放っておくと社員やその家族から訴えられたりします。
不健康な社員が多いと、たぶん会社の士気のためにもよくないでしょう。
だから社員の健康増進活動を会社としても応援するべきだ。
そう考える会社もあります。
ワークサイト・ヘルス・プロモーションとは職場での健康増進活動のことを言うわけですが、具体的には何をするのでしょうか?
具体的には
■いまいちダサい社員食堂。メニューなんかもチャーシューメンとかカツカレーとかハンバーグ定食とか、「とってもヘルシーよン」とは言いがたい中身だったりする社員食堂。それを、もちっとこう、21世紀っぽくキレイで洗練された感じにして、メニューも「たっぷりキノコのガーリックソテー」とか「10種類の野菜のグリル」とか、ヘルシーな聞こえのするものに替える。
■社内であまり使用されていない会議室とかあったら、そこに気軽なエクササイズ機械を何台か入れたりして、社員が好きなときに体を動かせるようにする。可能なら更衣室を、さらに可能ならシャワー設備を置く。
■忙しい会社員が、忙しいなかでもひと工夫すればできる運動とか、栄養バランスのよい食事をとるためのレストランの選び方、みたいなことを学ぶ健康セミナーを定期的に、頻繁に開く。
■食育のイベントを開催する。社員を対象に行ったり、社員の家族にも来てもらって行ったりする。
…こういうことを、「計画的に」するわけです。
個人が自分で食事に気をつかったり近所のジムに行ったり本を買って食育の勉強をしたりするのは、ワークサイト・ヘルス・プロモーションとは言いません。
それは単に個人の健康管理です。
じゃなくて、会社が社員のためにわざわざお金を使い、社員がヘルシーになれる仕事環境を作ってあげることをワークサイト・ヘルス・プロモーションと言います。
◆◆◆
ワークサイト・ヘルス・プロモーションという言葉が存在していることからお分かりのように、アメリカの会社ではこのワークサイト・ヘルス・プロモーションが盛んに行われています。
言い換えると、会社が社員の健康増進のためにお金を出すことが盛んに行われています。
ワークサイト・ヘルス・プロモーションの専門家もアメリカには大勢います。
専門家は何をするかというと、
「ワークサイト・ヘルス・プロモーションのプログラム作り」
をします。
会社の社長さんが
「わが社もワークサイト・ヘルス・プロモーションちうのをやってみるべ」
と思ったときに、
「ほんで、何をするべ? 何をどんな手順でやればいいべや? お金はいくら払うべや? 誰に払うべ?」
という問いに答えるのが、専門家の仕事です。
専門家は会社の規模や業態などを考慮しながら、ワークサイト・ヘルス・プロモーションの年間計画を立てます。
* いつ、社員食堂をリニューアルするか
* どのように社員食堂をリニューアルするか
* いつ、エクササイズ・ルームを作るか
* どのようなエクササイズ・ルームにするか
* どんなセミナーをどんなタイミングで開くか
* どんな食育イベントをどんな頻度で開催するのか
…といったことを計画します。
そのうえで、全部でお金がいくらかかるかを計算します。
計算するわけだけど、エクササイズ・マシンのメーカーなどを相手にちゃんと値引き交渉なんかもやる。
で、そのプログラムを社長に説明し、お金がいくらかかるのかも説明し、社長がウンといったら実行に移ります。
やってみると思いどおりいかないこともあります。
* せっかくお金をかけて社員食堂を変身させたのに、社員があまり利用してくれない。
* せっかくお金をかけてエクササイズ・ルームを作ったのに、社員があまり利用してくれない。
* セミナーを開いたのに、聞きにくる人がまばら。
* 食育イベントをしたのに、参加者がまばら。
…こうした問題を解決し、社員をヨイショして参加者を増やすのも専門家の仕事です。
◆◆◆
なぜアメリカではワークサイト・ヘルス・プロモーションが盛んなのでしょうか?
ときは1991年。
湾岸戦争があった年です。
心理学者のロバート・H・ローゼン博士が
「ヘルシーカンパニー」
という本を出しました。
この本にはこういうことが書いてあります。
* 社員の健康増進は、会社の経営の重要なファクターであるぞよ。
* 社員がその活力をいかに発揮するかで、会社の業績が違ってくるぞよ。
* ストレスの少ない職場づくりをせんとあかんぞよ。
* 社員が健康でいたいと思うのを、会社は応援せんとあかんぞよ。
* 社員の健康のために努力した会社は、報われるぞよ。
日本の諺でいうと、
「情けは人のためならず」
てな感じ。
社員の幸せのためにワークサイト・ヘルス・プロモーションをするわけだけど、結果として会社の業績も上がり、社長さんの株も赤丸急上昇!
