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2009.07.31 13:10

鳥獣ギガ その3

 

松宮園生です。

(前回までのあらすじ)
さっぱり意味の分からない日本語を、たくみに操る、
中国人の崔(さい)さん。
安徽省というところで、農業でひと儲けしているようです。
数か月前、その崔さんが、
「中国のアヒル農法が日本のアイガモ農法より優れて
いるから、日本の農家は中国のアヒルを買え」
みたいなことを言いたくて僕に電話をしてきました。
(だから題名も、「鳥獣ギガ」にしたんだけど)

しかし、それきりぷっつり、崔さんからの音沙汰はありませんでした。

  前回 「鳥獣ギガ その2」
  http://www.shokuiku-pro.com/production/2009/07/2_39.html

◆◆◆

暖かい春の日差し。

ノックの音がしました。
ドアを開けると、そこに小柄で、しかめっ面の、頬のこけた青年が、僕を見上げていました。

「ニーハオ」
青年は、しかめっ面のまま笑顔をみせるという離れ業をやってのけました。

「こんにちは」と応える松宮。
「わたしサイですか?」
「は? サイじゃなくて人間に見えるけど…」
「それは異常です」青年は言いました。「わたしサイですか?」
「だからあんたはサイじゃなくて人間…」そこではっと気がつきました。「ひょっとして、崔さん?」
「理解千万ですね」
そう言って、青年はしかめっ面のまま声をたてて笑いました。

崔さん、日本まで、わざわざやって来るとは…。

青年はうなずきました。「わたし崔さん。松宮は不渡り長くて珍しいから」
「は? 不渡りなんか出してないよ、オレ」
「不渡り不渡りでないです。長いですが、意味の考えするときです」

「全然わかんねえ…。崔さん頼むから通訳つれてきてくれよ」
「ふふふん」眉をひそめて怒ったように笑う崔さん。「通訳無駄です」

ふふふん、通訳無駄です。

偶然なんだろうけど、初めて日本語として意味の通じる内容でした。
しかしそれが
「通訳無駄です」
だなんて…。

つーか、崔さん、そこ、笑うとこじゃないから。

◆◆◆

崔さんをソファに座らせ、僕は言いました。
「日本にようこそ。あまり嬉しくないけど…。で、用事は何なの」
「よくぞお出ましください」と、崔さん。「今日こそはネタ狙いなのである」
「ネタ狙い?」
「ネタ狙いには大物小物ですか? 大物小物がモンさん幅世界なのである」
「モンさん?」
「農薬モンさんなのですが、しかし遺伝子モンさんかもしれない」
「ち、ちょっと待て」

僕は薬箱を探しました。
頭痛薬が欲しかったのです。

しかし頭痛薬見つからず。
ていうか、薬箱自体がそう言えばなかったんだけど。
買った覚えないし。

苦労するそんな松宮を知ってか知らずか、崔さんは続けます。
「ネタ狙い松宮コーチ、絶対日本宝物なのです。なので分からない。コーチ絶対松宮いませんから」
「コーチ? それって、何かを教えろという意味?」
「まいった、まいった! 今さら的中率、思ったとおりまいった!」
会心のしかめっ面で、しきりにうなずく崔さん。
意思疎通したのが、よほど嬉しかったらしい。

「で、何を教えろと?」
「絶対日本ネタ狙い当選確実です。お金ばらまく大変」

また理解不能になってきた…。

ですが、僕の脳裏に突然、ひらめくものがありました。
ひょっとして彼が言いたいのは、「ネタ」じゃなくて「種(タネ)」なんじゃないか…?
「モンさん」というのは、「門さん」とか「文さん」とかいう人の呼び方じゃなくて、「モンサント」という会社のことなんじゃないか…?

  (モンサントについては→ 「食の世界のスーパーパワー その2」
  http://www.shokuiku-pro.com/production/2007/04/2_5.html

◆◆◆

崔さんは「種(タネ)」の話をしたいんじゃないか?
つまり、農業の言葉でいういと、「種苗」というやつ。
そういう仮定で話してみると、なんだか少し、見えてくる感じがしました。

ほとんど暗号解読のような、崔さんとの会話。
エニグマか?
しかし人間、頑張れば何とかなるもの。
僕は何日も何日も何日もかけ、憑かれたように崔さんの言っていることを理解しようとしました。
風呂も入らずヒゲは伸び放題でしたが、ようやく崔さんが何を望んでいるのかがひも解けてきました…。

解説します。

崔さんはこう見えても商売には長けているようです。
彼の会社が作る農作物は、何割かがヨーロッパに輸出されています。

昨年のある日。
安徽省にやってきた、ヨーロッパの農産物商社(すなわち崔さんにとってはお客さん)の人たちが、会食の席でこんなことを言いました。
「爆発する人口を支えるための大規模農業もいいけど、なんかちょっとね」
「生産効率を追求するあまり、同じ遺伝子の農産物ばかり作ってしまうのが欠点よね」
「一般人はそれでもいいのよ(笑)、でもあたしたち金持ちは、大量生産の同じ農作物ばかり食べたくないわよねえ」
「それに、同じ遺伝子の農作物ばかりつくると、作物が病気になったらいっぺんに全滅よ」
「土地だって、連作続きで枯れてしまうし」
「いろんな遺伝子の農作物があったほうが、いいって言うじゃん」
「農作物の、多様性というやつよね。よく国際会議とかで出てくる言葉」
「でもどうすればいいの。アメリカも中国も、同じ農作物ばかり作って輸出するようになってるわよ。そのほうが儲かるから」
「儲かっているのは今のうちよ。そのうち社会は、多様性のある農作物を求めるようになるんじゃないかな」
「じゃあどうするの」
「日本ね」
「日本?」
「日本よ。あそこの農作物は、まだ多様性を保っている。固定種も多いって聞くわよ」
「なるほど。あの国は大規模農業してないしね」
「つっても、あの国だってご多聞にもれず、F1種が増えてるっていうじゃん?」

  (F1種については→ 「食の世界のスーパーパワー その7」
  http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/04/7_3.html

「増えてるったって、他の国に比べたらたかが知れてる」
「そうよね」
「ということは…。日本の種苗会社を買収したら、あたしたち金持ちはもっと金持ちになるわね。キャー」
「そうよ。そういうことよ。日本の種苗会社を買収しましょうよ」
「あの国、小さい種苗会社がいっぱいあるようだし」
「じゃあ、買いやすいわね。ラッキー」

その会話を黙って聞いていた崔さん。
しかめっ面をしたその心のなかで、パチパチと算盤(そろばん)を弾いていたのでした。
でどうやら、自分自身で日本の種苗会社を物色するために、日本に来たらしい。

