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松宮園生です。
友人のジョン・ソイビーン氏は、アイダホでトウモロコシ農家をしています。
そのジョンが海外旅行からアメリカにかえってきたときの話です。
ジョンを乗せた帰国便はシアトル空港に着陸しました。
乗客はまず入国審査を受けます。
ジョン・ソイビーンはアメリカ人ですので、入国審査で手間取ることはまずありません。
次に農産物検疫(兼、税関)を通ります。
普通は何事もなく通ります。
ジョン・ソイビーンも何事もなく通ったのですが、そのとき、隣のブースで東洋人とおぼしい年配の男が検疫官に問いつめられているのに気がつきました。
東洋人と検疫官のあいだには大きなスポーツバッグ。
むろんジッパーが開けられており、バッグの中身が露出しています。
東洋人のほうは英語が話せないらしく、会話が成り立っていません。
検疫官はスポーツバッグから露出しているビニール袋を指差して
「これは何だ」
と聞いています。
東洋人のほうはパニックを起こしたのか、
「あー」
とか
「うー」
とか言うばかり。
何を揉めているのかと、ジョン・ソイビーンが目をやると…。
ビニール袋に入っていたのは、大量のキムチでした。
ジョン・ソイビーンは歩み寄り、検疫官に話しかけました。
「検疫官どの。差し出がましいと存ずるが、それはキムチという、韓国の食品でござるよ」
検疫官はほっとした顔で「あんた通訳できるかい」
「通訳は無理でござるが…。キムチはピクルスに近い食べものに候。材料はハクサイでござる」
「色が赤いのは血か?」
「ははは。さにあらず。トウガラシの色でござるよ」
「ビニール袋がパンパンに膨れ上がっているのはどうしてだい」
確かにビニール袋は風船のようになっています。
ジョン・ソイビーンは答えました。「発酵が進んでいるのでござろう。ガスが出ておると見たが」
「それは毒ガスかい?」
「毒ではござらん」
検疫官はハサミを取り出し、ジョン・ソイビーンに言いました。
「あんた悪いけど、今からビニール袋を開けるとこのジイサンに伝えてくれないかな」
「拙者、通訳は無理でござる」
「そっか。残念だな」
検疫官はビニール袋を切ろうとしましたが、手がすべったのかハサミを落としてしまいました。
ハサミはジョン・ソイビーンの足元に。
ジョン・ソイビーンは腰をかがめ、落ちたハサミを拾いました。
そのときです。
パン!
と音をたててキムチ袋が破裂しました。
発酵のガスの圧力が、ビニール袋の限界を超えたのでした。
周囲に飛び散るキムチ。
あちこちで上がる、オーマイガ!という叫び声。
東洋人にも検疫官にも、ジョン・ソイビーンにも、大量のキムチがモロに降りそそぎます。
ショックでへたりこむ検疫官。
キムチにまみれた真っ赤な顔を想像してみてください。
ちょっとしたスプラッタ映画です。
そこへ、空港警察の警察官が現れました。「銃声か? 何があった? なんだこのニオイは?」
警察官はへたりこんでいる検疫官の、真っ赤になった悲惨な顔をみてびっくり。
「おい、大丈夫か?」
その眼が、キムチを浴びて呆然とたたずんでいるジョン・ソイビーンの姿をとらえました。
警察官の表情がさっと変わります。
「おまえ、なにをしたんだ」
ハッと我にかえったジョン・ソイビーン。
その手には、さっき拾ったハサミが握られていました…。
(実話をもとに脚色いたしました)
松宮園生です。
「食育おねいさん」
というサービスが、無料お試し期間中だったので
試してみました。
萌え系の食育おねいさんが、メールで食事指導を
してくれるんだそうです。
まずはパソコンを立ち上げ、ホームページから。
ホームページにログインすると…。
「今日の日付を入力してください」
入力しました。
「入力するのは朝食ですか、昼食ですか、おやつですか、デナーですか」
デナーだけ英語かよ。
つーか、それを言うならディナーだろ?
