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2008.05.02 10:40

食育至上主義人民共和国 その7

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松宮園生です。

「食育による国づくりをめざす」
という方針の国、ザイオン共和国。
そのザイオン共和国にも諜報機関があります。

諜報機関。
アメリカでいえばCIA。
イギリスでいえばMI6(007すなわちジェームズ・ボンドがいるところ)。
イスラエルでいえばモサド。
ザイオン共和国では、オラクルという名前がついています。

諜報機関といえばスパイ。
エージェント、とも言ったりします。

スパイといえば合言葉。
合言葉といえば
「山」
「川」
が有名、というか定番、というかお約束です。
しかしさすがに、そんな単純な合言葉をまともに使うスパイは実際にはいませんね。

「え、そうなの?」
と思った現役スパイのあなた。
マジですか?

実際には、合言葉としては
「今年の夏のピュージェット・サウンドは暑かった」
「去年のインディアン・リバーほど暑くはない」
といった、練られた感じのものが使われたりするわけで(たぶん)。

じゃ、ザイオン共和国のスパイは、どうかというと。
こういう合言葉を使っていました。
「穢(けが)れたネズミを食え」
「神は夏を見た」

「なんだそりゃ?」
と思ったアナタ。
ごもっともです。
そんなふうに思うのも無理はありません。

なぜこんな言葉になったのでしょうか。
現場のスパイは誰も知りませんでした。
ていうか、
「コンピューターでランダムに決めたんだろう」
くらいにカルク思っていました。

というわけで、ザイオン共和国のスパイは世界のあちこちで
「穢れたネズミを食え」
「神は夏を見た」
を合言葉に暗躍していたのです。

そんなある日。
日本の公安当局と作戦会議をするために日本に立ち寄ったザイオン共和国のスパイが、死亡するという事件がありました。
スパイの名を、アンダーソン君としましょう。

アンダーソン君は、暗殺されたのでしょうか?

ザイオン共和国と日本とは友好国どうしです。
日本のスパイがザイオン共和国のスパイを暗殺するとは考えにくい。
では誰が?
食育の推進を恐れたメタボ大国アメリカが、刺客を送り込んだとか?
地産地消が広がって日本の食料自給率が上がるのを恐れた農業大国アメリカが、刺客を送り込んだとか?
いろんな憶測が飛びました。

ザイオン共和国は2人目のスパイを日本に派遣し、最初のスパイ、アンダーソン君の死因を探ろうとしました。

◆◆◆

2人目のスパイ、名をスミスとしましょう。
彼はスパイと呼ばれるのが嫌いで、自分のことをエージェントと呼んでいます。
エージェント・スミスです。
日本での調査を終えたスミスが、ザイオンに帰国し、オラクル本部に出頭しました。

オラクルの長官は、彼を見るなり目を丸くしました。
「まあどうしたの、あんた。ずいぶん痩せたわねえ」

「長官」スミスはサングラスを外して言いました。「あんた、いったいどういうつもりなんすか」
「何が?」
「どぼけんでください。あんた何人のエージェントを日本に送ってるんですか? しかもヘンな連中ばかり」
「何人って、あんたしか送ってないわよ。あんたが帰ってきたから、いまはゼロよ」
「いいえ。何百人と送ってるはずだ。そこらじゅうにオラクルのエージェントがいましたぜ」
「バカね。そんなわけないでしょう。なんで友好国の日本にそんなたくさんエージェントを送る必要があるのよ。ていうか、だいたい、ウチのエージェントってそんなにたくさんいないでしょ。ザイオン共和国の人口が40万人しかいないことを考えたら、わかるじゃない」
「それはそうなんですが…」焦るスミス。「でも日本はエージェントだらけだった」

「なんで、エージェントだと思うの?」
「オラクルの合言葉を使ってたからです」
「え?」
「そこらじゅうで、こう言われたんすよ。『穢れたネズミを食え』」
「…」
「しかたがないので」スミスは続けました。「こっちも反射的に合言葉を返すわけですが、そしたらみんな、急にヘンな顔をして、よそよそしくなって、おれの食事をとりあげてしまうんだ」
「食事をとりあげる?」
「そうです。何度も食事をとりあげられました。手をつけていないにも関わらずです。どうなってんだ、あいつら」

長官は天を仰ぎ、それから溜息をつきました。
「あんた、そこらじゅうで『穢れたネズミを食え』って言われたって言ったわね」
「ええ、そうです」
「それさあ、『穢れたネズミを食え』(Eat a dirty mouse)じゃなくて、『いただきます』って言われたんじゃないの?」
「へ?」
「で、あんたは反射的に合言葉を返した」
「ええ、そうです」
「それねえ、あんたは『神は夏を見た』(God saw summer)って返したんだろうけど、日本人には『ごちそうさま』って聞こえたんじゃないの?」
「あっ」
「みんなが『いただきます』って言ったとたんに、あんたが『ごちそうさま』なんて返したら、そりゃ、相手は気分悪いわよ。食事を取り上げられるのも無理ないわね」

「ちくしょー、そうだったのか」うなだれるスミス。「でもヒドイっすよ長官! なんでそんな紛らわしい合言葉にしたんですか」
「してないってば。もともと合言葉は『いただきます』『ごちそうさま』だったのよ。我が国は日本の食育をモデルにしてるんだから、無理もないでしょ。それを、頭の悪いあんたたちが、覚えられないものだから、勝手に英語でいいやすい言葉に変えちゃったんじゃないの」

(ダジャレで英単語を覚える日本の受験生と、同じかい)

「そうだったんすね。それで納得がいきました」スミスはつぶやきました。「アンダーソン君が、飽食の日本でなぜ餓死したのか…」

 

 ---------------お知らせ---------------
オフ会をしますので、よかったら来てください。
http://www.shokuiku-pro.com/modules/tinyd0/index.php?id=14

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