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2008.07.11 08:51

管理栄養ロボ

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松宮園生です。

今回の話は、
「食育ロボコップ」
シリーズの続編にあたります。

お時間のある方は

「食育ロボコップ 前編」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/05/post_138.html

「食育ロボコップ 中編」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/05/post_139.html

「食育ロボコップ 後編」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/05/post_140.html

から読んでみてください。

◆◆◆

ある日のランチタイム。
仕事の手を休め、ひとりでファミレスで食事をしていると…。
メタボ警察の回し者、食育ロボットのアンドリューがやってきて、僕の向かい側に座りました。

「なんだよ今度は。もうメタボじゃねーかんな。見ろよ」
僕は自分の臍のあたりを指さします。
「あなたの腹囲が縮んだのは認めます。メタボ刑務所に服役してたわけですから。服役中のヘルシーな生活で、腹囲が縮んだのです」
アンドリューが涼しい顔でいいました。

涼しい顔?
自分で書いといて何だけど、どんな顔だっけ。
ていうか、アンドリューはロボットなんだから表情いつも一緒だし。

「メタボ狩りじゃないなら、何の用?」
「あなたが食べているそれです」
「これ?」
「そうです。問題があります」
「娑婆(しゃば)に出たら何を食べようと勝手だろ」
「ふつうの人はそうです。しかしあなたには前科がありますから、出所後3年間、わたしの監視下に置かれます」
「何だよそれ。聞いてねえぞ」
「当然です。言ってません。紙に書いて渡しただけですから」
「なんだそりゃ。一休さんのトンチかっつーの」

「さっそくですが」アンドリューはまたもや涼しい顔でいいました。「何を食べているのですか」
「カレーライスだよ。見りゃ分かるだろ」
「カロリーはチェックしましたか」
「したよ。メニューに書いてあった」
「何カロリーですか」
「それはだな…。メニューを見たら分かる」
テーブル上のメニューを開こうとした僕の手を、アンドリューが押しとどめます。
「カンニングはいけません。言いなさい」僕の手を掴んだまま離さないアンドリュー。「何カロリーですか」

「カンニングって、あんた…。700ちょっととかだったかなあ。正確な数字なんて覚えてねえよ。いいじゃんか。高カロリーのものを選んだつもりはないしさ。仮にカロリー高くてもだよ、ランチだぜ。寝る前にドカ食いするわけじゃないんだから」
「そんなことは問題ではありません、この前科者。あなたがカロリーの数値をちゃんと頭に入れていないことが問題なのです。では次の質問」
「次の質問?」
「塩分の量を確認しましたか?」
「そんなこと、するわけないだろ」
「ここのメニューには塩分量が書いてあります」アンドリューは僕の手を離し、自分でメニューを開きました。「ほら、見なさい、前科者」

塩分量が書いてありました。
カレーライスは、2.5g となっています。

「もうひとつ質問です」
「まだあるの?」
「当然です。あなたは前科者なのですから。…トランス脂肪酸の量を確認しましたか?」
「トランス脂肪酸?」
「さてはこれもチェックしてませんね」
「するわけないだろ。そんなもの、メニューに書いてないじゃん」
「書かれていなかったら、お店に聞きなさい。答えられない店だったら、入ってはいけません。それにしてもダメですねあなたは。カロリーもうろ覚え、塩分量も見ていない。トランス脂肪酸のことも頭から抜けている。とても刑期が終わった人とは思えません。罰として、このカレーライスは値上げします」
「は?」

おもむろに店長を呼ぶアンドリュー。
やってきた店長に向かってアンドリューは言いました。
「わたしはメタボ警察のアンドリューです。このカレーライスはいくらですか」
「しょしょ、消費税込で、は、880円になります」
「では、『メタボ撲滅推進法』にもとづき、この人だけ今回、価格10倍の8,800円にしてください」
「ちょっと待て。え? 8,800円?」僕は思わす立ちあがりました。「そんなムチャクチャな」

さすがにこれには店長も、
「そ、そんなことしたら、こ、このお客様は、も、もうウチに来、来てくれなくなりなります」
「そうだそうだ」僕も便乗しました。「そんな店、もう来ないぞ」
アンドリューは首を横に振りました。「そうはいっても、『メタボ撲滅推進法』という法律で定められているのです。…店長さん、ちょっと2人でヒソヒソ話をしましょう。前科者のマツミヤさんはここにいなさい」
「前科者、前科者って、言うな」

アンドリューと店長が、僕の聞こえないところで立ち話をしています。
しばらくして、2人が握手をするのが見えます。
アンドリューはそのまま、立ち去っていきました。

店長が僕のテーブルに戻ってきました。
「お、お客様、お、恐れ入ります。や、やはり、こ、これは、ほ、法律だそうで、ここ、今回は、は、8,800円を、せ、請求させていただきます。ま、誠に恐れ入ります。ここ。これが8,800円の、で、伝票です」
「おいおい、待ってよ。本気か? だったらもうこんな店、2度と来ないぞ。つーか、その話し方、なんとかしてくれよ」

店長はニコニコして答えました。
「だ、大丈夫です。や、やむを得ません。いい、いまアンドリューさんから、こ、こういう説明を受けたんです。

 アンドリュー: あの客、死ぬまでにこの店にあと何回来ると思いますか、店長さん?
 店長: ど、どうでしょうか、じゅ、10回くらいでしょうか。
 アンドリュー: じゃあその10回分のお金を今もらってしまえば、もう来なくても大丈夫ですよね。
 店長: なな、なるほど、そ、それはそうです。
 アンドリュー: だから8,800円なんです。しかも追加のコストがかからない。トクでしょ。

でで、ですって。
な、納得しちゃいま、ました。さ、さすがはロ、ロボット、たた、巧みな計算をするものですねえ。あ、あはははは」

あ、あはははは、じゃねえよ…。

「そそ、それから、あ、アンドリューさんから、で、伝言があります」店長は続けました。「『次がありますのでもう出ますが、夕食時に、また会いましょう』、とのこ、ことです」

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