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2008.08.04 04:43

保健指導ナウ! その4

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このところ酒量が多い松宮園生です。

いよいよ始まったメタボ検診(=特定検診)。
「メタボ」
「メタボ予備軍」
と判定されたら、あなたを待ち受けるのはメタボ指導
(=特定保健指導)です。

メタボ指導はどのように行うのかというと。

あなたとメタボ専門家とで、1回あたり20分くらいの面談を繰り返します。
面談を通じて、あなたはプチ洗脳されます。
プチ洗脳されて生活習慣が改善、腹回りも縮んでゆくのです。

テーブルのむこうには、あなたの腹回りを縮めたい専門家。
対するは、今までどおりグータラしたいしラーメンも食べたいサラリーマンのあなた。

「専門家と向かいあっての20分洗脳バトル」
が展開されるわけです。

「保健指導ナウ」シリーズのバックナンバーはこちら。
「保健指導ナウ その1」http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/03/1_26.html
「保健指導ナウ その2」http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/03/2_27.html
「保健指導ナウ その3」http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/04/3_24.html

◆◆◆

さて、アイドル管理栄養士、ナオコもメタボ指導の専門家の1人です。
人気者となった今も、取材だのテレビ出演だの忙しいあいだを縫って、銀座の「アルカトラス・クリニック」でマンツーマンの保健指導に取り組んでいます。

   管理栄養士ナオコについては→ 「21世紀神様の悩み その9」
  http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/05/219.html

ナオコの指導を受けている1人に、市川光雄という人がいます。
市川氏は、40代終盤で1人暮らしの独身サラリーマンです。
今どき珍しい「おっちょこちょい」でもありました。
ナオコの指導を受けるときはたいへん素直です。
真面目な顔で聞いています。
ところがそれを実行する段になると、ピントがずれてしまうのです。

「なるべく季節の食材を食べるようにしてね、市川さん」
あるときナオコにこう言われた市川氏。
帰りがけに書店に立ち寄り
「食材事典」
なるものを購入しました。
その食材事典をひもとき、各季節の食材を調べます。

そのあとどうしたかというと、近所のスーパーマーケットでこういう買物をします。
* 春の食材:たとえばアスパラガス
* 夏の食材:たとえばキュウリ
* 秋の食材:たとえばサトイモ
* 冬の食材:たとえばダイコン
それをひと通り揃えて買って帰ったわけです。

「各季節のものを揃えて、という意味じゃないのよ」後日、ナオコは辛抱強く優しく言いました。「たとえば今は夏だから、旬が夏のものを食べてね、ということなの」
「そ、そういう意味だったんですか」頭をかく市川氏。「すべての季節のものを同時に揃えるんだと思ってました」
「そうじゃありません。今はハウス栽培もあるし南半球から輸入したりもしてるから、季節と関係なくいろんな食材が買える時代だけど、でもなるべく本来の季節のものを食べてほしいんです」

またこんなこともありました。

「暑いからといって、冷たいビールをたくさん飲んだりしてませんか、市川さん?」
「いやあ、その通りです。家ではあまり飲まないようにしてるんですけど、仕事の帰りにちょっと1杯、というのは多いですねえ」
「飲んだあとにラーメン食べてませんか」
「えへへ、食べてます。なぜか食べたくなって」
「お酒のあとのラーメンは絶対ダメ。これはわたしと約束してください。お酒のあとはラーメンを食べない」
「分かりました、約束します。あの…」急に赤面する市川さん。「指きりげんまん、してくれませんか?」
「いいですよ」ナオコはにっこりして言いました。

指きりげんまんをした市川氏でしたが、実際にお酒を飲むと、それを失念しそうになります。
なにげなくラーメン屋に入ろうとして、はっと思いだしました。
「ナオコ先生と指きりげんまんをしたじゃないか…」
市川氏は踵(きびす)を返すと、ラーメン屋を離れ、その足でコンビニ弁当を買って帰ります。

後日、よせばいいのにそれを白状し、ナオコにこっぴどく叱られる市川さんでありました。

◆◆◆

ナオコはときどき、保健指導を受けにくる「クライアント」に電話をすることがありました。
甘い声で電話1本かけるだけで、相手が大喜びし、生活習慣改善へのモチベーションが高まることを知っていたからです。
かといって、定期的に電話をするようなことはありませんでした。
ランダムに思いつきで「抜き打ち電話」をするのです。
それが返って効果があるようでした。

ふと市川さんのことが頭に浮かんだナオコ。
「ちゃんと季節の食材を食べているかなあ。お酒のあとのジャンク食いは控えているかなあ。電話してみよっと」
市川さんは独身で1人暮らしですから、電話をかけるのに遠慮はいりません。
というわけで、市川さんが帰宅しているだろう時間帯を見計らって、電話をかけてみました。

しかし、市川さんは電話に出ませんでした。
「ま、いいか」
ナオコは電話を切りました。
市川さんのことが気になるといっても、職業上気になるだけで、べつだん恋愛感情とかがあるわけでもないし。
ナオコはそれきり、市川さんに電話をすることを忘れてしまいました。

2日後。

市川さんの保健指導の日です。
その市川さん、顔じゅうに包帯を巻いて現れました。
両耳に大きな絆創膏を貼り、なんとも痛々しい姿です。

「どうしたのですか、市川さん。お可哀そうに」
「自分のおっちょこちょいさに本当にあきれました、ナオコ先生」市川さんはか細い声で答えました。「おとといの晩のことなんですが、スーツにアイロンをかけているところに、電話が鳴りました」
「おととい…? 電話…?」
「はい。男やもめのアパートに、そんな時間に電話がくるなんて滅多にないもんですから慌てちゃいまして。受話器を取るかわりにアイロンを取ってしまったんです」
「まあ…」ナオコも少し焦りました。「でも、どうして片方じゃなくて両方の耳に絆創膏があるんですか?」
「それが」市川さんの声がますます弱々しくなりました。「病院に電話しなきゃと思いまして…」

 

 

 

 

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