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松宮園生です。
アメリカのアイダホ州に農家の友人がいます。
ジョン・ソイビーンという名前です。
「ソイビーン」は「大豆」という意味なのですが、
ジョンが作っているのはトウモロコシです。
トウモロコシは数年前に価格が高騰しました。
バイオ燃料としての需要が高まったからです。
お陰でジョンもちょっとした小金持ちになったようです。
そんなジョン・ソイビーンの楽しみは、リノというカジノの街に遊びに行くことでした。
アメリカでカジノというと、ネバダ州にあるラスベガスが世界的に有名ですね。
リノは同じくネバダ州にあり、ラスベガスよりひと回り小さな街ですが、街全体がカジノ一色になっているのはラスベガスと同じです。
ジョン・ソイビーンに言わせると、
「カジノは銀行と一緒。負けたときは、預金したと思えばいい。また引き出せる」
だそうです。
ただし、銀行とカジノには唯一相違点があり、それは
「銀行は残高さえあればいつでも引き出せるが、カジノはそうではない」
さて、リノ行きの飛行機にジョンが乗ったときのこと…。
機内でジョンの隣に座っていたのは、映画「ジュラシック・パーク」に出てくる数学者とよく似た風貌をしている男でした。
むろん、ジョンとは初対面です。
その男、窓側に座っていたのですが、外の景色を見るのにも飽き、機内誌を読むのにも飽き、音楽を聴くのにも飽き、いささか退屈を覚えていました。
何度もあくびをしたあと、彼は隣のジョンに話しかけました。
「やあ。僕はゲイリー。サンフランシスコで高校教師をしている」
「ジョンでござる。職業は農家でござる」
2人は握手をしました。
「さっそくなんだが」高校教師のゲイリーは言いました。「あんた、ゲームは好きかい?」
「ゲームにもよるでござるが」
「そうか」とゲイリー。「こんなのはどうだい。クイズをするんだ。まず僕があんたにクイズを出す。あんたが答えられなかったら、あんたは僕に5ドル払う。で、次にあんたが僕にクイズを出す。僕が正解できなかったら、あんたは僕から5ドル受け取る」
しかし高校教師とクイズ合戦をして勝てるとは思えなかったため、ジョンは丁重にその申し出を断りました。
「そっか、じゃあ、いいや」
ゲイリーは気にしたふうもなく、会話はそこで途切れました。
彼は窓の外を眺めたり、さっき読み終えた機内誌をまたパラパラめくったりしました。
それでも退屈を紛らわすことができません。
耐えられなくなった高校教師は、再びジョンに話しかけました。
「なあジョン。こんなのはどうだい。まず僕があんたにクイズを出す。あんたが答えられなかったら、あんたは僕に5ドル払う。で、次にあんたが僕にクイズを出す。僕が正解できなかったら、あんたは僕から50ドル受け取る。つまり10倍だ。どうだい?」
今度はジョンも申し出を受けました。
「オーケー。じゃあ僕からクイズだ」高校教師は言いました。「地球と月との距離は何マイルある?」
ジョンは即座に財布を開き、5ドル札をゲイリーに手渡しました。
ゲイリーは上機嫌でそれを受けとり、自分の財布におさめました。
「じゃ、あんたの番だよ、ジョン」
ジョンは少し考えて、それから言いました。
「まっすぐだと何でもないが、斜めにすると恐ろしくカッコ良くなる農作物は、何でござろう?」
高校教師の顔から、うすら笑いが消えました。
彼は長いこと考えこんだあげく、カバンからノート型パソコンを引っ張り出してエクセルで何やら計算を始めました。
それでも答が出ないので、今度はウィキペディアを懸命に検索し始めました。
リノに近づいたため着陸態勢に入るというアナウンスがあり、高校教師はパソコンを閉じなくてはなりませんでした。
彼は飛行機が着陸するまで必死に考え続けましたが、答が出ません。
「降参だ、くそっ」ゲイリーは悔しそうに言い、財布から50ドル札を1枚取り出し、ジョンに手渡しました。
飛行機は無事にリノ空港に到着し、乗客たちはシートベルトを外して立ち上がりました。
ジョンも、受けとった50ドルを財布にしまうと、立ちあがりました。
「ちょっと待った」高校教師は言いました。「それはないだろう。あんたのクイズの答は何なんだ?」
ジョン・ソイビーンは振り返り、少しのあいだ考えました。
それから静かに財布を開き、5ドルを取り出し、高校教師に手渡しました。