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2010.04.26 19:23

赤い疑惑

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松宮園生です。

友人のジョン・ソイビーン氏は、アイダホでトウモロコシ農家をしています。
そのジョンが海外旅行からアメリカにかえってきたときの話です。

ジョンを乗せた帰国便はシアトル空港に着陸しました。
乗客はまず入国審査を受けます。
ジョン・ソイビーンはアメリカ人ですので、入国審査で手間取ることはまずありません。

次に農産物検疫(兼、税関)を通ります。
普通は何事もなく通ります。

ジョン・ソイビーンも何事もなく通ったのですが、そのとき、隣のブースで東洋人とおぼしい年配の男が検疫官に問いつめられているのに気がつきました。
東洋人と検疫官のあいだには大きなスポーツバッグ。
むろんジッパーが開けられており、バッグの中身が露出しています。
東洋人のほうは英語が話せないらしく、会話が成り立っていません。

検疫官はスポーツバッグから露出しているビニール袋を指差して
「これは何だ」
と聞いています。
東洋人のほうはパニックを起こしたのか、
「あー」
とか
「うー」
とか言うばかり。

何を揉めているのかと、ジョン・ソイビーンが目をやると…。
ビニール袋に入っていたのは、大量のキムチでした。

ジョン・ソイビーンは歩み寄り、検疫官に話しかけました。
「検疫官どの。差し出がましいと存ずるが、それはキムチという、韓国の食品でござるよ」
検疫官はほっとした顔で「あんた通訳できるかい」
「通訳は無理でござるが…。キムチはピクルスに近い食べものに候。材料はハクサイでござる」
「色が赤いのは血か?」
「ははは。さにあらず。トウガラシの色でござるよ」

「ビニール袋がパンパンに膨れ上がっているのはどうしてだい」
確かにビニール袋は風船のようになっています。
ジョン・ソイビーンは答えました。「発酵が進んでいるのでござろう。ガスが出ておると見たが」
「それは毒ガスかい?」
「毒ではござらん」

検疫官はハサミを取り出し、ジョン・ソイビーンに言いました。
「あんた悪いけど、今からビニール袋を開けるとこのジイサンに伝えてくれないかな」
「拙者、通訳は無理でござる」
「そっか。残念だな」
検疫官はビニール袋を切ろうとしましたが、手がすべったのかハサミを落としてしまいました。
ハサミはジョン・ソイビーンの足元に。

ジョン・ソイビーンは腰をかがめ、落ちたハサミを拾いました。
そのときです。
パン!
と音をたててキムチ袋が破裂しました。
発酵のガスの圧力が、ビニール袋の限界を超えたのでした。

周囲に飛び散るキムチ。
あちこちで上がる、オーマイガ!という叫び声。

東洋人にも検疫官にも、ジョン・ソイビーンにも、大量のキムチがモロに降りそそぎます。
ショックでへたりこむ検疫官。

キムチにまみれた真っ赤な顔を想像してみてください。
ちょっとしたスプラッタ映画です。

そこへ、空港警察の警察官が現れました。「銃声か? 何があった? なんだこのニオイは?」

警察官はへたりこんでいる検疫官の、真っ赤になった悲惨な顔をみてびっくり。
「おい、大丈夫か?」

その眼が、キムチを浴びて呆然とたたずんでいるジョン・ソイビーンの姿をとらえました。
警察官の表情がさっと変わります。
「おまえ、なにをしたんだ」

ハッと我にかえったジョン・ソイビーン。
その手には、さっき拾ったハサミが握られていました…。


(実話をもとに脚色いたしました)

 

 

 

 

 

 

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