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2009.05.25 11:23

食育スカウトマン 中の巻

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松宮園生です。

(前回のあらすじ)
野球少年マツオの母、園子さんは、「剛腕の管理栄養士」という異名をとる
佐久間象子のもとで食育の稽古を積んだツワモノでした。
そんな親子の前に、プロ野球のスカウトマン、倉本さんが現れます。
「プロ野球の試合を見ることが食育になる」
と主張する倉本さん。
親子は、首をかしげながら球場に向かうのでした。

  前回 「食育スカウトマン 上の巻」
  http://www.shokuiku-pro.com/production/2009/05/post_52.html

◆◆◆

楽チン・ビーフス 対 ソフトパンク・ポークスの試合当日。
牛肉(ビーフ) 対 豚肉(ポーク)という、因縁の対決です。
何が因縁なのかはよく分からないけど。

倉本さんから早めに来るように言われていたマツオ親子。
言われた時刻に球場に入ると、倉本さんがどこからともなく現れ、2人を手招きしました。

「選手の練習風景を見たくないかい、マツオ君」
倉本さんが言うと、マツオ君は大きくうなずきました。
倉本さんは今度は園子さんに向かって
「お母さんも来てください」

すると、園子さんは顔を赤くして、もじもじしながら、
「わたしですか? でもわたし、結婚してるし…。どうしよう…。でもちょっとだけなら…」
「なにわけの分かんないこと言うてんねん、母さん」
マツオ君がツッコミました。

苦笑する倉本さん。
「既婚者、歓迎です」
と意味不明なことを口走りながら、グラウンドに向かいます。
その後を、マツオ君とお母さんが追いかけました。

◆◆◆

その時間は、楽チン・ビーフスの選手たちがバッティング練習をしていました。
バットが快音をたてています。
「すみませーん、暮谷木さん」倉本さんが叫びます。「この親子に練習風景、見せていいですか。邪魔はしませんので」
「ええよ」
遠くから答える暮谷木監督。

マツオ君は口をあんぐり開けて練習風景を見ています。
有名選手が至近距離でバットを振っているので、興奮しているようです。

見ると、母親の園子さんも口をあんぐり開けて練習風景を見ていました。
初めて見るプロ野球の雰囲気に、気押されているようです。

ぽかんと口を開け、焦点の合わない目をして並んでいる親子。
金魚かい。

倉本さんは苦笑しながら話しかけました。
「どうです、お母さん。感想は?」

「み、皆さん、体の大きな方ばかりなんですね。佐久間象子先生みたい」
と、園子さんはつぶやくように答えました。
「圧倒されました」

「そうでしょう、そうでしょう」倉本さんは我が意を得たりとうなずきます。「プロ野球選手の平均身長は180センチ、平均体重は80キロですからね」
「するとBMIは…」
電卓を取り出して何やら叩こうとする園子さん。
「いや、そんな計算は結構ですから」
倉本さんはあわてて園子さんを止めました。

倉本さんに遮られ、はっと我に返る園子さん。
「あらまあ、わたしったら。ごめんなさい。わたしね、身長と体重を聞いたら、条件反射でBMIを計算しちゃうんです。食育プリーチャー1級の稽古で、佐久間象子先生にさんざんしごかれましたものですから…」
「たいへんな稽古だったんですね」倉本さんはあきれ顔で「もはや稽古というより修行ですね」

「BMIの計算、僕もできるよ」マツオ君が言いました。「半径かける半径かける3.14だろ」
「マツオ君あのね。それ、ボケてるわけ? だったら、そのボケは失敗だな」
「おっと、間違えちゃった。BMIはね、体重わる身長わる身長わる身長かける10の7乗」
「それはBMIじゃなくて、ローレル指数だろ! ある意味、合ってるけど」

