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松宮園生です。
(前回のあらすじ)
小判大介君は天道ゆかりさんと恋に落ち、
農業を始めると同時に結婚しました。
天道ゆかりさんには、結婚を急ぎたい理由がありました。
娘を支配しようとする母親からの逃亡でした。
母親は、ゆかりさんが農家と結婚することにもひどく反対してたのです。
◆◆◆
「私たちの結婚に反対してるんだから、新居まで遊びにくるはず、ないよねー」
ゆかりさんはそう考えていました。
事実、しばらくは母親から何の音沙汰もありませんでしたし、ゆかりさんが母親に連絡することもありませんでした。
ゆかりさんと大介君の2人は、ある意味、安心してイチゴ栽培に没頭しました。
しかし逃亡は長続きしませんでした。
ある日とうとう母親が、2人の住むテケテケ村までやってきたのです。
母親は、何ごともなかったかのような顔で、ふたたび娘を支配しようとしました。
新婚夫婦の「愛の巣」(←書いてて恥ずかしくなる表現ですが)に乗りこみ、細かくチェックを入れはじめました。
ゆかりさんの服。食器。家具。読んでいる雑誌。
あれもこれもケチをつけて回りました。
そのうち大介君のほうにもケチをつけだします。
大介君はわりと今風の青年でございまして、ゆかりママが想像していた農家のイメージとはだいぶ違っていました。
大介君のスタイルはこんな感じ。
ゆかりママが描いていた農家のイメージはこんな感じ。
しかしそれはそれで気にくわなかったらしく、ゆかりさんの母親は大介君に嫌味をいいはじめました。
僕ならこのへんでキレるところですが、キレなかった大介君は立派です。
彼はニコニコと、ゆかりママに接していました。
家のなかのチェックを終えると、母親はティータイムにしたいと言いました。
ゆかりさんは勇気をだして言いました。
「ママ。ティータイムもいいけど、その前に見るものがあるんじゃない?」
「外のビニールハウスのことだったら、興味ありません」察しのよい母親でした。「虫はきらいです」
「娘夫婦が一生懸命にイチゴを作ってるのよ。見てくれてもいいじゃない。そういうところを見てほしいのに」
ゆかりさんと母親は、ビニールハウスを見る見ないで口論しました。
結局、娘の剣幕に母親が珍しく折れて、3人はイチゴを育てているビニールハウスに向かいました。
異変が起きたのはそのときです。
ビニールハウスの入口付近でたまたま草を食んでいた山羊のメリーが、突然、ゆかりさんの母親の頭を後ろ足で蹴ったのです。
メリーはおとなしい山羊のはずでしたが、虫のいどころが悪かったのでしょうか?
ゆかりママは打ちどころが悪く、そのまま帰らぬ人となりました。
◆◆◆
告別式の案内は、当時東京にいた僕のところにも届きました。
告別式はテケテケ村で行われることになっていました。
仕事をいくつかキャンセルし、僕はテケテケ村に向かいました。
東京から7時間もかかりました。
意外にも告別式には大勢の参列者がいました。
ゆかりさんと大介君は、テケテケ村に移り住んでまだ日が浅いです。
ゆかりママは東京から来ています。
この2つを考えると、テケテケ村で告別式をして、参列者が集まるとはとても思えません。
なのでこの人数は不自然でした。
もうひとつ、妙なことがありました。
ゆかりさんと大介君は参列者から次々と声をかけられていたのですが、
女性の参列者は決まってゆかりさんに声をかけ、ゆかりさんは必ずうなずき(=首を縦にふり)、なにか答えていました。
男性は決まって大介君に声をかけ、大介君は必ずかぶりを振り(=首を横にふり)、なにか答えている様子でした。
何の話をしているのでしょう?
さすがにその日はゆっくり話しかけるわけにはいかなかったので、僕はテケテケ村に一泊し、翌朝、大介君を訪問することにしました。
翌朝、大介君のビニールハウスをのぞくと…。
早朝から大介君が歩きまわっていました。
畝(うね)を作っているみたいでした。
昼間はハウスのなかが耐えがたい暑さになるらしく、作業は早朝が多いのだそうです。
僕は彼が作業の手を休めるのを待って、昨日の疑問を口にしました。
すると大介君は言いました。
「あんなにたくさんの人が来るなんて、僕も驚いてます。でも女の人たちは僕のことを胡散臭そうにジロジロ見るばかりで、ぜんぜん話しかけてくれなくて。でもゆかりに対しては同情してくれてるみたいで、『お母様、お気の毒ねえ』なんて言ってくれて、ゆかりもうなずいてお礼を言ったりしてました」
「そっか。それでゆかりさんは何度もうなずいていたわけか。でも男性はみんな、きみ(大介君)に話しかけてたみたいだけど?」
「そうなんです、松宮さん。村の男の人はみんな僕に好意的で、こう言ってくるんですよ。『大変だったね。これからは仲良くしようや、小判ちゃん』。小判ちゃん、て呼ばれてるみたいです」
と、大介君は少しうれしそうに言いました。
「村に溶けこめそうだね」
「はい。義母が亡くなったのは悲しいことですけど、友達が増えました。これで仕事しやすくなるといいんですが」
「きみに話しかけてた男性陣のことだけど、きみは首を振って頼まれごとを何度も断っているようにみえたけど、あれはなに?」
「あれはですね」大介君は答えました。「みんなから、山羊のメリーを何日か貸してくれって言われてたんです。でも断るしかありませんでした。年内は予約でいっぱいになっちゃってて…」
<参考図書>
「やらなきゃ損する農家のマーケティング入門」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4540033204
松宮園生です。
松宮園生の生まれ故郷じゃないか?
