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2009.06.11 14:39

ある酪農家の悲劇

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松宮園生です。

アメリカに住んでいたころの話ですが、オリンピック半島の
先端にあるポート・アンジェルスという小さな町に、朝早く
出かけました。
仕事が午前中で終わってしまったので、ひと休みしようと
酒場に入ったところ…。

スーパーマリオみたいな風貌の男がひとり、暗い表情で
ビールを飲んでいました。
まっ昼間のことでもあり、酒場にはその男しかいませんでした。
根がシャイな僕は、話相手がほしかったわけでもないので、男と離れたテーブルを選びました。

酒場の店主が奥から出てきました。「何にする?」
「サミュエル・アダムズ」
「サミュエル・アダムズはないね。バドワイザーでいいか」
「ミラーはないの?」
「ミラーならある。3ドル50だ」

店主がミラーのボトルをテーブルに置き、僕はチップを含めて4ドルを手渡しました。
「ごゆっくり」
店主はこんどはスーパーマリオのほうに歩みよりました。

「あのさあ」店主は言いました。「ウチで飲んでくれるのは商売としちゃ、ありがたいんだけど、でもあんた、大丈夫? こんな天気のいい日に、こんなところで飲んでちゃいかんよ」
それから、店主は僕のほうを振りかえっていいました。「あんたもだ」

大きなお世話です。

すると、スーパーマリオが顔をあげました。「こんなところで悪うござんしたね、旦那」
「それはおれのセリフだろが」
「男にはね、昼間から飲んだくれたい日もあるんでがすよ。今朝は、人生で最悪の朝だったんだ」
スーパーマリオは、大きくため息をつきました。

「何か困ったことでもあったのか、あんた?」と、店主。
「聞いてくんなさる?」
「いいとも」
「じゃあ、バドワイザーをもう1本」
「まだ飲むんかい」
「こんな話、飲まずには話せませんや」

というわけでスーパーマリオは店主を相手に身の上話を始めます。
僕はミラーをちびちび飲みながら、聞くともなしにその会話を聞いていました。

バドワイザーが運ばれてきます。
悲しそうに受け取るスーパーマリオ。

自分は山で酪農をしているのだが、とスーパーマリオは前置きをして、言いました。
「今朝、いつものように牛の乳しぼりをしてたんでがすが…。ようやくバケツがいっぱいになったと思ったら、牛のやつ、左足でバケツをひっくり返しやがりましてね」
「そりゃ災難だったね」店主は言いました。「でも昼間から飲んだくれるほど、ひどい出来事じゃないだろ?」

「いやいや続きがあるんでがす」酪農家は言いました。「聞いてくんなせえ」
「いいとも。で、それでどうなった?」
「牛の左足を、柱にくくりつけたんでがす」
「それで?」
「乳しぼりをやりなおしました。ようやくバケツがいっぱいになったとたん、牛のやつ、今度は右足でひっくり返しやがったんで」
「またやったのか」
「またやったんでがす」
「困った牛だね。でもそれだって、昼間から飲んだくれるほど、ひどい出来事じゃないだろ?」

「いやいや、旦那、まだ続きがあるんでがす」酪農家は言いました。「聞いてくんなせえ」
「もちろん。で、どんな続きなんだ?」
「牛の右足を、べつの柱にくくりつけたでがす」
「それで?」
「もういちど乳しぼりをはじめましてね。やっとバケツがいっぱいになったんでがすが、あの牝牛め、またでがす、今度は尻尾をつかってバケツをひっくり返したんでがすよ」
「ふーむ」

「まだ続きがあるんでがす。聞いてくんなせえ」
「まだ続きがあるんだな?」
「そうでがす」酪農家は続けました。「尻尾をどこかにくくりつけたかったんでがすが、ロープが足りなくてね。自分のベルトをはずして尻尾を柱に結びつけたんでがす」
「ふむふむ」
「そのときなんでがすよ」酪農家の目に涙が浮かびました。「オレのパンツがずり落ちてね。そこにカミさんが入ってきやしたんで…」

 

 

 

 

 

 

<参考書籍>

「ビールの科学」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4062576325

ビールの科学 (ブルーバックス)

 

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