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松宮園生です。
アメリカのアイダホ州に農家の友人がいます。
ジョン・ソイビーンという名前です。
「ソイビーン」は「大豆」という意味なのですが、
ジョンが作っているのはトウモロコシです。
トウモロコシは数年前に価格が高騰しました。
バイオ燃料としての需要が高まったからです。
お陰でジョンもちょっとした小金持ちになったようです。
そんなジョン・ソイビーンの楽しみは、リノというカジノの街に遊びに行くことでした。
アメリカでカジノというと、ネバダ州にあるラスベガスが世界的に有名ですね。
リノは同じくネバダ州にあり、ラスベガスよりひと回り小さな街ですが、街全体がカジノ一色になっているのはラスベガスと同じです。
ジョン・ソイビーンに言わせると、
「カジノは銀行と一緒。負けたときは、預金したと思えばいい。また引き出せる」
だそうです。
ただし、銀行とカジノには唯一相違点があり、それは
「銀行は残高さえあればいつでも引き出せるが、カジノはそうではない」
さて、リノ行きの飛行機にジョンが乗ったときのこと…。
機内でジョンの隣に座っていたのは、映画「ジュラシック・パーク」に出てくる数学者とよく似た風貌をしている男でした。
むろん、ジョンとは初対面です。
その男、窓側に座っていたのですが、外の景色を見るのにも飽き、機内誌を読むのにも飽き、音楽を聴くのにも飽き、いささか退屈を覚えていました。
何度もあくびをしたあと、彼は隣のジョンに話しかけました。
「やあ。僕はゲイリー。サンフランシスコで高校教師をしている」
「ジョンでござる。職業は農家でござる」
2人は握手をしました。
「さっそくなんだが」高校教師のゲイリーは言いました。「あんた、ゲームは好きかい?」
「ゲームにもよるでござるが」
「そうか」とゲイリー。「こんなのはどうだい。クイズをするんだ。まず僕があんたにクイズを出す。あんたが答えられなかったら、あんたは僕に5ドル払う。で、次にあんたが僕にクイズを出す。僕が正解できなかったら、あんたは僕から5ドル受け取る」
しかし高校教師とクイズ合戦をして勝てるとは思えなかったため、ジョンは丁重にその申し出を断りました。
「そっか、じゃあ、いいや」
ゲイリーは気にしたふうもなく、会話はそこで途切れました。
彼は窓の外を眺めたり、さっき読み終えた機内誌をまたパラパラめくったりしました。
それでも退屈を紛らわすことができません。
耐えられなくなった高校教師は、再びジョンに話しかけました。
「なあジョン。こんなのはどうだい。まず僕があんたにクイズを出す。あんたが答えられなかったら、あんたは僕に5ドル払う。で、次にあんたが僕にクイズを出す。僕が正解できなかったら、あんたは僕から50ドル受け取る。つまり10倍だ。どうだい?」
今度はジョンも申し出を受けました。
「オーケー。じゃあ僕からクイズだ」高校教師は言いました。「地球と月との距離は何マイルある?」
ジョンは即座に財布を開き、5ドル札をゲイリーに手渡しました。
ゲイリーは上機嫌でそれを受けとり、自分の財布におさめました。
「じゃ、あんたの番だよ、ジョン」
ジョンは少し考えて、それから言いました。
「まっすぐだと何でもないが、斜めにすると恐ろしくカッコ良くなる農作物は、何でござろう?」
高校教師の顔から、うすら笑いが消えました。
彼は長いこと考えこんだあげく、カバンからノート型パソコンを引っ張り出してエクセルで何やら計算を始めました。
それでも答が出ないので、今度はウィキペディアを懸命に検索し始めました。
リノに近づいたため着陸態勢に入るというアナウンスがあり、高校教師はパソコンを閉じなくてはなりませんでした。
彼は飛行機が着陸するまで必死に考え続けましたが、答が出ません。
「降参だ、くそっ」ゲイリーは悔しそうに言い、財布から50ドル札を1枚取り出し、ジョンに手渡しました。
飛行機は無事にリノ空港に到着し、乗客たちはシートベルトを外して立ち上がりました。
ジョンも、受けとった50ドルを財布にしまうと、立ちあがりました。
「ちょっと待った」高校教師は言いました。「それはないだろう。あんたのクイズの答は何なんだ?」