つーか、崔さんの破壊的な日本語から、これだけ複雑な内容を聞きだしたオレって、凄くね?
ま、かかった時間も凄いけど。

◆◆◆

「あんたのしたいことは分かった」松宮は言いました。「で、オレに何をしろと?」
「困難ネタ狙い、場所上々攻撃なかなか調べがよくありません」答える崔さん。

僕は数秒考えて、言いました。
「日本の種苗会社がどこにあるのか、調査に協力しろって意味?」
「まいった、まいった! 今さら的中率、思ったとおりまいった!」
「調査してやってもいいけど、オレ、けっこう忙しいんだけど」
「なにひとつ明快なまま、稼ぐ安徽省でしばらくお金ばらまく誕生使命、持つ者です」

僕は数秒考えて、言いました。
「報酬、出るって意味だね?」
「まいった、まいった! 今さら的中率、思ったとおりまいった!」
機嫌よくしかめっ面をする崔さん。

すこし、「崔語」を理解するコツが分かってきました。

よし、仕事をゲットしたぞ。
問題は、僕自身が種苗会社にあんまり詳しくないということです。
ちゃんと調べなければなりません。

どうやって調べようか…。

そうだ、まずは葉竹乃木夫先生に相談しよう。
葉竹乃木夫先生は、僕の農業の師匠です。

  (葉竹乃木夫先生については→ 「バウムクーヘン宣言 その2」
  http://www.shokuiku-pro.com/production/2007/05/2_10.html

葉竹先生に会おう。
僕はヒゲ放題を剃り、風呂を爆裂して、久しぶりに外出しました。
雪が降っています。

葉竹乃木夫先生の到着ノックのオフィス、コンコン叩くと…。
顔が開き、懐かしい葉竹ドアが見えました。
「おう、松宮か。帰国したって聞いてたが、挨拶もなく失礼なやつだな。まあ、寒いから中に入れや」

「こんにちは。葉竹は不渡り長くて珍しいから先生ですね」
「は? 不渡りなんか出してないぞワシは」
「いや、す、すいません。不渡り不渡りでないです。長いですが、考えするときです。日本語かけて時間不愉快なものですから」
「は? 何をいっとるんだお前? 意味が分からんぞ」

あわわわ。
僕の壊れ語の日本がヤバかけてる!
考えた訂正をつつきながら日本語は、必ず不可解な落とし方の結果でした。

不渡り葉竹なのに、焦燥。
怒りが先生、松宮絶縁体バラナラなのでした…。

(以下次号?)

 

 

 

 

 

<参考図書>

「食料の世界地図」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4621076426

食料の世界地図

 

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2009.07.29 11:06

鳥獣ギガ その2

 

松宮園生です。

(前回のあらすじ)
中国は安徽省の崔石という人からメールが送られてきたり
電話がかかってきたりしたのですが、何を言いたいのか
さっぱり分かりません。
脳みそが溶ける思いの松宮なのでした。

  前回 「鳥獣ギガ その1」
  http://www.shokuiku-pro.com/production/2009/07/1_24.html

◆◆◆

偶然ですが、その崔石さんが大学時代に書いたらしい卒業論文(日本語)がネットで公開されていた
のを発見して仰天。
紹介します。
文章はたいへん読みにくいけど、
内容はちょっとだけ勉強になるかも。

◆◆◆(論文はここから)◆◆◆

論文題名:食べる中国物
書人:日本語学閥 崔石集団(3者)

<起立>
私達は、しっかり学ぶ日本語の状態で満足した。
それが理由ですが、食べる中国具合を読むべき日本人と思います。
これは、日本人むかえて読むための食べる中国物です。
これから始まります。

<はじめ文>
中国は世界にいけば「料理王国」「グルメの国」と称えられた中国人いるところで中国料理店である。
中国には食べるが、それは人間が生存するナンバーワンだと見る。
中国主人は生産と生活の実践、天災と人災の飢きん。
それが理由です。
食べる中国の開発もっと多いのですよ!
中国主人は食べる楽しみナンバーワンで、しかし同時に飲食は人生の一番大きな楽しみです。
ほかでもない。
中国は土地が広く気候は変化する。
動物と植物多人数が、飲食調理素晴らしく自然条件でした。
孫文お分かる?
それはこう言います。
「中国飲食は文明が及ばない。食べる中国の開発は欧米もっと多いが、同時に調理する中国の精密さは匹敵しない」
意味はまさにぴったりの要約です。
数千年のすごい歴史はすごく長い。

<主食とは?>
食べる中国主食が小麦粉北なのが一方、食べる中国主食が米南だよ!
餃子の同時にビーフンである。

<料理の4大中国>
上海料理:魚料理の濃い味が味です。海は近い。
四川料理:リリ辛のリリ辛味が味です、香辛料多人数。
広東料理:薄味の薄味が味です。バライテー多人数。
北京料理:スガー酢味のスガー酢味が味です。油多人数。

<餃子>
食べる中国餃子が中国縁起で多人数嬉しい。
昔々お金餃子が形を作ります。理由がそうです。
波がゆれるみたいの餃子の辺境に輝く宝石は、中国縁起で多人数嬉しいよね!
餃子あたらしい中国縁起は魚です。
豊かさは魚表現です。
お分かる?

<デザート>
食べる中国餃子が甘くないので現実はシェン点心、食べる中国お菓子とデザートが甘いので実際はテェン点心と、呼びかた正しいのです。
食べる西洋お菓子が比較できないなじみの日本ですが…。
食べる中国テェン点心は健康だがしかしなかなかヘルシーです。
たっぷり大規模のナッツ、フルーツの理由がそうです。
進みましょう!

<お茶>
同じ食べる中国ウーロン茶が日本のお茶色と比べます。
食べる中国ウーロン茶の香りの香りが香りです。好き多人数。
食べる日本お茶の薄い薄さが香りなのが一方、薄い薄さが色である。
ゆえに中国主人は濃い濃さが香りなのが一方、濃い濃さが色だと判明した!