という疑惑が持ち上がっているテケテケ村。
知り合いの若者が、そのテケテケ村で農業を始めました。
その若者の名前は、小判大介といいました。
小判君がテケテケ村で始めたのは、イチゴのハウス栽培です。
ついでに山羊を一匹、飼い、メリーというベタな名前をつけました。
彼は農業を始めると同時に結婚するという「離れ業」をやってのけました。
なぜこれが「離れ業」なのかというと…。
農業を始める、ということは、サラリーマン(会社勤め)をやめて独立するということです。
どんな仕事でも、独立した当初は何かとたいへんですので、たいていの人はそのタイミングで結婚することはありません。
仕事が軌道にのって、家族を持てるようになったら結婚する、というのが、まあ普通ですよね。
もちろん、例外はつねにありますけど。
くわえて、農業は「辛く苦しい仕事だ」という一般のイメージが強いので、都会の親たちは自分たちの娘が農家と結婚するのを喜ばない傾向にあります。
これは、就農センターの人たちであったり、農業をしている方々の一部が、
「農業は辛く苦しい仕事だ。お金にもならないし、異性にもモテない。だから覚悟のあるヤツ以外は来るな」
ということをあちこちで言いまわっているせいでもあります。
なぜ自分たちの仕事の悪口を言いまわるのか、その心理には納得できない部分がありますが、ここではその話をするのはやめておきます。
そういうわけで、
* 独立してすぐに結婚したこと
* その仕事が世の親たちに不人気な、農業であること
という2つの理由により、小判君の結婚は「離れ業」だったのです。
愛の力ですね。
2人はふつうに恋愛をして、ふつうに結ばれたのですが、女性のほうの母親は案の定、2人の結婚にあまりいい顔をしませんでした。
とはいえそこは自由の国、日本。
社会的な慣習がどうであるかはさておき、法律上、当人同士が結婚しようと思えば、誰も止めることはできません。
◆◆◆
小判君が結婚したのは、旧姓、天道ゆかりさんという人です。
ゆかりさんの母親は未婚の母でした。
恋多き女性だったらしく、結婚する機会は何度もあったと思われるのですが、とうとう結婚しませんでした。
というわけで、ゆかりさんは自分の父親を知らないまま、母親に育てられました。
ゆかりさんはひとりっ子でした。
つまり、母ひとり、子ひとり、の親子だったわけです。
この母親は典型的な「風と共に去りぬ型」女性のタイプで、東京の西銀座でアパレルショップを経営し、ふつうのサラリーマンよりも贅沢な暮しをしていました。
男性との交際が上手だったのもあり、資金の援助もときどき受けていたようです。
彼女は「子どもを支配したがる母親」のタイプでもあり、ゆかりさんの行動には細かく口をはさんでいました。
たとえば女が生きていくためには「ルックス」と「フェロモン」が欠かせない、というのが母親の持論で、その信念のもとに、ゆかりさんを着せかえ人形のように扱おうとしました。
服も母親がボディコン(←死語)っぽいのを選び、着こなしも母親が決め、化粧品も母親が選び…。
でもゆかりさんは、自分の着たいものを着たい人でした。
思春期以降、ゆかりさんと母親が感情的に衝突することが多かったのも無理はありません。
ゆかりさんが小判君とさっさと結婚したのも、ひとつにはこの母親の支配から早く逃れたかった、というのがあったのかもしれません。
◆◆◆
結婚によって母親の支配から逃れたかったゆかりさん。
当初、その意図は成功したように見えました。
母親の反対を押し切って結婚した結果、母親はしばらくのあいだ娘と会おうとしなかったからです。
しかし結婚してしばらくたったころ。
ゆかりさんの母親から電話がかかってきました。
夫婦の新居を見るために、テケテケ村までやってくるという電話でした。
(以下次号)
<参考書籍>
「農で起業する! 脱サラ農業のススメ」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4806713015
松宮園生です。
食育基本法という法律があります。
2005年にできました。
ふつう法律というと、「決まり事」が書かれていて、
それに背くと懲役とか罰金とかの「罰」が待っているわけですが、
この食育基本法にはそういったことが書かれていません。
なので、だれに何をさせようとしている法律なのかが、ちょっと分かりにくい。
なんとも不思議な法律です。
食育基本法にはいくつもの条文がありますが、
「ひとつくらいは法律らしく『決まり事』と『違反したときの罰則』を作ろう」
と考えた国会議員の働きかけで、2009年になって「決まり事」と「罰則」ができた。
…と想像してください。
以下は想像の世界です。
◆◆◆
で、食育基本法にこういう条文が加わりました。
食育基本法 第xx条
すべての成人は毎日、健康な朝ごはんを食べなければならない。
違反した者は10万円以下の罰金または30日以内の懲役とする。
さて、この法律を実施し、違反者を取り締まるためには、
「健康な朝ごはんとは何か」
を誰かがきちんと定義しないといけません。
でないと、たとえば立ったまま栄養ドリンクを飲んで「朝ごはん終了」だと思っている人は違反しているのか違反していないのか? が判断できませんね。
じゃあだれが定義するか。
それについて農林水産省と厚生労働省とが話し合った結果、
「朝ごはん管理本部(Breakfast Administration Department 略して BAD)」
という組織が国内の有識者を集めて誕生しました。
この BAD が朝ごはんの定義を決めることになりました。
何度も会議を繰り返した末、BAD が定めた朝ごはんの定義はこういうものでした。
* 健康な朝ごはんの「健康」とは、日本・韓国・中国・ギリシャ・インド・スペインのうちどれかの国の伝統的な朝食スタイルに合致すると BAD が認めたものとする。
* 健康な朝ごはんの「朝」とは、午前4時から午前10時30分までとする。
* 健康な朝ごはんの「ごはん」とは、テーブルに向って椅子に座った姿勢で、40kcal/min(分速40キロカロリー)以上のスピードで連続5分以上、合計で480カロリー以上の食物を、経口で摂取する行動のこととする。
複雑怪奇でなんだか分かりにくい文章ですが、まあとにかく、この3つの文章を足し合わせ、「健康な朝ごはん」の定義は最終的にはこうなりました。
「午前4時から午前10時30分のあいだに、日本・韓国・中国・ギリシャ・インド・スペインのうちどれかの国の伝統的な朝食スタイルに合致すると BAD が認めた食物を、40kcal/min(分速40キロカロリー)以上のスピードで連続5分以上、合計で480カロリー以上、経口で摂取する行動のこと」
