ホーム > 日本食育大学未来学部 >
松宮園生です。
メタボというと
「まあ何となく体型に問題のあるオジサン」
というイメージですが、実際にはどんな人をメタボというのでしょうか?
つまり、メタボの基準って、何なのでしょうか?
実をいうとこの基準、これまで国によってバラバラでした。
それが最近になって
「メタボの基準を国際的に統一しよう」
という話が盛り上がっているようです。
で、新しくできるかもしれない国際基準では、
「腹回りが何センチか」
ということはあまり重要じゃなくなるらしい。
困ったのは日本です。
日本のメタボ検診では、「腹回り85センチ(男性)」というのがシンボルみたいになっちゃってますから。
どうする、日本?
で、もし日本も国際基準に従って「腹回り85センチ(男性)」を捨てるとなったら、どうなるの?
ちょっと想像してみました。
◆◆◆
日本が「腹回り85センチ(男性)」を捨てた日 (1)
<山中伸治さん(40代 サラリーマン 既婚)のケース>
日刊ウエルネス新聞の1面に、
「腹回り85センチ、今日から廃止」
という記事がデカデカと載りました。
朝刊を広げた山中さんはその記事を食い入るように見つめます。
その目からは大粒の涙が…。
「つまり、オレのメタボ、治ったんだ」
喜びに身を震わせる山中さん。
治った、ていうのとは違うんじゃね?
そんな僕のツッコミも届かず、山中さんは晴れ晴れした気分で出社します。
「新聞、見たかい」さっそく隣の課の飯沼課長(女性)に話しかけます。
山中さんと飯沼課長は同期入社ですが、出世に遅れた山中さんはまだ課長代理です。
「新聞見たかいって、何のこと?」
「腹回りが85センチを上回っても、もうメタボとは言わないんだってさ。オレはもうメタボじゃない!」
「ふうん」飯沼課長は冷めた声で返しました。「でも山中君がビール腹で、若い子にモテないのは同じないんじゃない」
「そ、それはそうなんだけど」
狼狽して肩を落とす山中さん。
そこへ電話が鳴りました。
「山中課長代理、電話です」
山中さんは受話器を取りました。
「もしもし山中です」
「銀座アルカトラス・クリニックの佐久間です」
山中さんの顔から、サアッと血の気が引けました。
「佐久間…象子…」
「山中さん。今日は保健指導の日です。サボってはいけません。確認のため、電話しました」
「で、ですが」
「山中さん、まさか今朝の新聞を見て、もう保健指導は受けなくていいと思っているのではないでしょうね」
「違うんですか」
「確かに山中さんは『法定メタボ』ではなくなったかもしれません。しかし、法が許しても、わたくし佐久間象子は許しません」
「ひ、ひぇー」
「なお、『法定メタボ』ではなくなった場合、保健指導料の割引はなくなります。定価をいただきますから、そのつもりで」
「ね、値上がりするんですか」
「逃がしませんよ」
電話が切れました。
◆◆◆
日本が「腹回り85センチ(男性)」を捨てた日 (2)
<市川光雄さん(40代 サラリーマン 1人暮らし独身)のケース>
郵便ポストにハガキが届いていました。
ハガキにはこう書いてありました。
「市川様。新聞等でご存じと思いますが、メタボの基準に腹囲85センチは必須条件ではなくなりました。よかったですね。これで市川様も辛く堅苦しい保健指導から解放されます。好きなもの食べてください。今まで銀座アルカトラス・クリニックをありがとうございました。これからの市川様の健やかな日々をお祈り
いたします。ごきげんよう。管理栄養士ナオコ」
好きなもの食べてください、って何だよ…。
市川さんの目から、涙がはらはらとこぼれました。
ナオコと過ごした保健指導の日々が、走馬灯のようにまぶたの裏を駆けめぐります。
このまま自然消滅していいのか?
市川さんは、勇気をふりしぼって電話をかけました。
「銀座アルカトラス・クリニックでございます」
「あ、あの。市川と申しますが、ナオコ先生をお願いします」
「もうしわけごさいません。今週は非番でごさいまして」
「そ、そうですか…」
「ナオコに何か? 保健指導のご相談でしたら、今日は佐久間が担当しております」
「さ、佐久間…象子…」
市川さんの顔が恐怖に歪みます。
電話の相手は、淡々と続けます。「佐久間につなぎましょうか?」
「い、いえ、結構です。さいなら」
あわてて電話を切りました。
どうしようもない失望感をもてあます市川さん。
フラれたのとクビになったのが同時に来たような、そんな気分でした。
「ナオコ先生」
弱々しくつぶやきます。
その足元で、腹を空かせた飼い猫のタイコが
「どうでもいいけど、ご飯まだ?」
という意味でニャーと鳴きました。