<言葉>
チーファンラマ語る挨拶、意味は「食べる人間ごはんですか?」が意味正しい。
戦争多人数が中国主人に食事の提供充実です。
それが違う。
ゆえにまず「食べる人間ごはんですか?」質問として挨拶です。

<行事>
お正月:同じお年玉日本と比べます。関わらず爆竹中国お正月バンバンです。爆竹中国は悪魔の愉快な音楽反対の理由がそうです。
ひなまつり:同じひなまつり中国昔はじめてです。ひなまつり女の子、日本初めてではそれが違います。
お月見:食べる中国お団子の一方、月餅メロン、もも、りんご、ざくろが円形まんまるです。

<感想>
私達は、食べる中国食べること、驚くべき調べるお茶が100種類でした。
食べる中国食べるもの大変にリリ辛の一方、感心する味だけは多人数です。
私達は、ひなまつり非常に驚くべき中国昔はじめては本当でした。日本初めてでは多人数がそれが違うのです。
これからも中日みんながお願いです。

◆◆◆(論文はここまで)◆◆◆

これって本当に論文なのかな?
ま、いいけど。

「これからも中日みんながお願いです」

崔石さんて、ドラゴンズファンだったんだ。
(違うか)

 

 

 

 

 

<参考図書>

「中華料理四千年」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4166603965

中華料理四千年 (文春新書)

 

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2009.07.27 23:45

鳥獣ギガ その1

 

松宮園生です。

ある日、こんなメールが来ました。

<メールここから>
松宮園生様。
突如、毎回お世話です。
わたくしは安徽省から住んでいる中国の崔石と申し上げます。
一生懸命金持ちなので農業を利用していますが、お友達日本から
お友達の名前を聞きましたメール初めて驚きすみません。
よろしくお願いどうぞいたしますか?
本題としては日本では農業カモですが安徽省は農業アヒル強力が大問題します。
ぜったい日本にアヒル強力ですが、もともと日本は歴史アヒルだと人は言う、でも21世紀日本人はカモ強化です。
万全ですが侵略できませんのでターゲット上海日本人アヒルが侵略すべき方法を相談メールよろしくどうぞ。
報酬ともどもよろしくください。
携帯電話お返事つながりしだい待つ示す崔石、安徽省。
<メール終わり>

なんとなくものすごく漠然と言いたいことが想像できる気がしますが、でも全然よく分かりません。
しかもこれ、
「金(報酬)よこせ」
と言ってるんでしょうか?

ど、どうしよう…。
無視しようかな。

びくびくしていたら、メールが来た翌日、電話がかかってきました。

「もしもし松宮?」
「はあ」
「中国の崔石と思います。日本語、松宮は足手まといで中国語話すか?」
「中国語はできません」
「したがって日本語便利ですか? よござんす電話そうしましょう。勉強日本語5年です。それはそうですが昨日のメール読んだりできますか」
「メール読みました。よく分からないんですが」
「農業アヒルです。農業アヒルで、安心安全。食べもの日本人食べたいですね? 安徽省は農業アヒル強力です」
「はあ」
「お金ばらまいたらわたくし安徽省有名です。安徽省農業経済部長お金ばらまいて農業アヒル強力です」
「はあ」
「松宮ががんばって農業アヒル日本人みんな納得する侵略したい。安徽省アヒル優秀な育成大規模です」
「アヒルを、日本に輸出したいんですか?」
「それ全部で不十分です。安徽省の農業アヒル強力を使って日本の農業強力、わたくしは大事にします」
「アヒルだけでは不十分ですか?」
「もともと歴史は日本のアヒル詳しく知ってませんか?」
「歴史?」
「その通りです。それ2回言っても大丈夫です。稲作だけ違う喜びます。長く走る自給率喜びあわせます」

だ、ダメだ。
脳が溶けてしまいそうです。

「ちょ、ちょっと待ってください」僕は言いました。「たいへん失礼ながら、崔さんの日本語はさっぱり分かりません。英語じゃだめですか?
「英語。オーケー。勉強英語1年お金ばらまいたら使う」

この崔とかいう人物はそれから英語らしい言葉でで何やらまくしたてましたが、やっぱり全然理解できませんでした。
聞き取れたのは、「ダック(アヒル)」「ジャパン」「シャンハイ」この3語だけです。

「すみません、英語も分かりません」僕は言いました。「日本語、ちゃんと話せる人に通訳してもらってください。失礼ですけど、崔さんの日本語は日本語のようで日本語ではないです」
「ちゃんと通訳あたらしく話しますか?」
「お願いです。通訳を雇ってください」
「でもわたくし勉強日本語5年お金ばらまいた使います。優秀日本語先生言いました」
「日本語の先生って、どんな人だったんですか?」
「日本語先生シャーメイ熱心学びます。シャーメイこのあいだ日本長かったら留学かもしれない」

そうか。
崔さんあんた、留学生から日本語を教わったわけね。
お金ばらまくんだったら、日本人から日本語習えばよかったのに…。

なんて言ってもしかたがないので、僕は崔さんに
「通訳をやとって、あらためて電話してこい」
という意味の要望をやっとの思いで伝え。電話を切りました。

でもよく考えたら。
中学・高校と日本人の教師に英語を習った僕の英語って、アメリカ人が聞いたらこんなふうに聞こえるのかなあ。
とほほ。

◆◆◆

1か月ほとたったころ、崔さんから電話が来ました。
「安徽省から崔石です。沙汰ですね。松宮話しますか?」
「松宮です」
「覚えている通訳良好です。線に載ります」

線に載ります?
オンラインと言いたかったのかな。

「もしもし。ヤマナカと申します」
女性の声に代わりました。

日本人だ、よかった。
ほっと胸をなでおろし(←死語)ながら、
「マツミヤです。通訳よろしくお願いします」

「いえあの、通訳したら300ドルくれるっていうので受けたんですけど」ヤマナカさんは戸惑ったように言いました。「分かったのはそこだけで。崔さんの中国語、なに言ってるかさっぱり分からなくて…」

(以下次号)

 

 

 

 

 

<参考書籍>

「日本の食と農 危機の本質」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4757140991

日本の食と農 危機の本質 (シリーズ 日本の〈現代〉)

 

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2009.07.24 10:03

料理500ドル勝負

 

松宮園生です。

ラザフォードというアメリカ人がいまして。
長年の悪友です。
流しの料理人をしています。

ラザフォードと僕の出会いは、このようなものでした…。

◆◆◆

あれはもう10年ちかく昔のこと。
アメリカ西海岸、オレゴン州ポートランドからクルマで1時間、とあるインディアン・リザベーション(アメリカ先住民の町のこと。住民は税金が優遇されています)を訪問した帰り道。
さびれた国道沿いにポツンとレストランがあり、こんな看板がついていました。

「お客様のあらゆる注文に応じます。応じられなかったら、500ドル差し上げます」

「マジかよ…」
そう呟いた僕は、ちょっとイジワルな気持ちになって店に入りました。
500ドル、もらっちゃお。

ウェイトレスがやってきました。
「お元気?」
「元気だよ」
「ご注文は何になさいますか?」
「どんな注文でもいいの? 看板見たんだけど」
「はい」
「じゃ、遠慮なく。日本の加賀野菜のサラダ、旬のもの限定で。ポルトガルのガレー船(クラゲの一種)を刻んだものをサラダに散らしてくれる? あと、シーラカンスのチャウダー。白でね。アフリカ象の耳のステーキをレアで。それからライ麦パンを」

そう言ってから、ライ麦パンだけ注文が平凡だったな、と思いましたが、面倒なのでそのままにしておきました。
ウェイトレスは注文を書き込むと、厨房に引っ込みました。

すると、ほとんど間髪を入れず、
「チクショー! なんだと!」
と大声で叫びながらオーナーシェフが厨房から飛び出してきました。
この男が、ラザフォードだったのです。

