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2009.05.29 09:21

インドポテチ

 

 

松宮園生です。

インド、行ったことあります?
僕はありません。
スキューバダイビングの人がよく、
「ジンベイザメに会ったら人生が変わる」
と言いますが、
インドもそれに似てて、行ったら人生が変わるそうです。

自分は行ったことないくせに、インドに行ったことのある人を、長年、ゆるく研究してきました。
その結果、分かったことがひとつ。
インド経験者は、
「インド大好き人間」
「インド大嫌い人間」
の2派に分かれるようなのです。
中間がいません。

さらにのんびり研究を進めた結果、「インド好き」「インド嫌い」を生み出す、あるきっかけがあることが分かりました。
多くの人が、
「電車ポテチ現象」
を経験していたのです。

こういう現象です。

インドの人々には、自分の物はみんなの物、というおおらかなところがあるらしい。

たとえば、あなたがインドを旅行しているとします。
どこかでポテトチップスを買い、食べながら電車に乗ったとしましょう。
あなたは座っています。
電車には吊革があるとします。

ある駅で2人組の男性が電車に乗り込んできました。
電車はちょうど満席だったため、その2人はしゃべりながらあなたの前に立ち、吊革に手をかけました。

あなたは景色を楽しみながらポテトチップスを食べています。
2人組は、ニコニコしながら世間話をしています。

そのうち片方の男性が、あなたのポテトチップスをつまんで食べました。
そのまま、何事もなく世間話をしています。

もう片方の男性も、あなたのポテトチップスをつまんで食べました。
何事もなく、世間話は続きます。

電車は次の駅に到着し、2人組は世間話をしながら降りていきましたとさ。

これが「電車ポテチ現象」です。
この現象は、カルビーでもプリングルスでも同じように起きることが分かっています。

草加せんべいの場合どうなのかは、現在スローペースで調査中です。

 

 

 

 

 

<オススメ本>

「世界のカレー料理」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/486191275X

世界のカレー料理

 

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2009.05.28 00:23

インド料理はフエタカ

 

松宮園生です。

東京あたりではエスニックの店、とくにインド料理店がかなり増えた気がしますが、
気のせいでしょうか?
かつては繁華街にしかなかったのが、今ではそのへんの住宅街の一角に
インド料理店がふつうに何気なくアタリマエにオープンしている気がします。

先日、
「今日は起きてから寝るまでに偶然目撃したインド料理店の数を、メモっておこう」
というのをやってみたら、11軒ありました。
全部、違う店です。
重複はありません。
この数字、どう思います?

インド料理店が増えているとしたら、その原因のひとつは地球温暖化なのかもしれません。
日本はもはや亜熱帯気候になっているように思いますが、九州あたりでは熱帯の果物であるマンゴーが栽培されるようになっていますね。
バナナなんかも、国産のものが出回ったりしてます。
ようするに日本は暑くなったわけで。

暑くなると、インド料理のようなものを食べたくなったりするそうです。
カレーは体温を下げる働きがあるそうなので、人は無意識にその効果を求めてインド料理を食べるのかも。

で、たとえば1億2千万人の日本人がインド料理を年間にどれくらい食べるかを考えてみましょう。
日本がこんなに暑くなる前は、
「ひとり平均、年に1回、インド料理を食べる」
だったとします。
これが、暑くなったせいで
「年に2回、平均で食べる」
ように変ったとします。

つまり、1回が2回に増えました。

平均値の1人の人間からすれば、年に1回が年に2回に増えただけですので大したことはありませんが、
日本人全体でみると、1億2千万回、インド料理を食べる回数が増えたことになります。

年に1億2千万回増えた、ということは、
1億2千万回÷365日=33万
つまり、1日あたり約33万回、インド料理を食べる回数が増えたことになります。
33万食のインド料理が、毎日必要になります。

仮に、インド料理店は1店あたり60食を毎日提供できるとすると、
33万食÷60食=5500
つまり、新規に5500店のインド料理店が増えないと、
「年に1回、平均で食べる」から「年に2回、平均で食べる」
という変化(増加)に対応できないのです。

そんなわけで、日本が暑くなった結果、インド料理店は5500店も増えた。
5500店も増えれば、
「たしかに増えたなあ」
という気がするんじゃないかと思いますが…。

ちなみに、僕は年に24回くらいインド料理を食べます。

 

 

 

 

<オススメ本>

「ヤミーさんのカルディレシピ 新版  世界中の食材を使った簡単でおいしい料理」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4839931763

ヤミーさんのカルディレシピ 新版 ~世界中の食材を使った簡単でおいしい料理~

 

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2009.05.25 11:23

食育スカウトマン 中の巻

松宮園生です。

(前回のあらすじ)
野球少年マツオの母、園子さんは、「剛腕の管理栄養士」という異名をとる
佐久間象子のもとで食育の稽古を積んだツワモノでした。
そんな親子の前に、プロ野球のスカウトマン、倉本さんが現れます。
「プロ野球の試合を見ることが食育になる」
と主張する倉本さん。
親子は、首をかしげながら球場に向かうのでした。

  前回 「食育スカウトマン 上の巻」
  http://www.shokuiku-pro.com/production/2009/05/post_52.html

◆◆◆

楽チン・ビーフス 対 ソフトパンク・ポークスの試合当日。
牛肉(ビーフ) 対 豚肉(ポーク)という、因縁の対決です。
何が因縁なのかはよく分からないけど。

倉本さんから早めに来るように言われていたマツオ親子。
言われた時刻に球場に入ると、倉本さんがどこからともなく現れ、2人を手招きしました。

「選手の練習風景を見たくないかい、マツオ君」
倉本さんが言うと、マツオ君は大きくうなずきました。
倉本さんは今度は園子さんに向かって
「お母さんも来てください」

すると、園子さんは顔を赤くして、もじもじしながら、
「わたしですか? でもわたし、結婚してるし…。どうしよう…。でもちょっとだけなら…」
「なにわけの分かんないこと言うてんねん、母さん」
マツオ君がツッコミました。

苦笑する倉本さん。
「既婚者、歓迎です」
と意味不明なことを口走りながら、グラウンドに向かいます。
その後を、マツオ君とお母さんが追いかけました。

◆◆◆

その時間は、楽チン・ビーフスの選手たちがバッティング練習をしていました。
バットが快音をたてています。
「すみませーん、暮谷木さん」倉本さんが叫びます。「この親子に練習風景、見せていいですか。邪魔はしませんので」
「ええよ」
遠くから答える暮谷木監督。