人のためにやったけど、自分のためにもなった。
よかったよかった。
こんな感じです。
社員の健康増進に会社がお金を出すことが、実は会社のためにもなる。
これは画期的な考え方でした。
「ヘルシーカンパニー」は話題になり、会社の社長さんたちのバイブルにもなりました。
ワークサイト・ヘルス・プロモーションの専門家は、ヘルシーカンパニーを支援していることから、
人々に
「ヘルカンさん」
と呼ばれ、長く親しまれましたとさ。
そんなわけで、アメリカはワークサイト・ヘルス・プロモーション王国になっているのです。
(以下次号)
(注意)
食事中には読まないことをオススメします。
◆◆◆
テケテケ村でイチゴ農家をしている舎弟の小判大介が、仕事に余裕ができたのか、突然アメリカに遊びに来ました。
理由は分からないのですが、さっきから
「浮気農家のジョン・ソイビーンを紹介しろ」
とやかましい。
でもこの僕が、そんなメンドクサイことをするはずがありません。
小判大介の要望は、黙殺です。
まあしかし、友が遠方から来てくれるのは喜ばしい話です。
観光案内でもしてあげましょう。
そんなわけで、小判大介と連れだってロサンゼルスの繁華街に出かけた僕。
繁華街の一角にある、有名な自然食品店をぶらぶらしていたときのこと。
その店を仮に
「食育原理主義の店 タリボン」
と呼ぶことにしましょう。
同じ自然食品店でもホールフーズ・マーケットあたりは内装も近代的。
雰囲気も清潔で居心地がよいのでけっこう「安心して遊べる」。
しかしタリボンはぜんぜん違います。
入った瞬間、
「あ」
思わず声が出ます。
敵に追われているスパイが、隠れようとしてそのへんの空き家のドアをあけたら、そこにも追ってがいた。
そんなときの
「あ」
になんとなく近い。
たちこめる妖気。
嗅いだことのない不思議なアロマ。
ビミョーに静かな店内。
至るところにいるのに、気配のしない店員たち。
明るいのか暗いのかよくわからない店構え。
「IN(入口)」と書いた立て札はあるのに、「OUT(出口)」の立て札が見当たらない。
仏像、立ってます。
そんなたたずまいです。
怪しいもの好きの小判大介はタリボンが一目で気に入ったらしく、さっそくお土産選びを始めました。
小判大介がアメリカにいることはテケテケ村の全員にバレています。
つまり彼は全員からお土産を期待されているわけです。
あの、扱いにくい「ミスミのジイサン」も例外ではありません。
ムスっとしているくせに、お土産がほしいのです。
もしお土産を買わずに帰国したら、いろいろ都合の悪いことが起きることでしょう。
ですので、お土産をどうしようかと悩んでいた小判大介にとっては、タリボンはまたとない「漁場」なのでありました。
小一時間かけてお土産を選んだ小判大介。
イグサで編んだような買い物カゴが、有機とかそういうのなんだろうけど正体不明の食品でいっぱいになっています。
そのときです。
「松宮さん、これ、どういう意味ですか?」
サプリメントっぽいのが並んでいる棚のところから、小判大介が手まねきをしています。
「アンチ・パラシテって何ですか?」
見ると、その棚には大きく
「ANTI PARASITE」
と書いてありました。
ローマ字読みをすれば「アンチ・パラシテ」ですけど、英語読みをすると「アンタイ・パラサイト」です。
うげ。
寄生虫対策のサプリメントだ…。
「き、寄生虫ですか?」
小判大介も目を白黒(←死語)させています。
「そんなサプリメント、あるんですか? しかもこんなにたくさんの種類が?」
「オレもこんなの、初めて見たよ」
寄生虫対策サプリの棚は、両手を広げたくらいの幅で、2メートルくらいの高さがありました。
そんな棚いっぱいに、いろんな種類のサプリメントが並んでいたのです。
これはいったい何を意味するのでしょうか?
