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松宮園生です。
ラザフォードというアメリカ人がいまして。
長年の悪友です。
流しの料理人をしています。
ラザフォードと僕の出会いは、このようなものでした…。
◆◆◆
あれはもう10年ちかく昔のこと。
アメリカ西海岸、オレゴン州ポートランドからクルマで1時間、とあるインディアン・リザベーション(アメリカ先住民の町のこと。住民は税金が優遇されています)を訪問した帰り道。
さびれた国道沿いにポツンとレストランがあり、こんな看板がついていました。
「お客様のあらゆる注文に応じます。応じられなかったら、500ドル差し上げます」
「マジかよ…」
そう呟いた僕は、ちょっとイジワルな気持ちになって店に入りました。
500ドル、もらっちゃお。
ウェイトレスがやってきました。
「お元気?」
「元気だよ」
「ご注文は何になさいますか?」
「どんな注文でもいいの? 看板見たんだけど」
「はい」
「じゃ、遠慮なく。日本の加賀野菜のサラダ、旬のもの限定で。ポルトガルのガレー船(クラゲの一種)を刻んだものをサラダに散らしてくれる? あと、シーラカンスのチャウダー。白でね。アフリカ象の耳のステーキをレアで。それからライ麦パンを」
そう言ってから、ライ麦パンだけ注文が平凡だったな、と思いましたが、面倒なのでそのままにしておきました。
ウェイトレスは注文を書き込むと、厨房に引っ込みました。
すると、ほとんど間髪を入れず、
「チクショー! なんだと!」
と大声で叫びながらオーナーシェフが厨房から飛び出してきました。
この男が、ラザフォードだったのです。
彼はバン!と音をたてて、僕のテーブルに100ドル札を5枚、たたきつけました。
「今日はあんたの勝ちだよ、日本人」ラザフォードは言いました。「だがよく覚えておけ。いいか、オレの店がライ麦パンを切らしたのは、この10年で初めてのことなんだからな」
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