マツオ君は口をあんぐり開けて練習風景を見ています。
有名選手が至近距離でバットを振っているので、興奮しているようです。

見ると、母親の園子さんも口をあんぐり開けて練習風景を見ていました。
初めて見るプロ野球の雰囲気に、気押されているようです。

ぽかんと口を開け、焦点の合わない目をして並んでいる親子。
金魚かい。

倉本さんは苦笑しながら話しかけました。
「どうです、お母さん。感想は?」

「み、皆さん、体の大きな方ばかりなんですね。佐久間象子先生みたい」
と、園子さんはつぶやくように答えました。
「圧倒されました」

「そうでしょう、そうでしょう」倉本さんは我が意を得たりとうなずきます。「プロ野球選手の平均身長は180センチ、平均体重は80キロですからね」
「するとBMIは…」
電卓を取り出して何やら叩こうとする園子さん。
「いや、そんな計算は結構ですから」
倉本さんはあわてて園子さんを止めました。

倉本さんに遮られ、はっと我に返る園子さん。
「あらまあ、わたしったら。ごめんなさい。わたしね、身長と体重を聞いたら、条件反射でBMIを計算しちゃうんです。食育プリーチャー1級の稽古で、佐久間象子先生にさんざんしごかれましたものですから…」
「たいへんな稽古だったんですね」倉本さんはあきれ顔で「もはや稽古というより修行ですね」

「BMIの計算、僕もできるよ」マツオ君が言いました。「半径かける半径かける3.14だろ」
「マツオ君あのね。それ、ボケてるわけ? だったら、そのボケは失敗だな」
「おっと、間違えちゃった。BMIはね、体重わる身長わる身長わる身長かける10の7乗」
「それはBMIじゃなくて、ローレル指数だろ! ある意味、合ってるけど」

倉本さんとマツオ君のかけあいには無関心な様子で、園子さんが言いました。
「佐久間象子先生の稽古には、ほかにもね、『利きフードマイレージ』の稽古もありましたのよ。それはそれは厳しくて」
「利きフードマイレージ?」
「食材を見たり触ったりするだけでフードマイレージを当てるトレーニングなんです」
「へえ」
「何度も外れると、佐久間象子先生の太い腕の血管が切れるんですけど、その様子が恐ろしくて」
そう言う園子さんの顔が、みるみる青くなりました。
かなりのトラウマのようです。

「それは確かに恐ろしい」
佐久間象子の腕の血管が切れるところを想像し、倉本さんも顔を青くしました。

◆◆◆

「まあとにかく」気をとりなおした倉本さんでしたが、顔はまだ青ざめています。「選手の体の大きさをよく見ておいてください、お母さん。マツオ君をプロ野球選手にしたかったら、あのくらい大きく育てなければなりません」
「あ、あんなに…」
「メジャーリーグで活躍してほしかったら、さらに大きく育てなければだめです」
「メジャーリーグは、もっと大きいんですか…」
「メジャー選手の平均身長は190センチ、平均体重は95キロですからね」
「するとBMIは…」
「それはもうええっちゅーに!」

「でもさ、イチローみたいに、大きくなくてもスゴイ選手もいるじゃん」
マツオ君が口を挟みます。
しかし倉本さんは首を横に振りました。
「イチロー選手もね」と、倉本さん。「もっと体が大きくなりたいと今も思っているんだよ。あのバッティングのセンスで体がもっと大きかったら、もっとスゴイ打者になっていたはずなんだ」
「あれよりスゴくなるの?」
「長打が増えるだろうね」
「ふーん。でもあんまり大きかったら、速く走れないじゃん。盗塁できないじゃん」
「かもしれない。それは確かに一理ある。でもね、マツオ君、だからといって、きみは最初から小柄な選手を目指すつもりかい」

マツオ君はちょっと考えてから、首を横に振りました。
「やっぱり大きくなりたい」

「だろう。少なくとも野球のようなスポーツは、体が大きいほうが有利だよね。愛はお金じゃないといっても、お金があったほうがいいのと同じだ」
「愛? お金?」
きょとんとするマツオ君。
倉本さんはあわてて
「いや、つい口が滑ってしまった。何でもない、何でもない」
倉本さんの顔が赤くなっています。
青くなったり赤くなったり、忙しい倉本さんなのでありました。

◆◆◆

「というわけで、お母さん」倉本さんは赤面したまま言いました。「プロ野球の試合を見るのも食育だと申し上げましたね。その意味、もうお分かりでしょう。マツオ君をプロ野球の選手にしたかったら、あのくらい体を大きくしなくてはいけません。体を大きくする食育は、普通の『メタボ食育』や『栄養士食育』とは全然ちがうのです」

「そ、そうですね…」
まだ現実を消化できない様子で、つぶやく園子さん。
♪びっくらこいたー♪
♪びっくらこいたー♪
のメロディが脳裏を駆け巡っているのでしょうか。

「倉本さん」食育プリーチャー1級の自信がぐらついた園子さんは、蚊の鳴くような声で言いました。「これからどうしたらいいでしょうか…」
「心配いりません、お母さん。そんな不安を吹き飛ばす食育プランを用意してあります。ここではなんですから、観客席で話しましょう」
「観客席? でもわたし、結婚してるし…。でもちょっとだけなら…」
「それも、もうええっちゅーに!」

観客席に移動する3人。
マツオ君は楽チン・ビーフスの練習をもっと見たかったようでしたが、あきらめて母親についてきました。

(園子さんの不安を吹き飛ばす食育プランとは? 以下次号)

 

 

 

 

 

<参考図書>

「野球食」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4583036698

野球食

 

「戦う身体をつくる アスリートの食事と栄養」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4816343237

戦う身体をつくる アスリートの食事と栄養

 

 

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2009.05.22 21:58

メタボ・テクノロジー 略して「メタテク」

 

松宮園生です。

ご存じのように、ヘルスケア業界やダイエット業界の人たちは、
「メタボな人間を痩せさる商売」
でひと儲けしようと、一生懸命になっています。

一方、農業関係の人たちは、逆に牛をメタボにしようと一生懸命です。
メタボにしたら、たくさん肉が取れるから、ということでしょう。

人間にはダイエットをさせる。
牛には、「逆ダイエット」をさせる。
つーわけですね。
基本ベジな僕としては、ビミョーに、複雑な気持ちになります。

◆◆◆

「幼児期に太っていた人は、その後も太りやすい」
ってよく言いますよね。
これを逆手にとって、日本のどこかの農学部が牛に応用する方法を考えたそうです。
つまり
「幼児期に牛を太らせ、早くから肥満体質にする。するとその後も太りやすい」。

上手にやると、たいしたエサをあげなくても勝手に太る。
エサ代がセーブできて、効率が良いらしい。
エサ(飼料)って、この数年来、すごく値上がりしてるそうだし。

この「幼児期に牛を太らせ、早くから肥満体質にする」テクノロジー。
メタボ・テクノロジー。
略して、メタテク。

上手にメタテクしたら、こうなったそうです。
左がフツーの牛。右側が「メタテク」の牛。

 

けっこう、すごくね?