ツッコンでもしかたがないので、そのまま続行です。
「昼食」
を選択しました。
「次のなかから、食べたものにもっとも近いものを選んでください」
絵(アイコン)がいろいろ出てきました。
焼きそばを選んでクリックしました。
すると…。
食育おねいさんから携帯メールが送られてきました。
「こんにちは、松宮さん。食育おねいさんのナオコです。焼きそばはあんまりお勧めしないのよねー。ちゃんと野菜入れたのお?」
返事を送りました。
「おねえさん、こんにちは。お店で食べたんで自分では入れてないけど、ニンジンとかいっぱい入ってたよ」
メールが来ました。
「おねえさんじゃなくて、おねいさん。気をつけてね。間違えたら、足蹴にしちゃうぞー」
「ごめんなさい。おねいさん、怖ぇ」
「おねいさんは怖いのよ。そう、ニンジンとかいっぱい入っていたんなら、まだいいかな。ニンジンにはベータカロチンが豊富なのよ。お昼は焼きそばだけ?」
「コーヒーも飲んだよ」
「コーヒーよりも、どうせ買うんだったら果実入りヨーグルトとかを買ってね」
「うん、分かりました、おねえさん」
「おねえさんじゃなくて、おねいさんだって言ったでしょ」
「あ、そうだった。ゴメンナサイ」
「あなたの今日のお昼ごはんの健康度は50点です。もっと頑張ってくださいね。夜、またメールしましょう」
「はい」
しばらくすると、また携帯にメールが来ました。
「食育おねいさん事務局長の佐久間象子といいます。ナオコから聞きましたが、お昼は焼きそばだったそうですね。焼きそばの食料自給率がたいへん低いのは
知っていますか。焼きそばは、材料の94パーセントが輸入なのです。自給率6パーセントしかありません。つまり、あなたの愛国心は6パーセントです。気を
つけないと、踏みにじりますよ」
踏みにじる?
象子だけに?
怖いので、読まなかったことにして返信はしませんでした。
◆◆◆
数時間後。
「デナー」には、
* ロールキャベツ
* 冷奴
* 玄米ご飯
を食べました。
和洋混在、謎の食卓です。
これをホームページで入力すると…。
食育おねいさんから携帯メール。
「食育おねいさんのナオコです。夕食、だいぶヘルシーっぽくなったね。素敵」
返信しました。
「おねいさん、今晩は。えっ、そんなに素敵ですか。やったー。ほっとしました」
「キャベツは消化を助ける食べものなの。冷奴は大豆、大豆にはイソフラボンが入ってて体にいいのよ。ご飯も玄米で食べるなんて素敵ね」
「照れちゃうなあ」
「冷奴には醤油をかけたの?」
「かけました」
「塩分には気をつけてね」
「はい、そうします」
「あなたの今日のデナーは、健康度85点です。これからもヘルシーなものを食べて、健康を保ちましょうね。じゃあ明日の朝、またメールしましょう」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
しばらくして、佐久間象子からメールが来ました。
「佐久間象子です。健康度が85点になったからって、いい気になってはなりません。
ロールキャベツの自給率は22パーセント。冷奴は32パーセント。玄米ごはんだけは100パーセント国産ですけどね。あなたの健康度は85点かもしれない
けど、愛国心は51パーセントです。昼食よりはマシですが、もっと精進しないといけません」
怖いので、読まなかったことにして返信はしませんでした。
◆◆◆
翌朝。
* パン
* ポテトサラダ
* ブラッドオレンジのジュース
* ハムエッグ
こんな朝食でした。
いつもはもっとベタな朝食なのですが、おねいさんに褒(ほ)めてもらうために、見栄を張ったのです。
これをホームページで入力すると…。
食育おねいさんから携帯メール。
「おはよう。ナオコです。お目覚め?」
「おはよー、おねいさん。どうですか、この朝食」
「すっごくいいよー。タンパク質もしっかり取れてるし、ブラッドオレンジはビタミンCが豊富だし、サラダもついててヘルシー! パンにはなにか塗ったの?」
「ブルーベリーのジャムにしたんだけど。オーガニックであまり甘くないのを使いました」