倉本さんとマツオ君のかけあいには無関心な様子で、園子さんが言いました。
「佐久間象子先生の稽古には、ほかにもね、『利きフードマイレージ』の稽古もありましたのよ。それはそれは厳しくて」
「利きフードマイレージ?」
「食材を見たり触ったりするだけでフードマイレージを当てるトレーニングなんです」
「へえ」
「何度も外れると、佐久間象子先生の太い腕の血管が切れるんですけど、その様子が恐ろしくて」
そう言う園子さんの顔が、みるみる青くなりました。
かなりのトラウマのようです。

「それは確かに恐ろしい」
佐久間象子の腕の血管が切れるところを想像し、倉本さんも顔を青くしました。

◆◆◆

「まあとにかく」気をとりなおした倉本さんでしたが、顔はまだ青ざめています。「選手の体の大きさをよく見ておいてください、お母さん。マツオ君をプロ野球選手にしたかったら、あのくらい大きく育てなければなりません」
「あ、あんなに…」
「メジャーリーグで活躍してほしかったら、さらに大きく育てなければだめです」
「メジャーリーグは、もっと大きいんですか…」
「メジャー選手の平均身長は190センチ、平均体重は95キロですからね」
「するとBMIは…」
「それはもうええっちゅーに!」

「でもさ、イチローみたいに、大きくなくてもスゴイ選手もいるじゃん」
マツオ君が口を挟みます。
しかし倉本さんは首を横に振りました。
「イチロー選手もね」と、倉本さん。「もっと体が大きくなりたいと今も思っているんだよ。あのバッティングのセンスで体がもっと大きかったら、もっとスゴイ打者になっていたはずなんだ」
「あれよりスゴくなるの?」
「長打が増えるだろうね」
「ふーん。でもあんまり大きかったら、速く走れないじゃん。盗塁できないじゃん」
「かもしれない。それは確かに一理ある。でもね、マツオ君、だからといって、きみは最初から小柄な選手を目指すつもりかい」

マツオ君はちょっと考えてから、首を横に振りました。
「やっぱり大きくなりたい」

「だろう。少なくとも野球のようなスポーツは、体が大きいほうが有利だよね。愛はお金じゃないといっても、お金があったほうがいいのと同じだ」
「愛? お金?」
きょとんとするマツオ君。
倉本さんはあわてて
「いや、つい口が滑ってしまった。何でもない、何でもない」
倉本さんの顔が赤くなっています。
青くなったり赤くなったり、忙しい倉本さんなのでありました。

◆◆◆

「というわけで、お母さん」倉本さんは赤面したまま言いました。「プロ野球の試合を見るのも食育だと申し上げましたね。その意味、もうお分かりでしょう。マツオ君をプロ野球の選手にしたかったら、あのくらい体を大きくしなくてはいけません。体を大きくする食育は、普通の『メタボ食育』や『栄養士食育』とは全然ちがうのです」

「そ、そうですね…」
まだ現実を消化できない様子で、つぶやく園子さん。
♪びっくらこいたー♪
♪びっくらこいたー♪
のメロディが脳裏を駆け巡っているのでしょうか。

「倉本さん」食育プリーチャー1級の自信がぐらついた園子さんは、蚊の鳴くような声で言いました。「これからどうしたらいいでしょうか…」
「心配いりません、お母さん。そんな不安を吹き飛ばす食育プランを用意してあります。ここではなんですから、観客席で話しましょう」
「観客席? でもわたし、結婚してるし…。でもちょっとだけなら…」
「それも、もうええっちゅーに!」

観客席に移動する3人。
マツオ君は楽チン・ビーフスの練習をもっと見たかったようでしたが、あきらめて母親についてきました。

(園子さんの不安を吹き飛ばす食育プランとは? 以下次号)

 

 

 

 

 

<参考図書>

「野球食」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4583036698

野球食

 

「戦う身体をつくる アスリートの食事と栄養」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4816343237

戦う身体をつくる アスリートの食事と栄養

 

 

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