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松宮園生です。
泣く子も黙る日本食育大学。
キャンパスがどこにあるかだれも知らないという、
意味不明の大学です。
日本食育大学には附属小学校がありました。
教育実習で、日本食育大学附属食育小学校に
やってきた大学生の加奈子。
ドキドキしながら6年2組の教室に入ります。
担任の鮎川先生が加奈子を紹介しました。
「ほれほれみんな、おしゃべりは止めなはれ。教育実習に来はった北里加奈子先生や。今日から2週間、このグラスの担当をしてもらいますさかい」
「北里加奈子です」加奈子は教壇に上がって言いました。「得意技はローキック。みんなよろしくね」
ローキックでだれも笑わなかったので、加奈子は恥ずかしさで真っ赤になりました。
「先生」ひとりが手を挙げました。「今朝の朝ごはんは何でしたか」
「えっ、朝ごはん? 食べてないけど…」
すると、教室がしんと静まりかえしました。
鮎川先生も驚きの表情で立ちすくんでいます。
「い、いえ、今日はたまたま食べなかっただけで」と、言いわけする加奈子。「きのうはコンビニで買ったサラダとパンとマーガリン…」
すると、教室が凍りついたようになりました。
鮎川先生が声にならない叫びをあげています。
「コンビニで買うなんて」
だれかがつぶやきました。
「マーガリンだなんて」
別のだれかがつぶやきました。
真ん中の座席にいる男の子が、立ち上がって言いました。
「みんな、加奈子先生もいろいろ事情があったんだと思うよ。ちゃんと話を聞いてあげようよ」
クラスメイトたちは仕方なくうなずきました。
男の子は続けました。
「先生はどうしてコンビニで朝食を買ったんですか」
「どうしてって、うちのアパートの隣だから…」
またもや凍りつく教室。
頭を抱える鮎川先生。
「先生」男の子はゆっくりした口調で言いました。「よく考えて発言したほうがいいと思うよ。…次の質問だけど、サラダはどんなサラダだったんですか?」
「どんなって…。キャベツと、トマトと…」
「生産者はだれ?」
「は?」
「だれが作った野菜かって聞いてるんだけど」
「そんなの知らないわ」
「ふうん」と、男の子。「まあいいや。で、どうしてバターじゃなくてマーガリンなんですか」
「どうしてって、とくに理由はないけど…」
すると、今度は女の子が立ち上がりました。
「トランス脂肪酸のことは考えなかったんですね」
「トランス脂肪酸? 何ですかそれは?」
その一言に、クラスはまたもや静まり返ってしまいました。
見ると、鮎川先生がショックのあまりよろけながら教室を出ていくところでした。
加奈子は教卓をこぶしで叩きました。
「だったらみんなはどうなのよ。あなたは朝ごはんは何を食べたって言うの」
「僕ですか」さっきの男の子が返答しました。「今朝はね、玄米ごはんに、冬瓜の味噌汁。納豆。小松菜のお浸し。デザートには、ちょっと季節が早いけど、桃」
「生産者はだれ」
「玄米は北海道の荻野さん、冬瓜と小松菜は三浦半島のせんだ農園、味噌汁の味噌は自家製だよ。納豆は生産者分からないけど、『らでぃっしゅおじょうさん』に選んでもらった納豆にしてる。桃は山梨の石渡ファームから買ってるよ」
「先生」女の子が言いました。「三浦半島のせんだ農園って、農薬取締法違反の疑いで取り調べを受けてまーす。お母さんが言ってたもん」
「えっ、そうなの」焦る男の子。「知らなかった」
「ちゃんと食農タイムズ読まなきゃね」
「へー、食農タイムズなんて雑誌があるんだ」
加奈子の無邪気な発言に、教室はまたしても氷点下50度くらいになりました。
「先生」さっきの男の子が勇気を出して発言しました。「食農タイムズ知らないって、先生としてヤバくね?」
鮎川先生はどうなったかというと、廊下のところで泡を吹いて倒れていました。
(次回に続く)
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