「たいしたエサをあげなくても勝手に太る」

これって、
「アタシ、水を飲むだけでも太るのよ」
ていうのと原理はおんなじなのかもしれません。

メタテクは、どこまで進むのでしょう…?

 

 

 

 

 

 

<参考図書>

「世界一の美女になるダイエット」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4344016645

世界一の美女になるダイエット

 

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2009.05.21 18:27

スシ太平記 (後編)

 

 

松宮園生です。

「寿司ポリス」という言葉じたいは農林水産省の発案では
ありません。
たしかワシントンポスト紙の記者が言った言葉です。
(記憶がウロですけど)

言葉とは恐ろしいものです。
寿司ポリスなんて名前をつけられたおかげで、悪いイメージが先行し、
言いだしっぺの政治家と農林水産省は国内外から火炎放射を浴びました。
気の毒に、日本食のスタイルを守ろうという提案をしただけのつもりが、まるで犯罪者扱いです。

あれから年月が流れました。
この話はなくなったのでしょうか?

◆◆◆

どうやら、舞台裏でこういう会話がなされたようなのです。

<シーン1 議員会館>

農林水産省(以下「農」) 「先生、やっちゃいましたねえ。世間から非難ごうごうっス。どうしましょ。海外の日本食レストランを認定する計画、やめますか」
政治家(以下「政」) 「ばかもん。お前は日本文化をなんだと思っとるんだ。男が口に出した以上、そう簡単に引き下がれるか」
農 「そんなこと言ったって、寿司ポリスなんて言われてしまっては、もうダメすよ。先生の次の選挙もヤバくないスか?」
政 「あれはお前が悪い。ワシは正しい真面目な日本食屋を守れと言っただけだ。ニセモノをやっつけろとは言っとらん。世間にちゃんと説明して誤解を解け」
農 「そ、そんな」
政 「とにかく世間の誤解を解け。なんとかしろ。計画は進めるぞ」

<シーン2 霞が関>

農 「困ったなあ。先生も勝手だよなあ。どうしよう。…そうだ、有識者会議を開いて学者さんたちにダメ出ししてもらおう。世間の非難には動じない政治家の先生も、学者さんの反対にあえば、あきらめてくれるんじゃね?」

<シーン3 有識者会議>

農 「みんな集まってくれてありがと。そういうわけでさ、政治家の先生の顔もたてながら、世間の非難もかわして、丸く収めたいんだけど、いい知恵ない?」
有識者(以下「有」) 「そんなの簡単ら。責任転嫁すればいいのら」
農 「責任転嫁?」
有 「こうするんら。(声を低くして)ひそひそひそひそ」
農 「(顔を輝かせて)なるほど。そのテがあるじゃんよ」

翌週、農林水産省はウェブサイトでこんな発表をしました。

「はーい国民のみなさん。
日本の文化が海外でもきちんと守られることは大事なことですよね?
日本人はコーラぶっかけうどんを食べてる、なんて思われたくないでしょ?
みんなにはいろいろ言われたけどさあ、政府としてはそこんところを強調したいんだよね。
だってそうじゃん。
イタリア政府だって、タイ政府だって、似たようなことやってるんだよ(←これ、ホントです)。
なんでオレたちだけ文句言われなあかんの?
でも有識者会議で学者さんたちに言われたんだ。寿司ポリスなんて乱暴なことはやめとけってね。
まあ、そうかもね。
そこでだ、ものは相談だけど、今後は民間のボランティア団体に寿司ポリスをやってもらいたいんだ。
民間が自分らの判断で好きにやるぶんには批判とか出ないと思うんだ。
どうだろう、われこそはと思うボランティア団体はぜひ日本食のために立ち上がってくんね?
おれたち政府は口出ししねーと思うし。
民間の自発的な愛国心に期待、つーことで。
あとは任せた! 頼むわ」

…というわけで、いつのまにか寿司ポリスは民間のボランティア団体の役目ということに決まってしまいました。

その後、こういう民間団体が設立され、寿司ポリス事業を粛々と進めています。

「NPO 日本食 レストラン 海外普及推進機構」
http://jronet.org/

 

 

 

 

 

 

 

<参考図書>

「実戦 食品輸出読本―世界に広がる日本の味」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4822408752

実戦 食品輸出読本―世界に広がる日本の味

 

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2009.05.19 14:04

食育も保健指導も、てやんでぃべらんめぃ

 

松宮園生です。

昨年4月に
「特定検診・特定保健指導」
の制度が始まりました。
しかし、食育に関心のある方は知っているようですが、一般にはあまり知られていないようです。

業界(ヘルスケア業界とか、医療業界とか)や、専門家(保健師とか、管理栄養士とか) は、数年前から大騒ぎしてこの制度の対応に追われていたんだけど。

◆◆◆

 「てやんでぃべらんめぃ」
というセリフ、現実に誰かが口にするのを聞いたことはありますか?
僕はいちどだけ、あります。
衝撃的でしたね。
(てやんでぃべらんめぃ、って、死語じゃなかったんだ…)
死語研究家として、涙ながらにそう思ったのを覚えています。

さて、世間で実際に行われている食育活動は、たいていが子供向け、または母親向けのものです。
オヂサン向けの食育教室、みたいなものはあまり見かけません。
理由はわりと単純で、オヂサンは「てやんでぃべらんめぃ」ばかりなので、食育教室をやったところで聞く耳をもたないと思われているからです。
てか、そもそも食育教室に来ない。

やっぱり心の素直な子供に食育を施すほうがよほどいい、誰もがそう思うでしょう。

ところが、だんだんそうも言っていられなくなってきました。
てやんでぃべらんめぃの人たちは、メタボだらけだからです。
厚生労働省の推定だったと思いますが、てやんでぃべらんめぃ男性の4人に3人がメタボの疑いがあるとのことでした。

皆さん、健康保険証は持ってますか?
ほとんどの方がお持ちだと思います。
健康保険証、正式には健康保険組合被保険者証というようですが、これは皆さんが健康保険組合の組合員である証(あかし)です。

