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2009.02.07 20:30

史上最強の栄養教諭 前編

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冒険、冒険、また冒険…♪  松宮園生です。

 


<栄養教諭>
栄養教諭とは…(中略)…文部科学省により新設された
資格である。
…(中略)…
「食と教育の、両方の専門家」
であるという自覚を持ち、子どもたちが将来にわたって
健康に生活できるよう、食についての指導を行うことが、
栄養教諭の役割である。
主に、学校給食の場を通じて指導を行うことが多い。
(日本食育大学出版「オールジャパン食育大辞典」より)

◆◆◆

今日は、4年1組の番でした。

ベテラン栄養教諭の佐久間象子がのっしのっしと入ってくると、クラスは水を打ったように静かになります。
怯えているのは児童だけではありません。
担任の黒崎先生も、おどおどしながら佐久間象子の挙動を見守っています。

児童の机の上には給食が準備されていますが、まだ誰も手をつけていません。
佐久間象子の許可なしに手をつけるような勇者は、この学校にはいないのです。

上履きをはいた佐久間象子が木製の教壇に上ると、足元がミシミシと音をたてました。
彼女の上履きのサイズは、28センチだと言われています。

子どもの頃、
「ゾウが踏んでも壊れない筆箱」(※)
というテレビCMがあったっけ…。
ミシミシ言う音を聞きながら、中年の黒崎先生はそんなことを連想していました。

  (※) http://www.youtube.com/watch?v=-tHIFKKdc98

教壇に立ち、クラスを睥睨(へいげい)する佐久間象子。

「このクラスに2月生まれの子はいますか」
佐久間象子は低く唸るように言いました。
3人の児童がびくびくしながら手を挙げます。
「じゃあ、きみ。名前は?」
「吉森です」
「では吉森君、今日の献立について説明しなさい」
「えっと」
「えっとは余計です」
「は、はい。き、今日の献立は、雑穀ごはん、牛乳、イワシのかば焼き、きざみたくあん、わ、ワカメの味噌汁です」

「うむ、よろしい」
うなずく佐久間象子。

毎日の献立は、あらかじめ暗記する決まりになっていました。
暗唱に失敗した児童は佐久間象子から恐ろしい雷が落ちるのです。
本物の雷より、2倍怖いと言われています。

というわけで、間違えずに答えることができて、ほっとする吉森君。

しかし、尋問はまだ終わりませんでした。
「吉森君のとなりのあなた、名前は?」
「はい、新城です」
「では新城さん、イワシについて何か予習してきましたか?」
「はい」長い髪に赤いリボンの新城さんは、優等生らしくノートを広げました。「イワシは魚へんに弱いという漢字を書く、近海の魚です。日本人の食生活にたいへん親しまれています。栄養も豊富です」

「よろしい。よくできました。では窓際の一番後ろに座っているきみ、名前は?」
「僕ですか? 大田です」
「では大田君。かば焼きとは何ですか?」
「え?」
「かば焼きについて説明しなさい」
「え?」

大田君は困った顔をして天井を見上げました。
佐久間象子の額がピクッとなりました。
教室にイヤな緊張感が走ります。

「どうして黙っているのですか」語気を荒くする佐久間象子。「早くかば焼きについて説明しなさい」
「えっと」
「えっとは余計です」

大田君は答えることができませんでした。

「かば焼きが答えられないとは何事ですか。予習をしたのですか」
「ご、ごめんなさい…」
「このたわけ者が!」大音声(だいおうんじょう)で時代めいたセリフを吐く佐久間象子。その声に、窓ガラスが震動しました。「せっかく皆で楽しい給食を始めようとしていたところを、大田君、きみ1人の怠慢のせいで台無しですよ」

「さ、佐久間先生、そんなに怒鳴らなくても…」立ち上がろうとする担任の黒崎先生。
「あんたは黙らっしゃい!」
すごい形相で佐久間象子ににらみつけられ、黒崎先生はへなへなと座り込んでしまいます。

「いいですか、皆さん」
佐久間象子は、黒板に「人を良くする=食」と書きました。
実際には、途中でチョークが3回、折れましたが。
「いいですか、皆さん。何気なく食べてはいけないのです。素材のことも勉強し、調理のことも勉強し、それを80回噛みしめて食べる。それが大切なのですよ」

振りむくや、佐久間象子は太い指で大田君を指しました。「分かったか、大田!」

(なにを分かったらいいのか…)

しかし、大田君の姿はそこにありませんでした。
恐怖に気を失い、床に倒れていたのです。

◆◆◆

粗相をしたのは大田君だけでしたが、連帯責任ということで、そのあと佐久間象子の説教が始まりました。
長い長い説教が終わり、児童たちがようやく食べることを許されたときには、ワカメの味噌汁は冷えきっていました。
黒崎先生の味噌汁にいたっては、うっすらとですが氷が張っていたそうです。

シベリアかっつーの。

それにしても、凶暴な栄養教諭がいたものです。
こんな栄養教諭がいて、給食が美味しいわけはありませんね。

ですが、この学校の校長先生は佐久間象子を離そうとはしなかったのです。
どうしてでしょうか?
その驚くべき理由については、次回をお楽しみに。

(つづく)

 

 

 

 

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