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2009.07.15 14:43

食育スカウトマン 下の巻

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松宮園生です。

(前回のあらすじ)

スカウトマン倉本さんに導かれ、プロ野球の試合を見にきた
マツオ親子。
選手たちの体の大きさに圧倒され、ふつうの食事では
あんな体になれないことを実感するのでした。

  前回→ 「食育スカウトマン 中の巻」
  http://www.shokuiku-pro.com/production/2009/05/post_190.html

◆◆◆

試合開始の時間が迫る球場に、次々と観客が入ってきました。
徐々に興奮が高まってきます。
マツオ親子と倉本さんは、一塁側の内野席に3人並んで座席を予約していました。

「さて」着席するなり、倉本さんはアタッシュケースを開きました。「体を大きくするための食育というのがあります。母親向けに特別にプログラムされた食育ボンバー養成講座を受講していただければ、間違いありません」
「食育講座? だって倉本さん。わたしは佐久間象子先生直伝の食育プリーチャー1級の資格を持ってるんですよ。なんでまた、食育講座を受けなくちゃいけないんですか」
「それはですね、お母さん。さっきも言ったように、『メタボ食育』や『栄養士食育』では体が大きくならないからですよ」
「はあ…」

「こんな食育カルタの句があります。『健康は和食と笑顔腹八分』」
「あ、それ知ってます。たしか『下関ぶちうま食育カルタ』のなかの一句ですね。趣のある素敵な句だと思います」
「よくお分かりですね」倉本さんは目を丸くしました。「食育カルタの出典を当てるなんて、古典をぜんぶ暗記している平安時代の貴族みたいだ」
「佐久間先生に鍛えられましたから」
まんざらでもない表情で鼻をひくひくさせる園子さんでした。

  下関ぶちうま食育カルタ
  http://www.shokuiku-pro.com/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=2119&post_id=3730&order=0&viewmode=flat&pid=2617&forum=17#forumpost3730

しかし倉本さんは厳しい表情になり、言いました。
「お母さん。『健康は和食と笑顔腹八分』の句は忘れてください。くどいようですが、これでは体が大きくなりません。腹八分ではまったくダメです。いままでの食育の考え方を捨て去ってください」
「はあ…。じゃあ、どうしたら…」
「その答えが、食育ボンバー養成講座なのです、お母さん。食育ボンバー養成講座のモットーは、『食べることもトレーニング』。漫然と食べるのではなく、トレーニングしているつもりで食べるのです」
「漫然と食べてはいけないのは、食育プリーチャー1級も同じですよ。ちゃんと命に感謝して、しっかり味わいながら、家族団欒で食べるんですから」
「食育ボンバーから見ると、それは漫然と食べてるのと同じです。ひたむきさが足りない」倉本さんは辛抱強く言いました。「体を大きくするには、胃を大きくしなければなりません。少食では体が大きくならない。腹八分でもダメです」
「はあ」
「胃を大きくして、栄養豊富なものをたくさん食べる。たくさん食べてたくさん運動し、体を大きくするのです」
「はあ」
「食育ボンバー養成講座では、どうやって子どもにたくさん食べさせるかを学びます。満腹でもう食べられない、という状態で、もう1口、食べさせるのです」
「え、そんな。それって残酷じゃないですか」

「残酷かどうかは、考え方によりますね」倉本さんの目は真剣です。「満腹状態で、もう1口、というのは確かに辛い。だから『食べることもトレーニング』だと申し上げている。こうやって体を大きくし、プロ野球選手に育てていくんです」
「はあ」
「ライオンが獲物の肉を食べているところを想像してください。あんなふうにガツガツ食べるんです」
「はあ」
「猛獣のごとく集中してガツガツ食べます。テレビをみながらだらだら食べてはいけません。食事中にテレビを見ないという点では、食育プリーチャーの主張と似てるかもしれませんがね」
「ふとります おやつのたべすぎ テレビっこ…」

「なんですか? それもどこかのカルタの句ですか」
「大阪は高槻市のオフィシャル食育カルタです」
「よく知ってますねえ」
「食育プリーチャーですから」
ふたたび鼻をひくひくさせる園子さんでした。

  高槻市 食育かるた
  http://www.city.takatsuki.osaka.jp/oshirase/syokuikukaruta2.html

しかし倉本さんはすぐに厳しい顔に戻りました。
「それはともかく、『食べることもトレーニング』です。そのかわり、食育ボンバーには地産地消もフードマイレージもいただきますも家族団欒も関係ありません。ライオンはそんなものは気にしない。大事なのは栄養と量です。大きく、強くなるために食べる。分かりますか」
「はあ」

倉本さんはマツオ君に話しかけました。「なあ、マツオ君。プロ野球選手みたいに大きくなりたいかい?」
手をあげるマツオ君。「なりたーい」
「たくさん食べるって、誓えるかな」
「誓うよ」
「じゃあ、食育ボンバー養成講座、受けてくれるかな?」
「いいともぉ!」
「いいともぉ、じゃないでしょ!」お母さんがツッコミました。「平成生まれのくせにギャグセンスは昭和なんだから、この子は」

ていうか、講座を受けるのはマツオ君じゃなくてお母さんじゃね?
マツオ君が返事してどうすんだっつーの。

「まあまあ。そういうわけですから、お母さん」倉本さんは満足げにうなずきながら、アタッシュケースから書類を取り出しました。「食育ボンバー養成講座の受講申込書です。受講料は6万8000円プラス消費税。ここに必要事項を書いて、ハンコを押してください」
「は、はあ。でも…」
「なにを迷っているんですか。マツオ君を立派なプロ野球選手にするためですよ。たったの6万8000円で息子さんがプロ野球選手になれるんだったら、母として迷うことはないはずです」
「は、はあ」申込書を受けとる園子さん。
「このボールペン、使ってください」
「は、はあ」記入を始める園子さん。
「そこ、カタカナで書いてください」
「カタカナですか」
「そうです。あ、全角じゃなくて、半角でお願いします」

手書きなのに全角とか半角とかあるのかよ!

◆◆◆

こうして、倉本さんの口車に乗り、食育ボンバー養成講座を申し込んだ園子さん。
結局、倉本さんはスカウトマンというより、講座のセールスマンだったようです。

はたして園子さんは、立派な食育ボンバーになれるのか?
息子マツオ君はプロ野球選手になれるのでしょうか?
その驚きの結末は、次号にて!

(以下次号。いまマツオ君は小学6年生なので、次号は10年後くらいに書きます)←そういうの、ありかい!

 

 

 

 

<参考図書>

「アスリートのための栄養・食事ガイド
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4804111344

アスリートのための栄養・食事ガイド

 

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