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ふるさとは遠くにありて思うもの。
なーんて言いわけをし、帰省をサボってしまった
松宮園生です。
人類を大別すると
* 女と男
* 農耕民族と狩猟民族
* 選挙権をもつ人(大人)とそうでない人(子ども)
* メタボとそうでない人
* オヤジギャグを許す人と許さない人
など、いろんな分け方ができると思います。
僕の中では、人類は
* パクチー好き
* パクチー嫌い
の2種類に分かれます。
パクチー嫌いな人は、あの匂い(カメムシの匂いに似ているらしい)が我慢できないと言い、
パクチー好きな人は、その匂いがたまらんと言います。
僕はパクチー好きです。
「日本パクチー狂会」(実在します)の幽霊メンバーです。
日本パクチー狂会: http://paxi.jp/
そんなパクチー好きの僕の夢は、生きているうちに
「パクチーによる宇宙征服」
を実現することです。
パクチーによる宇宙征服プランの詳細→ 「ハイル・パックチー」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2007/12/post_103.html
パクチー好き宇宙人に遭遇した話→ 「ハイル・パックチー エピソード2」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2007/12/2_24.html
◆◆◆
といいつつ、今回はパクチーの話ではありません。
パクチーはその匂いに特徴があるわけですが、この世にはパクチー好きな僕も閉口するハーブがあります。
そのハーブの話をします。
その名もバレリアン。
パンチパーマのオバサンが「白鳥の湖」を踊っているような名前です(違うか)。
マサチューセッツ州ネイティックというところにジェフリーという漢方医がいました。
ジェフリーはもともとイギリス人なのですが、中国と日本の両方に留学したあと、アメリカに移って開業しました。
ジェフリーと知り合ったころの僕は、仕事で2週間ごとに日本とアメリカを往復するという生活を半年ほど続けていました。
最初のうちは刺激があって楽しかったのですが、だんだん疲れてきます。
時差ボケも治らないうちに太平洋を何度も行き来するので、体調も崩しまして。
メラトニンを持参していましたが、効いてんだか効いてないんだか。
疲労が蓄積していたのでしょう、とある12月にボストンに入ったとき、熱を出してへろへろと倒れてしまいました。
さいわい、ボストンとネイティックはクルマで20分くらいしか離れていなかったので、ジェフリーが面倒みてくれました。
そのまま彼の家でクリスマスを迎えることになりました。
クリスマス・ディナーのときに彼からもらったのが、ガラス容器にしっかり密閉された、バレリアンのサプリメントだったのです。
カプセル状になっていました。
「バレリアンっつうサプリだ。ぐっすり眠れるサプリだから、時差ボケに効く。カプセルもベジキャップ(※)にしてある。メラトニンはやめて、これにしな、兄弟」
(※)ベジキャップ
植物原料で作られたカプセルのこと。
いまではだいぶ普及したようですが、当時はまだベジキャップは少なく、
ゼラチン(動物由来の原料)製のカプセルが主流でした。
「ふーん。ありがとう。さっそく飲んでみよう」
「ちょっと待った。それは困る」ジェフリーは言いました。「それは食後にしてくれ、兄弟」
「どうして?」
「少々くさいからだよ、兄弟」
くさい、と言われると嗅いでみたくなるのが日本人です(違うか)。
食事のあと、さっそく蓋(ふた)を開けてみました。
どんなに素晴らしい香りだったかというと。
二日酔いの中年のオッサンが、不快指数の高い真夏に、3時間ほどフットサルをしたと思ってください。
そのときの靴下のにおいと、だいたいレベルが同じです。
オェーッとなった涙顔の僕にむかって、ジェフリーが言いました。
「バレリアンはクサいほど品質がいいんだよ。とにかく早く蓋を閉めな、兄弟。近所の人がそのにおいをテロだと勘違いして警察を呼んだら、面倒だからな」
◆◆◆
そんなバレリアンですが、バレリアンのお茶というのもあるらしい。
「においに耐えながら飲むのがよい」
のだそうです。
かなり M 向きのお茶のようですぜ、兄弟。
<オススメの1冊>
ぱくぱく!パクチー
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/479583783X
来年こそは××を××しようと決心している松宮園生です。
前編にひきつづき、アメリカのベジタリアン文化に迫ってみましょう。
前編はこちら→ 「ベジコン2008 前編」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/12/2008_1.html
◆◆◆
アメリカではベジタリアン向けの雑誌がいくつか発行されています。
そのひとつに
「Veg News」
というのがあります。
この雑誌は年に1度
「ベジタリアン賞」
というものを発表しています。
毎年やってまして、受賞するとそこそこ名誉です。
「ベジタリアン賞」はさまざまな部門に分かれています。
そのなかから、いくつか紹介します。
■レストラン部門■
Millennium Restaurant (サンフランシスコ)
http://www.millenniumrestaurant.com/
サンフランシスコに縁のある方、ぜひ行ってみてください。
Veggie Grill(ロサンゼルス)
http://www.veggiegrill.com/