◆◆◆
定義づけができたのはいいのですが、次は、人々がこの法律を守っているかどうかをどうやってチェックするか、という問題が浮上します。
飲食店で朝ごはんを食べる場合、
1) 朝ごはんを店内で食べた人に、店側が「朝ごはん認定証」を発行する。
2) この認定証を BAD に提出すると、「合格」。
3) 提出できなかった人は違反者
みたいな感じにすればいいわけです。
しかし、そのうち客と店とが結託して架空の認定証を出すようになると、このやり方も張り子の虎になってしまいますね。
家庭で朝ごはんを食べる場合はもっと難しい。
家族が家族に「朝ごはん認定証」を出しても、BAD としては、本当に食べたかどうか、素直に信じられないからです。
この問題について BAD は徹夜の会議を繰り返し、このように決めました。
前の日の夜中12時までに、
「翌朝の朝ごはんを何時にどこで食べるか」
を地元の役所に申告する。
その申告を受け、役所側は監視ロボット(子犬型)を朝ごはんの現場に送る。
で、本当に食べているかどうかを確認する。
なお、申告しなかった(=申告漏れ)場合は追徴金。
朝ごはんを食べる場所ですが、自宅で食べる人、飲食店で食べる人、オフィスで食べる人、など、さまざまです。
したがって、子犬の姿をした監視ロボットはそのさまざまな場所に出向き、尻尾を振りながら朝ごはんのチェックをするわけです。
監視ロボットの電子頭脳には、
「午前4時から午前10時30分のあいだに、日本・韓国・中国・ギリシャ・インド・スペインのうちどれかの国の伝統的な朝食スタイルに合致すると BAD が認めた食物を、40kcal/min(分速40キロカロリー)以上のスピードで連続5分以上、合計で480カロリー以上、経口で摂取する行動のこと」
がちゃんとインプットされています。
なお、監視ロボットの数には限りがあるので、全員の監視をするわけにはいきません。
なので、監視ロボットはランダムに派遣されることになりました。
つまり監視ロボットは来たり来なかったりする。
来るか来ないかは予測ができないため、たいがいの人は申告したとおりに真面目に朝ごはんを食べるようになりました。
◆◆◆
実をいうと、朝ごはんを食べるべきなのか、食べないほうがいいのか、どっちが健康に良いのか、専門家のあいだでも意見が分かれています。
以前、
「朝ごはん派」
「アンチ朝ごはん派」
が出版している本の数を調べてみたら、ほぼ同数でした。
このアンチ朝ごはん派の人々が、食育基本法の「朝ごはん条文」に反対して
「アンチ朝ごはん党(Party Against Asagohan 略して PAA)」
を結成しました。
PAAには夜更かしの人が多かったのですが、それと比例してアーティストなんかも多く加わっています。
そのアーティストたちが作ったシングル曲
「朝は出すだけ」
がミリオンセラーとなり、PAA は財政的に潤いました。
そのお金を元手に、形勢逆転を図ります。
PAA は、次の総選挙で過半数を取り、食育基本法を廃案にすることをマニフェストに掲げました。
過半数を取れなかった場合は、アンチ朝ごはん派だけを集めて独立国家を建てることも検討していると噂されており、社会は不穏な空気に包まれています。
◆◆◆
それはともかく、このようにして、国民皆兵ならぬ「国民皆朝ごはん」の時代が幕を開けたのでした。
<まとめ>
この法律ができて、損したところ
* ○○製薬(カ○○○メイトが朝ごはんとして認められず、売上激減)
* 飲食店(朝ごはんを食べる人は増えたが、夜遅くまで酒を飲む人が減り、トータルでは売上が落ちた)
* 電力会社(夜更かしする人が減った)
* コンビニ(深夜の客が減った)
儲かったところ
* わり箸メーカー
* ロボットメーカー
* 管理栄養士(レシピ作成の依頼が増えた)
* 時計メーカー(目覚まし時計がバカ売れ)
* 精神科医(患者が増えた)
<関連図書>
「ティファニーで朝食を」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/410209508X
松宮園生です。
ラザフォードというアメリカ人がいまして。
長年の悪友です。
流しの料理人をしています。
そのラザフォードから聞いたホットドッグの話を思い出したので紹介します。
◆◆◆
ラザフォード自身はアメリカ生まれですが、彼の母方の祖母はちょっと気取った感じのイギリス人でした。
祖母と孫の交流は年に2回くらいありました。
夏は祖母がアメリカを訪れてきましたし、冬はラザフォードがイギリスを訪問していました。
ラザフォードが10歳のころの夏。
事情は忘れましたが、祖母と2人でホットドッグを食べることになったそうです。
イギリス人である祖母は、ホットドッグを食べたことがありませんでした。
しかも彼女は、ホットドッグという名前から何やら勘違いをしていたらしく、
「犬を食べるなんて、野蛮な話だこと」
と眉をしかめて言っていたそうです。
それでも、アメリカ人の「伝統食」といわれているホットドッグを、いちどは経験しておこうと思ったのでしょう。
あまり浮かない顔をしながらも、ホットドッグを2つ買いました。
1つは孫のラザフォードの分、もう1つは自分の分です。
2人は公園のベンチに腰かけました。
自分のホットドッグの袋を開けたとたん、祖母の顔が赤くなりました。
彼女はラザフォードに言ったそうです。
「おまえのホットドッグは、どこの肉だったの?」
<参考図書>
「イギリスはおいしい」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4167570025
松宮園生です。
泣く子も黙る日本食育大学。
キャンパスがどこにあるかだれも知らないという、
意味不明の大学です。
日本食育大学には附属小学校がありました。
教育実習で、日本食育大学附属食育小学校に
やってきた大学生の加奈子。
ドキドキしながら6年2組の教室に入ります。
担任の鮎川先生が加奈子を紹介しました。
「ほれほれみんな、おしゃべりは止めなはれ。教育実習に来はった北里加奈子先生や。今日から2週間、このグラスの担当をしてもらいますさかい」
「北里加奈子です」加奈子は教壇に上がって言いました。「得意技はローキック。みんなよろしくね」
ローキックでだれも笑わなかったので、加奈子は恥ずかしさで真っ赤になりました。
「先生」ひとりが手を挙げました。「今朝の朝ごはんは何でしたか」
「えっ、朝ごはん? 食べてないけど…」
すると、教室がしんと静まりかえしました。