ジョン・ソイビーンは振り返り、少しのあいだ考えました。
それから静かに財布を開き、5ドルを取り出し、高校教師に手渡しました。
松宮園生です。
「株式会社 食育」に勤務する社員が1名、昨年末から行方不明になっています。
その人の手記が発見されました。
こんなことが書かれていました…。
◆◆◆
今年もあとわずかである。
いろいろあった1年だったが、お腹まわりが増えたのは我ながら情けない。
来年こそはダイエットしよう。
たしか昨年の春から「特定検診・特定保健指導」が義務化されたと聞いている。
保健指導の対象になったら、私生活にいろいろ干渉されて面倒らしい。
だから次の健診までに、お腹まわりを縮めないといけない。
…などと呑気なことを考えていたら、自宅に空き巣が入ってしまった。
窓ガラスにきれいに穴があいている。
犯人はそこから鍵をあけて侵入したらしい。
セコムにしておけばよかったのだが、後の祭りである。
とにかく警察を呼ぶ。
ところが、待てど暮らせど警察はやってこない。
1時間も待ったろうか、ようやく警官が自転車でやってきた。
パトカーではなく、チャリンコでえっちらおっちらやってきたわけである。
それも、キキキという甲高いブレーキ音のする自転車である。
「いやー、季節がら空き巣が多くて、手が回らんのですよ。遅くなりました」と中年の警官は言った。「ではまず調書を作りたいのでご協力お願いします。何を盗られましたか?」
「これです」わたしは待っているあいだに作成したメモを、警官に手渡した。
「恐れ入ります」警官は言った。「書きうつしますので、ちょっと待ってください」
「書きうつすの? そんなことしなくても『別紙』ということで添付しとけばいいんじゃないの?」
警官は目を丸くした。「いやあ、おっしゃる通りだ。お客さん、頭がいいですなあ。ひょっとして、東大出身ですか?」
「いや、東大出身じゃなくてもそれくらいは…。ていうか、わたしはお客さんではありませんが…」
「感銘しました」警官は言い、敬礼をした。「小官は市ノ瀬と申します。以後、お見知りおきを」
「はあ。山本です」
「では山本さん。盗られたものを順に教えてください」
「は? いま、メモを渡しましたが」
「そ、そうでした。はははは。この紙でしたね。なるほど、どれどれ…。主に、携帯電話と現金20万円、ですな。あとは宝くじが20枚と、映画のDVDですか」
「そうです。他にも大きいのがあるかもしれませんが、すぐに分かったのはこれだけです」
「なるほど。で、その携帯電話と20万円と宝くじとDVDは、どこにありますか?」
「は? 盗まれたわけですから、ここにはありませんが」
「そうですか。ここにはない、と…」つぶやきながら、調書に書きこむ警官。「どこにあるんですか?」
「はぁ? 何言ってるんですか。知りませんよ。盗まれたんですから」
「あ、そうか、盗まれたんでしたな。はははは。…ではまず携帯電話ですが、どうして持ち歩かずにご自宅に置いてあったのですか?」
「今日にかぎってたまたま置き忘れていました。悪用されるのが心配です」
「それは心配ですな。どこの電話会社ですか?」
「NTTドコモです」
「なるほど」調書に書きこむ警官。
「NTTコドモではありません」わたしは彼の書き間違いを指摘した。「そんな意味不明の子どもはいません。コドモではなくドコモですよ」
「おっと失礼。コモドでした」
「違いますってば。それでは大トカゲになってしまいます。ドコモですよ。ド・コ・モ」
「おっと失敬。ド・コ・モ…と」
「しっかりしてくださいよ、おまわりさん」
「頑張ります」そう言って彼はまた敬礼した。「現金ですが、どこに置いてあったんですか?」
「あれです。『20万円がたまる貯金箱』って書いてある大きなブリキ缶がありますよね。あれです」
「ゴキブリ缶、ですか」
「違います。ブリキ缶です」
「20万円がたまるって、そんな貯金箱があるんですなあ」
「見たことありませんか? 雑貨屋とかによく置いてありますけど。500円玉専用の貯金箱なんです。500円玉で満杯になったら、総額が20万円になるんです」
「ほお。で、缶切りで開いた形跡がありますな」
「缶切りで開けて、中身だけを盗っていったみたいなんです」