ロサンゼルスに縁のある方、ぜひ行ってみてください。
■ベーカリー部門■
BabyCakes NYC (ニューヨークおよびロサンゼルス)
http://www.babycakesnyc.com/
ニューヨークやロサンゼルスに縁のある方、ぜひ行ってみてください。
■クッキー部門■
Newman's Own Organics
http://www.newmansownorganics.com/
今年亡くなった俳優ポール・ニューマン氏のブランド。
全米各地の自然食品店などで販売されています。
■チョコレート部門■
Endangered Species
http://www.chocolatebar.com/
全米各地の自然食品店などで販売されています。
■アイスクリーム部門■
Purely Decadent
http://www.turtlemountain.com/
全米各地の自然食品店などで販売されています。
日本でも売られているみたいです。
■豆腐部門■ ←こんな部門もあるんだね。
Nasoya
http://www.nasoya.com/nasoya/
豆腐ですけど、完全にアメリカブランドのものです。
■料理研究家部門■
Isa Chandra Moskowitz & Terry Hope Romero
こういう本を出した人たちです。
↓
■料理ブック部門◆
Great Chefs Cook Vegan
◆◆◆
VegNews のほかにも、こんなベジタリアン雑誌が出ています。
Vegetarian Journal
Vegetarian Magazine
Vegetarian Times
要は、雑誌が競争するほどベジタリアンが多いってことだね。
犬は喜び庭かけ回り、猫はコタツで丸くなる、
そんな松宮園生です。
◆◆◆
去る日曜、「食の検定」というのが全国各地で
行われたようです。
http://www.syokuken.jp/
そこで僕も対抗して、
「食育っぽさ検定」
というのをやってみたいと思います。
あなたが普段どのくらい「食育っぽい」かを判定するものです。
<食育っぽさ検定 3級>
当てはまるものに正直にチェック(レ)を入れてください。
( )「まごわやさしい」の中身を暗記してしまった
( )「地産地消」という言葉を1日に1回以上、口にする
( )有機野菜はぜったい美味しいと思う
( )かつてコンビニでもらった割り箸を、マイ箸にして持ち歩き、何度も使っている
( )誰かがブログに「日本の食料自給率は3割だ。この国はおかしい」と書いてるのを見ると、「そこまで低くない。3割じゃなくて4割です」と訂正コメントを入れたくなる
( )「三角食べ」と言われると、ついつい「口内調味」と返してしまう
( )コンビニ弁当の中身を移しかえて子どもの弁当にしている親を見ると、「食育基本法違反」だと思う
( )「旬」という言葉を軽々しく口にする風潮は、いかがなものかと思う
( )農業体験をすれば、好き嫌いがなくなると思う
( )「曲ったキュウリもまっすぐなキュウリも同じだ」という主張をしたことがある
( )「安心・安全・トレーサビリティ」という呪文を舌を噛まないで言える
( )「食事バランスガイド」を何も見ないでだいたい描くことができる
( )「フードマイレージ」を知らない奴には、蹴りを入れたくなる
( )ガンマ・リノレン酸は怖くないが、トランス脂肪酸は怖いと思う
( )「コショク」を6種類以上、書けるのが自慢だ
( )わたしの作るレシピは、そのへんのブログとはレベルが違う
( )食育はまず子どもからだ
( )いやいや、むしろ大人の食育が大切だ
( )「身土不二」という題名の小説を、いつかは書いてみたい
( )わたしのパソコンは、「ショクイク」と入れるとすぐに「食育」に変換する
<判定>
チェック(レ)14個以上で、3級合格です。
だからって嬉しいかどうかは分からないけど…。
不覚にも合格してしまったアナタ、嫌でも次は2級に挑戦だ!
<オススメの1冊>
食の検定―食農2級公式テキストブック
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4540082493
眠らない脳細胞、松宮園生です(笑)。
◆◆◆
森の中に迷いこんだヘンゼルとグレーテル。
しかし彼らは2人きりではありませんでした。
じつはもう1人、仲間がいたのです。
マツオという、日本人っぽい男の子でした。
3人は森のはずれに一軒家を見つけました。
そう、お菓子の家です。
ドアをノックすると、魔女が出てきました。
3人が「ここで一晩寝かせてほしい」と頼むと、魔女はニタアと笑って
「お入り」
と答えました。
「ただしひとつだけ約束じゃ」魔女はおごそかに言いました。「どんなことがあっても、わしがいいと言うまで、このお菓子の家を食べてはならんぞえ」
3人は「食べません」と約束し、眠りにつきました。
翌朝、子どもたち3人は5時に目が覚めました。
あまりに空腹だったので、彼らはテーブルを齧(かじ)り、壁をぺろぺろ舐(な)めました。
それを知った魔女は怒りました。
3人に罰を与えるといって
「森に入り、果物をひとつずつ持って来なさい」
と命令したのです。
魔女の剣幕にビビりまくった3人は、あわてて果物を探しにでかけました。
最初に帰ってきたのはヘンゼルでした。
ヘンゼルは、オレンジを持ってきました。
すると魔女は、そのオレンジを、なんとヘンゼルの鼻の穴に押しこみました!
「いたたたた」泣きわめくヘンゼル。
次にグレーテルが帰ってきました。
グレーテルが持ってきたのは、サクランボでした。
魔女はそのサクランボを、グレーテルの鼻の穴に押しこみました!
