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松宮園生です。
(前回のあらすじ)
トモという女の子からメールがきました。
アメリカにあこがれ、カリフォルニアに留学。
ベジタリアンになったそうです。
そこで同じベジタリアンの素敵なボーイフレンドと出会い、
幸せな日々を送っているようなのですが…。
前回:「恋するベジタリアン その1」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2009/03/1_1.html
◆◆◆
年下のボーイフレンド、マークとは2人で住んでます。
マークは日系2世で、日本名はマサヒコだけど、本人はマークのほうが好きみたいです。
わたしたち2人とも、高級ベジタリアンのビーガンです。
ペスコの松宮さんとはきっと住む世界が違うの。
夕食の買物は、「ホールフーズマーケット」とか、「ブリストルファームズ」とか、「ワイルドオーツ」とかに行きます。
(松宮註: アメリカでは有名な自然食品店のチェーンです)
ロサンゼルスのダウンタウンに「エラワン」という凝った自然食品店があるんですけど、ここは懲りすぎてチョット怖いです。
なんていうか、知らない宗教の儀式を受けに行くような気分になるんです。
あと、「トレーダージョー」には行きません。
あまり雰囲気が好きじゃないので。
なんとなく暗くないですか、あそこ?
ホールフーズマーケット、ほんとに素敵なお店ですよね。
トモはホールフーズマーケットで総菜を買うのが好きです。
すごいたくさんの種類の総菜が並んでて、ぜんぶナチュラルな食材を調理したものばっかりで。
味も、日に日に良くなっているって感じです。
「昨日より今日のほうがおいしい」って、毎日思えるお店なんて、そんなにあるかしら?
大学を卒業したら結婚しようと話していました。
でも松宮さん。
そんな楽しい日々が、崩れるときがやってきました。
マークの秘密を、見てしまったんです。
パサデナからモントレーまで2人でドライブに行った帰り道。
タイヤがパンクしました。
予備タイヤにつけかえるのに、トランクのなかをごそごそいじっていると…
「それ」がありました。
猟銃です。
ベジタリアンの世界では悪魔の道具と忌み嫌われている、猟銃です。
罪のない動物を、人間の楽しみだけのために撃つ、道具です。
それが、ここにあるんです。
マークの車のなかに。
トモは混乱しました。
マークは、ビーガンではなかったの?
ベジタリアンには2種類の人がいます。
ひとつは、動物性の食べ物からは健康を得られないと考え、植物性の食べ物だけを選択する人。
自己愛型ベジタリアンです。
もうひとつは、動物に苦痛を与えたくないと考え、植物性の食べ物だけを選択する人。
動物愛護型ベジタリアンです。
ビーガンは、その両方じゃなくちゃいけないの。
つまり、ビーガンは動物性の食べ物を食べないだけではなく、動物の殺生をしない人たちのはずなんです。
それなのに、猟銃がここに…。
マークが後ろに立っていたので、トモは心臓が止まりそうになりました。
マークは微笑みをうかべて言いました。
「驚かせてごめんねハニー。それ、ボクのじゃないんだ。友達から預かってほしいと言われてね」
でも銃身には大きな字で「MASAHIKO(マサヒコ)」と書いてあります。
「ああ、それね」トモの視線の先に気づいたマークは、早口で言いました。「友達の名前もマサヒコっていうんだ。偶然だよね。あはははは。いやいや、ホントにホント。偶然ってあるんだねえ。あはははは。こんど紹介するよ。あはははは」
マークの笑い声がむなしく空に消えていきます。
タイヤの取り換えが終わってクルマは走り出しましたが、トモは黙っていました。
マークはいろいろ話しかけてくるのですが、トモは答えませんでした。
そのうち、マークも沈黙してしまいます。
会話のないまま、クルマはフリーウェイを走り続けます。
「メンドクサイ女だな」
しばらくして、マークがそうつぶやくのを聞いたような気がしましたが、たしかかどうかは分かりません。
(以下次号)
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