彼はバン!と音をたてて、僕のテーブルに100ドル札を5枚、たたきつけました。
「今日はあんたの勝ちだよ、日本人」ラザフォードは言いました。「だがよく覚えておけ。いいか、オレの店がライ麦パンを切らしたのは、この10年で初めてのことなんだからな」

 

 

 

 

 

<おすすめの1冊>

「おうちカフェのつくりかた」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4903363074

おうちカフェのつくりかた

 

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2009.07.18 02:42

アメアグリ

 

松宮園生です。

日米ともに個人個人ではさまざまな人がいて
バラエティに富んでて、
「日本人はこうだ」
「メリケン(※)はこうだ」
なんて決めつけるのは難しい。

  (※)メリケン=アメリカ人のこと

しかし平均的日本人と平均的メリケンとを比べると、こと
「商売っ気があるかないか」
という点では平均的メリケンのほうが商売っ気があるように思います。
どちらが正しいとか勝っているという意味ではなく、単に経済活動に対する構え方が違う。

■平均的日本人

精神的な豊かさを大切にする国民性でしょうか、経済活動をケイベツする傾向があります。
「稼ぐ」とか「金儲け」とかの言葉にネガティブなイメージがあるのがそれを象徴しています。
ちょっと極端な言い方をすると、
「稼いだ=なにか正当ではない手段で不労所得を得た」
「金儲けをした=自分が利益を得た=代わりに誰かが不幸になった」
ようなイメージがつきまとっています。

平均的日本人は「不労所得」をよしとしないところがあり、真面目にコツコツ働くことが美徳と思われたりします。
日本の貿易黒字が大きいのはその表れです。

「誰かを不幸にしないと自分が利益を得られない」
これは「ゼロ・サム・ゲーム」と呼ばれます。
一方の利益(プラス)と他方の損失(マイナス)を足すとゼロになる状況が「ゼロ・サム・ゲーム」です。
平均的日本人は、経済=ゼロ・サム・ゲーム だと無意識に感じているような気がします。

日本の義務教育では「お金の稼ぎ方」を学ばせてくれません。
なぜなら、お金を稼ぐことは決して「人として立派なこと」ではないと考えられているからです。
ところが、社会人になったら急に「お金を稼げ」と会社や上司から言われ尻を叩かれるので参りますね。
僕自身、そのギャップに戸惑った1人です。(←ただ学生時代に遊んでただけだろ)

■平均的メリケン

「不労所得」というと、たとえば不動産を貸して賃貸収入を得たり、株式相場や商品相場で利益をあげたり、特許権収入や著作権収入を得ることを言いますが、平均的メリケンはこの「不労所得」に対する抵抗がありません。
アメリカの貿易収支は巨額の赤字なのに、資本収支が巨額のプラスになっているのはその表れです。

「金儲け」を英語にすると money-making (マネーメイキング)になります。
使い方にもよりますが、普通、この言葉にはネガティブなイメージはあまりありません。
商品やサービスを提供し、相手に満足してもらい、その正当な対価としてお金を受け取る、くらいの意味です。

「相手が満足し、自分が対価を受け取る」
これは「ゼロ・サム・ゲーム」ではありません。
両者とも、なにかを得ているからです。
平均的メリケンは、経済=ゼロ・サム・ゲーム だと思っていません。
ですので、物質的豊かさを求めることに何の罪悪感も持っていません。

他の国は分かりませんが、英米では早くから「お金の稼ぎ方」を学びます。
で、日本みたいな新人研修をしなくても、ごく自然にビジネスマンになってゆきます。
医者なんかもお金の稼ぎ方がしっかり身についてて、僕の友人の内科医、マイケル・チイタッタ先生も、人気のある医者であると同時にしっかりビジネスマンです。

「ルールを守ってお金を稼ぐこと」は善とされています。
「お金の話をすること」は職業にかかわらず善とされています。
多くの場合、成功した事業家は社会の尊敬を受けます。

以上が、日本とアメリカの違い。

くりかえしになりますが、どちらが正しいとか勝っているという意味ではなく、単に経済活動に対する構え方が違うわけです。

◆◆◆

で、これを両国の農業にあてはめてみると。

お金(経済活動)に対する両国の構え方の違いは、農業にも表れているように思います。
例えば産地直売所(英語でいうとファーマーズ・マーケット)。

■日本の産地直売所
(といっても産地直売所にも優劣いろいろありますので、平均的な話をします)

僕の知るかぎり、多くの産地直売所は本質的にはただの「商品置場」です。
倉庫みたいなものです。
農家さんは並べたいものをテキトーに並べ、隣近所と価格競争をしながら、顧客が買いにくるのを待っています。

「直売だから、きっと商品の品質がいいに違いない」
なんとなくそう思っている顧客を、ただ無造作に待っているわけです。

とはいえ、「努力して大きく稼ごう」とは思っていません。
その証拠に、高く売ろうとはせず、あっさり値下げします。
値下げしてなにが悪いの? と言われそうですが、いえ、べつに悪くはありません。
農家さんも、安く販売してお客さんが喜んで、まあいっかと思って家に帰るのですから。

「自分は利益を度外視してこの作物を作っている。食べてくれる人たちに喜んでほしいから」
みたいなセリフもよく聞きます。

で、あとで「産直は儲からねえ」とブツブツ文句を言う。
世間や政治に文句を言う。

■アメリカのファーマーズ・マーケット
(これも平均的な話をします)

アメリカのファーマーズ・マーケットは多くの場合「ビジネス」です。
* 商品の魅力を表現するにはどうディスプレイしたらよいか
* より多くの人に来てもらうにはどうPRしたらよいか
つまり「マーケティング」を真剣にやっています。

会場のたたずまいなんかも懸命に工夫しています。
セールストークも練習しています。
出店農家が協力して共同プロモーションなんかもよくやってます。
アンケートなども何度も行い、顧客がなにを望んでいるのかを調べています。
楽しさを演出するイベントもいろいろ企画しています。

「自分は利益を度外視してこの作物を作っている。食べてくれる人たちに喜んでほしいから」
なんて考え方はまったくありません。
「食べてくれる人が喜んでくれたなら、利益を得るのは当然」
と思っています。
てゆうかむしろ、
「利益は、食べてくれる人が喜んだ証拠」
だと考えています。

「良いものを安く」とは考えていません。
「良いものは高く」と考えています。←ここが日本と大きく違うところです。
これも、日米どちらが正しいとか勝っているという意味ではなく、単に経済活動に対する構え方が違うわけです。

◆◆◆

とはいえ、なんとなく「メリケン礼賛」みたいな文章になってしまいましたね。
あー恥ずかし。
いえ、決してメリケン農業のほうがいいというわけではないのですが、こと「商売」という意味ではメリケンのほうが徹底しています。
それだけの話です。