「中身は何だったのですか?」
「は? 中身は500円玉ですよ。いま言ったでしょう」
「あ、そうか。はははは。500円玉が、ジャラジャラと入っていたわけですな」
「そうです」
「ジャラジャラとね。…満杯だったのですか?」
「満杯でした」
「本当ですか? そんなこと言って、じつは半分しかなかったとか」
「し、失礼な。間違いなく満杯でしたよ。もう500円玉が入らなくなったので、2つ目の貯金箱に入れ始めたくらいなんですから」
「2つ目の貯金箱があるんですか?」
「ここにあります。犯人も2つ目があるとは気がつかなかったみたいで」わたしは冷蔵庫の奥に隠してあった2つ目の貯金箱を出してみせた。「こっちもすでに半分くらい入ってます。ほら、冷えてて重いでしょう」
「確かに、冷えててずっしり重いですな。半分くらい入っているということは、10万円くらいですかな?」
「そのくらいですね」
「ふむふむ。で、最初の貯金箱のほうですが、缶切りで開けられていますな。缶のまま持っていけばいいのに、犯人のやつ、わざわざ時間をかけて開いた。なぜだか分かりますか?」
「なぜなんですか? 教えてください」
「東大出身なのに、分からないのですか?」
「分かりません。ていうか、東大出身じゃないし」
「そうですか。まあ無理もありませんな。小官にもよく分からんのです。あとで署のほうに聞いておきましょう」
わたしは昭和っぽくずっこけた。
「山本さん、とおっしゃいましたな?」警官は言った。「プライバシーをお聞きするのは心苦しいのですが、調書に書かんといけませんので、山本さんご自身についてお尋ねします」
「はい。ていうか、わたしは山本ですけど」
「はあ。分かっておりますが。それが何か?」
「調書には山下って書いてありますよ」
「ありゃりゃ、本当だ。小官としたことが」
「しっかりしてくださいよ」
「しっかりします」また敬礼をした。「えっと、では性別をお答えください」
「は? 見てお分かりのとおり、男ですけど」
「本当ですか。最近は、見た目だけで判断つかない人が増えたもんですから」
「それはそうかもしれないけど」わたしはムッとした。「正真正銘の男ですよ」
「男なら、自分が男かどうかなんてそんな細かいこと、気にせんでください」
「は? 意味不明なんですけど」
「はははは。まあとにかく。年齢とご職業を教えてもらえませんか」
「41歳です。職業は、食育をしています」
「ショクイク? なんですかそれは」
「食べるという字に、育てるという字で、食育といいます」
「こうですか?」
「逆です。それでは育食(イクショク)です。いくらなんでも、そんな間違え方はないでしょう。わざとですか」
「いえいえとんでもない」敬礼。「で、その食育という仕事は、いったいぜんたい何ですか?」
「食育の仕事というのはですね。(ここの部分が真っ黒に塗りつぶされています)」
「へえ! なるほど、よく分かりました。なんとまあ危険な仕事をなさっておりますなあ。いやあ、若いのに大したもんだ。体を大事にしてくださいよ」
警官がまた敬礼をした。
わたしは顔を赤らめた。「恐縮です」
「では署のほうに電話してまいりますので、しばらくお待ちいただけますかな?」
「分かりました」
いやー、立派なお仕事をなさっておられる、儲かりもしないのに感心感心、とつぶやきながら、警官は出ていった。
儲かりもしないのにというのは一言余計である。
が、全体的におだてられていい気分になったわたし。
だが、いつまで待っても警官は戻ってこない。
おかしいな、と思って窓の外を見ると、ちょうどそこに小型のパトカーが止まった。
現われたのは小柄だがちょいと色っぽい婦人警官である。
キャメロン・ディアスによく似ている。
わたしは興奮して玄関に飛びだした。
「山本さん?」
「ハイッ! 山本です」
「××署です。ごめんなさい、遅くなっちゃって」婦人警官が上目づかいで言った。「空き巣が続いちゃってたいへんだったんです。でも一生懸命お世話しますから、許してくださいね?」
「ゆ、許します!」思わず気をつけの姿勢をとるわたし。「ていうか、お、お世話って何ですか?」
ふくらむ期待。
しかし突然、わたしは気がついた。
「さっきの警官は誰だったんだ?」
あわてて家の中を見回す。
やられた!