鮎川先生も驚きの表情で立ちすくんでいます。
「い、いえ、今日はたまたま食べなかっただけで」と、言いわけする加奈子。「きのうはコンビニで買ったサラダとパンとマーガリン…」
すると、教室が凍りついたようになりました。
鮎川先生が声にならない叫びをあげています。
「コンビニで買うなんて」
だれかがつぶやきました。
「マーガリンだなんて」
別のだれかがつぶやきました。
真ん中の座席にいる男の子が、立ち上がって言いました。
「みんな、加奈子先生もいろいろ事情があったんだと思うよ。ちゃんと話を聞いてあげようよ」
クラスメイトたちは仕方なくうなずきました。
男の子は続けました。
「先生はどうしてコンビニで朝食を買ったんですか」
「どうしてって、うちのアパートの隣だから…」
またもや凍りつく教室。
頭を抱える鮎川先生。
「先生」男の子はゆっくりした口調で言いました。「よく考えて発言したほうがいいと思うよ。…次の質問だけど、サラダはどんなサラダだったんですか?」
「どんなって…。キャベツと、トマトと…」
「生産者はだれ?」
「は?」
「だれが作った野菜かって聞いてるんだけど」
「そんなの知らないわ」
「ふうん」と、男の子。「まあいいや。で、どうしてバターじゃなくてマーガリンなんですか」
「どうしてって、とくに理由はないけど…」
すると、今度は女の子が立ち上がりました。
「トランス脂肪酸のことは考えなかったんですね」
「トランス脂肪酸? 何ですかそれは?」
その一言に、クラスはまたもや静まり返ってしまいました。
見ると、鮎川先生がショックのあまりよろけながら教室を出ていくところでした。
加奈子は教卓をこぶしで叩きました。
「だったらみんなはどうなのよ。あなたは朝ごはんは何を食べたって言うの」
「僕ですか」さっきの男の子が返答しました。「今朝はね、玄米ごはんに、冬瓜の味噌汁。納豆。小松菜のお浸し。デザートには、ちょっと季節が早いけど、桃」
「生産者はだれ」
「玄米は北海道の荻野さん、冬瓜と小松菜は三浦半島のせんだ農園、味噌汁の味噌は自家製だよ。納豆は生産者分からないけど、『らでぃっしゅおじょうさん』に選んでもらった納豆にしてる。桃は山梨の石渡ファームから買ってるよ」
「先生」女の子が言いました。「三浦半島のせんだ農園って、農薬取締法違反の疑いで取り調べを受けてまーす。お母さんが言ってたもん」
「えっ、そうなの」焦る男の子。「知らなかった」
「ちゃんと食農タイムズ読まなきゃね」
「へー、食農タイムズなんて雑誌があるんだ」
加奈子の無邪気な発言に、教室はまたしても氷点下50度くらいになりました。
「先生」さっきの男の子が勇気を出して発言しました。「食農タイムズ知らないって、先生としてヤバくね?」
鮎川先生はどうなったかというと、廊下のところで泡を吹いて倒れていました。
(次回に続く)
<オススメ図書>
最新版 明日からの「子どもの食育」にすぐ役立つ本
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4876895791
(この題名で笑ったあなた。年、バレてます)
(笑えなかったあなた。正常値です)
松宮園生です。
食育活動をしている方々って、講師とかのほかに
どんな活動をしているのかというと、
「食育かるた」を作っている団体さん、けっこう多い。
ちょっと驚いています。
さて今回は、「食育かるたの句」ランキングです。
旬(しゅん)ではありません、句(く)です。
句、つまり、読み手が読み上げる言葉のことです。
「犬も歩けば棒に当たる」
みたいなやつのことですね。
そのランキング。
その前に申し上げます。
「食育かるた」を作っている人たちはマジメに作っています。
子どもたちのために良かれと思って作っています。
日本の食をもっと豊かにしたいという熱い思いで作っています。
そのことを胸に刻んで、おちゃらけランキングをさせていただきます。
怒らないでください。
いじめないでください。
僕の苦手な○○○○を郵送しないでください。
◆◆◆
ここに紹介するのは、ホントにある食育かるたの句です。
まず最初は、
「えっ、これ、子どもにこれ説明するの? あたしが?」
ランキング。
(昇順ではなく降順になってます)
第5位: 伝統食スローフードと人は言う
第4位: 見直そう欧米型より日本食
第3位: 見直そう農村のよさと役割を
第2位: よく見てね確かな情報JAS表示
第1位: 論よりも証拠を見せるトレーサビリティ
(論評)
かるた遊びを終えた子どもから
「ママ、トレーサビリティってなあに?」
「JAS表示ってなあに?」
「農村の役割ってなあに?」
と天真爛漫に聞かれたときに撃沈しないよう、しっかり勉強しておきましょう。
次は、
「えっ、これ、食育の句なの?」
ランキング。
第3位: むじゅうりょくで おほしさまを たべたいな
第2位: ろぼっとが ごはんをつくるとき くるの
第1位: せいちょうを しずかにみまもる ふじのやま
(論評)
3位と2位の句は、マジでSFファンタジーの名作ですね。ちょっと癒されます。
1位に関しては、コメントに困りますので何も書かないことにします。
次は、
「何を言いたいのでしょうか?」
ランキング。
第4位: 温暖な気候をいかしたハウス栽培
第3位: 賞味期限切れたとたんに捨てられる
第2位: 真っ先に見るのは値段票
第1位: かれーらいす?らいすかれー?
(論評)
「で?」と言いたくなる名句の数々です。
次は、
「自己批判型かるた」
ランキング。
第2位: 輸入して食べ残している日本人
第1位: 日本人いつの間にやらコメ忘れ
(論評)
これ、作ったのは農林水産省系のお役所なんですけど、コメの減反政策をしてたのはあなた方では?
次は、
「くどくね?」
ランキング
第3位: ぬくもりを感じる食材地元産
第2位: もう少し上げようみんなで自給率
第1位: そらあかん六割輸入に頼ってちゃ
(論評)
日本の未来が心配で心配でしかたがない、という気持ちがよく表現されていますが、こうして並べると、くどいね。
次は、
「どこかで聞いたことあるような…」
ランキング。
第2位: 健康はサプリもあるけど野菜でね
第1位: ヨーグルト にゅうさんきんが いきている
(論評)
似たようなキャッチコピーのCM、ありませんでしたっけ?
次は、
「ビミョーにツッコミたくなる句」
ランキング。
第3位: ラーメンの しるははんぶん のこそうね
(→ 武闘派のラーメン屋さんに聞こえたらマジやばい)
第2位: ルックスも あたまもよくなる しょくじから
(→ ルックス、という単語がかるたに登場するのはこれが史上はじめてでは?)