逆に、メリケン農業にはなくて日本の農業にあるものがあります。
「熱意」というやつです。
メリケン農家さんはビジネスマンですので、農業をビジネスとしてやっています。
日本は必ずしもそうではありません。

日本の農家さんにとって農業は人生哲学みたいなところがあって、
* 文化
* 伝統
* 生きかた
* 収入源
この4者が人それぞれの割合で絡みあっています。

ですので、日本には「農業を熱く語るオニイサン」が大勢います。
「農業を熱く語る集会」なんかもよく開かれます。

メリケン農家が農業を熱く語るのはあまり聞いたことがありません。
金儲けの計画を熱く語る農家はいますが。
  ↑
  「金儲けの計画を熱く語る農家」
  と聞いて
  (なんかヤな人だなあ)
  と感じたあなたは、ヤマトダマシイ度、高いです。

 

 

 

 

 

<参考図書>

「やらなきゃ損する農家のマーケティング入門」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4540033204

やらなきゃ損する農家のマーケティング入門―失敗しない値段のつけ方から売り方まで

 

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2009.07.15 14:43

食育スカウトマン 下の巻

 

松宮園生です。

(前回のあらすじ)

スカウトマン倉本さんに導かれ、プロ野球の試合を見にきた
マツオ親子。
選手たちの体の大きさに圧倒され、ふつうの食事では
あんな体になれないことを実感するのでした。

  前回→ 「食育スカウトマン 中の巻」
  http://www.shokuiku-pro.com/production/2009/05/post_190.html

◆◆◆

試合開始の時間が迫る球場に、次々と観客が入ってきました。
徐々に興奮が高まってきます。
マツオ親子と倉本さんは、一塁側の内野席に3人並んで座席を予約していました。

「さて」着席するなり、倉本さんはアタッシュケースを開きました。「体を大きくするための食育というのがあります。母親向けに特別にプログラムされた食育ボンバー養成講座を受講していただければ、間違いありません」
「食育講座? だって倉本さん。わたしは佐久間象子先生直伝の食育プリーチャー1級の資格を持ってるんですよ。なんでまた、食育講座を受けなくちゃいけないんですか」
「それはですね、お母さん。さっきも言ったように、『メタボ食育』や『栄養士食育』では体が大きくならないからですよ」
「はあ…」

「こんな食育カルタの句があります。『健康は和食と笑顔腹八分』」
「あ、それ知ってます。たしか『下関ぶちうま食育カルタ』のなかの一句ですね。趣のある素敵な句だと思います」
「よくお分かりですね」倉本さんは目を丸くしました。「食育カルタの出典を当てるなんて、古典をぜんぶ暗記している平安時代の貴族みたいだ」
「佐久間先生に鍛えられましたから」
まんざらでもない表情で鼻をひくひくさせる園子さんでした。

  下関ぶちうま食育カルタ
  http://www.shokuiku-pro.com/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=2119&post_id=3730&order=0&viewmode=flat&pid=2617&forum=17#forumpost3730

しかし倉本さんは厳しい表情になり、言いました。
「お母さん。『健康は和食と笑顔腹八分』の句は忘れてください。くどいようですが、これでは体が大きくなりません。腹八分ではまったくダメです。いままでの食育の考え方を捨て去ってください」
「はあ…。じゃあ、どうしたら…」
「その答えが、食育ボンバー養成講座なのです、お母さん。食育ボンバー養成講座のモットーは、『食べることもトレーニング』。漫然と食べるのではなく、トレーニングしているつもりで食べるのです」
「漫然と食べてはいけないのは、食育プリーチャー1級も同じですよ。ちゃんと命に感謝して、しっかり味わいながら、家族団欒で食べるんですから」
「食育ボンバーから見ると、それは漫然と食べてるのと同じです。ひたむきさが足りない」倉本さんは辛抱強く言いました。「体を大きくするには、胃を大きくしなければなりません。少食では体が大きくならない。腹八分でもダメです」
「はあ」
「胃を大きくして、栄養豊富なものをたくさん食べる。たくさん食べてたくさん運動し、体を大きくするのです」
「はあ」
「食育ボンバー養成講座では、どうやって子どもにたくさん食べさせるかを学びます。満腹でもう食べられない、という状態で、もう1口、食べさせるのです」
「え、そんな。それって残酷じゃないですか」

「残酷かどうかは、考え方によりますね」倉本さんの目は真剣です。「満腹状態で、もう1口、というのは確かに辛い。だから『食べることもトレーニング』だと申し上げている。こうやって体を大きくし、プロ野球選手に育てていくんです」
「はあ」
「ライオンが獲物の肉を食べているところを想像してください。あんなふうにガツガツ食べるんです」
「はあ」
「猛獣のごとく集中してガツガツ食べます。テレビをみながらだらだら食べてはいけません。食事中にテレビを見ないという点では、食育プリーチャーの主張と似てるかもしれませんがね」
「ふとります おやつのたべすぎ テレビっこ…」

「なんですか? それもどこかのカルタの句ですか」
「大阪は高槻市のオフィシャル食育カルタです」
「よく知ってますねえ」
「食育プリーチャーですから」
ふたたび鼻をひくひくさせる園子さんでした。

  高槻市 食育かるた
  http://www.city.takatsuki.osaka.jp/oshirase/syokuikukaruta2.html

しかし倉本さんはすぐに厳しい顔に戻りました。
「それはともかく、『食べることもトレーニング』です。そのかわり、食育ボンバーには地産地消もフードマイレージもいただきますも家族団欒も関係ありません。ライオンはそんなものは気にしない。大事なのは栄養と量です。大きく、強くなるために食べる。分かりますか」
「はあ」

倉本さんはマツオ君に話しかけました。「なあ、マツオ君。プロ野球選手みたいに大きくなりたいかい?」
手をあげるマツオ君。「なりたーい」
「たくさん食べるって、誓えるかな」
「誓うよ」
「じゃあ、食育ボンバー養成講座、受けてくれるかな?」
「いいともぉ!」
「いいともぉ、じゃないでしょ!」お母さんがツッコミました。「平成生まれのくせにギャグセンスは昭和なんだから、この子は」

ていうか、講座を受けるのはマツオ君じゃなくてお母さんじゃね?
マツオ君が返事してどうすんだっつーの。

「まあまあ。そういうわけですから、お母さん」倉本さんは満足げにうなずきながら、アタッシュケースから書類を取り出しました。「食育ボンバー養成講座の受講申込書です。受講料は6万8000円プラス消費税。ここに必要事項を書いて、ハンコを押してください」
「は、はあ。でも…」
「なにを迷っているんですか。マツオ君を立派なプロ野球選手にするためですよ。たったの6万8000円で息子さんがプロ野球選手になれるんだったら、母として迷うことはないはずです」
「は、はあ」申込書を受けとる園子さん。
「このボールペン、使ってください」
「は、はあ」記入を始める園子さん。
「そこ、カタカナで書いてください」
「カタカナですか」
「そうです。あ、全角じゃなくて、半角でお願いします」

手書きなのに全角とか半角とかあるのかよ!