「ますますいいわね。松宮さんの今朝の健康度は100点です。これで午前中はさわやかに仕事ができるよ。お昼食べたら、またメールしましょうね。100点のご褒美に、ナオコの写メ、送りますね」
「やったー。では行ってきます」
「行ってらっしゃい」
すかざず、写メが送られてきました。
キャメロン・ディアス似の、キレイなおねいさんでした。
ドキドキものです。
◆◆◆
しかし、山手線に揺られていると、例によって佐久間象子からメールが来ました。
「佐久間象子です。松宮さん、あなたにはあきれまし
た。パンの自給率は5パーセント。ポテトサラダは17パーセント。ブラッドオレンジジュースの自給率はほとんどゼロ。ハムエッグの自給率は7パーセント。
ブルーベリージャムの自給率もほとんどゼロなのですよ。健康度はたしかに100パーセントですが、愛国心はたったの6パーセントです。自分だけ健康になっ
て、国を愛さないあなたは、非国民であり、売国奴だと言わざるを得ません。罰を与えます。覚悟おし!」
読み終わったとたん、佐久間象子の写メが送られてきました。
松宮園生です。
「農業の多面的機能」
ちょっと堅苦しいけど、こんな言葉があります。
農家の人はあまり口にしませんが、
農林水産省の人とか
自治体の農政担当の人とか
農業学者の先生とか
農業コンサルタントとか
農協の課長さんとか
農業系のNPOの人とか
そんな顔ぶれの人々が好んでよく使います。
農業って、何をする産業なのでしょうか?
「そりゃ、野菜とか果物とか米とか作ったり、牛とか育てたりすんじゃねえの?」
ま、たいがいそう思いますよね。
じつはそれ、そうじゃないかもしれない。
ほかにもいろいろ、農業にできることがあるんじゃないかな?
こう考える人が増えてきました。
「ほかにもいろいろ、農業にできること」
これを、「農業の多面的機能」と呼びます。
先ほど書いたように、肝心の農家さんはあまりそーゆーことを考えていません。
忙しいし。
むしろ「外野」の人たちが一生懸命そんな主張をしています。
これはどっちが正しいというものではなく、農家には農家の、評論家には評論家の立場があるということです。
「ほかにもいろいろ、農業にできること」とは何かというと、例えば、
愛媛あたりで「みかん狩り」
茨城あたりで「いちご狩り」
青森あたりで「りんご狩り」
宮崎あたりで「マンゴーハント」
などが該当します。
こういうのは農業というより旅先のレジャーといったほうがいいかも。
オランダあたりでは「ケアファーム」というのが発達しています。
日本でいう養護施設なのですが、みんなで畑を耕して作物を作りながら、心身の成長を目指しています。
このケアファームが実際に心身の成長をもたらしているのかどうかの研究も進んでおり、そういう効果が高いという結果がでています。
(日本にもそういうの、ありますよね)
食育の一環として子供がナスの収穫を体験したりすることがあります。
農作業を体験すると食に対する関心が呼び起こされ好き嫌いが減ると言われていますが、統計的にもそれは正しいようです。
こうしたことも、「農業の多面的機能」に含まれます。
農村というと、
「美しい自然」
「豊かな生態系」
「温かい素朴な人々」
「日本の伝統文化が残っている」
こんなイメージがあって、都会の人々の疲れた心をひきつけます。
つまり、農村には「癒し」の効果がある。
これも、「農業の多面的機能」の一部というわけです。
◆◆◆
さて、とある農村でのこと。
脱サラして村に移住し、農業をはじめた若夫婦がいました。
仮に名前を、「大介君」「ゆかりさん」としましょう。
彼らはイチゴを作っています。
先日、村の寄合に出席したら(こういうのは面倒でも出ておかないと、いろいろ困るのです)、都会からやってきた農業コンサルタントのオジサンが
「農業の多面的機能」
についてなにやら能書きをたれていました。
要は、農業を観光業と考えたら(観光農業といいます)、収入が増えるかもしれないぞ、ということです。
「村をあげて観光農業をしたらどうだ」
と、コンサルタントのオジサンは言いました。
そっか、ウチも「イチゴ狩り」すっかな。
収入ほしいし。