第1位: れんこんのあなから なにがみえるかな
(→ なんでもいいよ)
(論評)
ツッコミになっていません。
最後は、個人的にもっとも気に入った句の発表です。
↓
れんこんは、ねっこじゃないよ くきがおおきくなったんだ
(論評)すがすがしいほどの字余りでございました。
つーか、初めて知りました。
<参考かるた>
「バーベキューたるか」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/B001DJ5L7Y
バーベキューの材料のお肉や野菜の食品うんちくが分かる、クイズ形式のかるたです。
松宮園生です。
泣く子も黙る日本食育大学。
キャンパスがどこにあるのか、誰も知らないという
意味不明の大学です。
その日本食育大学が、
「あまり使えない食育ことわざ辞典」
を発行しました。
あまり使えないというのは間違いですね。
まったく使えません。
ではどんなことわざが載っているのか、
いくつかピックアップしてみましょう。
■朝ごはん食わねど栄養教諭
食育の立役者になるべき栄養教諭は、朝ごはんを食べていなくても、食べていることにしなくてはならないという意味。
「武士は食わねど高楊枝」
と
「医者の不養生」
との中間の意味。
よく分かりません。
■うどんの腹ふくれ
うどんのような炭水化物は消化が早いので、代謝の良い食べ盛りの人たちなんかはすぐにお腹が空いてしまいます。
それが転じて、一時しのぎの対策のことを指します。
(用例)オバマ政権はリーマンショック後の経済混乱を防ぐために数千億ドル規模の財政支出を行ったが、一部のエコノミストからは「所詮、うどんの腹ふくれではないか」と言われている。
■口は食育手は椎茸(くちはしょくいく、てはしいたけ)
「農家の苦労を知るべきだ」
「形の悪い野菜だって、味は同じだ」
と言われると、
「そうよそうよ。政府は何をやってるのよ」
と怒りだすのだが、スーパーマーケットでは値段の高い有機ホウレンソウより値段の安い普通のホウレンソウを買い、痛みやすいシイタケを触りまくってその中から最も形のいいものを選ぶ。
転じて、言うこととやることが違っているのに、それに気がついていない状況を指すことわざ。
■腐ったら鯛にあらず
「腐っても鯛だから食べる」という、食品安全的には認められない行動を防ぐスローガン。
たしかに、腐った鯛を食べたらえらいことになると思われます。
「腐っても鯛だから、ちゃんと残さず食べなさい」
と言われたら、超怖い。
■象子の集会
剛腕の管理栄養士、佐久間象子。
彼女にむかって、食の大切さを説く人はいませんね。
なぜなら、佐久間象子は食の大切さをじゅうぶんに分かっているからです。
ところが、世の中の、食育をテーマとした集会を見てみると、
「食の大切さがよく分かっている人ばかりが集まり、お互いに、食の大切さを主張している」
そんな集会がけっこうあったりして。
聞いてほしいというより、とにかく喋りたい。
このような、犬が鏡に映った自分に向って激しく吠えているような集会のことを、「象子の集会」といいます。
◆◆◆
「あまり使えない食育ことわざ辞典」
(日本食育大学出版) 1,260円
ほしい方は、日本食育大学まで直接お問合わせください。
松宮園生です。
アメリカに住んでいたころの話ですが、オリンピック半島の
先端にあるポート・アンジェルスという小さな町に、朝早く
出かけました。
仕事が午前中で終わってしまったので、ひと休みしようと
酒場に入ったところ…。
スーパーマリオみたいな風貌の男がひとり、暗い表情で
ビールを飲んでいました。
まっ昼間のことでもあり、酒場にはその男しかいませんでした。
根がシャイな僕は、話相手がほしかったわけでもないので、男と離れたテーブルを選びました。
酒場の店主が奥から出てきました。「何にする?」
「サミュエル・アダムズ」
「サミュエル・アダムズはないね。バドワイザーでいいか」
「ミラーはないの?」
「ミラーならある。3ドル50だ」
店主がミラーのボトルをテーブルに置き、僕はチップを含めて4ドルを手渡しました。
「ごゆっくり」
店主はこんどはスーパーマリオのほうに歩みよりました。
「あのさあ」店主は言いました。「ウチで飲んでくれるのは商売としちゃ、ありがたいんだけど、でもあんた、大丈夫? こんな天気のいい日に、こんなところで飲んでちゃいかんよ」
それから、店主は僕のほうを振りかえっていいました。「あんたもだ」
大きなお世話です。
すると、スーパーマリオが顔をあげました。「こんなところで悪うござんしたね、旦那」
「それはおれのセリフだろが」
「男にはね、昼間から飲んだくれたい日もあるんでがすよ。今朝は、人生で最悪の朝だったんだ」
スーパーマリオは、大きくため息をつきました。
「何か困ったことでもあったのか、あんた?」と、店主。
「聞いてくんなさる?」
「いいとも」
「じゃあ、バドワイザーをもう1本」
「まだ飲むんかい」
「こんな話、飲まずには話せませんや」
というわけでスーパーマリオは店主を相手に身の上話を始めます。
僕はミラーをちびちび飲みながら、聞くともなしにその会話を聞いていました。
バドワイザーが運ばれてきます。
悲しそうに受け取るスーパーマリオ。
自分は山で酪農をしているのだが、とスーパーマリオは前置きをして、言いました。
「今朝、いつものように牛の乳しぼりをしてたんでがすが…。ようやくバケツがいっぱいになったと思ったら、牛のやつ、左足でバケツをひっくり返しやがりましてね」
「そりゃ災難だったね」店主は言いました。「でも昼間から飲んだくれるほど、ひどい出来事じゃないだろ?」
「いやいや続きがあるんでがす」酪農家は言いました。「聞いてくんなせえ」
「いいとも。で、それでどうなった?」
「牛の左足を、柱にくくりつけたんでがす」
「それで?」
「乳しぼりをやりなおしました。ようやくバケツがいっぱいになったとたん、牛のやつ、今度は右足でひっくり返しやがったんで」
「またやったのか」
「またやったんでがす」
「困った牛だね。でもそれだって、昼間から飲んだくれるほど、ひどい出来事じゃないだろ?」
「いやいや、旦那、まだ続きがあるんでがす」酪農家は言いました。「聞いてくんなせえ」
「もちろん。で、どんな続きなんだ?」
「牛の右足を、べつの柱にくくりつけたでがす」
「それで?」
「もういちど乳しぼりをはじめましてね。やっとバケツがいっぱいになったんでがすが、あの牝牛め、またでがす、今度は尻尾をつかってバケツをひっくり返したんでがすよ」
「ふーむ」
「まだ続きがあるんでがす。聞いてくんなせえ」
「まだ続きがあるんだな?」