◆◆◆

こうして、倉本さんの口車に乗り、食育ボンバー養成講座を申し込んだ園子さん。
結局、倉本さんはスカウトマンというより、講座のセールスマンだったようです。

はたして園子さんは、立派な食育ボンバーになれるのか?
息子マツオ君はプロ野球選手になれるのでしょうか?
その驚きの結末は、次号にて!

(以下次号。いまマツオ君は小学6年生なので、次号は10年後くらいに書きます)←そういうの、ありかい!

 

 

 

 

<参考図書>

「アスリートのための栄養・食事ガイド
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4804111344

アスリートのための栄養・食事ガイド

 

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2009.07.12 12:32

サラダ危機一髪!

 

松宮園生です。

以前、「食の世界のスーパーパワー その1」で、
「戦後長いあいだ日本の学校給食がパン食だったのはカーギルの
インボーかも?」

と書きました。
あくまで噂ですが。

  「食の世界のスーパーパワー その1」
  http://www.shokuiku-pro.com/production/2007/04/1_5.html

インボーかどうかわかりませんが、日本の農業が化学肥料を使い始めたのはメリケンのせいだという説があります。
ちなみに、メリケンというのは僕がアメリカ人を指すときに使う言葉です。

日本が無条件降伏し、マッカーサー元帥率いるGHQ(ほぼメリケン軍)が進駐してきたとき…。

(以下、食事中の話題にはふさわしくない内容が含まれています)

◆◆◆

マッカーサー 「コンコン(ノックの音)。入るぞ」
日本政府 「今日は何の用すか? こっちは敗戦処理で忙しいんだから、手短に頼みます」
マッカーサー 「それは敗戦国の態度ではないな。…まあよい。今日は食糧の話をしにきた」
日本政府 「はあ」
マッカーサー 「お前は軍隊出身ではないから知らぬかもしれぬが、軍隊にとって最も大切なものは何だか分かるか」
日本政府 「そりゃ、ミサイルとか爆弾とかじゃないんですか」
マッカーサー 「違う。兵器ではない」
日本政府 「じゃあ、軍艦とか戦車とか、戦闘機とか?」
マッカーサー 「それも違う。答はな、兵士が食べる、食べものだ」
日本政府 「食べものですか」
マッカーサー 「戦いを始める前に、兵糧(兵士の食糧)の補給ルートをしっかり確保することが何よりも重要なのだ。古今東西、歴史を通じ、兵糧の確保に失敗して戦闘に勝てた例は少ない」
日本政府 「はぁなるほど。だからあんたがたは、本国から山のように食糧を運んできているんすね」
マッカーサー 「そのとおり。ソ連や中国といつ戦うことになるか分からぬからな。ただし、本国から運んでいるのは缶詰が多いのだが」

(マッカーサーが日本にいたのは今から60年も前ですが、そのころすでに缶詰は一般的なものになっています。ちなみに缶詰は19世紀初頭、つまり今から200年前に発明されたもので、度重なる遠征で兵糧不足に苦しむナポレオン軍が、最初に使用したと言われています)

マッカーサー 「それでだ。今日は農村の視察をしたいと思ってやってきた。どこか案内せよ」
日本政府 「今からですか」
マッカーサー 「今からだ」
日本政府 「いいスけど、視察してどうするんすか?」
マッカーサー 「野菜を買う」
日本政府 「野菜?」
マッカーサー 「わが米軍兵士どもに、野菜を食わさねばならぬ」
日本政府 「アメリカ人も野菜を食うんですね」
マッカーサー 「正直言うとけっこう野菜嫌いが多いのだが、野菜不足は体に悪い。無理にでも食べさせようと考えている」
日本政府 「その気持ちは分かります」
マッカーサー 「缶詰ではなく、新鮮な野菜を食べさせようと思う。このへんの農家から野菜を買いたいのだ」
日本政府 「それ、マジですか?」
マッカーサー 「なにか問題でもあるのか?」
日本政府 「いや、別に…」
マッカーサー 「米軍が金を出して買おうというのだ。日本にとってもドルが手に入るから、よい話ではないか」
日本政府 「そうすね。じゃあ案内します。おいら、クルマがないんで、元帥のクルマでいいすか?」

◆◆◆

日本政府 「このへんが農村地帯なんですけど」
マッカーサー 「我が国の農場とはずいぶん違うな」
日本政府 「へえ。そうですか」
マッカーサー 「あそこで親しげに手を振っている男は?」
日本政府 「やつは日本政府と契約している農家ですよ」
マッカーサー 「あそこでなにをやっておるのだ?」
日本政府 「肥やしを捲いてます」
マッカーサー 「コヤシとは?」
日本政府 「肥料のことです」

マッカーサー 「なるほど。で、肥料には何を使っておる?」
日本政府 「人間のウ●チですね」
マッカーサー 「なぬ?」
日本政府 「人間のウ●チです、元帥とか、おいらの」
マッカーサー 「なんだと。…それを、畑に捲いておるのか?」
日本政府 「はあ」
マッカーサー 「ああやって、ヒシャクですくって、かけておるのか?」
日本政府 「はあ」

マッカーサー 「し、しかし、そんなことをしたら、野菜にもかかってしまうではないか」
日本政府 「まあ、そうなりますね」
マッカーサー 「そんなことしたら、食べれないだろうが?」
日本政府 「洗えば?」
マッカーサー 「それは理屈ではそうかもしれぬが…」
日本政府 「なんか問題あります?」
マッカーサー 「たいへん困る。アメリカ人は野菜をサラダで食べるのだぞ」
日本政府 「あのねえ、元帥。あんたが飲みたい飲みたいとやかましいから、今日の朝食にお出しした野菜ジュース、材料はあの男から買いましたぜ。うまかったでしょ」

◆◆◆

マッカーサー元帥が気絶しているあいだに、篤農家の人からこんな話を聞いたので紹介します。

その当時、日本の農業は「肥やし」を使うのがふつうでした。
「肥やし」は、たくさんの量を必要としました。
そのため、農家の人たちは人がおおぜい住んでいる住宅地まで、はるばる「それ」を集めに行ったのです。
農村と住宅地はかなり離れていたので、まる1日かかる仕事でした。

彼らは早く起き、荷車に樽を積み、日が昇るより先に出発します。
「汲みとり」をするためです。
東京近郊の農家の場合、青山、赤坂、四谷、といったところ(昔のムード歌謡によく出そうな地名)が目的地だったようです。
農家は「汲ませてもらう立場」だったので、「汲みとり料」を払っていました。