「痛い。やめて」涙をながす幼いグレーテル。
「どうじゃ、わかったか。悪いことをした者は、罰をうけるのじゃ」
魔女のくせになかなか教育的な発言です。
そのとき。
ヘンゼルとグレーテルが突然、腹を抱えて笑い出しました。
「なにを笑う」怒る魔女。「まだ反省しとらんのか」
「違う違う、そうじゃないんだ。でも笑わずにはいられないんだよ、おばさん」ヘンゼルは言いました。「だって、むこうを見てごらん。マツオのやつ、スイカを抱えて歩いてきてるよ」
◆◆◆
たまにはこういう他愛のないのも、いいよね。
<おススメの1冊>
「たべものだいすき!おなかぺこぺこソングブック」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/B001NGSN4U
作る喜び、壊すつらさ、
ともに生きる糧としている松宮園生です。
自分自身はとくに菜食主義ではないにもかかわらず、「アメリカのベジタリアン文化」というものに強い興味を持っています。
つまり、僕はベジタリアン・ウォッチャーです。
大和言葉(やまとことば)でいうと、ベジタリアン研究家です。
西暦2000年の時点で、アメリカにいるベジタリアンの数は570万人と推定されていました。
あれからベジタリアンの数も急増しているようなので、今頃は1000万人近くいるんじゃないかと思ってます。
(2000万人を超えているという説もあります)
こんなにたくさんいると、文化が成立します。
オタクがたくさんいるから「オタク文化」が成立しているのと同じ。
マンガ好きがたくさんいるから「マンガ文化」が成立しているのと同じ。
ベジタリアンがたくさんいるので、「ベジタリアン文化」が成立しています。
どういう点が「文化」なのかというと、たとえばこんな感じ。
* ベジタリアンの有名人が増える
* ベジタリアン専門の恋愛・結婚ビジネスが生まれる
* 商業ベースに載るようなベジタリアン雑誌が発行される
◆◆◆
ベジタリアンというと、
「野菜好きの肉嫌い」
を連想しますよね、ふつう。
しかし実際には、アメリカのベジタリアンの多くは「肉好き」です。
肉好きなのにベジタリアン?
どういうことかというと、
「ホントは肉好きなんだけど、動物愛護の観点から、肉食を死ぬまで我慢することを決意した」
こういうベジタリアンです。
好きなものを我慢しているわけですから、なかなかストイックです。
そういう方々が欲望に負けて肉を食う(=破戒する)ことがないように、肉の代用品が開発されています。
おそらく皆さんもご存じ、
「グルテン・ミート」
というやつです。
大豆や小麦などの植物タンパクから作られた、
「肉そっくりさん」
のことです。
詳しくは→ 「食育は英語で何というの? その16」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/06/16.html
◆◆◆
アメリカのベジタリアン社会は意外に怖いところです。
なぜなら、「階級」が存在しているからです。
階級ですので、上に行くほどエライ。
下にいくほど、肩身が狭い。
病院ではときどき、
「重症患者ほど地位が高く、症状の軽い患者は肩身が狭い」
みたいなことがあると聞きます。
ベジタリアンの階級もそれに似ています。
* 厳密に植物性のものにこだわる人は地位が高い
* キホン植物性だけど、たまには肉を食べたりする人は地位が低い
* ベジタリアンであらずんば、人にあらず(←平家物語か)
こういう感覚が、存在しているのです。
どういうときに「階級の壁」にぶつかるかというと、たとえば
「ベジタリアンどうしの合コン」
に出てみると分かります。
モテ方が違うのです。
僕は無謀にも、ベジタリアンの合コンに2度、参戦しました。
そのときのトホホな顛末はこちらを参照してください。
(1回目)「合コンから学ぶベジタリアンの世界 その1」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2007/05/post_21.html
(2回目)「合コンから学ぶベジタリアンの世界 その2」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2007/11/post_90.html
◆◆◆
アメリカのベジタリアンのあいだに存在する階級意識。
これは、ベジタリアン内部だけにあるわけではありません。
ベジタリアンは、非ベジタリアンのことを「違う人種」だと思っています。
ひどい場合は、「違う生き物」だと思っています。
非ベジタリアンのことを、僕は「プレデター」と呼んでいます。
「プレデター」という映画、ありますよね。
もともとは狩りをする猛獣のことをプレデターというのですが、転じて、ベジタリアンでない人のことを指す場合があるようです。
(参考)「ベジタリアン vs プレデター」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/06/_vs_1.html
ベジタリアンは、ベジタリアンどうしで恋愛とか結婚とかしたがります。
肉を食うやつとはつきあいたくない、と心の底では思っています。
口に出して言うことはあまりありません。
あるいは、「素敵な人だったら、ベジタリアンじゃなくてもいい」と意識では思っているかもしれません。
しかし、無意識では、プレデターとは接したくないと思っています。
なので、「ベジタリアンとプレデターの恋愛」は、わりと早々と破局をむかえます。
多くの場合、ベジタリアンがプレデターに別れを告げるという終わり方をします。
松宮園生が描く、ベジタリアンの悲しいラブ・ストーリー、珠玉の3部作!(笑)