保険証があると、病院にいったときに保険がききますよね。
多くの場合、治療にかかる費用の3割を負担するだけです。
のこりの7割は、健康保険組合が負担しています。
これは皆さんがふだんから健康保険にお金(健康保険料)を払っているからですね。
現在、全国にはおよそ1,600の健康保険組合があります。

その健康保険組合に対して、政府から、たいへん難しい指令が出ました。
その指令というのはこうです。
「てやんでぃべらんめぃ男性のメタボを減らしなさい。減らすことができた健康保険組合にはご褒美をあげます。しかし、減らせなかった健康保険組合には、罰を与えます」
こういう指令です。

これが、
「特定検診および特定保健指導の義務化」
と呼ばれるものです。

健康保険組合は、組合員(皆さんのことです)のために健康診断を定期的に行っています。
これまでの健康診断は、
「健康保険組合は診断結果を組合員に渡すだけ。渡された診断結果をみてどう判断しどう行動するかは組合員個人の問題」
だとされてきました。
つまり、かりに健康診断でメタボリック・シンドロームの疑いがでてきたとしても、健康保険組合が皆さんの生活習慣に口を出すようなことはありませんでした。
メタボは皆さん個人の問題であり、健康保険組合の知ったことではなかったからです。
今までは。

健康診断を受けた人は、診断結果の通知をもらいます。
たいてい、目は通しますが、分かるのは
「ああ血圧高いんだ」
とか
「血糖値、ちょっと高いかな」
といった程度で、あまり詳しいことは分からないし、
明日からどうすればいいのかも分かりません。
で、たいがいの場合、診断結果に目を通しただけで、あとはポイです。
今までは。

しかし昨年の春からそれが一変しました。
厚生労働省は、全国すべての健康保険組合に対し、
「組合員個人の生活習慣に口を出しなさい。ウザイと言われるくらい口を出しなさい。その結果、メタボを減らすことができた健康保険組合にはご褒美をあげます。しかし、減らせなかった健康保険組合は、月にかわってお仕置きよ
という秘密指令を出しています。
(いや、秘密ではないんだけど)

具体的には、こうです。
(1)まず、40歳から74歳までを対象に健康診断を行いなさい。
(2)その結果、メタボの疑いのある人をリストアップしなさい。たいがい、てやんでぃべらんめぃ男性だと思われます。
(3)その人の生活習慣を改善するような個別の保健指導を行いなさい。

ということが健康保険組合に「義務」として課せられるようになりました。
これを、「特定検診および特定保健指導の義務化」と言います。

ところが、個別の保健指導(=個人の生活習慣を変えるための指導)をやりなさい、と言われても、なまやさしいことではありません。
健康保険組合はこれまで保健指導を行った経験がないところがほとんどですし、
ましてや、保健指導をする相手は、てやんでぃべらんめぃオヂサンなのです。

オヂサンは、なかなかタバコをやめません。
脂っこいものを控えて野菜を食え、といってもなかなか改まりません。
味噌汁だって塩分の濃いのを好む人たちです。
酒も好きなだけ飲みます。
運動も、してるんだかしてないんだか。
説教しようとすると、「俺は仕事中だ」と叫んで逃亡してしまいます。

でも去年から、それをしなくちゃならなくなった。
そんなわけで、健康保険組合はこのところアタフタしているのです。

「特定検診・特定保健指導」の制度はそういう内容なのですが、あまり知られていないのはちと残念なことであります。

 

(追伸)
ウワサによると、苦労して保健指導をちゃんとやってご褒美もらうより、むしろ「月にかわってお仕置きされたい」というエム的なことを考える健康保険組合がいるとか、いないとか…

 

 

 

 

食育というテーマでセレクトしています。
「未来型食育書店」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22

食育プロデュース委員会

 

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2009.05.17 15:00

食育スカウトマン 上の巻

 

松宮園生です。 

近所の野球クラブで4番ピッチャーをしている小学生のマツオ君。
練習の帰りに、コーチに呼ばれました。
コーチのかたわらに、背の高い男の人が立っています。

「マツオ。この人はな、この人はな」コーチが言いました。「プロ野球のスカウトの人だ」
マツオ君は目を丸くしました。
「えっ僕がプロ野球? 小学生なのに、いいんですか?」
早合点するマツオ君に、コーチは苦笑い。
「そんなわけねーだろ。でもな、スカウトさんが言うには、おまえには素質があるんだってよ。今のうちに目をつけて、青田買いをしたいらしい」

「あおたがい?」
「稲がまだ実らないうちに、田んぼを買うことだ」
「でもうちには田んぼなんかないよ」
「いや、それはたとえ話でな。要するに、若いうちに唾(つば)をつけておこう、というわけだ」
「知らない人の唾なんて嫌だよ。汚いじゃん」
「いや、これもたとえ話だから。おまえ、学校でちゃんと国語の勉強してんのかよ」
「だってコーチ、コーチはいつも、学校の勉強なんかしててもいい大人にはなれないって、言うじゃん。いつも言うじゃん」
「屁理屈こねんじゃねえ、このクソガキ」

「まあまあまあ」スカウトの男性が言いました。「とにかくマツオ君、将来プロ野球選手になりたくないかい」
「なりたーい」
「だったら、今のうちから食事に気をつけなくちゃいけないよ。僕はスカウトの中でも食育担当でね。きみのお母さんに会いたいんだけど、おうちまで案内してくれるかな」
「いいともぉ!」

「すみませんな、倉本さん」コーチが心からすまなそうに言いました。「こいつ、平成生まれの小学生のくせに、ギャグセンスが昭和なもんで…」

◆◆◆

ドアチャイムを鳴らすと、マツオ君の母親、園子さんが玄関に出てきました。
倉本さんは名刺を差し出しながら言いました。「倉本と申します。プロ野球のスカウトをしておりまして」

「まあ…。わたしなんかでいいのかしら」
頬を染める園子さん。

「なんでやねん。違うよ、母さん」倉本さんの大きな体に隠れていたマツオ君が飛び出します。「僕のことを言ってるんだよ」
「なんだ、そうだったのね」

倉本さんは苦笑しながら言いました。「お母さん、お宅のマツオ君には素質があります。ぜひ立派なプロ野球選手に育ってほしいのです。そのお手伝いにやって来ました」
「まあ、そうですか。主人が聞いたら大喜びしますわ。…で、お手伝いをしていただくというのは、どういうことでしょうか? うちはそんなにお金はないので、高い学校とかにはやれないんですけど…」

「ご心配なく。学校は変わらなくて結構ですし、野球もいまの野球チームで練習していただければ十分です。僕が気にしているのは食育です」
「はあ?」
「スカウトマンとして、マツオ君の食育をしに参りました」
「食育ですか」
「はい、食育です」