10万円入りの、2つ目の貯金箱が消えていたのであった。
次の瞬間、すべての光が消えて真っ暗になった(←小泉八雲か!)
◆◆◆
手記はここで終わっています。
黒く塗りつぶされたところに何が書いてあったのか知りたいところなのですが、当の本人が行方不明になっているため、今もって謎のままです。
松宮園生です。
ある日のランチタイム。
仕事の手を休め、ひとりでファミレスで食事をしていると…。
メタボ警察の回し者、食育ロボットのアンドリューがやってきて、僕の向かい側に座りました。
「なんだよ今度は。もうメタボじゃねーかんな。見ろよ」
僕は自分の臍のあたりを指さします。
「あなたの腹囲が縮んだのは認めます。メタボ刑務所に服役してたわけですから。服役中のヘルシーな生活で、腹囲が縮んだのです」
アンドリューが涼しい顔でいいました。
涼しい顔?
自分で書いといて何だけど、どんな顔だっけ。
ていうか、アンドリューはロボットなんだから表情いつも一緒だし。
「メタボ狩りじゃないなら、何の用?」
「あなたが食べているそれです」
「これ?」
「そうです。問題があります」
「娑婆(しゃば)に出たら何を食べようと勝手だろ」
「ふつうの人はそうです。しかしあなたには前科がありますから、出所後3年間、わたしの監視下に置かれます」
「何だよそれ。聞いてねえぞ」
「当然です。言ってません。紙に書いて渡しただけですから」
「なんだそりゃ。一休さんのトンチかっつーの」
「さっそくですが」アンドリューはまたもや涼しい顔でいいました。「何を食べているのですか」
「カレーライスだよ。見りゃ分かるだろ」
「カロリーはチェックしましたか」
「したよ。メニューに書いてあった」
「何カロリーですか」
「それはだな…。メニューを見たら分かる」
テーブル上のメニューを開こうとした僕の手を、アンドリューが押しとどめます。
「カンニングはいけません。言いなさい」僕の手を掴んだまま離さないアンドリュー。「何カロリーですか」
「カンニングって、あんた…。700ちょっととかだったかなあ。正確な数字なんて覚えてねえよ。いいじゃんか。高カロリーのものを選んだつもりはないしさ。仮にカロリー高くてもだよ、ランチだぜ。寝る前にドカ食いするわけじゃないんだから」
「そんなことは問題ではありません、この前科者。あなたがカロリーの数値をちゃんと頭に入れていないことが問題なのです。では次の質問」
「次の質問?」
「塩分の量を確認しましたか?」
「そんなこと、するわけないだろ」
「ここのメニューには塩分量が書いてあります」アンドリューは僕の手を離し、自分でメニューを開きました。「ほら、見なさい、前科者」
塩分量が書いてありました。
カレーライスは、2.5g となっています。
「もうひとつ質問です」
「まだあるの?」
「当然です。あなたは前科者なのですから。…トランス脂肪酸の量を確認しましたか?」
「トランス脂肪酸?」
「さてはこれもチェックしてませんね」
「するわけないだろ。そんなもの、メニューに書いてないじゃん」
「書かれていなかったら、お店に聞きなさい。答えられない店だったら、入ってはいけません。それにしてもダメですねあなたは。カロリーもうろ覚え、塩分量
も見ていない。トランス脂肪酸のことも頭から抜けている。とても刑期が終わった人とは思えません。罰として、このカレーライスは値上げします」
「は?」
おもむろに店長を呼ぶアンドリュー。
やってきた店長に向かってアンドリューは言いました。
「わたしはメタボ警察のアンドリューです。このカレーライスはいくらですか」
「しょしょ、消費税込で、は、880円になります」
「では、『メタボ撲滅推進法』にもとづき、この人だけ今回、価格10倍の8,800円にしてください」
「ちょっと待て。え? 8,800円?」僕は思わす立ちあがりました。「そんなムチャクチャな」
さすがにこれには店長も、
「そ、そんなことしたら、こ、このお客様は、も、もうウチに来、来てくれなくなりなります」
「そうだそうだ」僕も便乗しました。「そんな店、もう来ないぞ」
アンドリューは首を横に振りました。「そうはいっても、『メタボ撲滅推進法』という法律で定められているのです。…店長さん、ちょっと2人でヒソヒソ話をしましょう。前科者のマツミヤさんはここにいなさい」
「前科者、前科者って、言うな」
アンドリューと店長が、僕の聞こえないところで立ち話をしています。
しばらくして、2人が握手をするのが見えます。
アンドリューはそのまま、立ち去っていきました。
店長が僕のテーブルに戻ってきました。
「お、お客様、お、恐れ入ります。や、やはり、こ、これは、ほ、法律だそうで、ここ、今回は、は、8,800円を、せ、請求させていただきます。ま、誠に恐れ入ります。ここ。これが8,800円の、で、伝票です」
「おいおい、待ってよ。本気か? だったらもうこんな店、2度と来ないぞ。つーか、その話し方、なんとかしてくれよ」
店長はニコニコして答えました。
「だ、大丈夫です。や、やむを得ません。いい、いまアンドリューさんから、こ、こういう説明を受けたんです。
アンドリュー: あの客、死ぬまでにこの店にあと何回来ると思いますか、店長さん?