「そうでがす」酪農家は続けました。「尻尾をどこかにくくりつけたかったんでがすが、ロープが足りなくてね。自分のベルトをはずして尻尾を柱に結びつけたんでがす」
「ふむふむ」
「そのときなんでがすよ」酪農家の目に涙が浮かびました。「オレのパンツがずり落ちてね。そこにカミさんが入ってきやしたんで…」
<参考書籍>
「ビールの科学」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4062576325
松宮園生です。
泣く子も黙る日本食育大学。
この大学には附属小学校があります。
日本食育大学附属食育小学校。
漢字13文字。
学校名を書くだけでも大変です。
しかも、「付属」ではなく「附属」です。
さて、この学校の児童の文集を読む機会があったのですが、こんな作文があったのでご紹介します。
◆◆◆
5年A組 篠塚千鶴
「運動会の思い出」
わたしは運動が得意じゃないので運動会はあまり好きじゃありません。
だけど今年の運動会はすこし面白かったです。
<クラス対抗メタボ体操>
いつも校長先生がおっしゃるように、メタボはだめです。
メタボにならないための専門体操が、世間にはたくさんあるのです。
午前中はクラス対抗メタボ体操でした。
A組の演目は:「ハラヘコムくんのウエストサイズ物語」。
B組の演目は:「ちかもんくんと一緒にメタボリック解消体操」。
C組の演目は:「きたろう体操」。
優勝はB組の「ちかもんくんと一緒にメタボリック解消体操」だったです。
恥ずかしい気持ちをかき捨てることができた点がよかったそうです。
わたしのA組は負けましたが、みんなでヘンな体操ができて面白かったです。
(松宮註)
これらの体操はすべて実在します。
<お弁当>
午前の部が終わったら、お弁当の時間になりました。
食育小学校では、お弁当はすべてお母さんの手作りと決まっています。
コンビニ弁当はだめです。
コンビニ弁当の中身を違う弁当箱に移し変えてちょろまかしたものもだめです。
お母さんが作った弁当を、担任の先生が厳しくチェックします。
わたしのお母さんと、長谷川君のお母さんが先生に呼び出されて叱られていました。
わたしたちがお弁当を食べているあいだ、先生たちと父兄がパン食い競走をしました。
食育小学校では、パン食い競争のパンは米粉のパンを使うことに決まっています。
お米を食べて、地産地消をするのです。
<借りもの競走>
お弁当のあと、借りもの競走が始まりました。
あこがれの沢口哲也君が出場しました。
キャー沢口君、がんばれー。
沢口君は5年C組です。
走るのが早いのです。
きっと一等賞をとるでしょう。
用意ドン!で沢口君も走りだします。
「借りもの」が書かれているカードを手にした沢口君、なぜか首をかしげています。
他の子が「借りもの」を探して散り散りになっても、首をかしげています。
しばらくそのまま首をかしげていましたが、やがてまた走りはじめました。
キャー沢口君、がんばれー。
がんばる沢口君はどこかへ走り去っていきました。
そのまま、待てど暮らせど沢口君は戻りません。
運動会が終わり太陽が沈みかけても、沢口君は戻りませんでした。
みんな心配しました。
沢口君のお母さんが泣きました。
先生がたもあたふたと行ったり来たりしています。
警察が来ました。
わたしも沢口君のことが心配でしたが、先生が
「みんな帰りなさい」
といったので、しかたなく帰りました。
沢口君の行方は分からないまま、何日も何日も過ぎました。
数か月後、ボロボロな姿で沢口君が学校に帰ってきました。
「沢口君が帰ってきたぞー」
誰かが大声をあげ、学校のみんなが運動場に出てきました。
運動場にたたずむ沢口君。
知らないオカマの人と一緒にいます。
みんなのなかから担任の山村先生が進み出て言いました。
「沢口君。心配したよ。今までどこで何をしていたの? この人は誰?」
「だって先生」沢口君は答えました。「あのカードには『松宮園生の女性ファン』って書いてあったから…」
<おススメ書籍>
「すぐに役立つ子どものスポーツ栄養学入門」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4381079582
松宮園生です。
なにより食育を重んじる独裁国家、ザイオン共和国。
モーフィアス大統領は若いころ日本に留学し、食育を学びました。
帰国後、2006年にクーデターを起こし、ザイオン共和国の大統領に就任。
大統領として、彼はさまざまな食育政策を推し進めました。
ザイオン共和国は人口40万人の小さな国ですが、地下資源に恵まれた国でした。
モーフィアスは地下資源をすべて国有化し、外国企業の国内参入を禁止しました。
資源が豊かだったのと、モーフィアスが商売上手だったことで、ザイオン共和国は栄えました。
さて、某国の指導者が後継者を指名したのに刺激されてか、モーフィアス大統領もぼちぼち後継者を決めようと考えました。
モーフィアスには4人の子どもがいました。
長男:アリ
次男:オリ
長女:ハベリ
三男:イマソカリ
あるとき、モーフィアスは長女ハベリをのぞく3人を集めて言いました。
「おまえたち、これから海外に留学するのだ。どの国へ行ってもいい。ただし別々の国に行きなさい。そこでもっとも食育的な知恵を体得して帰ってきた者を、後継者として指名しよう」
長男アリは、父親が日本に留学したのにちなみ、自分も日本に留学しました。
他の兄弟も日本に行きたがったのですが、長男の特権だとかなんとか言いながら、さっさと旅立ってしまいます。
そのため、他の兄弟は日本に行けなくなりました。
次男のオリは「メタボ大国のくせに栄養学先進国のアメリカ」に、三男のイマソカリは「地中海式ダイエットの国ギリシャ」に、それぞれ留学しました。
◆◆◆
長男のアリですが…。
「食料自給率の低い東京では食育は無理だ」
そう考えたアリは、自給率の高い北海道で食育を学ぶことにしました。
北海道には
「函館イカマイスター」
「北海道フードマイスター」
という資格講座がありました。
アリは、これらを取得することで、父親に認められようとしたのです。
「函館イカマイスター」
http://www.hakodate.cci.or.jp/jigyo/ikamystar.htm
「北海道フードマイスター」
http://www.shokuiku-pro.com/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=695&forum=12
そんなある日、資格取得を目指し修行中のアリのところへ、妹であるハベリ(長女)から電報が届きました。
「ハハキトク」