園子さんは少し機嫌を損ねたような顔をしました。
「ふうん、食育ね。でもわたし、こう見えても佐久間象子先生のもとで食育プリーチャー1級の資格を取ったんですのよ。あなたに教わることはあまりないんじゃないかしら」

倉本さんの柔らかな物腰は変わりませんでした。
「そうですか。食育プリーチャー1級とは、なかなか手強いですね。あれは稽古が厳しいと聞いてます。そうですか。1級ですか」
「ま、それほどでも」
自慢げに鼻をひくひくさせる園子さん。

「じゃあ僕の出る幕なんかは、ないかな。参考までに教えてください。ご家庭では、どんな食育をなさっているんでしょうか」
「食育プリーチャー1級として、当然のことをしています」
「といいますと?」
「早寝早起き朝ごはん。いただきますごちそうさまは愛言葉。語り合おうその日のでき事食卓で」
「3つとも内閣府の食育標語ですね。その通り実行しているということですね?」

「それだけじゃありませんわ。まごはやさしい、ははきとく。三角食べに口内調味」
「はあ、なるほど」
「それからね、バランスを保って3:1:2弁当法を実行しています」
「はあ」
「それから、家のなかには地産地消とフードマイレージのポスターが貼ってありますのよ」
「なるほど。さすが、佐久間象子直伝の食育プリーチャーだけありますね」
「1級です」
鼻をひくひくさせる園子さん。

「たいへんお見それしました。僕の負けです」倉元さんは頭を深々と下げました。「確かに僕なんかの出る幕はありませんね。すごすご退散いたします。じゃ、マツオ君、またね」
爽やかに、マツオ君に手を振る倉本さん。

去っていくスカウトマンの後姿を見ながら、
「勝ったわ」
つぶやく園子さんなのでした。

◆◆◆

翌日。
倉本さんの携帯電話が鳴りました。
「もしもし」
「あのう。及川マツオの母ですけど。昨日はたいへん失礼しました」
「といいますと?」
「主人に叱られました。せっかくスカウトが来て世話を焼いてくれると言ってるのに、つまらん食育勝負なんかで追い返してどうすんだ。カモがネギしょってやってきているのが、分からんのか、と言われまして」

苦笑する倉本さん。

「それで、倉本さん、あらためてマツオの食育をみていただきたいのですが…」
「いいですよ」
「ほ、ほんとですか。ありがとうございます」
「そのかわり、お願いが2つあります」
「なんでしょう」
「1つめのお願いは、マツオ君にプロ野球の試合を見せたいのです。連れて行っていいですか」
「それはもう、ぜひお願いします。マツオも喜びます。2つめは、なんでしょう」

「2つめは、お母さん、あなたにもプロ野球の試合に来ていただきたいのです。構いませんか?」
「はあ…? でもわたし、結婚してますし…。でも、こんなわたしでよければ…」

苦笑する倉本さん。「いえ、デートのお誘いではありませんから」
「そ、そうですよね。わたしったら」
「マツオ君と一緒に、来てほしいのです」
「わかりました。では参ります」
「じゃあ決まりだ。あとでチケットを送りますから、必ず来てください。これも食育です」
「試合を見に行くのが、食育なんですか?」
「そうです、食育です。詳しくは球場で説明します」

(野球の試合を見るのがなぜ食育なのか? 次号に続く)

 

 

 

 

 

<参考図書>

「野球食Jr.」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4583100116

野球食Jr.

 

「サッカー食」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4583037570

サッカー食―強くなりたい中学・高校生選手のための

 

 

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2009.05.14 01:19

食育ニュース25時

 

松宮園生です。

こんばんは。
真夜中の食品安全ニュースです。

◆◆◆

最初に、輸入レモンから大量のアスコルビン酸が検出されたというニュースです。
本日未明、横浜の大黒埠頭にカリフォルニアから運ばれたレモン2万トンが到着しました。
到着した輸入レモンを抜き打ち検査したところ、大量のアスコルビン酸が出たとのことです。
輸入元の○×フレッシュ貿易株式会社は対応に追われており、まだコメントを出しておりません。

(画面が切り替わる)

大黒埠頭の現場から中継です。
ここに停泊している巨大な船。
大きいですよね。
今回入荷したレモンですが、この巨大な専用船「マリタイム・オーキッド」号によってカリフォルニアのフィトバレーから運ばれたものです。
大黒埠頭に到着したあとは、すべてこの倉庫に保管されています。
倉庫に入ってみます。

(倉庫に入る)

倉庫の中はレモンの爽やかな香りが充満しています。
少し暗いのですが見えますでしょうか。
ここにある何千何万という箱はすべてレモンの箱です。
抜き打ち検査が行われたのは昨日の夕方でしたが、検査早々からL体のアスコルビン酸が見つかったとのことで、関係者のあいだに衝撃が走っています。

◆◆◆

(再びスタジオ)

次のニュースです。
東京都の調べによりますと、都内のイタリア料理店の9割以上が、硫化アリルを含有した食材を意図的にスパゲティ料理に添加していることが判明しました。
添加している理由は、そのほうが味も香りもよくなるからだそうです。
これに関し、東京都板飯協会ははまだコメントを出しておりません。
東京都は、東京都板飯協会のコメントを待って、対応を検討することにしています。

(画面が切り替わる)

「銀座三越前に来ています。都民の感想を聞いてみましょう。…あ、すいません。ちょっといいですか? 硫化アリルってご存知ですか?」
「いえ、知りません」
「都内のイタリア料理店の9割以上が、硫化アリル含有食材を意図的にスパゲティ料理に添加しているっていうのもご存じないですか?」
「えっ、そうなの? よく分からないけど、怖いわねえ」

「硫化アリルってご存知ですか?」
「知らねーけど…硫化水素みたいな?」
「都内のイタリア料理店の9割以上が、硫化アリル含有食材を意図的にスパゲティ料理に添加しているのは知ってましたか?」
「まじ? やべーよそれ。さっきスパゲティ食ったばっかだし」

◆◆◆

(再びスタジオ)

政府広報です。

(画面が切り替わる)

「花子さん、このパン、全粒粉らしいんだけど、食べて大丈夫かなあ」
「太郎さん、心配だったら検査してもらったら? 食品分析センターに行けばやってもらえるよ」
「食品分析センター?」
「ええ。食品にどんな成分が含まれているか、詳しく調べてくれるところよ」
「そうなんだ、どこにあるの」
「全国8か所に事業所があるのよ」
「じゃあ。そのうちのどれかに頼めばいいんだね」
「各事業所と試験室はコンピューターネットワークで結ばれ、迅速に、正確に、きめの細かいサービスが提供されています」
「なるほど。…てか、誰に向かって話してるの?」