店長: ど、どうでしょうか、じゅ、10回くらいでしょうか。
アンドリュー: じゃあその10回分のお金を今もらってしまえば、もう来なくても大丈夫ですよね。
店長: なな、なるほど、そ、それはそうです。
アンドリュー: だから8,800円なんです。しかも追加のコストがかからない。トクでしょ。
でで、ですって。
な、納得しちゃいま、ました。さ、さすがはロ、ロボット、たた、巧みな計算をするものですねえ。あ、あはははは」
あ、あはははは、じゃねえよ…。
「そそ、それから、あ、アンドリューさんから、で、伝言があります」店長は続けました。「『次がありますのでもう出ますが、夕食時に、また会いましょう』、とのこ、ことです」
松宮園生です。
メタボ警察の片棒をかつぎ、メタボな人を追いかけて捕まえては
メタボ刑務所に送り込む、食育ロボットのアンドリュー。
天才科学者ロバート・シトピッチャン教授が開発した人間型ロボットです。
その食育ロボットですが、それがアナタ、驚きましたよ。
アンドリューのやつ、ブログを書いてやがったのです。
こんなブログです。
◆◆◆
ブログの題名: 「愛ロボット」
<アンドリューさんのプロフィール>
わたしはアンドリュー。
正式には「アンドリュー77型 製造番号14」であります。
日本食育大学のロバート・シトピッチャン教授によって開発された食育ロボットです。
* 身長: 170センチ
* 体重: 89チログラム。数字だけ見ると肥満でありますが、メタル製ですので身長のわりに重いのであります。
* 職業: 食育
* 好物: 交流電気(とくに50ヘルツ)
* 趣味: 罰を与えること
* 得意技: 徹夜
* 苦手なこと: 暗算
* 貯金: 883円
* その他: ロボットではありますが、合体とか巨大化とかはお断りいたします。
(チログラム?)
<アンドリューさんの最新日記>
「うららかな食育日和」(3月11日)
今日はいい天気。
「こんな日は、お外で食育したい」と思い、
わたしはアースカラーのダウンジャケットを羽織って太陽の下へ。
わくわく気分で、縄張りを巡回しましたあ。
(服、着るのかよ)
(縄張り? 巡回? ←猫か)
むかうは近くの公園。
いつのまにか桜が…。
春色の空に、白紅色の花びらが顔をチラチラさせていて愛らしいのであります。
池のほとりでデジカメをバシャリ。
最近、アンドリューの心に美意識が芽生え始めましたよ。
親子がお弁当を食べています。
ちょっと拝見。
おやおや、コンビニ弁当をお弁当箱に詰め替えただけじゃないですか。
ダメダメ、そんなことじゃあ。
若い母親に愛のロケットパンチをお見舞いするアンドリューなのです。
でもロケットパンチをしたあとは、落ちた拳(こぶし)を拾いにいかなくちゃいけません。
遠くに飛んでいった拳(こぶし)を探すのに30分もかかっちゃいました。
やっと発見し、ついていた血のりをぬぐってから、装着。
それから池のまわりを1周。
遠くで救急車のサイレンの音。
池の散策を堪能したあと、看板に惹かれてオーガニック・コーヒー屋さんへ。
「本当にオーガニックなの?」
「有機JAS認証を見せてください」
「トレーサビリティはしっかりしているの?」
「フェアトレードって知ってますか?」
さんざん追及するアンドリュー。
バイトの店員が泣きだし、マスターが怒り出します。
ちょっとやりすぎちゃったかな。
でも食育は大切なんです。
くじけませんよ。
ところで、実を言うとわたしはコーヒーを飲むことができません。
頼んだコーヒーはそのまま手をつけず、電源コンセントを借りて自分をチャージしながら、読書を楽しみました。
帰る途中で、デパチカ探訪です。
電卓をたたきながら、並んでいる食品やお惣菜の自給率をチェック。
わたしは、メニューを見ただけで食材の自給率がだいたい分かるんです。
このデパチカの平均自給率は22パーセントでした。