と書いてあります。
「母さんが、危篤?!」
マザコンでもあったアリ。
電報を読んでびっくり仰天です。
急いでニュートリ・エアライン(栄養航空)11便に飛び乗り、本国に向かったところ…。
エプロンシアター国際空港で、アリは軍隊に拘束されてしまいました。
「何をする。おれを誰だと思っている。大統領の息子だぞ。長男だぞ。離せ。離さんか」
わめき散らすアリの前に、長女ハベリが現れます。
「アリ兄さんアンタ、何をしに帰ってきたのよ」
「何をっておまえ、母さんが危篤だって言うから…」
すると、ハベリが笑い出しました。
「何がおかしい。母さんはどこだ」
「バカね、アリ兄さん。日本に留学しておきながら、ハハキトクの意味も分からなかったの?」
「は?」
「ハハキトクというのはね、有名な食育言葉よ。
ハ : ハンバーグ
ハ : ハムエッグ
キ : ギョウザ
ト : トースト
ク : クリームシチュー
つまり子どもが大好きなメニューだけど、カロリーが高くて生活習慣病になりやすい料理のことを言うのよ。アリ兄さん、日本で食育を勉強してたのに知らなかったの?」
「し、知るかい、そんなの」
「そんなんじゃ、後継者は無理ね。不合格よ。…ものども、アリを処刑しなさい」
可哀そうに、長男アリは粛清されてしまいました。
◆◆◆
じつは、後継者になる気まんまんだった長女ハベリ。
男兄弟が留学している隙に、軍隊を掌握してしまったのでした。
娘ハベリから、アリ処刑の話を聞いたモーフィアス大統領。
息子の死をいたく悲しみましたが、「ハハキトク」が分からなかったとあっては、たしかに後継者にするわけにはいきません。
勝手に処刑を行ったハベリを、責めることもできませんでした。
長男アリが粛清されたというニュースを聞いた次男オリと三男イマソカリは、震えあがりました。
長女ハベリが、こんな恐ろしい女だったとは…。
オリもイマソカリも、それぞれが留学中の国に亡命することにしました。
こうして、ザイオン共和国の未来の大統領は、長女ハベリに決まったのでありました。
(以下次号)
松宮園生です。
この業界(=食に関する業界)には
「内食」
「外食」
「中食」
という専門用語があります。
「内食」は、家庭で食事をすることです。
「外食」は、外(たいがい、飲食店)で食事をすることです。
かつて、ほとんどの人は家庭内で食事をしていました。
つまり「内食」です。
食育に関わっていると、
「現代の食は乱れている。家庭で食事をしなくなったのが原因だ。だから家庭に回帰せよ」
という主張の強い人にときどき出会います。
社会が物質的に成熟してくると、人々はレストランで食事をすることが増えました。
つまり「外食」です。
外食産業は日本の経済が発展するのに歩調を合わせて発展しました。
働く女性が増え、「専業主婦」が減ってきたことにあわせ、外食産業が伸びたのです。
その後、たぶん人々はこう思ったんでしょうね。
「外食ばっかりじゃ疲れるなあ。お金もセーブしたいし。でも今さら家で毎日食事を作るっていうのも、ちょっとねえ…」
以前と違い女性が働くようになると、家庭で食事をするといっても大変です。
料理そのものを家庭ですべて行うのも大変ですが、献立を考えなくちゃいけないのも大変ですね。
そんなことはやってられません。
だから「外食」に走ったわけですが、「外食」ばかりというわけにもいかなくなった。
そこで、「中食」が発展しました。
「中食」は、お惣菜を買い、家で食べることです。
「内食」と「外食」の中間です。
この流れは日本もアメリカも同じです。
アメリカでは「中食」のことを
home meal replacement (ホーム・ミール・リプレイスメント)
assembly cooking (アセンブリー・クッキング)
などと言ったりします。
仕事・家事・育児すべてを抱え、分刻みで奔走する現代アメリカ人が、お惣菜を手早く買い、帰宅後に家族の夕飯を整える。
そんな感じです。
さて、「中食」は「内食」と「外食」の中間なわけですが、アメリカでさらに「内食」と「中食」の中間みたいな業態が生まれているのでご紹介します。
meal preparation (ミール・プリパレーション)
meal assembly kitchen (ミール・アセンブリー・キッチン)
などと呼ばれています。
◆◆◆
まず、その会社のウェブサイトにアクセスします。
「店舗を選んでくれ」
と言われるので、自分に都合のよい場所にある店を選び、クリックします。
「メニューを選んでくれ」
と言われるので、お好みのメニューを選びます。
「日時を選んでくれ」
と言われるので、都合のよい日時を選んでクリックします。
申込完了。
インターネットでの操作はここまで。
選んだ日時に合わせて選んだ店舗に出かけます。
そこはキッチンになっており、食材がきちんと並べられています。
インストラクターがあなたを待っています。
あなたはインストラクターの指導に従ってそこで料理を作ります。
ウェブサイトで選択したメニューを作るわけです。
「あとは家で焼くだけ」「温めるだけ」の状態まで作り、自宅に持ち帰ります。
「お客」はあなただけではなく複数いますので、みんなでワイワイ作ります。
* 食材を自分でそろえる手間が省けます。
* 料理したあとの片づけがいりません。
* インストラクターが指導してくれますので、けっこうハイレベルな料理が作れます。
* 大勢で和気あいあいと作る楽しさもあります。
また、「中食」と違い、「子どもに家庭料理を食べさせてあげてる感」をアメリカ人は感じるようです。
このタイプの店、日本にすでにあるのかどうかよく分かりません。
ご存じの方がいたら教えてください。
アメリカではそこらじゅうに出来ております。
需要も大きいがライバルも多く、まるで戦国時代です。
<参考図書>
「惣菜で食育する本」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4785503459
松宮園生です。
農業の村、テケテケ村からこんな案内が来ました。
↓↓↓
バーチャル農業の決定版!
農業天国テケテケ村にあなたの畑を持ちませんか?
畑とあなたをインターネットで結びます。
畑はテケテケ村がしっかり管理します。
あなたは自宅にいながらパソコンで野菜を育ててください。
ゲーム感覚で野菜を育てるのです。
テケテケ村はあなたがパソコンに指示したとおり、じっさいに野菜を育てます。
収穫のころ、テケテケ村に遊びにきてください。
プロの農家と一緒にあなたの野菜を収穫。そのあとはお持ち帰りもよし、農家レストランでクッキングもよし。
ハッピーレッツアグリ!