で、汲みとり料を払い、樽を満杯にした帰り道。
重くなった荷車を、疲れたからだで何キロも何キロも曳くのはたいへんでした。
そんな彼らを手伝うために、農家の子どもは学校が終わるとすぐ、その足で父親を迎えにいったといいます。
帰ってくる父と途中で合流し、親子で荷車を曳きました。
もうすぐ太陽が沈みます。

肥料の確保のために、こんな重労働をしていたわけです。

◆◆◆

気絶から目を覚ましたマッカーサー元帥の命令により、進駐メリケン軍は本国アメリカから大量の化学肥料を買いつけ、日本の農家に売り始めましたとさ。

その後、化学肥料が普及した結果、
* 「肥やし」を使わなくなり、日本の生活環境が全体として衛生的になりました。
* 「汲みとり労働」が不要になりました。

化学肥料にも問題はいろいろありますが、この2点は、よかったことの部類に入ると言えるかもしれないなあ。

 

 

 

 

<参考図書>

本当は危ない有機野菜―リサイクル信仰が生み出す「恐怖の作物」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4198626715

本当は危ない有機野菜―リサイクル信仰が生み出す「恐怖の作物」

 

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2009.07.08 19:14

どっちやねん? ベジタリアン part-2

 

松宮園生です。

このコラムでベジタリアンのことを時々書いていますが、
僕自身は立派なベジタリアンというわけではありません。
なるべく野菜をたくさん食べるようにはしていますが、
こないだはトンカツ食べちゃったし、その前はロサンゼルスの
「ローリーズ」でプライム・リブを食べる夢を見ました。
ホースラディッシュを山のように塗って、ミディアムレアに焼いたプライムリブを食べるのです。

そんな僕はベジタリアンというより、
「ベジタリアン・ウォッチャー」
というほうが、たぶん当たってます。

さて、ベジタリアンの反対語をご存知ですか?
「ノン・ベジタリアン」
というのが普通ですが、たまに
「プレデター」
と言ったりもします。
映画
「エイリアン vs プレデター」
のプレデターです。

本来はライオン、トラ、ヒョウ、チーターなどの
「狩をする肉食動物」
の意味ですが、転じて
「肉をもりもり食べる人」
の意味にも使われます。

◆◆◆

先日、
American Journal of Clinical Nutrition
という医学雑誌に、
「ベジタリアン(菜食主義者)の骨は、プレデターより弱い」
という記事が載りました。

オーストラリアとベトナムとの共同研究のようですが、それによると
「ベジタリアンの骨密度はプレデターより5%低い」
ことが分かったそうです。
さらに、ビーガン(動物系食品を一切食べない完全菜食主義者)の場合、6%も低かったとのこと。

おや、そうなのか。
そう思って関連情報を探してみたら…。

ついこのあいだの4月、
Journal Osteoporosis International
という医学雑誌に、
「ベジタリアンもプレデターも骨密度は同じだ!」
という研究結果が載っていた。
しかもそれ、同じくオーストラリアとベトナムとの共同研究でした。

どっちやねん。

 

 

 

 

 

<参考図書>

「ベジタリアンの医学」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4582852629

ベジタリアンの医学 (平凡社新書)

 

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2009.07.05 20:44

フード・ファイト

 

 

松宮園生です。

アメリカ独立記念日(7月4日)には全米でさまざまな
イベントが行われますが、そのなかで有名なものの1つが
「ネイサンズ国際ホットドッグ早食い大会」 。
1916年に始まった由緒ある大会だそうです。

日本でも報道されているのでご存じの方も多いと思いますが、
過去には日本人が何度も優勝しています。
「なぜ体の細い日本人が優勝できるのか」
というテーマで、科学者が論文を書いたほどです。

  (参考)
  http://www.ifoce.com/news.php?action=detail&sn=39

この大会、2007年、2008年と日本人は優勝を逃していますが、今年も2位だったようです。

◆◆◆

大食い競争や早食い競争のことを、英語では
Food Fight (フード・ファイト)
といいます。
パイ投げ合戦のようなものを Food Fight という場合もあります。

  食べものどうしが戦争をする、という Food Fight もあるみたいです。
  (YouTube 動画)
  http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=e-yldqNkGfo&feature=related

 (ハンバーガー軍が敵陣に攻め入る図、だそうです)

  これ、食べものを粗末にしているような感じでもあり、見ただけではよく意味の分からない
  動画ですが、製作者に言わせると
  「第2次大戦以降にアメリカが行った戦争を皮肉った、風刺たっぷりの文学作品」
  ということらしい。

◆◆◆

大食いにせよ、早食いにせよ、パイ投げにせよ、Food Fight という言葉はあまり立派な言葉ではなさそうに感じる方もおられるかもしれません。

ところが、Food Fight にはもう1つ別の意味があります。
「体に良いものを食べ、健康を保ち、社会での厳しい競争に勝ち抜く」
という意味に使われることがあるのようなのです。
どの程度ポピュラーに使われているのかどうか、よく分かりませんが、この場合は、なかなか食育的な使い方だと言えそうです。

ちなみに、この意味で Food Fight を実践している人が口にする「食育的な」食べもののことを
「パワーフード」
「スーパーフード」
と言ったりします。
健康な人が、より健康になるためにとる食事、といったニュアンスのようです。

 

 

 

 

 

<参考図書>

「スーパーファストフード」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4795238367

スーパーファストフード―健康にいい素材を‐手早く組合わせる‐洋食メニューと料理法

 

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2009.07.03 10:30

ミスターシュガー

 

 

松宮園生です。

ご存じのように、カリフォルニアには日本語を話す人が
たくさんいます。
日本食のレストランもゴマンとあります(※)。
「ロサンゼルスにある日本食レストラン向けに、日本の食材を供給する専門会社」
というのもありまして、なかなか繁盛しております。

  (※)全米にある日本料理店の数は約1万店(2007年現在)なので、「ゴマン」は言いすぎか…。

僕の好きな店の1つに
「ミスターシュガー」
というところがありました。
こじんまりとした店です。

シュガー(砂糖)というのは単純なシャレで、店主の名前が「佐藤さん」だからそういう名前になっています。
佐藤さん → ミスターサトウ → ミスター砂糖 → ミスターシュガー
ちなみにこの佐藤さんには、20歳年下の美人の奥さんがいます。
名前通り、甘い生活を送っているのでしょうか。

「ミスターシュガー」は日本風洋食屋でした。
要するに
カレーライス
ハヤシライス
エビフライ定食
カニクリームコロッケ定食
チキンライス
ビーフシチュー
あたりがメニューに載っているような店です。