ちょっと低すぎますね。
隣のデパートは、28パーセントでしたよ。
わたしは「責任者を呼べ」と大声をだし、あたりは騒然となります。
やってきた責任者に、愛のスペシウム光線をお見舞いするアンドリューなのです。
スペシウム光線はロケットパンチと違い、出しっぱなしで済むので助かります。
何かを拾わなくてもいいので…。
担架で運ばれる責任者。
その哀れな姿を尻目に、わたしは「完全地産地消! あらゆる材料が国産でできた鍋焼きうどんセット」を購入。
ルンルン気分(←死語)でお家に帰りました。
自分では食べないんですけど、こういう「食育商品」を見つけると仕事の励みになります。
どうせ仕事をするなら、イヤイヤじゃなく、ハッピに。
自分がハッピになる工夫をしていきたいのであります。
(ハッピじゃなくてハッピーだろ)
そんなこんなで、いい天気の中、ゴッキゲン(←死語)な1日を過ごしました。
◆◆◆
こんなブログでした。
よくある「わたしの生活ってステキでしょ」系の文体なのに、内容がコワイ…。
松宮園生です。
<ファッショナブルな食育>
ファッション誌には、よくこういうのが記載されていますね。
↓
ジャケット(タケオ・キクチ) 72,000円
シャツ(コム・デ・ギャルソン) 22,000円
ネクタイ(ドルチェ & ガッバーナ) 12,500円
さて。
ファッション系のブランド各社が、農作物を作り始めたとしましょう。
料理雑誌の書き方がこんなふうに変わったりして。
↓
「マッシュルームのリゾット オレゴン風」
マッシュルーム(コムサ・デ・モード) 250円
シイタケ(カルバン・クライン) 200円
タマネギ(メンズ・ビギ) 120円
長粒米(トゥモローランド) 120円
参考商品:パルメザンチーズ(福助)
<非ファッショナブルでキケンな食育>
夜の繁華街の路上で、こんな会話が交わされたりして。
「そこのイケメンのお兄さん」
「え? おれのこと?」
「そう、あ・ん・た。最近、メタボ対策してる?」
「メタボ対策? そういえば、このところご無沙汰だなあ」
「でしょー。だってお腹、出てるし」
「そんなに出てるかなあ」
「しっかり出てるよ。それ、ヤバい。彼女、逃げちゃうよ」
「いやー、参ったなあ」
「いただきますって、ちゃんと言ってる?」
「うーん、そういえば、このところ言ってないかなあ」
「でしょー。だって顔色、よくないし」
「いただきますを言わなかったら、顔色悪くなるわけ?」
「決まってるじゃない。学校で教わったでしょ」
「そっかー、言われてみればそんな気もする。参ったなあ」
「農作業してる?」
「は? おれ農家じゃないけど」
「農家じゃなくたって、農作業はやんなきゃ。援農ボランティアとか、市民農園とか、あるでしょ」
「うーん」
「農作業しないと、自給率、下がっちゃう…」
「それって、おれの問題というより、国の問題じゃね?」
「なに言ってんの。そんなことじゃ、農業の活性化は進まないわよ」
「そうかもねー」
「だからさ、たまには楽しく食育でも、どう?」
「食育ねえ…」
「安くしとくわよ」
「どうしようかなあ」
「たまには、いいじゃない。思い切り弾(はじ)けちゃいなよ」
「食育って、弾(はじ)けるものなの?」
「そうよ。ね? だから一緒に食育しましょうよ」
「そっかー。そうだなあ。たまには、食育もいいかなあ」
「そうこなくっちゃ。ではご案内します。…お一人様、ご案内でえす」
松宮園生です。
アメリカに
「ナチュロパシー」
と呼ばれる分野があります。
世界各地に伝わっている健康法や治療法、食事療法なんかを総合的に研究しています。
ナチュロパシー専門の大学もいくつかあります。
こうした大学で6年間かけてしっかり学び、州政府が実施する試験に合格すると
「ナチュロパシック・ドクター」
として認定され、開業することができます。