コンサルタントの話を聞き、すっかりその気になった大介君。
一方でノリの悪いジイサンもいました。
ジイサンは不機嫌にこう言いました。
「なにが観光農業だ。それで人がわんさと押しかけてきたら畑仕事の邪魔だ。ワシは困るぞ」
「ミスミのジイサン、あんたなにをいっとるんだ。観光農業をしたら収入が増えるんだぞ。なんの文句がある」
村長が困惑した顔で言いました。
村長としては、はるばる都会からコンサルタントのセンセイを呼んだ手前、否定されるわけにはいきません。
しかしミスミのジイサンは頑固にぶつぶつ文句をいいつづけます。
「都会の不心得どもが押しかけてきたらワシの畑が踏み荒らされる。よそもんは大介の小僧だけで手一杯だ」
いきなり自分の名前がでたので大介君はぎょっとしましたが、黙っていました。
寄合の数日後。
大介君がミスミのジイサンの畑の前を通りかかると、畑にロープが張られていました。
そして立札が何本か。
そこには
「立入禁止。入ってきたやつは罰金10万円」
と太い毛筆で書かれていました。
◆◆◆
ミスミのジイサンが畑にロープをはり、立入禁止の立札を立てた話はあっと言うまに村じゅうに広がりました。
村人たちがぞろぞろと、ミスミのジイサンの畑にやってきました。
張り巡らされたロープと、罰金10万円と毛筆で書かれた立札をながめています。
ミスミのジイサンはムッツリした顔で、野次馬を無視して畑仕事を続けています。
しばらくして村長があらわれ、ミスミのジイサンに声をかけました。
「困るよジイサン。こりゃやりすぎだ」
「ワシの畑だ。何をしようと勝手だろ」
「これから村をあげて観光客を呼ぼうってときだ。こないだの寄合で話したろう。それなのにこんなことをされちゃあ、この村はよそ者に冷たい排他的なところだと思われるじゃないか」
「それのどこが悪い。どうせワシはよそ者嫌いの頑固者じゃ」
「ジイサン…」
ジイサンはついに癇癪をおこしました。「オラオラ! 仕事の邪魔だ。みんな帰れ。帰れ」
まったく、トリツクシマもありません。
村長は辛抱強くミスミのジイサンの説得をつづけましたが、話は平行線のまま、日にちが過ぎていきました。
その間、農業コンサルタントのセンセイが何度か村にやってきました。
村人たちが観光客を呼ぶための、準備を指導していたのです。
「ようこそ、この村へ」という看板を作ったり。
「ムラビットン君」という名前のヘンなマスコットキャラクターを作ってあちこちに露出したり。
宝探しイベントのために宝を埋めたり。
「農業っぽいアスレチック」という意味で、「アグレチック広場」なんてものも作りました。
屋台なんかも準備しました。
観光客を迎える態勢が整いはじめると、じっさいに観光客がちらほらやってきます。
コンサルタントのセンセイがブログで宣伝してくれたのもあったのか、ふた月もすると、なんとなく村はニギヤカになってきました。
「ムラビットン君」は不評でしたが、都会の子どもたちは宝探しやアグレチック広場には喜んでいました。
屋台も人気でした。
ゆかりさん(大介君の奥さん)が猛烈に料理上手だったのも役に立ったみたいです。
村人は収入が増えて大喜び。
村長も上機嫌です。
その様子を知ってか知らずか、ミスミのジイサンはあい変わらず難しそうな顔で農作業をしていました。
当然、なにもしなかったジイサンの収入は増えません。
実のところミスミのジイサンの畑は村はずれの位置にあったため、観光客がそこまで足をのばすことはほとんどありませんでした。
ワシの畑に人が押しかけてきたら困る…ジイサンが心配したようなことは起きなかったのです。
◆◆◆
そんなある日。
村長がミスミのジイサンの畑を通りかかったとき、「立入禁止」の立札が変わっていることに気づきました。
毛筆で書かれていたことには違いないのですが、書いてある内容が少し変わっていたのです。
不思議に思った村長は、雑草取りをしているジイサンに声をかけました。
「ジイサン。立入禁止の罰金が5万円になっとるようだが…。前は10万円じゃなかったか?」
「ああそれか」ミスミのジイサンは不機嫌な口調で答えました。「誰も入らんので、値下げした」
