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2008.12.05 03:47

いただきますラプソディ 第3巻

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毎日200通のメールと闘う松宮園生です。

(前回までのあらすじ)
猫も杓子も、食べた料理の写真をブログにアップするのが大流行。
そんなことに縁のないはずのオヤヂたちまで、あの店でパチリ、この店で
パチリとやり始めた。
家電量販店の店頭には、料理ブログ(食ブログ)専用デジカメの特別コーナーまでできる始末…。
日本はどうなっていくのか?

  前回「いただきますラプソディ 第2巻」はこちら。
   http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/11/2_35.html

◆◆◆

ある透明な夜のこと。
地球の片隅で、ひとつのブログが音もなく立ち上がった。

「フードカウンセラー清美のオトナ食」
色とりどりのパプリカが散りばめられた、みずみずしいデザインのブログである。

可愛らしいブログだな。

そう思った男性のアナタ。
まだ懲りていないようだね。
きれいな薔薇にはトゲがあると、何度言ったら分かるのかね。

フードカウンセラー清美なるブロガーは、最初の数日こそ当たり障りのない日常のつれづれを書いていたが、ある日、こんな宣言をした。
「わたしの仕事はフードカウンセラー。皆さんのだれきった食習慣を、ヘルシーに変身させてみせる!」
その日から彼女は、多発するオヤヂ食ブログにコメントを入れ始めたのである。

たとえばこうだ。

どっかの場末サラリーマンが書いている
「高田馬場プチトマト」
というブログ。
こんな文章が載っている。
「昨日の夜はオフィスのみんなで『ほっけ』っていう中華料理の店に行ってきましたよー。エビチリがすっごくおいしかったです。明日は会社でぶらぶら予定。帰りにペットショップに寄ってまんまるフェレットに触ろうっと」

そこに、「フードカウンセラー清美」がコメントを入れている。
こんなコメントである。
「高田馬場プチトマトさんへ。昨日もエビチリ食べたのに、今日もエビチリ? だめじゃーん。痛風になっちゃうよ。野菜とってる?」
なぜ昨日もエビチリを食べたのが分かったかというと、前日のブログにそう書いてあったからだ。

フードカウンセラー清美は、そこらじゅうのオヤヂ食ブログをターゲットに、このような「食生活アドバイス型コメント」を入れ始めた。

◆◆◆

怖いもの見たさであちこちのオヤヂ食ブログを盗み読みしていた僕であったが、気がついたらそれが日課になっていた。
なかなか恥ずかしい日課である。
趣味になりつつあった。
そんな趣味があるなんて、人にはとても言えないが。

オヤヂ食ブログはそれこそ何万と存在している。
ただし、グーグルとかヤフーとかで「オヤヂ食ブログ」と入れても、オヤヂ食ブログが検索できるわけではない。
自分で自分のブログに「オヤヂ食ブログ」と名づけているオヤヂはいないからだ。

その代わり、「オヤヂ食ブログ検索サイト」をうたったマニアックなサイトがいくつか立ち上がっている。
そこで検索すると、オヤヂ食ブログのリストがちゃんと出てくる。
誰がサイトを作ったのか知らないが、世の中、どんな分野にもそれなりの専門家がいるものだ。

そういうサイトにはちょっと個性的な名前がついている。
僕がよく使うオヤヂ系検索サイトは、
「カレーシュー」
というサイトで、この分野では大手のようである。
「カレー味のシュークリーム、という意味ではありません」というサブキャッチというか、オヤヂギャグがついている。
芸が細かい。

話を戻そう。

というわけで、オヤヂ食ブログを毎日せっせとブラウズしていた僕であったが、そのおかげで「フードカウンセラー清美」を早々と発見することができた。
「へんなコメント魔がいるぞ」
最初はその程度に思っていた。
ところが、
1) どのオヤヂ食ブログにも、彼女がコメントを入れている
2) そのコメントが、よい具合に食事指導になっている
この2点に気がついて、僕は彼女に興味をもつようになった。

◆◆◆

よく観察すると、
「オヤヂたちはフードカウンセラー清美のコメントを楽しみにし始めている」
ことも分かってきた。
まあ、その気持ち、理解できないでもない。

たとえば前述した「高田馬場プチトマト」のブログだが。
「高田馬場プチトマトさんへ。昨日もエビチリ食べたのに、今日もエビチリ? だめじゃーん。痛風になっちゃうよ。野菜とってる?」
というフードカウンセラー清美からのコメントに対し、
「う…、痛いところを突かれちゃった。今日からちゃんと野菜食べまーす。いまの季節は、何を食べたらいいかなあ」
なんて返事が書かれている。
オヤヂの「叱られたい願望」が満たされている感じだ。

なんだか面白いことになってきたぞ。

そう感じた僕は、ひきつづき「オヤヂ食ブログ観察」を続けた。
するとどうだろう。
オヤヂ食ブロガーたちの食事内容が、だんだんヘルシー化してきたのである。

このあいだまで、昭和歌謡曲の流れる店でカニクリームコロッケ定食を食べていたのが、ときどきマクロビの店で食べるようになったり。
「有機」「雑穀」「全粒粉」といった単語を使用してブログを書くようになったり。

フードカウンセラー清美は、かなりの「オヤヂころがし」達人のようであった。
食事内容が改善しない人のブログには、わざとコメントを入れなかったりするのだ。
コメントがほしいばかりに、オヤヂたちは食事内容を変えた。
とたんに、清美からコメントが入る。
「キャー、素敵なお食事ね。思わずコメしちゃったわ」

さらに。

フードカウンセラー清美のブログをのぞいてみると。
「今日のヘルシー食事トップ10、第1位はエーデルワイス俊三さん、第2位は…」
なんと、オヤヂ食ブロガーを「ヘルシー度」という切り口で勝手にランキングして発表している…。
芸が細かい。

◆◆◆

そんなことが続いているうちに、フードカウンセラー清美の存在が世間に知られるようになってきた。
政府や学者があの手この手を使っても変わらなかったオヤヂたちの食生活が、どんどん改善してきたのだから、まあ無理もない話である。
「フードカウンセラー清美は、新時代の食育女王だ」
と彼女を絶賛する人が増えてきた。

そうなると、彼女自身のブログ
「フードカウンセラー清美のオトナ食」
へのアクセスも急増する。
いくつかのブログランキングのサイトで、ぶっちぎり1位を獲得。

一躍人気者になったフードカウンセラー清美。
勢いにのって食育セミナーなんかも開催したようである。
うらやましいことに、高い料金にも関わらず、彼女の話を聞きたいオヤヂは多かった。
そのうち、テレビや雑誌にも出るようになった。

そういう多忙の身でありながら、彼女はペースを落とすことなく、オヤヂたちの食ブログにコメントを入れ続けた。
ブログ「フードカウンセラー清美のオトナ食」も毎日、更新された。

そして訪れる運命のとき…。

クリスマスも近づくある日曜日、「フードカウンセラー清美のオトナ食」が炎上した。

(次号=第4巻 エンディングに続く)

 

 

 

 

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コメント

  1. 地域限定のサイトで「食育を***」という
    ブログをやっている管理栄養士です。
    でもラーメン3杯ハシゴするようなオヤジは
    栄養士の言うことなど聞きやしません!

    [1] アップルココナツ 2008.12.05 09:16
  2. コメントありがとうございます。
    にくったらしいオヤジですね!(笑)

    [2] 松宮園生 2008.12.05 13:39

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