「恋するベジタリアン その1」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2007/05/post_30.html
「恋するベジタリアン その2」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2007/05/post_35.html
「恋するベジタリアン その3」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/03/post_131.html
◆◆◆
今回はここまで。
次回は、アメリカのベジタリアン文化の真髄に迫ります。
(後編につづく)
<おススメの1冊>
「ベジ・ダイニング ― アメリカ栄養学による世界のヘルシーメニュー200選およびフードガイドピラミッドとベジタリアンについて」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4434123874
シンプル・イズ・ベスト、松宮園生です。
もうすぐオバマ大統領が誕生しますね。
「ブッシュ大統領の任期は12月31日に終了し、1月1日から
オバマ大統領の任期が始まる」
と思っている人は多いかもしれません。
じつは、ブッシュ大統領の任期が切れるのは来年1月20日の正午です。
つまり、1月20日の午前中まではアメリカを統べるのはブッシュ大統領で、午後からはそれがオバマ大統領になります。
政権交代となる1月20日、オバマ氏は「大統領就任演説」を行うことになっています。
この演説は、アメリカ国民に向けて行なわれるもので、個々の政策がどうかということよりも、大統領自身の哲学が語られるのが普通です。
むかしケネディ大統領が
「国があなたのために何をしてくれるのかを問うのはやめよう。あなたが国のために何ができるのかを、問おうではないか」
という有名なセリフを残したのは、この「大統領就任演説」のときです。
「大統領就任演説」に加え、1月にはもうひとつ大きな演説があります。
「一般教書演説」と呼ばれているもので、毎年、1月最後の火曜日に行われます。
2009年の場合は、1月30日がそれに当たります。
「大統領就任演説」がアメリカ国民に向けて語られるものであるのに対し、「一般教書演説」はアメリカ議会(上院・下院両方)に向けて語られます。
国の現状についての大統領の見解を述べ、具体的にこれから1年間、どういう課題に取り組むのか、ということを発表する重要な演説です。
「一般教書演説」といえば、いまのブッシュ大統領が2002年1月29日に行ったものを今でも覚えています。
多くの人命が犠牲になった同時多発テロ(2001年9月11日)の約4ヶ月後に行われた演説で、このときブッシュ大統領はこう言いました。
「…このような国々(イラン、イラク、北朝鮮のこと)と、そのテロリスト協力者は、世界平和を脅かすために武装した、悪の枢軸である」
「悪の枢軸」という言葉が誕生した瞬間です。
ブッシュ大統領自身は演説中にこの言葉を1回しか使っていませんが、世界的に有名なキャッチコピーになるのに時間はかかりませんでした。
◆◆◆
じつはここからが本題です。
「悪の枢軸」。
英語の原文は、Axis of Evil です。
良いことなのか悪いことなのかは別として、
「このキャッチコピーを借用してレシピブックを出版しよう」
と考えた人がいました。
「悪の枢軸」と「レシピブック」がどうして繋がるのか、謎ですが、発案者の頭のなかでは両者はリンクしていたわけです。
で、その人(正体不明)、よせばいいのに本当にレシピブックを作ってしまいました。
その名も
「カンタンおいしい悪の枢軸ごはん」。
2004年のことです。
表紙にドーンと「悪の枢軸」って書いてあるレシピブックです。
イラン料理、イラク料理、北朝鮮料理のレシピが紹介されています。
ざっと見たところ、たしかにカンタンではあるようです。
おいしいかどうかは、よく分かりません。
このレシピブック、2004年時点ではまだ市販されておらず、インターネットでダウンロードできるようになっていました。
去年だったか今年だったか、それがついに書籍化されています。
「Axis of Evil Cookbook (意訳:カンタンおいしい悪の枢軸ごはん)」
興味のある方は、アマゾンで買うことができます。
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/0863566316
この「カンタンおいしい悪の枢軸ごはん」ですが、中身のほとんどはイラン、イラクのレシピで占められています。
当時「枢軸」の1つと名指しされていた北朝鮮のレシピは、申しわけ程度に、2つしか載っていません。
手抜きもいいところです。
参考までに、その2つとは、
* 肉団子スープ
* 鶏肉のリゾット
です。
見たところ、どこが北朝鮮的なのかが分かりにくいレシピでした。
「2つしか載ってねえじゃないか。我が国を軽く見やがったな」
というクレームが北朝鮮からあがったかどうかは、定かではありませんが…。
こんなときこそ上を向いて歩く、松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
猫も杓子も、食べた料理の写真をブログにアップするのが
大流行。
そんなことに縁のないはずのオヤヂたちまで、あの店で
パチリ、この店でパチリとやり始めた。
その流行に乗じて、「フードカウンセラー清美」という人物が、ブログを使ったメタボ食事指導を始める。
清美の人気は急上昇していった。
(前回)「いただきますラプソディ 第3巻」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/12/3_30.html
◆◆◆
久しぶりに、佐久間象子の登場である。