(数日後)

「太郎さん、検査どうだった?」
「うん、花子さん…。微量だけど無視できない量のセレニウムが検出されてさ…」
「ええーっ」
「おまけにマンガンまで検出されたよ」
「そうだったのね。食品分析センターに調べてもらってよかったわね」
「うん、よかったよ」
「この食品大丈夫かな? あれ? おや? もしかして? と思ったら食品分析センター。食品分析センターにお電話ください。待ってまーす」
「だから誰に向かって話してるの?」

◆◆◆

(再びスタジオ)

今日の報道で、食べものには危険がいっぱいだなーと思った皆さん。
種明かしをしましょう。

アスコルビン酸とは、ビタミンCのことです。
レモンを検査したら、ふつービタミンCは大量に検出されます。

硫化アリル含有食材とは、ニンニクのことです。
スパゲティ料理には、たいがいニンニクが入っています。

セレニウム、マンガンはともに体に必要な微量ミネラルです。
無視できない量のセレニウム、マンガンが検出されたら、ふつー文句はありません。

ではまた、明日のこの時間にお会いしましょう。

(会いません)

 

 

 

 

 

<参考図書>

「食料の世界地図」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4621076426

食料の世界地図

 

 

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2009.05.11 18:09

アメリカお好み焼き事件

 

松宮園生です。

アメリカ西海岸に住んでいたころの話ですが、 
シアトルからクルマで30分くらいのところに
フェデラルウェイという町があります。

そこのショッピングモールにある日本食屋「ハニコ」で昼食をとりました。
ラルフという、運送会社の社長と一緒でした。

ハニコはかつてはハナコという名前でしたが、みんなハニコと呼ぶのでハニコに改名したそうです。

ハニコはわりと気に入りの店でした。
松宮はラーメンとかお好み焼きとかもけっこう好物でして。
ハニコはその辺のメニューがなかなか旨かったのです。

お好み焼きはガイジンに説明しやすい料理です。
「ジャパニーズ・ピザ」
と言えばいいので。

それに比べたら「西京焼き」とか「かぶら寿司」とか「ゴリの佃煮」とかは、説明がめちゃ大変です。
(説明する羽目におちいったことはないけど)

さて、ラルフは日本食屋にはあまり詳しくない人間でした。
「何を食べればいいんだ? おすすめは?」
と聞かれたので、
「あんたはジャパニーズ・ピザを食え。僕はラーメンを食う」
こういうのは、迷える子羊のために、決めつけてあげることも重要です。

案の定というか、ピザ好きのラルフは迷うことなくジャパニーズ・ピザを注文しました。
僕は醤油とんこつラーメンを注文しました。

醤油とんこつラーメンが運ばれてきました。
「なんだそれは」とラルフが聞いてきました。
僕は割り箸を割りながら「ヌードルだ」といいました。
するとラルフは、
「そんなことは分かっている。なんのヌードルか知りたい」

困りました。
醤油とんこつなんて英語で説明できません。
「ピッグ(豚)ボーン(骨)スープ・アンド・ソイソース(醤油)ラーメン・ヌードル」
なんて知ってる単語をテキトーに並べました。
ラルフは神妙にうなずいていましたが、分かったのか分かってないのか。

次に、アツアツのお好み焼きが運ばれてきました。
ところが、ラルフは眉をしかめて食べようとしません。

「どしたの?」
と聞くと、彼はなにか質問しました。
質問されているのは分かったのですが、英語が理解できなかったので、短気なヤマトダンジ松宮もメンドくさくなり、
「イエス。イエス。ノープロブレム」
とかなんとか、テキトーに返事しました。

長々と説明してたら、ラーメンのびちゃうし。

するとラルフの顔色が変わりました。青くなったのです。
ラーメンをすすりながら横目で見ると、ラルフ社長、なにやら祈りながら恐る恐るお好み焼きを食べています。

いや、食べるというよりは、隅の方を少しずつかじっている感じです。
ちょっと涙目にもなっていました。

結局ラルフちゃん、お好み焼きをおおかた食べ残してしまいました。

会計を終えてチップも払い、ハニコを出た後、駐車場にとめてあるクルマまで歩きながら、僕はラルフに聞きました。
「ジャパニーズ・ピザだけど、美味しくなかった?」
「いや味はよかったのだが」ラルフは言いました。「でも××××を食べるのは、ちょっとオレには難しい」

××××の部分がよく聞き取れなかったので、僕は紙とボールペンを取り出して言いました。
「あんたがいま何ていったのか分からないので、ここに書いてよ」
「いいとも」

ラルフが書いたのは、
「バグ(昆虫)の羽」
という言葉でした。

◆◆◆

あちゃー(←死語)。

今度は僕の顔色が変わりました。
(自分で分かるのかよ)

アツアツのお好み焼きに振りかけられたカツオブシが、熱のせいで変形して動き回っているのが、彼には昆虫の羽が動いているように見えたらしい。
で、
「これは何か? 昆虫の羽か?」
とラルフは僕に質問し、僕ってば、
「イエス。イエス。ノープロブレム」
といい加減に答えてしまったわけです。

困ったことになりました。
このまま訂正せずに放っておくと、「日本人はピザに昆虫の羽をかけて食べる」という大誤解がラルフに定着してしまいます。
かといって訂正すると、あのときに「イエス。イエス。ノープロブレム」と答えて彼の食欲を奪ってしまった松宮は、極悪人になってしまいます。

ど、どうしよう…。
立ち尽くす松宮。

遠くにそびえたつリーニア山(※)が、僕を笑っているように見えました。

 

   (※)シアトルのあるワシントン州でもっとも高い休火山。
  富士山とよく似た美しい形をしているので、在米日本人にも愛されています。
  標高は富士山より500メートルほど高い。

 

 

 

 

 

<おすすめサイト>

「アメリカ食通信」
http://www.myfood.jp/w_myfood/us_foodnews/

 

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2009.05.10 04:14

スシ太平記 (中編)

 

松宮園生です。 

(前回の復習)
アメリカの日本食レストランは、
* ヤマトダマシイ型
* カメレオン型
* なんじゃこりゃぁ型
に分けられます。

  詳しくは→「スシ太平記(前編)」
  http://www.shokuiku-pro.com/production/2009/05/post_91.html

◆◆◆

2005年だったか2006年だったか忘れましたが、日本のとあるエライ政治家がアメリカに旅行し、コロラド州のどこかで、
「なんじゃこりゃぁレストラン」
に入ってしまいました。