「ミスターシュガー」が開店した当初は、日本人客ばかりでした。
エビフライだの、カニクリームコロッケだのという、これら「洋食」というやつは、「洋食」と呼ばれる、じつは日本の料理です。
長崎の「トルコライス」みたいなものにいたっては、郷土料理とさえ言えるくらいです。
これらは日本人のために日本人が開発した料理です。
(洋食が一般化したのは大正時代と言われています)
なので、アメリカに住んでる日本人にとっては、故国日本を思わせる懐かしい料理なわけです。

一方、アメリカ人には馴染みのない料理でした。
アメリカにはエビフライもカニクリームコロッケもありません。
なので、「ミスターシュガー」が開店したころ、
「お、また日本料理屋がオープンしたのか」
と思ったアメリカ人が店に入ってみると、イメージしていた日本食とは全然違うものが出てくる。
かといって、アメリカで慣れている料理が出てくるわけでもない。
なんだかよく分からない、不思議な料理が出てくる。
たいそう戸惑ったようです。
というわけで、初めの頃はなかなか客が増えなかったのでした。

そんな「ミスターシュガー」だったので、いわゆる日本食ブームの恩恵を受けることはあまりなかったようです。
それでも真面目に頑張った佐藤さん。
最近はそこそこ人気が出てきたらしく、ときどきは混むこともあったりします。
僕はもっぱらランチタイムによく行きました。

そんなある日のこと。

白人の若者が1人、ヒョコッと店をのぞきこんで言いました。
「おじさん、ランチタイムは何時まで?」
キッチンにいた佐藤さんは答えました。「2時までやってるよ」
「ああそう。じゃ、また来るよ」
そう言って若者は去っていきました。

壁時計に目をやると、まだ12時前でした。
偵察役だったのかな。しばらくしたら仲間を連れて戻ってくるつもりかな。
佐藤さんはそう思ったようですが、その日は結局、若者は戻ってきませんでした。

数日たったころ、同じ若者がまた店に顔を出しました。
「混んでるねえ」彼は言いました。
事実、この日の「ミスターシュガー」はごった返していました。
「今日も2時までやるの?」
若者は周囲の喧噪のなか、佐藤さんに聞こえるように大声で言いました。
佐藤さんも大声で答えました。
「今日は3時まで頑張るかな。悪いがいまは見てのとおり満席だ。2時くらいには空いてくるから、その頃おいでよ」
「分かった。そうする」
言い残して若者は去っていきました。

でも彼は戻ってきませんでした。

さらにその翌週。
ランチタイムでしたが12時前とはいえ客はちらほらでした。
そこに例の若者が現れました。
「空いてるね」彼は言いました。「こんなでも2時までやるの?」
佐藤さんはムッとした表情で
「2時までやるさ。空いてっけど、たまにはこんな日もあるよ」
と言い返します。
若者はあわてました。
「気を悪くしたらごめんなさい。そんなつもりはまったくないんだ。ただ、今日は何時まで開店してるのか知りたくて」
「いつもどおり2時までやるさ。質問ばかりしてないで、食べてってくれよ」
佐藤さんはそう言いましたが、若者の姿はすでにもうありませんでした。

ミスターシュガーの常連客で、日本人の筒井君という留学生が、たまたまそこにいました。
「佐藤さん。何あれ?」筒井君が聞きました。
佐藤さんは首を横に振りながら、「あいつさ、顔だけ出して、閉店時間だけ質問して、食べずに帰ってくんだよ。これで3度目」
「ふうん。変なやつ」
「顔を出してから何をしているんだろうな」佐藤さんは不思議に思いました。「そうだ筒井君、悪いけどあいつの後、つけてみてくれない? いまあんたが食べ終わったオムライス、お代は払わなくていいからさ」

タダメシにつられた筒井君。
さっそく若者のあとをつけました。
しばらくして筒井君はニヤニヤしながら帰ってきました。

佐藤さんは尋ねました。「あいつの行き先、分かったかい?」

「分かったよ」筒井君はあいかわらずニヤニヤしながら答えました。「パイン通り992番地って、ひょっとして佐藤さんの家?」

 

 

 

 

 

<参考書籍>

「アメリカ日本食ウォーズ―寿司、豆腐、枝豆、日本酒…いまアメリカでは日本食が大ブーム!」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4751105523

アメリカ日本食ウォーズ―寿司、豆腐、枝豆、日本酒…いまアメリカでは日本食が大ブーム!

 

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2009.07.02 00:44

クラウントップ物語

 

松宮園生です。

僕がサラリーマンだったころの上司に、こういう人がいました。
ラーメン好きで、コショウ好きでした。
「へい、お待ちど!」
てな感じで運ばれてきたラーメン。
彼はまずコショウをかけます。
喋りながらかけます。
延々とかけつづけます。
そのうちラーメンの表面が濃いチャコールグレーに染まるわけですが、そうなって初めて、食べはじめます。

コショウじゃないけど、こんどは醤油の話。
アメリカにも吉野家がありまして。
学生なんかにわりと人気です。
ここでよく見かけるのが、ライスに醤油をかける人です。
それもちょこっとかけるのは分かります。
そうぢゃないんです。
ドボドボとかけます。
喋りながらかけます。
醤油が波打つくらいにかけます。
「イクラの醤油漬け」ならぬ「ごはんの醤油漬け」が出来上がります。
これをうまそうに食べるわけです。

アメリカの寿司屋にもそーゆーのがいます。
上等のスーツを着たエグゼクティブ風の中年男性。
しかし彼の醤油皿にはキ★コ★マンがなみなみと…。
指で弾いたらこぼれそうなくらい、なみなみです。
横から水平に観察すると、表面張力でまん中が盛り上がっています(※)。

(※) この状態にはなぜか名前がついてまして、
「クラウントップ」
というそうです。

この人は握り寿司をこの醤油皿にたっぷり浸します。
醤油は少しこぼれますが、お構いなしです。
で、たっぷり醤油をすった握り寿司を、うまそうに食べるわけです。

書き忘れました。
この人の醤油皿はもうひとつあり、そこにはワサビが盛られています。
クラウントップどころの騒ぎではありません。
山盛りです。
そんなに使うんかい、と思うのですが、使うらしい。
握り寿司にそのワサビをどっさり載せます。
大丈夫かな。
ま、ワサビの品質にもよりますが…。

で、ワサビどっさりの握り寿司を、たっぷり醤油に浸してうまそうにかぶりつく。

「どっさり野菜のたっぷりスープごはん」
は食べたいけど、
「どっさりワサビのたっぷり醤油寿司」
はちょっとなあ。

みんながみんな、こういう食べ方をするわけではありませんが、よく目撃されている食べ方です。

醤油メーカーさんも痛し痒しだろうなあ。
そんな醤油の使い方はしてほしくないだろうし、でもそのおかげで醤油の売上はアップするだろうし…。

 

 

 

 

<参考図書>

「スシエコノミー」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4532353017

スシエコノミー

 

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