メタボ指導で日本征服をもくろむ「佐久間象子研究所」。
そのアジトは、日本食育大学のキャンパスの地下にあるという噂だが、まだ真相は明らかにされていない。
所長の佐久間象子は、
「剛腕の管理栄養士」
という異名をとっている。
「剛腕の管理栄養士」。
これは、管理栄養士の国家試験に合格したあと、さらに所定の「栄養武術(ニュートリ・アーツ)」の試験に合格した者が、与えられる称号である。
いまのところ、人間でその称号を持っているのは佐久間象子だけである。
佐久間象子は管理栄養士というだけではない。
自己紹介のとき、象子は必ずこういうセリフを吐く。
「わたくしは管理栄養士であると同時に、栄養教諭の免許をもっており、フードコーディネーターの資格も持っています」
「はあ。すごいですね」
と、あなたは感心するかもしれない。
だが、象子の自己紹介はまだ終わらないのだ。
「それだけではありません」象子は続ける。「わたくしは食育必死講座1級でもありますし、食育プリーチャーの資格も取っています」
「はあ。なんかよく分かりませんけど、すごいですね」
あなたは辛抱強く感心したフリをするかもしれない。
だが、聞いてもいないのに象子の自己紹介はまだ続くのだ。
「それだけではありません。食育推進士試験はムラサキ合格しています」
「ムラサキ合格」
「ムラサキ合格が最上位です。次がキイロ合格。その次がアオ合格です」
「はあ」
「それだけではありません。炭水化物のソムリエでもあり、日本カルパッチョ協会認定カルパッチョ講師の免状も持っているのです」
「はあ」
「そんなわたくしですが、何か?」
「は?」
「ですから、そんなわたくしですが、何か?」
何か? と言われても返答のしようがないのだが、返答できないと、佐久間象子に背骨をへし折られてしまうという噂がある。
気をつけたいものだ。
◆◆◆
「佐久間象子研究所」の地下アジト。
所長の佐久間象子が、パソコンを見ながら頭から湯気をたてて怒っていた。
「な、なんですかこれは」
部下の戦闘員がおどおどしながら答えた。
「はあ。フードカウンセラー清美という人のブログでございます」
「何者なのですか。管理栄養士の資格は持っているんでしょうね」
「い、いえ、そういう資格は持っていないようなのですが」
「資格も持っていないのに、フードカウンセラーなどと名乗っているのですか?」
「は、はい」
「で、ブログの世界で勝手にメタボ指導をしているのですか?」
「そのようでございます」
「で、美人なのですか」
「まあまあだという噂でございます」
佐久間象子が握っていたパソコンのマウスが、ぐしゃっと音をたてて潰れた。
あわてて新しいマウスを用意する戦闘員。
象子は低い声で言った。
「その女、潰しておしまい。このマウスのようにね」
「ら、ラジャー」
直立不動の姿勢になり、佐久間象子に敬礼をする戦闘員たち。
「それにしても気がつかなかった」佐久間象子はパソコンの画面に向かってつぶやいた。「こういうやり方で、メタボ指導ができるとはねえ」
結局、感心してるんかい。
◆◆◆
「佐久間象子研究所」によるサイバー攻撃が始まった。
ひとつは、メール攻撃。
「フードカウンセラー清美とやら。あなたは何の能力があってフードカウンセラーをやってるのですか? 意味が分かりません」
「ただちに罰当たりなメタボ指導をやめ、両手をあげて出てきなさい」
という主旨のメールを、大量にフードカウンセラー清美に送りつける。
ひとつは、コメント攻撃。
清美のブログ「フードカウンセラー清美のオトナ食」に、大量の誹謗中傷コメントを入れる。
たとえばこんなコメントだ。
「素人がちょっと可愛いからって、食事指導なんかするものではありません。足元をすくわれますよ」
「『フードカウンセラー清美のオトナ食』って、なんですかその題名。そのセンス、ぼちぼちダサくありませんか? 3年くらいたってその題名をごらんあそばせ。恥ずかしくて脳が酸化するのではありませんか」
こうした大量のメールとコメントで、清美のブログが炎上した。
さらに、重点目標を対象にした戦略コメント爆撃。
つまり、清美がコメントを入れたオヤヂたちのブログに対し、「佐久間象子研究所」から攻撃的なコメントが入るわけである。
「高田馬場プチトマトさん。わたくしは佐久間象子です。食事指導なら玄人のわたくしに任せなさい。フードカウンセラー清美は素人です。わたくしは管理栄養士であると同時に、栄養教諭の免許をもっており、フードコーディネーターの資格も持っています。それだけではありません。わたくしは食育必死講座1級でもありますし、食育プリーチャーの資格も取っています。それだけではありません。食育推進士試験はムラサキ合格しています。ムラサキ合格が最上位です。次がキイロ合格。その次がアオ合格です。それだけではありません。炭水化物のソムリエでもあり、日本カルパッチョ協会認定カルパッチョ講師の免状も持っているのです。そんなわたくしですが、何か?」
「エーデルワイス俊三さん。フードカウンセラー清美のブログで褒められたからって、あなたの食生活はじゅうぶんではありません。食事指導なら玄人のわたくしに任せなさい。ビシビシ鍛え直してあげます」
こんなコメントが自分のブログに入ってきたら、怖いだろうな。
フードカウンセラー清美はブログ上で反論をした。
「佐久間象子さん。あなたのやりかたは北風と太陽でいうと北風です。北風でコートを脱ぐ人なんかいないんじゃないでしょうか」
「皆さん。佐久間象子さんから来たコメントは無視してくださいねー。たしかに清美は栄養士じゃないですけどぉ、正しい知識は持ってますよ。それに、メタボ・パパさんたちが清美のコメントを楽しみにしてくれてるのが、なにより素敵でしょ。これからもよろしくね」
メタボ・パパさん、だとぉ?
素敵、だとぉ?