なんじゃこりゃぁレストランは、
* 店の名前がセンスずれていたり、
* メニューに載っている料理の名前が変だったり、
* 板前さんの雰囲気が謎を秘めていたりするので、
たいがいスグに見分けがつきます。

ちなみに、ほんとうにあった危ない店名の例です。
「フンドシ」
「大往生」
「談合」 (←たしかに、読み方によっては楽しそうな雰囲気あります)
「お立ち台」

話をもどします。
このエライ政治家の先生は、帰国するなり
「ふざけた日本食レストランが多くてけしからん。マジメにやっとる日本食屋を国家として応援せねばならん」
と言い出し、そのために2億数千万円の予算を農林水産省にあてがったのです。

農林水産省はその予算をバックに、
「海外の日本食レストランを認証する制度」
を作ることを発表しました。

そうしたら大騒ぎになりまして。
アメリカのジャーナリズム(ワシントン・ポストだったと思います)が
「日本から寿司ポリスがやってくる」
という記事を書いたのを皮切りに、あちこちで批判の声があがります。

日本でも、個人のブログで寿司ポリスのことを非難する人が数知れず。
「日本政府が勝手に日本食店のルールを決めるなんて許せない!」
という声が多発しました。
ある意味、炎上したわけです。

◆◆◆

この「寿司ポリス事件」、覚えておられる方も多いと思います。
騒ぎはいつの間にか静まってしましましたが、この事件、その後どうなったかご存知ですか?

ご存じない人のために、次号で後日談をお伝えいたします。

 

 

 

 

<参考書籍>

「食品認証ビジネス講座」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4782102585

食品認証ビジネス講座―安全・安心のための科学と仕組み

 

 

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2009.05.06 17:36

戦え、食育スーパー!

 

松宮園生です。

いまから40年近く昔のことですが、ハーバード大学の
メイヤー教授という人が
「夫を早死にさせる10ヶ条」
というのを発表しました。

1) うんと太らせる
2) 酒をじゅうぶんに飲ませる
3) 砂糖・菓子は好きなだけ食べさせる
4) じっと座らせて、運動不足にさせる
5) 動物性脂肪をたっぷり取らせる
6) 塩辛い食事に慣れさせる
7) コーヒーをガブガブ飲ませる
8) タバコをどんどん吸わせる
9) 夜更かしをさせる
10) 休暇は取らせない
あとは朝から晩まで文句を言っていじめる。

それって10ヶ条じゃなくて11ヶ条じゃね?

まあいいか。
要するに、この10ヶ条の逆をすることで長生きしよう、というメッセージなわけです。

◆◆◆

昔々あるところに、小さなショッピング・モールがありました。
その一角にこれも小さなスーパーマーケットがありました。
スーパーマーケットの店主はラリー・サイモンズという名前の、気のいい爺さんでした。
いつもニコニコと接客していましたが、商売のほうは可もなく不可もなく、という感じだったようです。

ある日、スーパーマーケットのなんと隣に、
「レイモンド・クールマン」
という地産地消タイプの自然食品店ができました。

自然食品店の世界って、巨大チェーン「ホールフーズ・マーケット」のひとり勝ちかなと思っていましたが、地域に密着した店などは根強く生きています。

慌てたのはスーパーマーケットの店主です。
かたや普通の食品、かたや自然食品、という違いがあるとはいえ、隣にライバル店が誕生したのですから、心中おだやかではありません。

案の定、客足は自然食品店のほうになびき、スーパーマーケットの売上はがた落ちしました。

経済の世界も弱肉強食です。
勢いにのった自然食品店側はコンサルタントを雇い、スーパーマーケットを潰しにかかります。
コンサルタントのアイデアで、「レイモンド・クールマン」の店内あちこちにこんなポスターが貼られました。

  <メイヤー教授もうなずく、夫の命を縮める食品ワースト3!>
  ワースト1位: トランス脂肪酸たっぷり食品
  ワースト2位: 精製された砂糖たっぷり食品
  ワースト3位: 塩分たっぷり食品
  どこかの店と違い、当店にはこんな危ない商品はいっさい置いておりません。
  安心して買える店、レイモンド・クールマン!

それを見たスーパーマーケット側の店主は頭を抱えました。
「ウチの商品はこんな危ないのばっかりだ…。どうしよう」

◆◆◆

半年後…。

ラリー・サイモンズ爺さんのスーパーマーケットはまだ潰れずに生き残っています。
それどころか、以前より繁盛しているように見えました。

「おかしいな」
首をかしげたのは自然食品店のオーナー、レイモンド・クールマン氏でした。
コンサルタントの発案したあのポスターを貼って以来、来客が増え、自然食品店の売上はアップしていました。
ポスター作戦は成功したわけです。
なのに、スーパーマーケットが潰れずに繁盛しているのは、どうも解せません。

クールマン氏は、コンサルタントに調査を頼むことにしました。

数日後、女装したコンサルタントがクールマン氏の前に現れました。
「クールマンさん、隣が繁盛している原因が分かりました」
「ていうか、なんであんたは女装してるんだ? その足でミニスカートはやめてくれ」

「女装してはじめて分かったんですよ」コンサルタントは平然と答えました。「…隣の爺さんですがね、男性客には何も渡さないのですが、女性客にはこんなチラシを渡していたんです」

コンサルタントは手に持っていたチラシを、クールマン氏に見せました。
それにはこう書いてありました。

  隣に置いていないものをお探しの奥さん、当店でどうぞ!
  秘密は守ります!

「もうひとつ報告があります、クールマンさん」コンサルタントは続けました。「あなたの若奥さんですが、隣で山のように買い物してましたよ」

 

 

 

 

<参考図書>

「フィット・フォー・ライフ」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/490142310X

フィット・フォー・ライフ ——健康長寿には「不滅の原則」があった!

