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のんびりちゃくじつ21世紀日本人、松宮園生です。
(前回のあらすじ)
閻魔大王の一言で、メタボ地獄の囚人全員が
「食育試験」を受験することになりました。
成績優秀者は3泊4日の天国旅行。
逆に点数の悪い者は地獄での刑期延長。
囚人たちのあいだに、不安が広がるのでした。
前回→ 「21世紀神様の悩み その11」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/10/2111.html
◆◆◆
メタボ地獄には1人だけ、メタボじゃない人間がいます。
もとアイドル栄養士、阿部マリエです。
「栄養士じゃなくて管理栄養士よ。何度言ったらわかるの」
す、すみません…。
ではもう1度。
メタボ地獄には1人だけ、メタボじゃない人間がいます。
もとアイドル栄養管理士、阿部マリエです。
「栄養管理士じゃなくて、管理栄養士だってば。『管理』が先、『栄養』が後。いい加減、覚えてよね」
す、すみません…。
ではもう1度。
メタボ地獄には1人だけ、メタボじゃない人間がいます。
もうアイドル栄、じゃなくて、管理栄養士、阿部マリエです。
手違いで暗殺され、手違いでメタボ地獄に落ちてしまいました。
手違いではありましたが、閻魔大王や鬼たちに可愛がられ、メタボ地獄のアイドルとして恵まれた生活を送っています。
◆◆◆
最近、メタボ地獄にもスターバックスが開店しました。
ちょっとイマ風な鬼たちで店内はいつも混んでいます。
阿部マリエがスタバに着いたとき、閻魔大王はすでに中で待っていました。
顔が他の鬼の3倍の大きさですので、すぐ分かります。
大王の隣で、青鬼のジェシカが、キャラメルマキアートをちびちび飲んでいます。
「遅れてごめんなさい」阿部マリエはウソ泣きの表情をしました。「久しぶりに大王様にお会いできると思ったら、嬉しくって、洋服選びに時間がかかっちゃったの。ほんとにごめんなさいね」
「ぜんぜん大丈夫だよ」あわてて首を振る閻魔大王。
勢いよく首を振ったため、ぶうん!という音がし、つむじ風で阿部マリエの髪が吹きあがりました。
「僕らもいま着いたばかりなんだ。な、そうだろ、ジェシカ?」
ジェシカはキャラメルマキアートを飲むのを止め、閻魔大王をジロリと睨みました。
「あんたさ、キャラ違ってるよ。人間の女の前だからってサワヤカぶっちゃってさ。その顔で、バカじゃん」
「お前が言うなよ」閻魔大王も言い返します。「お前だって囚人の前だとキャラ変わるじゃん。髪かきあげて腰フリフリしちゃってさ。…マリエさん、ごめんね、こんな妹で」
「この人に謝ってどうすんの」
兄妹だったんですね。
兄妹が言い合いを続けている間に、阿部マリエは食育っぽく「豆乳ラテ」を買って席に戻ってきました。
「それで大王様、わたくしにご要望とおっしゃるのは何でしょうか?」
「じつは今朝ほど、囚人たちに発表したんだけど」閻魔大王は言いました。「獄内試験を行うことにしたんだ」
「試験ですか?」
「うん。食育の試験なんだけど」
「まあ」
阿部マリエの目が輝きました。
「それで」閻魔大王は続けます。「マリエさんに試験問題を作ってほしいんだ」
「そうでしたか」
「作ってくれる?」阿部マリエの両手を握る閻魔大王。
「わたくしでよければ喜んで」両手の激痛をこらえてうなずく阿部マリエ。
涙目になっています。
「わあ、よかった」閻魔大王は耳まで裂けた口で微笑みました。「ちょっとトイレ行ってくるね」
◆◆◆
閻魔大王が席を外したとたん、残された女どうしのテーブルに沈黙が訪れました。
飲みほしたキャラメルマキアートのカップを、意味なくぶらぶらさせるジェシカ。
無言で豆乳ラテを飲む阿部マリエ。
しばらくして、阿部マリエが言いました。
「なんなのよあんた。何が気に入らないわけ?」
答えないジェシカ。
「まあいいわ。ちょっとさ、豆乳ラテ飲んじゃったから、おかわり買ってきて頂戴」
ジェシカが顔を上げました。「なんであたしに言うのよ。自分で買ってきな」
「誰に向ってものを言ってるの。わたしは阿部マリエよ」
「だから何?」
「あのね。わたしを取り合って神様と閻魔様がケンカをしたこと、知らないの?」 (※)
「知ってるけど、だから何?」
「憎たらしい子ね。こんな妹をもって閻魔様がかわいそう」
(※) 「21世紀神様の悩み その4」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2007/09/214.html
閻魔大王がハンカチで手を拭きながら戻ってきました。
「2人とも、仲良くしてたかい?」
「それはもう。素敵な妹さんですね」とっておきの作り笑いをする阿部マリエ。「わたくしにも妹がいたらいいのに」
「僕と結婚してくれたら、妹ができるよ」
「まあ」
ジェシカは横を向いて禁煙パイポ(←死語?)を吹かしています。
◆◆◆
そんなわけで、「獄内食育試験」の問題を、阿部マリエが作ることになったのでした。
(つづく)