この言葉を目にした佐久間象子の、怒りで真っ赤になった顔が目に浮かぶようである。
象子が頭から出した湯気で、アジト周辺の湿度が10パーセント上昇した。
サイバー攻撃はますます激化した。
清美の危機を救え、とばかりにオヤヂたちが清美のブログに応援コメントを書き込んだりしたのだが…。
それが火に油をそそぐことになり、佐久間象子は生意気なオヤヂどものブログを本腰入れて攻撃しはじめた。
数日後、フードカウンセラー清美はブログを閉じた。
「短いあいだでしたが、お世話になりました。軽くイタリアにでも行って、チーズやオリーブオイルやハチミツの勉強でもしながら、1年ほど遊んでこようと思います」
というビミョーに憎たらしい捨て台詞を残して…。
◆◆◆
勝ったぞ。
フードカウンセラー清美を「業界」から追い出した佐久間象子。
食ブログがオヤヂたちのあいだで流行していることを知った今、
「清美もいなくなって、いよいよ自分の時代が来た」
と思ったことだろう。
無理もなかった。
メタボ男性の食事指導をしたくてしたくて仕方のない佐久間象子だったが、どいつもこいつも象子を見ると逃げ回り、路地裏に隠れてしまう(←猫か)。
こいつら、どうしてくれようと、地団駄を踏んでいたのだ。
しかし状況は変わった。
食ブログを書くオヤヂどもを、標的にすればいいのである。
パソコンを立ち上げてインターネットにつなげば、そこに何万人という獲物がひしめいている…。
勇躍する佐久間象子。
さっそく、
「エレファンター栄養士のハッピー地獄」
という、言語感覚が破壊されたような名前のブログを立ち上げた。
同時に、フードカウンセラー清美がやったのと同じように、世の「食ブログ」にコメントを入れ始めた。
ところがである。
恐れをなしたオヤヂたちが、あわてて次々とブログを閉じた。
「佐久間象子が現れ、清美を追放し、自分が食事指導をはじめたぞ」
この情報は、またたく間にブロガーたちに伝わっていたのだ。
逃げ遅れた一部のブロガーが、佐久間象子につかまって強烈な食事指導を受けることになったのだが、大多数は無事に逃げのびた。
こうして、オヤヂたちが「食ブログ(料理ブログ)」に夢中になる、という流行は、突然、終焉した。
犠牲者をもとめてネットをさまよう佐久間象子。
しばらくは
「死んだ(=更新されなくなった)ブログにしつこくコメントを書く」
というハイエナのようなことをしていたが、それも虚しくなり、ほどなく諦めたようである。
オヤヂもいなくなり、佐久間象子も去り、ブログ社会に平和が訪れた。
夏草や 兵(つわもの)どもが 夢の跡 ー芭蕉ー
(このシリーズ、完)
食育というテーマでセレクトしています。
「食育的な心を満たすオンラインストア」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22
この世は諸行無常、万物流転。
そうした変化を心から楽しむビジネスマン、松宮園生です。
「サプリメントって、どうなの?」
という質問をよく受けます。
食、食育、健康といったテーマで活動している人だったら、
たいがい誰かからこの質問を受けたことがあると思います。
「サプリメントって、どうなの?」
でも、そんな漠然と聞かれてもねえ。
質問の意味が曖昧すぎます。
「サプリメントは美味しいのか」
という意味であれば、
「僕は美味しさを期待してサプリメントを飲むことはありません。一般的にも、美味しさを期待してサプリメントを飲む人は少ないんじゃないかな」
というのが僕の答えです。
「サプリメントって、儲かりまっか」
という意味であれば、
「わては商売下手やさかい儲からへんけど、あんさんやったらぼちぼちイケるんちゃいまっか」
というのが僕の答えです。
まあ、でも、そういうことを聞きたいわけじゃないんだよね。
「サプリメントって、どうなの?」
この質問の意味は、十中八九、
「サプリメントは体にいいのか」
という意味です。
しかしこの質問もまだ漠然としています。
たとえば、あなたにとって
「ものすごく栄養たっぷりの果物を有機栽培で育てたが、じつは種は遺伝子組換えだ(※)」
その果物は体にいいですか?
「大事に育てて今朝収穫したばかりの有機野菜を持って帰る途中、間違って農薬をかけてしまった。さらに、駅のトイレに落としてしまった。なのであわてて水洗いした」
その野菜は体にいいですか?
「管理栄養士もマクロビの先生もOKを出したバランスのよい食事を、1日1食だけ、あきらかに食べ過ぎる量を、寝る直前に食べる毎日」
その食事は体にいいですか?