松宮園生です。
むかーし、むかし。
人々は、いろんな果物を、食べていました。
リンゴ。
ミカン。
バナナ。
イチゴ。
ナシ。
モモ。
スイカ。
カキ。
でも、あまり果物を食べない人も、いました。
ある日、「大学教授」のA先生が、こんな発表をしました。
「リンゴに含まれるポリフェノールには、メタボ予防効果がある!」
それをマスコミが宣伝しました。
その日から、人々は、ほかの果物を食べるのをやめ、リンゴばかり食べるようになりました。
あまり果物を食べなかった人も、競ってリンゴを買いました。
べつのある日、「大学教授」のB先生が、こんな発表をしました。
「ミカンに含まれるベータクリプトキサンチンにも、メタボ予防効果がある!」
それをマスコミが宣伝しました。
それまでリンゴばかり食べていた人々のうち、半分くらいがミカンを食べるようになりました。
もともとあまり果物を食べなかった人は、リンゴに飽きて、ミカンを買うようになりました。
さらにべつのある日、「大学教授」のC先生が、こんな発表をしました。
「バナナには糖分を分解する『酵素』が豊富で、代謝を高めて脂肪を燃焼させるから、メタボ予防効果がある!」
それをマスコミが宣伝しました。
その結果、人々はリンゴ、ミカン、バナナを均等に食べるようになりました。
もともとあまり果物を食べなかった人は、ミカンに飽きて、バナナを買うようになりました。
さらにべつのある日、「大学教授」のD先生が、こんな発表をしました。
「イチゴには便秘を防ぐペクチン、塩分のとりすぎを防ぐカリウムなどがバランスよく含まれている!」
それをマスコミが宣伝しました。
これを聞いた人々は、リンゴ、ミカン、バナナ、イチゴをバランスよく食べるようになりました。
もともとあまり果物を食べなかった人は、バナナに飽きて、イチゴを買うようになりました。
さらにべつのある日、「大学教授」のE先生が、こんな発表をしました。
「ナシに含まれるソルビトールは、エネルギーになりにくいため、ダイエットにもいい!」
それをマスコミが宣伝しました。
その日から、人々は、リンゴ、ミカン、バナナ、イチゴに加えて、ナシも食べるようになりました。
もともとあまり果物を食べなかった人は、イチゴに飽きて、ナシを買うようになりました。
さらにべつのある日、「大学教授」のF先生が、こんな発表をしました。
「モモにはクエン酸が含まれているから、疲労回復によい!」
それをマスコミが宣伝しました。
その日から、人々は、リンゴ、ミカン、バナナ、イチゴ、ナシに加え、モモも食べるようになりました。
もともとあまり果物を食べなかった人は、ナシに飽きて、モモを買うようになりました。
さらにべつのある日、「大学教授」のG先生が、こんな発表をしました。
「スイカには、解毒(デトックス)作用のあるグルタチオンや、利尿作用のあるシトルリンがあるから、カラダをキレイにするのに役立つ!」
それをマスコミが宣伝しました。
それを知った人々は、ふたたびスイカも食べるようになりました。
もともとあまり果物を食べなかった人は、モモに飽きて、スイカを買うようになりました。
さらにべつのある日、「大学教授」のH先生が、こんな発表をしました。
「カキのビタミンCとタンニンがアルコールを排出してくれるから、二日酔いにはカキがきく!」
それをマスコミが宣伝しました。
その日から、人々は、ふたたびカキも食べるようになりました。
もともとあまり果物を食べなかった人は、スイカに飽きて、カキを買うようになりました。
いまでは、人々は、いろんな果物を、食べています。
リンゴ。
ミカン。
バナナ。
イチゴ。
ナシ。
モモ。
スイカ。
カキ。
もともとあまり果物を食べなかった人は、カキにも飽きて、果物を食べなくなりました。
マスコミは、つぎのネタをさがしてどこかへ行ってしまいました。
なにもかも、もとどおり。
めでたし、めでたし。
しかし、大学教授の先生がたは、ぼやきました。
「おれたちの研究は、いったいなんだったんだ?」
いえいえ、この世にはムダな研究というものはありません。
いつかきっと、その研究が役に立つ日が来ますよ、せんせ!