僕は冷や汗をたらしながら言いました。
「店の奥に、オーガニック野菜のコーナーがあったよな。きっとあれ、筋金入りのオーガニック野菜なんだろう」
「筋金入りのオーガニック野菜?」
「だから食べると、寄生虫が…」
小判大介の顔色が変わりました。「や、やめてください」
「ここで買い物をする人は、自然な食生活をするためなら、寄生虫がわいても構わないと思ってるんじゃないか?」
小判大介は黙りこみ、買い物カゴいっぱいに詰めこんだ商品を元の場所に戻し始めました。
この店で買い物をする人は、ロサンゼルスのなかでもわりと生活が豊かで、ロハスっぽいライフスタイルをしているはずです。
ある意味、最先端の人たちなんだけど。
その最先端の人たちは、寄生虫を受け入れる気持ちになっているんだ…。
意気消沈して店を出た小判大介と松宮。
西海岸のさわやかな夕陽がまぶしかったのが、唯一の救いでありました。
読者のみなさま、ゴメンナサイ。
今回はショックのあまり、オチ無しです…。
松宮園生です。
カジノに来てます。
浮気農家のジョン・ソイビーンと一緒です。
(ジョン・ソイビーンが以前カジノに来た時の話はここをクリック)
最近羽振りのよいジョン・ソイビーンは、
贅沢にもファーストクラスか何かで来たようです。
食うのが精一杯の僕はアラスカ航空のマイレージが貯まっていたのを使い、エコノミークラスのしかも窓側でも通路側でもない真ん中の席で泣きながら来ました。
アメリカでカジノというと、
西のラスベガス
東のアトランティックシティ
が有名ですが、ジョン・ソイビーンと僕が来ているのは
リノ
という街です。
ラスベガスと同じネバダ州にあります。
ラスベガスに比べたらいくぶん地味なところです。
とはいえ、リノもカジノとしては立派です。
リノに着いたら、空港ロビーにいきなりスロットマシンが並んでいます。
いろんな人がスロットマシンに興じています。
よくみると年配の人が多い。
掛け金が5セント(日本円で6円から7円)の台の前で、いつまでもジャラジャラやっています。
それを尻目に僕なんかは宿泊予定のホテルに移動し、そのホテルのカジノで少ない小遣いをさらに少なくするために頑張るわけです。
ジョン・ソイビーンとはホテルで待ち合わせをしました。
バイオ燃料用のトウモロコシが売れて売れてしょうがない彼は、なんだか昔よりも服装がよくなったみたいです。
ジョン・ソイビーンがカジノにいることは奥さんには内緒です。
なぜ内緒なのかはよく分かりません。
理由を聞いても教えてくれないので。
ホテルのレストランで夕食をともにした後、彼は言いました。
「マツミヤ殿。ここから先は自由行動といたそう。拙者のことは気にせずに、ブラックジャックにでもに興じるがよいでござる」
そして驚いたことに、その夕食をおごってくれました。
ジョン・ソイビーンを観察していると、日米の農家ってぜんぜん違うなあと思います。
日本の農家さんって、
「農業を守る。土地を守る」
という熱い思いにかられている人がけっこう多かったりするし、
「農業は金儲けではない。儲けるために農業をするというのはイカン」
みたいなセリフをよく聞きます。
農業が、そのまま根性試しとか人生修業とかの場になっている感じです。
それに比べてジョン・ソイビーンのあっけらかんとしていることといったら。
人生修業も何もありません。
この男は「農業は金儲け」と割り切っています。
で、儲かったら株を買ったり、経営コンサルタントに相談して儲かりそうだったら設備投資をしたり、それでも余裕があったらラスベガスやリノに来て「蓄財」に励むわけです。
いいんだか悪いんだか。
その晩、僕は3時間ほどブラックジャックに挑戦し、勝ったり負けたりを繰り返して飽きたので、ホテルの部屋に戻って眠りました。
翌朝、ジョン・ソイビーンから朝食の誘いがあったので再びレストランで待ち合わせをしたところ…。
「夕べは事件があって、浮気をしそこなったでござる」
と、昨夜の出来事を語り始めました。
◆◆◆
ジョン・ソイビーンはルーレットに挑戦していました。
負けてもよいでござる、と鷹揚に構えていたのが良かったのか、その日は勘が冴え、どの番号に球が来るのか、ピンとくる瞬間がときどきあったようです。
3勝2敗くらいの勝率を続ける彼のところにはチップが集まり、気がついたら隣に魅力的なブロンド女性が座っていました。
「ピナコよ。よろしく」
ブロンド女性はそう言って、ジョン・ソイビーンに握手を求めました。
しばらくすると、ピナコは言いました。
「ねえ。あなたのパワーを分けてくれないかなあ。いま全財産2000ドル(約26万円)持ってるんだけど、これを思いきり増やしたいの。チマチマ分散投資するのは嫌。どれか1つの数字に賭けたいの。次は何番が来るか、教えてくれない?」
ジョン・ソイビーンは答えました。
「そなたの年齢と同じ番号に全額賭けるとよろしいでござる。当たれば36倍でござるよ」
ピナコは笑いながら
「いい加減なことを言うのね。わたしが何歳かも知らないくせに」
「だまされたと思ってやってみるがよいでござる」
数分後…。