サプリメントが体にいいかどうかという質問は、これと同じくらい漠然としています。
(※)栽培方法が有機でも、種が遺伝子組換えだったら、有機JAS認証は取れません。
◆◆◆
世の中には
「サプリメント肯定派」
「サプリメント否定派」
両方がいますね。
中間層もいますが、ここでは無視しましょう。
ご存じのとおり、アメリカはサプリ王国です。
肯定派と否定派、その比率は
* 日本の場合、肯定派:否定派=5:5
* アメリカの場合、肯定派:否定派=7:3
くらいかなあ、というのが僕の感触です。
<サプリ肯定派>
キリスト教にもいろんな宗派があるように。
仏教にもいろんな宗派があるように。
サプリ肯定派にもいろんな宗派があります。
まず、サプリ肯定派を観察すると、
* サプリ原理主義:サプリさえあれば食事なんていらない、と考える人
* サプリ穏健主義:ほんとは普通の食事でいいはずなのだが、事情によりしかたなくサプリを飲む人
という2パターンがある。
サプリ原理主義は少数派です。
宗教でも、原理主義は少数派です。
サプリ原理主義の人に会ったことはありますが、どうして食事なんていらないと思っているのかの理由は何度聞いてもよく分かりませんでした。
サプリ肯定派のうち多くの人は穏健主義だと思います。
穏健主義の人がどうして「しかたなく」サプリを飲むかというと、
* 自分の食生活に不安があり、その不安を和らげたい。
* いまの農地は土地が痩せているので、とれる作物も栄養が十分でない。したがって食事にいくら気を使っても、栄養不足になる。
* フリーラジカルがビシバシ(←死語)発生するストレス社会を生きるためには、今まで以上に抗酸化力のある栄養が必要。
そんな理由を唱えています。
要は、食事だけでは足らない、ということですね。
さらに観察すると、「サプリ穏健主義者」も、「積極型」と「消極型」の2つに分岐していることが分かります。
* 積極型:どうせ食事だけだと栄養足らねーんだろ? てことはサプリ飲むしかねーよな。だったらサプリ積極的に利用しようぜ。
* 消極型:サプリ飲みたくねーけどさ、仕方ねーじゃん。飲まないとヤバいんしょ? 最低限のものだけ飲んでおきましょ。あとは食事で。
で、その「積極型」にも2タイプありまして。
* 木枯らし紋次郎型:「あっしには関わりのねえことでござんす」。自分はサプリ飲むけど、他人には干渉しない。他人がどうであろうと気にしないタイプ。
* フランシスコ・ザビエル型:サプリを飲まない人を見ると、我慢できない。説得して飲ませたくなるタイプ。布教とか伝導とかに向いている。
こんなふうに分かれます。
<サプリ否定派>
一方、サプリメント否定派の主張を分類してみると…。
* 国粋派:日本人はそもそも、食事に気をつけていれば、それだけで栄養は足りるはず。農地が痩せているだぁ? なに言ってんの、はあ?
* 神秘派:自然の食材には科学で解明されていない滋養分がたくさんある。それを考慮しないで作られたサプリメントは役に立たない。
* 天然派:サプリメントには「不自然なもの」が多量に含まれている。それらが気に食わない。
自ら「国粋派」を名乗っている人には会ったことありませんが、「隠れ国粋派」は結構多いようです。
「神秘派」は、「食育好き日本人」とほぼ同義語です。
「天然派」のいう「不自然なもの」というのは、
* 飲みやすい錠剤にする(固めてタブレットにする)ために使用されている物質
* 匂いなどが漏れないように錠剤の表面をコーティングしたりする物質
* カプセルの場合は、カプセルそのもの
などが「不自然なもの」に該当します。
◆◆◆
「で、結局、サプリメントって、どうなのよ?」
いや、だから、どうなのよって言われても…。
しょうがねえ、この話をするか。
いまからほぼ1年前、2007年秋のこと。
サプリメントに関し、アメリカで、ある衝撃的な研究が話題になりました。
「サプリメントは○なのか×なのか、究極理論」
がひそかに発表されたのです。
この究極理論については、また後日。
<おススメの1冊>
フィット・フォー・ライフ
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/490142310X
毎日200通のメールと闘う松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
猫も杓子も、食べた料理の写真をブログにアップするのが大流行。
そんなことに縁のないはずのオヤヂたちまで、あの店でパチリ、この店で
パチリとやり始めた。
家電量販店の店頭には、料理ブログ(食ブログ)専用デジカメの特別コーナーまでできる始末…。
日本はどうなっていくのか?