松宮園生です。
メタボというと
「まあ何となく体型に問題のあるオジサン」
というイメージですが、実際にはどんな人をメタボというのでしょうか?
つまり、メタボの基準って、何なのでしょうか?
実をいうとこの基準、これまで国によってバラバラでした。
それが最近になって
「メタボの基準を国際的に統一しよう」
という話が盛り上がっているようです。
で、新しくできるかもしれない国際基準では、
「腹回りが何センチか」
ということはあまり重要じゃなくなるらしい。
困ったのは日本です。
日本のメタボ検診では、「腹回り85センチ(男性)」というのがシンボルみたいになっちゃってますから。
どうする、日本?
で、もし日本も国際基準に従って「腹回り85センチ(男性)」を捨てるとなったら、どうなるの?
ちょっと想像してみました。
◆◆◆
日本が「腹回り85センチ(男性)」を捨てた日 (1)
<山中伸治さん(40代 サラリーマン 既婚)のケース>
日刊ウエルネス新聞の1面に、
「腹回り85センチ、今日から廃止」
という記事がデカデカと載りました。
朝刊を広げた山中さんはその記事を食い入るように見つめます。
その目からは大粒の涙が…。
「つまり、オレのメタボ、治ったんだ」
喜びに身を震わせる山中さん。
治った、ていうのとは違うんじゃね?
そんな僕のツッコミも届かず、山中さんは晴れ晴れした気分で出社します。
「新聞、見たかい」さっそく隣の課の飯沼課長(女性)に話しかけます。
山中さんと飯沼課長は同期入社ですが、出世に遅れた山中さんはまだ課長代理です。
「新聞見たかいって、何のこと?」
「腹回りが85センチを上回っても、もうメタボとは言わないんだってさ。オレはもうメタボじゃない!」
「ふうん」飯沼課長は冷めた声で返しました。「でも山中君がビール腹で、若い子にモテないのは同じないんじゃない」
「そ、それはそうなんだけど」
狼狽して肩を落とす山中さん。
そこへ電話が鳴りました。
「山中課長代理、電話です」
山中さんは受話器を取りました。
「もしもし山中です」
「銀座アルカトラス・クリニックの佐久間です」
山中さんの顔から、サアッと血の気が引けました。
「佐久間…象子…」
「山中さん。今日は保健指導の日です。サボってはいけません。確認のため、電話しました」
「で、ですが」
「山中さん、まさか今朝の新聞を見て、もう保健指導は受けなくていいと思っているのではないでしょうね」
「違うんですか」
「確かに山中さんは『法定メタボ』ではなくなったかもしれません。しかし、法が許しても、わたくし佐久間象子は許しません」
「ひ、ひぇー」
「なお、『法定メタボ』ではなくなった場合、保健指導料の割引はなくなります。定価をいただきますから、そのつもりで」
「ね、値上がりするんですか」
「逃がしませんよ」
電話が切れました。
◆◆◆
日本が「腹回り85センチ(男性)」を捨てた日 (2)
<市川光雄さん(40代 サラリーマン 1人暮らし独身)のケース>
郵便ポストにハガキが届いていました。
ハガキにはこう書いてありました。
「市川様。新聞等でご存じと思いますが、メタボの基準に腹囲85センチは必須条件ではなくなりました。よかったですね。これで市川様も辛く堅苦しい保健指導から解放されます。好きなもの食べてください。今まで銀座アルカトラス・クリニックをありがとうございました。これからの市川様の健やかな日々をお祈り
いたします。ごきげんよう。管理栄養士ナオコ」
好きなもの食べてください、って何だよ…。
市川さんの目から、涙がはらはらとこぼれました。
ナオコと過ごした保健指導の日々が、走馬灯のようにまぶたの裏を駆けめぐります。
このまま自然消滅していいのか?
