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(前回までのあらすじ)
先進国の飽食。
恵まれない国の飢餓。
神様は
「メタボ地獄」
「ウエルネス天国」
を作って人間界に警鐘を鳴らそうとしました。
まず閻魔大王をメタボ地獄の店長に任命しましたが、これが開店以来大盛況。
神様自身が直接統治をするウエルネス天国も、最初こそ閑散としていましたが、徐々に住民が増えていきました。
一方、人間界では。
神様の指示で「メタボ撲滅結社」が暗躍し、多くのメタボ人間が行方不明になっていました。
メタボ撲滅結社はメタボ人間に予告状を送り、1年以内にメタボから脱却できなかった人を抹殺していたのです。
◆◆◆
阿部マリエという管理栄養士がいました。
「第1回美人栄養士コンテスト」で優勝し、「初代ミス管理栄養士」の地位につきました。
その後1年くらいのあいだに、
*食育指導士
*フードコーディネーター
*野菜のソムリエ
*雑穀のソムリエ
*NR(栄養情報担当者)
あたりの大手食育系資格を総なめし、「食育の女王」とも呼ばれていました。
その後、彼女は「メタボ撲滅結社」に狙われたメタボおじさんの救済活動を始めます。
何十人ものメタボおじさんが彼女のおかげで内臓脂肪を減らし、暗殺を免れました。
救われた人々は、彼女を
「アベ・マリエ、アベ・マリエ」
と呼び、感謝し、崇拝しました。
阿部マリエはあっというまに時代の寵児となり、大金持ちになりました。
◆◆◆
ところがその阿部マリエのところに、メタボ撲滅結社から予告状が来たものですから、たまりません。
世間は大騒ぎになりました。
「阿部マリエはメタボ撲滅結社とつるんで荒稼ぎしてんじゃね?」
まあ疑われても仕方がないというか、そういう疑惑を追及しているマスコミもいまして、
「今回の事件は阿部マリエが自分にかけられた疑いを晴らすための茶番劇だ」
という批判も噴出したりしました。
疑惑が本当かウソかはともかく。
阿部マリエはメタボではなかったにもかかわらず、予告状をもらってしまいました。
その後、マリエのところには毎日、メタボ撲滅結社からメールが届きました。
「あと291日」
「あと205日」
「あと134日」
「あと80日」
「あと17日」
「あと5日」
「あと4日」
「あと…」
マリエはメタボではないので、こんなカウントダウンされてもどうしていいか分かりません。
子どもがいない人のところに「子どもは預かった。返してほしくば身代金を払え」という脅迫状が来るようなものです。
マリエはおそらく誰かと間違えられて、カウントダウンにさらされてしまったのでしょう。
迷惑もいいところです。
とはいえ放置して何もしなかったら、カウントダウンが終わった時点でマリエは暗殺されてしまうかもしれません。
「マリエ様を救え」
「メタボ撲滅結社を探しだせ」
マリエファンも必死に、カウントダウンを止めさせるために、あの手この手でメタボ撲滅結社を見つけようとしました。
警察も動きました。
しかしメタボ撲滅結社を見つける試みはすべて失敗。
ついに1年のデッドラインがやって来ました。
はたして阿部マリエは人違いで抹殺されてしまうのか?
マリエを守るために厳重な警備体制が敷かれました。
大勢のファンが集まり、マリエの住居を取り囲みました。
しかしそうした努力にも関わらず、阿部マリエは夜中に忽然と消えました。
抹殺されてしまったのです。
2度と彼女が人々の前に姿を見せることはありませんでした。
◆◆◆
ひゅるるるる…。
「メタボ撲滅結社」の魔の手ににかかったマリエは、メタボ地獄に落ちました。
人違いのまま抹殺され、挙句の果てに地獄行きになるなんて、ひどい話です。
マリエは嘆き悲しみました。
ところが実際に行ってみると、メタボ地獄は、マリエにとっては意外に住みやすいところでした。
というのは、閻魔大王が彼女を優遇してくれたからです。
メタボ地獄の性格上、スレンダーなカワイコちゃん(←死語)がやって来るのはそもそもなかったわけですから、阿部マリエの来店に閻魔大王も鬼たちも大喜びだったのでした。
おっさんしかいない場末の麻雀店に、美人の常連が1人いるようなものです。
マリエも最初はメタボ地獄に落ちたことに戸惑っていましたが、閻魔大王が気さくなオニイサンだったことや、彼女に救いを求めるメタボおじさんがここにはめちゃ大勢いることを知り、メタボ地獄での生活にすぐに慣れました。
神様が異変に気づいたのは、阿部マリエが人間界から姿を消してから1ヶ月もたったころでした。
神様は人間界の新聞をどきどき読んでいたのてすが、ここしばらくは忙しくて読むのをサボっていました。
久しぶりに読んでビックリ。
阿部マリエが抹殺されているではありませんか。
神様は「メタボ撲滅結社」本部に電話をかけ、どうなっているのか問いただしました。
メタボ撲滅結社のスボークスマンも驚きました。
阿部マリエを狙う理由がなかったからです。
「か、神様」スボークスマンは早口で言いました。「な、なにかの間違いかと思います。し調べますのでおおおお待ちください」
調べた結果、メタボ撲滅結社が阿部マリエに予告状を送り抹殺したのは、パソコン入力のミスによるものだと分かりました。
やはり手違いだったのです。
手違いで、マリエはメタボ地獄に落ちてしまいました。
その報告を受け、神様はメタボ撲滅結社を解散させてしまいました。
人間社会に恐怖をまき散らしたメタボ撲滅結社は、ここに短い活動期間を終えたのでありました。
さらに神様は、マリエをメタボ地獄からウエルネス天国に移そうとしました。
ところがです。
閻魔大王が、彼女を手放そうとしませんでした。
「初代ミス管理栄養士」であり、
* 食育指導士
* フードコーディネーター
* 野菜ソムリエ
* 雑穀ソムリエ
* NR(栄養情報担当者)
の資格を持つ彼女は、メタボ地獄のアイドルになっていたのです。
(イケメンや美女はみんなウエルネス天国に行ってるじゃないか。それに比べてメタボ地獄はイケてないのばっかり。阿部マリエの1人くらい、こっちにくれたっていいじゃないか)
これが閻魔大王の思いでした。
「そんなわけですので神様」閻魔大王は電話の向こうで言いました。「いくら神様の仰せとはいえ、阿部マリエはお渡しできかねます。お許しください」
「じゃが、彼女は本来、ウエルネス天国に行くはずの人間じゃぞ」神様は辛抱づよく言いました。「本来行くべきところに行くべきじゃないかね」
いや、本来なら人間界に生きているはずですって。
閻魔大王は毅然として言いました。
「どのようにおっしゃいましても阿部マリエはお渡しできません」
「わしがこれほど言ってもか」神様は机をたたきました。「このわからず屋め。見ておれ、議会に訴えて、阿部マリエを天国に移すための行政処分をさせてやる」
「議会。行政処分…。そうでございますか。よろしいでしょう、やってみてごらんなさい」閻魔大王はニヤニヤして答えました。「議会議会とおっしゃいますが、神様、政治家の先生方の大半は、こっちにいるんですけど」
(以下次号)
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