↑↑↑
最後は何だかへんてこな(←死語)英語でしたが、まあ目をつむるとして、さっそく試してみました。
◆◆◆
所定のURLにアクセス。
会員登録をし、ゲーム代金をクレジットカードで払いました。
いよいよ農業開始。
まず、画面にこんな文字が。
「何を植えますか。選んでください。フェヌグリーク、ハゲイトウ、カキノモトヒトマロソウ」
は?
知ってる野菜にしてくれよ。
…つっても、これしか選択肢がないんだったら、しかたねえ。
カキノモトヒトマロソウにするか。
こんなメッセージが出ました。
「鍬を操作して土を耕してください」
画面に鍬が現れました。
テキトーにクリックすると、鍬が畑を耕しはじめました。
「ぎゃあ!」
大きな音(声)がしました。
鍬が、昼寝しているオジサンを真っぷたつにしてしまったようです。
なんでそんなところにオジサンがおんねん?
パトカーのサイレンの音が近づいてきました。
画面にはこんな文字が。
「あなたは人間を殺(あや)めてしまいました。早々とゲームオーバーです。もういちど最初からゲームを始めますか?」
早々と、は余計だよ。
つーかこの結末は何なんだ?
◆◆◆
再度ログイン。
もういちど代金を払い、農業開始です。
今回もカキノモトヒトマロソウを選択。
「鍬を操作して土を耕してください」
ここからが勝負だ。
画面をよく観察すると、畑の随所に「危険箇所」があることが分かりました。
たとえば昼寝しているオジサンの足が、たしかに見えています。
さっきはろくに注意も払わずに鍬を動かしてしまったので、惨劇が起きたのでした。
ほかにも、地雷みたいなものが見えます(←なんで地雷があんねん!)。
文句を言ってもしかたありません。
ようし、ここは注意深く。
ひととおり耕したかなあ、と思われるころ、ビバルディの「春」のメロディーが流れました。
画面にはこんな文字が。
「作業完了。よくできました。次は、種を植えましょう」
耕すステージはクリアしたようです。
画面に「手」が現れました。
「手」をクリックするたびに、種がまかれます。
どうやら、「手」を移動させながら、種をまいていくようになっているらしい。
種をまいていると、突然、轟音がし、画面が真っ赤になりました。
それから、真っ暗になりました。
しばらくすると、充満していた煙がすうっと雲散霧消するかたちで、画面がもとに戻りました。
しかし画面のなかの畑は破壊されていました。
あちこちで火が燃えています。
な、なにがあった?
「あなたのまいた種が、地雷に当りました。ゲームオーバーです。もういちど最初からゲームを始めますか?」
そんな文字が浮かびあがり、パトカーのサイレンの音が近づいてきました。
◆◆◆
ムキになった僕は、その後もゲームを繰り返しました。
ゲームの展開はこんな感じです。
* 「農薬を使わない」を選択したら雑草が繁殖。
懸命に抜いていたら、また地雷を踏む。
→ ゲームオーバー。
* ふたたび「農薬を使わない」を選択。
地雷に気をつけながら雑草をぬく。
しかし突然、グンタイアリの大群が押し寄せ、あらゆるものを食べつくしてしまう。
→ ゲームオーバー。
ちなみに、昼寝していたオジサンは白骨化してしまいました。
* 作戦変更して、「農薬を使う」を選択。
しかし農薬を撒いたら、昼寝していたオジサンがいきなり起き上がり、携帯電話で誰かに電話。
たちまち警察がやってきました。
警官のセリフ:「おまえを農薬取締法違反で逮捕する」
通報したオジサンのセリフ:「あんたは許可されていない農薬を使ったんだよ。ポジティブリストを知らんのか?」
→ ゲームオーバー。
ポジティブリストというのは、許可されている農薬のリストのことです。
てか、許可されていない農薬がゲームの中にあるなんて、おかしくね?
いやそれより、このオジサン、こないだ死んじゃったオジサンとは違うキャラでした。
…そんなことを1か月も繰り返す。
もはやヤケクソです。
毒を食らわば皿まで。
ここでやめたら男がすたる。
(もう、すたってるよ)
1ヶ月という時間を使い、ゲーム代金を払うために貯金をはたき、目の下にクマを作った僕。
カキノモトヒトマロソウは、いつになったら育つのか?
◆◆◆
それでも苦労は実るものです。
ある日、画面についにこの文字が出ました。
「おめでとうございます。あなたのカキノモトヒトマロソウは収穫にこぎつけました。テケテケ村は松宮様を収穫体験にご案内します。来訪ご希望日をお知らせください。ハッピーレッツアグリ!」
つづいて「収穫申込フォーム」が画面にあらわれました。
やったぜ。
1か月の苦労が報われた…。
涙がでてきました。
酷使されたパソコンが、シューシュー音をたてています。
数日後、僕はお気に入りのベレー帽をかぶり、いそいそとテケテケ村に出かけました。
2両編成の列車でテケテケ駅に到着。
乗客は僕だけでした。
改札を出ると、人だかりがしています。
僕の歓迎式典か?
気をつけてよく見ると、なんだか雰囲気がおかしい。
皆、僕を、にらみつけています。
村長みたいな人が僕に近づいてきました。
「松宮ってのは、あんたかい」
「はあ、そうですが…」
「あんた、村の畑をめちゃくちゃにしやがって」
「は?」
後方にいた女の人が、憎しみのこもった声で言いました。
「あの人を返して!」
小学生の女の子が叫びました。
「お父さんを返して!」
「は?」
サイレンの音がし、パトカーが到着。
踊る大捜査線の青島刑事みたいな人物があらわれ、僕にいきなり手錠をかけました。
「松宮園生だな。神妙にしろ」青島刑事は言いました。「三隅勇造さんを鍬で殺害したな。爆薬を使って畑を損壊したろ。それからグンタイアリに襲われた三隅幸次さんを見殺しにした。それから農薬取締法違反だ。許せねえ。おまえを逮捕する」
「は?」
「事件はパソコンで起きてるんじゃない。現場で起きているんだ」
ゲームオーバー。
(続編は、ないと思います)
<参考図書>
「スローでたのしい有機農業コツの科学」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4822804909