市川さんは、勇気をふりしぼって電話をかけました。
「銀座アルカトラス・クリニックでございます」
「あ、あの。市川と申しますが、ナオコ先生をお願いします」
「もうしわけごさいません。今週は非番でごさいまして」
「そ、そうですか…」
「ナオコに何か? 保健指導のご相談でしたら、今日は佐久間が担当しております」
「さ、佐久間…象子…」
市川さんの顔が恐怖に歪みます。
電話の相手は、淡々と続けます。「佐久間につなぎましょうか?」
「い、いえ、結構です。さいなら」
あわてて電話を切りました。
どうしようもない失望感をもてあます市川さん。
フラれたのとクビになったのが同時に来たような、そんな気分でした。
「ナオコ先生」
弱々しくつぶやきます。
その足元で、腹を空かせた飼い猫のタイコが
「どうでもいいけど、ご飯まだ?」
という意味でニャーと鳴きました。
松宮園生です。
僕は生来きわめて硬派なブコツモのにて、女性のことはよく分かりません。
したがって今回は男性の食生活に関する話題です。
世の男性を
* 朝食を食べるか食べないか
* ベジタリアンかそうじゃないか
この2つの指標で分類して遊んでみましょう。
ベジタリアンの反対語をご存知ですか?
「ノン・ベジタリアン」
というのが普通ですが、たまに
「プレデター」
と言ったりもします。
映画
「エイリアン vs プレデター」
のプレデターです。
本来はライオン、トラ、ヒョウ、チーターなどの
「狩をする肉食動物」
の意味ですが、転じて
「肉をもりもり食べる人」
の意味にも使われます。
さて、先ほどの2つの指標を使うと、世の男性は
* 朝食を食べるベジタリアン
* 朝食を食べるプレデター
* 朝食を食べないベジタリアン
* 朝食を食べないプレデター
の4種類に分かれますね。
順に解説しましょう。
■朝食を食べるベジタリアン
略して「チョベジ」。
なんか違う意味の死語に聞こえちゃうけど、まあいいか。
ここに属する人たちは、女性の場合はマクロビオティックなんかに激しく傾倒したりしてて、いい感じに枯れてたりします。
男性の場合、背の高いイケメンが多い。
彼らは、イケメンのくせに、レストランのサラダバーで10回くらいおかわりをするので、店からは嫌われている。
なお、イケメンでないチョベジは、身分証明書の提示を求められることがありますので、気をつけましょう。
該当する有名人:千利休(←枯れてるので。イケメンだったかどうかは謎)
おすすめ食材:水
■朝食を食べるプレデター
略して「チョレデター」。
早起きして力仕事をするワイルドでガテンな人たちは、やはりこの部類でしょう。
高校の体育の先生とか。
胸毛率も高そうです。
該当する有名人:ミッキー・ローク(←風呂嫌いらしい)
おすすめデートスポット:チベット
■朝食を食べないベジタリアン
略して「ないタリアン」。
スポーツ嫌いで運動不足。
食事だけはヘルシー志向。
それって、健康なのか不健康なのか、ビミョーに矛盾タイプです。
都会のモヤシっ子が多く、イラクやアフガニスタンに行ったらすぐ死ぬ。
(そもそも行かねーよ)
該当する有名人:ボーイ・ジョージ(←いまはすっかりメタボなオジサンです)
該当する一般人:松宮園生(←おおきなお世話です)
おすすめペット:ドラえもん
■朝食を食べないプレデター
略して「べなデター」。
東京のサラリーマンに多そうです。
「おれさあ、最近メタボ気味でさあ」
と言いながら、なぜかそれが満更でもないという、複雑怪奇な心理の持ち主が多い。
ギョーザ好きで、多少の事件があってもビクともしない。
焼売も食うぜい。
該当する有名人:マスオさんの同僚のアナゴ君(←有名人?)
おすすめタレント:パイレーツ(←懐かしい)
おすすめ動画:「スリラー」