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サプライズな企画書を書く男、松宮園生です。
「地産地消ラプソディ」というシリーズを書いてまして、
まだ未完なのですが、こんなストーリーです。
↓
地産地消とは縁のなかったサラリーマン佐藤塩太。
ある日、食育ロボット、アンドリューが現れます。
アンドリューの特訓を受け、塩太のなかで地産地消の血が目覚めました。
その勢いで塩太は地元X県の知事に立候補。
なんと当選してしまいます。
知事就任の日から、塩太のパワフルな「地産地消県政」が始まったのでした…。
「地産地消ラプソディ その壱」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/06/post_143.html
さて今回は、その「外伝」です。
いまは知事である塩太が、その後さらに出世して、もしも内閣総理大臣になったらどうなるかを想像してみました。
(内閣総理大臣=首相だけど、塩太の場合は「地産地相」だったりして)
◆◆◆
第XXX回通常国会で、「地産地消絶対法」が可決されました。
与党の拍手のなか、深々と頭を下げる塩太首相。
(正確には、佐藤首相なのですが)
「地産地消絶対法」
どんな法律かというと。
「ものを食べたり飲んだりするときは、半径160キロ以内で生産されたものだけを食べなさい。違反した者は、食育3年、または身土不二5年の刑に処す」
という法律です。
地産地消の心構えが足りなかった国民は震え上がりました。
「食育3年の刑」って、どんな刑なのでしょうか?
「身土不二5年の刑」ってどんな刑なのでしょうか?
よく分からないまま、
「なんだかもの凄く恐ろしい刑らしいぞ」
というウワサだけが日本列島を走りました。
なぜ半径160キロなのかというと、これはアメリカの真似です。
アメリカでは地産地消のことを
Local Harvest (ローカル・ハーベスト)
Locally Grown (ローカリー・グローン)
などと表現しますが、どこまでが Local (ローカル)かというと、カリフォルニアあたりでは
「半径100マイル」
が目安となっていることが多い。
100マイルというのは、メートル法に換算して160キロです。
なので、160キロ。
◆◆◆
この法律により、デパートなどの歳末お歳暮合戦は打撃を受けました。
遠方の人に、贈りものがしにくくなったのです。
アナタが世話になった恩人が大阪にいる。
あなたはその人に、秋田のきりたんぽ鍋セットを贈ったとします。
大阪の人がそれを食べたら…。
「地産地消絶対法」違反です。
食育3年、または身土不二5年の刑です。
インターネットで
「産地直送! おいしさをお取り寄せ」
なんて商売をしてたサイトも、アウトです。
福岡に住んでいるアナタが、沖縄の海ぶどうをネットで取り寄せて食べたら…。
「地産地消絶対法」違反でのかどで、食育3年、または身土不二5年の刑。
東京在住のアナタは、宮崎マンゴーを食べることができません。
食べたかったら、宮崎まで行け。
名古屋のアナタは、北海道産のカニを食べることができません。
食べたかったら、北海道まで行け。
…てことは、旅行業者あたりは大儲けかもしれませんね。
しかし、この法律は本来、
「住んでる近くのものを食え」
という主旨の法律です。
「遠くにでかけて、その土地の特産物を食べなさい」
という主旨ではないんだけど。
◆◆◆
スーパーマーケットも大変です。
「地産地消商品」
を揃えなければならなくなりました。
輸入品などもってのほかです。
しかしこの法律は、「売る人」ではなく「買う人」を罰する法律です。
遠隔地のものを売りたきゃ売ってもいいけど、それを食べたら法律違反だよ。
というものでした。
なので、売るほうよりも、買うほうがもっと真剣です。
「このイチゴ、わたし南田伸吾が作りました」
と書いてある写真と紹介文を真剣に読み、その農場まで出かけ、南田伸吾さんが160キロ以内に実在するかどうかを確認したりするわけです。
塩太首相は、内閣府の下に「地産地消庁」という早口言葉みたいな役所を作り、スーパーマーケットで「不正=地産地消破り」が行われていないか、監視しています。
監視する人は、「地産地消ポリス」と呼ばれました。
この地産地消ポリスが各地を巡回しているのです。
飲食店も大変です。
料理を見ただけでは、地産地消かどうかを確認することができません。
そのため、地産地消ポリスが厨房を巡回し、いろいろチェックを入れています。
しかし、「地産地消絶対法」の決まりでは、違反してタイホされるのは「作る人」ではなく「食べる人」です。
なので、食べるほうは、どの飲食店が「地産地消100パーセントメニュー」になっているかを事前に調べなければなりません。
そんな状況でも外食したい、という人のために
「地産地消ミチュラン」
という本が発行されました。
◆◆◆
しかし、この法律のせいでもっとも混乱したのは意外なところでした。
新大阪駅の売店で「大阪弁当」を購入し、東京行きの新幹線に乗り込むビジネスマン。
弁当を開くのは、京都を過ぎてからです。
京都で人の乗り降りがあるので、それが終わってから弁当を開くほうが落ち着くのです。
京都を過ぎてまもなく、車掌がやってきました。
「お食事中えろうすんまへん。切符を拝見させてもらえまっか」
ビジネスマンは胸ポケットから切符を取り出します。
「どうもおおきに」車掌は切符を返しながら言いました。「ところでそのお茶、まだ飲んだらあきまへんで」
「え?」
「そのお茶、静岡産っちゅうことは分かってまっか」
「それが何か?」
「それが何かって、あんた。何いうてまんねん。それ飲んだら地産地消絶対法に違反するやないか」
「は?」
「静岡から160キロ圏内に入るまで、待たな」
「は?」
「わて、地産地消ポリスなんですわ。副業で車掌やってまんねん」
あっけにとられるビジネスマン。
「ところでそのお弁当やけど」車掌は続けます。「大阪弁当ちゃいまっか?」
「は? そうだけど?」
「そのタコヤキは、姫路で作られたもんでっせ」
「それが何か?」
「それが何かって、あんた。何いうてまんねん。それ食べたら地産地消絶対法違反やないか」
「は?」
「タコヤキ、もう食べれまへんで。ついさっき、姫路から160キロ圏を超えてもうたんやから」
「い、いや、しかし」
「しかしもなにもあらへん。地産地消絶対法を破ったら、食育3年、身土不二5年でっせ」
「いや、でも」
「気をつけんと、お客さん。東京行きの新幹線に乗るときは、大阪弁当買うたらあきまへん。名古屋弁当を買わんと」
車掌は立ち去ろうとしましたが、ビジネスマンはその裾をつかみます。
「ちょ、ちょっと待ってよ、車掌さん。さっき買ったばかりの弁当だよ。850円、払ったんだ。それが法律で食べれないなんて、そんなくだらない話があるかよ」
「たしかに、くだらない話やなあ」車掌は振りかえってニッコリ笑いました。「これ、上りの新幹線やからねえ」
(21世紀にもなって、そんなオチとは…)