いわゆる医者(メディカル・ドクター)とは違うのですが、治療みたいなことをすることが許されています。
メディカル・ドクターで食の世界に詳しい人は少ないです。
しかしナチュロパシック・ドクターは大学で食の勉強もしっかりやりますので、
「食にやたら詳しい医療技術者」
というイメージがあるようです。
◆◆◆
友人のヨロオネ先生はナチュロパシック・ドクターです。
シアトルにある「バスティーア大学」を卒業し、試験にうかって開業しました。
(バスティーア大学は全米でも有数のナチュロパシー大学です)
ヨロオネ先生はケイン・コスギにちょっと似ててまあまあの男前です。
さすがに身体能力はケインほど高くはないと思うけど。
マジメ系で、礼儀正しいイメージもなんとなく似てます。
彼は人気のあるナチュロパシック・ドクターです。
人気の秘密は何だと思うかと聞いたところ、
「ナチュロパシック・ドクターといえども、大事なのは知識やスキルじゃなくて、人間。人間を理解する力ですよ」
というのがヨロオネ先生の答でした。
人間を理解?
たとえばこんなことがあったそうです…。
◆◆◆
春もうららなある日。
若いきれいな女性がヨロオネ・クリニックにやってきました。
「サンドラ・ジョーンズといいます」診察室で、彼女は上目づかいにモジモジしながら言いました。「先生あのね、太ももの内側が赤く腫れて痛いんです」
「そうですか」
ヨロオネ先生は警戒しながら応えました。
ここで気軽に「どれどれ拝見」というわけにはいかないのです。
セクハラと思われないような対応をしなければなりません。
ヨロオネ先生は落ち着いて言いました。
「患部を私に見せて治療を受けますか? それとも見せずに治療を受けますか?」
「見せるのはとっても恥ずかしいんですけど」とサンドラ。「先生にだったらいいわ、あたし…」
スカートに手をかけたサンドラを、ヨロオネ先生はあわてて押し止めました。
「ちょっと待ってください」
先生はアシスタントの女性を呼び、立ち会うよう指示しました。
女性アシスタント同席のもと、ヨロオネ先生はサンドラの内股を診察しました。
サンドラの腿(もも)の内側にたしかに腫れ=炎症箇所があります。
きわどい位置に、全部で2箇所。
左右の腿にひとつずつです。
ヨロオネ先生は5秒で診察を終え、サンドラにスカートをはくように言いました。
◆◆◆
「さて松宮さん。ここでクエスチョンです」
と、ヨロオネ先生。
ここでクエスチョンです、って、「世界・ふしぎ発見」かよ!
中途半端なツッコミには耳もかさず、ヨロオネ先生は続けました。「あなただったら、サンドラにどんなアドバイスをしますか?」
僕は首をかしげました。「いやさっぱり分かりません。ていうか僕はドクターじゃないし」
「ドクターかどうかは実は関係ないんです」と、ヨロオネ先生。「ここで人間を理解する力がものを言うんです」
どゆこと?
続きを読んでみましょう。
◆◆◆
ヨロオネ先生が処方箋を書いているあいだ、サンドラは口をとがらせて文句をたれます。
「先生。たった5秒しか診てくださらないなんて、ひどいわ。5秒で何が分かるんですか。あたしが嫌いなの?」
その質問は黙殺されました。
「もう、先生ったら」
ほどなく、患部に塗るための混合ハーブの処方箋を、ヨロオネ先生はサンドラに渡しました。
「ミス・ジョーンズ」先生はようやく口を開きました。「私の推理ですが、ひょっとして、あなたの彼氏はハーレー・ダビッドソンに乗って、皮ジャンを愛用するタイプじゃありませんか?」
サンドラの目は驚きで丸くなりました。
「そ、その通りです。どうして分かったの…?」
「やはりそうでしたか…」
ため息をつくヨロオネ先生。
「では、その彼氏に私からの伝言を届けてもらえませんか?」
「伝言?」
「はい。伝言の内容はこうです。『おたくのピアスは本物のゴールドじゃないぜ』」
★★★
★★★