前回「いただきますラプソディ 第2巻」はこちら。
http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/11/2_35.html
◆◆◆
ある透明な夜のこと。
地球の片隅で、ひとつのブログが音もなく立ち上がった。
「フードカウンセラー清美のオトナ食」
色とりどりのパプリカが散りばめられた、みずみずしいデザインのブログである。
可愛らしいブログだな。
そう思った男性のアナタ。
まだ懲りていないようだね。
きれいな薔薇にはトゲがあると、何度言ったら分かるのかね。
フードカウンセラー清美なるブロガーは、最初の数日こそ当たり障りのない日常のつれづれを書いていたが、ある日、こんな宣言をした。
「わたしの仕事はフードカウンセラー。皆さんのだれきった食習慣を、ヘルシーに変身させてみせる!」
その日から彼女は、多発するオヤヂ食ブログにコメントを入れ始めたのである。
たとえばこうだ。
どっかの場末サラリーマンが書いている
「高田馬場プチトマト」
というブログ。
こんな文章が載っている。
「昨日の夜はオフィスのみんなで『ほっけ』っていう中華料理の店に行ってきましたよー。エビチリがすっごくおいしかったです。明日は会社でぶらぶら予定。帰りにペットショップに寄ってまんまるフェレットに触ろうっと」
そこに、「フードカウンセラー清美」がコメントを入れている。
こんなコメントである。
「高田馬場プチトマトさんへ。昨日もエビチリ食べたのに、今日もエビチリ? だめじゃーん。痛風になっちゃうよ。野菜とってる?」
なぜ昨日もエビチリを食べたのが分かったかというと、前日のブログにそう書いてあったからだ。
フードカウンセラー清美は、そこらじゅうのオヤヂ食ブログをターゲットに、このような「食生活アドバイス型コメント」を入れ始めた。
◆◆◆
怖いもの見たさであちこちのオヤヂ食ブログを盗み読みしていた僕であったが、気がついたらそれが日課になっていた。
なかなか恥ずかしい日課である。
趣味になりつつあった。
そんな趣味があるなんて、人にはとても言えないが。
オヤヂ食ブログはそれこそ何万と存在している。
ただし、グーグルとかヤフーとかで「オヤヂ食ブログ」と入れても、オヤヂ食ブログが検索できるわけではない。
自分で自分のブログに「オヤヂ食ブログ」と名づけているオヤヂはいないからだ。
その代わり、「オヤヂ食ブログ検索サイト」をうたったマニアックなサイトがいくつか立ち上がっている。
そこで検索すると、オヤヂ食ブログのリストがちゃんと出てくる。
誰がサイトを作ったのか知らないが、世の中、どんな分野にもそれなりの専門家がいるものだ。
そういうサイトにはちょっと個性的な名前がついている。
僕がよく使うオヤヂ系検索サイトは、
「カレーシュー」
というサイトで、この分野では大手のようである。
「カレー味のシュークリーム、という意味ではありません」というサブキャッチというか、オヤヂギャグがついている。
芸が細かい。
話を戻そう。
というわけで、オヤヂ食ブログを毎日せっせとブラウズしていた僕であったが、そのおかげで「フードカウンセラー清美」を早々と発見することができた。
「へんなコメント魔がいるぞ」
最初はその程度に思っていた。
ところが、
1) どのオヤヂ食ブログにも、彼女がコメントを入れている
2) そのコメントが、よい具合に食事指導になっている
この2点に気がついて、僕は彼女に興味をもつようになった。
◆◆◆
よく観察すると、
「オヤヂたちはフードカウンセラー清美のコメントを楽しみにし始めている」
ことも分かってきた。
まあ、その気持ち、理解できないでもない。
たとえば前述した「高田馬場プチトマト」のブログだが。
「高田馬場プチトマトさんへ。昨日もエビチリ食べたのに、今日もエビチリ? だめじゃーん。痛風になっちゃうよ。野菜とってる?」
というフードカウンセラー清美からのコメントに対し、
「う…、痛いところを突かれちゃった。今日からちゃんと野菜食べまーす。いまの季節は、何を食べたらいいかなあ」
なんて返事が書かれている。
オヤヂの「叱られたい願望」が満たされている感じだ。
なんだか面白いことになってきたぞ。
そう感じた僕は、ひきつづき「オヤヂ食ブログ観察」を続けた。
するとどうだろう。
オヤヂ食ブロガーたちの食事内容が、だんだんヘルシー化してきたのである。
このあいだまで、昭和歌謡曲の流れる店でカニクリームコロッケ定食を食べていたのが、ときどきマクロビの店で食べるようになったり。
「有機」「雑穀」「全粒粉」といった単語を使用してブログを書くようになったり。
フードカウンセラー清美は、かなりの「オヤヂころがし」達人のようであった。
食事内容が改善しない人のブログには、わざとコメントを入れなかったりするのだ。
コメントがほしいばかりに、オヤヂたちは食事内容を変えた。
とたんに、清美からコメントが入る。
「キャー、素敵なお食事ね。思わずコメしちゃったわ」
さらに。
フードカウンセラー清美のブログをのぞいてみると。
「今日のヘルシー食事トップ10、第1位はエーデルワイス俊三さん、第2位は…」
なんと、オヤヂ食ブロガーを「ヘルシー度」という切り口で勝手にランキングして発表している…。
芸が細かい。
◆◆◆
そんなことが続いているうちに、フードカウンセラー清美の存在が世間に知られるようになってきた。
政府や学者があの手この手を使っても変わらなかったオヤヂたちの食生活が、どんどん改善してきたのだから、まあ無理もない話である。
「フードカウンセラー清美は、新時代の食育女王だ」
と彼女を絶賛する人が増えてきた。
そうなると、彼女自身のブログ
「フードカウンセラー清美のオトナ食」
へのアクセスも急増する。
いくつかのブログランキングのサイトで、ぶっちぎり1位を獲得。
一躍人気者になったフードカウンセラー清美。
勢いにのって食育セミナーなんかも開催したようである。
うらやましいことに、高い料金にも関わらず、彼女の話を聞きたいオヤヂは多かった。
そのうち、テレビや雑誌にも出るようになった。
そういう多忙の身でありながら、彼女はペースを落とすことなく、オヤヂたちの食ブログにコメントを入れ続けた。
ブログ「フードカウンセラー清美のオトナ食」も毎日、更新された。
そして訪れる運命のとき…。
クリスマスも近づくある日曜日、「フードカウンセラー清美のオトナ食」が炎上した。
(次号=第4巻 エンディングに続く)
食育というテーマでセレクトしています。
「食育的な心を満たすオンラインストア」
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