ピナコがその場で失神してしまいました。
◆◆◆
(朝食の場面に戻ります)
「えっ、どういうこと?」僕は聞きました。「何があったの? なんで気絶したの?」
「実はでござる」ジョン・ソイビーンは言いました。「そのピナコなる女性は、28番のところにチップを全部、置いたでござる。されど、実際に来たのは36番でござった」
松宮園生です。
仕事柄、毎日メールが200通くらい来るのですが、
今日はそのなかにこういうのが2通、混じっていました。
紹介します。
◆◆◆
(1通目)
松宮園生様。
日本食育大学に松宮さんのメルアドを問い合わせたら、
個人情報だというのにあっさり教えてくれましたので、メールを書いてます。
あたしの名前は「サトミ51」と言います。
フリーの殺し屋です。
ニキータ検定の1級も持っています。
あっでも安心してくださいね。
今のところ松宮さんを狙っているのではありませんから。
依頼がないかぎり、大丈夫です。
依頼がないかぎり、ね。
じつはあたし、ある食育の教団から
「マ○○ナルドのお得意様トップ50人」
「吉○家のお得意様トップ50人」
というリストを渡されました。
単純に合計すると100人なんだけど、両方に名前の載っている人が12人いますので、実際には全部で88人。
「食育の敵にダメージを与えるために、この88人を何とかしろ。言ってる意味はわかるな」
というのが、その食育教団からの依頼だったの。
今日までに29人、達成しています。
あと59人。
でもだんだん難しくなってきました。
どうやらマ○○ナルドと吉○家に気づかれたらしくて。
彼らも用心棒を雇って、あたしの仕事の邪魔を始めたんです。
許せない。
言っとくけど、あたしはただの一度も、仕事をしくじったことはないのんよ。
このこと忘れないでね、松宮さん。
松宮さんは食育の味方でしょ。
だったら手伝ってくれるよね。
報酬ははずむわ。
まさか断らないと思うけど、もし断ったら、明日の合コン、犠牲者が出るわよ。
明日の朝、も一回メールするから、携帯オンにしておいてね。
サトミ51
◆◆◆
(2通目)
松宮先生
はじめまして。
マ○○ナルドで食育担当をしております、ジャッカル米山と申します。
ご相談がありまして。
世間では私どものことを「食育の敵」と考えるフシがありますが、たいへんな誤解でございます。
私どもは食育の教材を必死に作っておりまして、学校の教育現場で実際に活用いただいております(←松宮コメント:これホントです)。
また、本国アメリカでは、私どもは「ファイブ・ア・デイ」と呼ばれる健康増進運動の役員をしています(←これもホント)。
果物の普及にも貢献しておりまして、世界最大のリンゴ消費者はマ○○ナルドでございます(←これもホント)。
にも関わらず、世間の食育オタクはわが社を目の敵にしているのでございます。
先日、CIAから連絡がありました。
「アーケイディア食育原理主義教団」というところが、「サトミ51」というオカマの殺し屋を雇って私どものお得意様のお命を狙っているというのです。
調べてみますと、たしかに私どもの大切なお客様が何人も、謎の死を遂げておりました。
そりゃ、私どもを憎いと思う人はいますけれども、殺人はいけませんや。
CIAも困ったものです、暗殺を防げないなんて。
これでは何のために多額のワイ…政治献金を出しているのか分かれしまへん。
まあ、CIAを苛めてもしかたがありませんので、私どもは屈強なボディーガードを集めたり戦略核兵器を用意したりして警備体制を強化することとしました。
名づけて
「マヌーバー・イン・ザ・ダーク」。
ただし、私どもも無用な殺生は好みません。
できるだけ平和に解決したいという思いは、ブッシュ大統領よりも強い。
(それって強いの? というツッコミはしないでください)
ですので、アーケイディア食育原理主義教団に話し合いをしたいと申し入れております。
そこで相談です。
松宮先生には、この交渉団のリーダーになっていただきたい。
報酬は弾みます。
普段から
「食育オタクはダサい、昭和っぽい」
と食育原理主義をバカにしている先生のことですから、まさか断られることはないと信じております。
しかし不幸にも、もし引き受けていただけなかった場合は、先生をアーケイディア食育原理主義教団の一員とみなし、
「マヌーバー・イン・ザ・ダーク」
の標的といたします。
具体的には、明日の先生の合コン現場を空爆いたします。
私どもは日頃から世界最大の穀物会社カーギルと親しくしておりまして、カーギル社が持っている人工衛星で先生の行動の監視を始めております。
空爆など、お茶の子さいさいでございます。
(カーギルについて詳しく知りたい人はここをクリック)
明日の朝にもう一度、携帯メールします。
それまでに本件を熟慮していただき、
* 引き受けて多額の報酬をもらうか
* 断って空爆されるか
を決断してください。良い返事をお待ちしております。
ジャッカル米山
◆◆◆
僕は溜息をつきました。
マジかよ…。
明日の合コンは「お持ち帰り」無理そうだな…。
(中止しないんかい)
(つーか、悩みはそこかい)