 

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2009.05.04 20:01

スシ太平記 (前編)

 

松宮園生です。

御存じのように、日本食、世界各地でブームです。
日本食のレストランも乱立しています。
ちょっと前に農林水産省の行った推計ですが、
海外にはおよそ2万5千店の日本食店があるそうです。

そのなかにはまあいろんな店があります。
おおざっぱに言うと
1) ヤマトダマシイ型
2) カメレオン型
3) なんじゃこりゃぁ型
に分類されます。

アメリカの場合の、それぞれの特徴を書きます。

1)「ヤマトダマシイ型」
見るからに日本っぽい店のことです。
客も大半が日本人です。
オールドモデルとニューモデルがあり、オールドモデルの店では例えば薬師丸ひろ子のポスターが今でも萌えキャラです。

2)「カメレオン型」
ようするに、現地の好みに合わせて変化しているタイプのことです。

いろんなパターンがありますが、最近気になるのは、
「日本で修行をしたアメリカ人が、金持ちアメリカ人のために開いた本気の日本食店」
というのがあることです。

こういう店の中身はヤマトダマシイ的ですが、日本人客は1人もいません。
着飾ったアメリカ人で満席。
お値段も2人で400ドル(約4万円)。
味や雰囲気はかなりグー(←死語)です。いかにも高そうなたたずまいです。

なぜ日本人がいないかと言うと、店のオーナーが日本人に店の宣伝をしていないからです。
なぜ日本人に宣伝しないかというと、日本人が来なくったってアメリカ人客だけで採算がとれるからだそうです。
生意気ですねえ。
(むかしはこんなことはありえませんでした)

こういう店は、
1) まずアメリカ人のあいだで話題になり、
2) その後、アメリカ人に教わって日本人がやってくる
というプロセスを踏みます。

こういう、「日本人の知らない来ない流行日本食店」を知っている日本人は、現地日本人社会でちと鼻高々(←死語)だそうです。

3) 「なんじゃこりゃあ型」
話題として面白いのはこのタイプです。
自分は行きたくないけど、誰かが行ってハマった話を聞くのは面白い。
罰ゲームにも使えるタイプです。

昨日まで中華料理をやっていた中国人の劉さんが、
「日本食は儲かる」
と聞いて今日から日本食屋に転向した、というパターンが多い。

たとえば店の名前。
昨日まで「四川飯店」だったくせに、今日から日本風の名前に変わります。
しかし劉さんもいちおう少しは考えます。
「富士」とか「将軍」とか「加賀」とかはあまりにもベタすぎる。
もうすこし今どきな名前にしよう。
そう考えた劉さんは、知り合いの日系人に「最近日本でどんな言葉、流行っているアルか?」
と相談します。

その日系人に教わって、つけた今どきな名前が
「世界中心愛叫」(1号店)
「同情無用金欲」(2号店)

…なんか色々と感覚ズレてますけど、しかたねえ許すとするか。

で、昨日までエビチリとかタンタン麺を出していたくせに、今日から寿司を作り始めるわけです。
どんな寿司になるか、なんとなく想像つきますよね。

たとえば、日本では寿司のシャリが酢飯であることを、劉さんは知りません。
日本ではネタの新鮮さが重視されていることを、劉さんは知りません。
日本ではマスタードではなくワサビを使っていることを、劉さんは知りません。
日本ではウスターソースではなく醤油を使っていることを、劉さんは知りません。
しかも、醤油は食べる人が自分の好みでちょっとつけるだけで、はじめから醤油に浸して出てくるものではない、ということを劉さんは知りません。

劉さん本人は、図鑑をみながら日本の寿司を一生懸命マネているつもりなのですが、結果的にはキワメテ自由な発想の寿司が生まれるわけです。

 

 

 

 

 

<参考図書>

「スシエコノミー」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4532353017

スシエコノミー

 

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2009.05.03 11:29

有機ある行動とは

 

松宮園生です。

アメリカに住んでいたころの話ですが…。

近所、といってもクルマが必要な距離なんですが、わりと近いところに
小綺麗な「地産地消」専門店ができました。

「地産地消」のことを英語では
Local Harvest
(ローカル・ハーベスト)
とか
Local Produce
(ローカル・プロデュース)
とか言います。

プロデュースっていうと何だかメディア業界の言葉みたいですが、「農産物」という意味もある。
つまり、Local Produceとは
「地元(Local)の農産物(Produce)」
のことを表します。
「田舎のテレビ局のちょい偉い人がイベントをやっている」
という意味ではございません。

アメリカの食品店は日本と違ってあまり頻繁に内装をリニューアルしません。
だいたいいつ来ても同じレイアウトです。
ところが近所にできたこの地産地消ショップはしょっちゅう内装を新しくしてます。
そのせいで目当ての品物を見つけるのに戸惑ったりしますが、時間があるときは探す楽しみもあったりして、
「分かりにくくて不便」
という人もいれば、
「けっこう面白い」
という人もいて、評判はまちまちでした。

◆◆◆

さて、その地産地消専門店でのことです。
日系人と思われる初老の婦人がカートを押していました。
見覚えがありました。
誰だっけ?
思いだせないのですが、少し気になって婦人の行動を目で追いました。

婦人がチーズを選んでいるときに、僕は思いだしました。
「ああっ」
そうだ。
あのときのあの人だ。

  あのときのあの人とは?→ 「グッバイマム」
  http://www.shokuiku-pro.com/production/2009/04/post_53.html

「ああっ」と叫んだ僕の声が聞こえたかどうか分かりません。
平然としたまま、婦人は果物・野菜が並んでいる売場に来ると、近くにいた店員に声をかけました。
「ねえそこのあなた。一体どうなってるのかしら」

声をかけられた店員は背の高い若者でした。
シャレたピアスをしています。
高校生のバイトでしょうか。
接客は慣れてませんという感じです。
「な、なにか?」

婦人は目をつりあげて言いました。
「有機野菜はどこに並んでるの? いつも来るたびに並び方が変わっているから、困るじゃないの」
「ゆ、有機野菜、ですか?」
「ここにあるのは有機野菜なの? それとも慣行栽培の野菜なの? どっち?」
「か、慣行栽培、ですか?」
「あなた、有機野菜とか、慣行栽培とか、そういう言葉じたい知らないみたいね」婦人は言いました。「誰か分かる人、いないの?」

  (参考)ちなみに、英語ではこう言います。
  有機= organic
  慣行= conventional

「誰かわかる人、いないの?」
そう言われて、若者はあわてて走り去り、先輩店員を連れて戻ってきました。
先輩店員が言いました。
「奥様、野菜をお探しで?」

「夫に食べさせる野菜を買いに来たのよ」婦人は言いました「有機野菜なのかそうじゃないのか、ちゃんと分かりやすく表示しておいてほしいわね」
「それは大変すみませんでした」
「で、どうなの。ここに並んでいるのは、有毒化学物質がたっぷりかかった野菜なのかしら?」

「いいえ、違います、奥様」先輩店員は落ち着いて答えました。「お手数をおかけするようで申しわけございませんが、その部分は奥様ご自身でやっていただかないと…」

 

 

 

 

 

 

<参考図書>

「食品表示簡単チェックBOOK」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4413018974

食品表示簡単チェックBOOK (青春新書PLAYBOOKS)

 

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