松宮園生です。
(このシリーズのポイント)
世の中、いろんなものに「食育」という接頭語をつける風潮が
あるみたいで。
* フツーのグルメツアーに「食育ツアー」って名前つけてみるとか。
* フツーのこだわり喫茶店に「食育カフェ」って看板つけてみるとか。
* フツーの子ども向け料理教室を「食育クッキング」って呼んでみるとか。
でもやってることは何にも変わってなかったりして。
このシリーズは、そんな「昭和な営業努力」を微笑ましく語るシリーズです。
前回(その1)の話を読みたい方はこちら。
http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/02/post_118.html
◆◆◆
ある大学が、学生食堂を「食育化」しました。
食育化。
英語にすると、ショクイクナイズ。
カタカナやんけ。
その大学から手紙が来ました。
ショクイクナイズした学生食堂を取材してほしい、というものでした。
手紙には、
「当大学の学生食堂は、食育カフェテリアに変身しました。食育とは生きる上での基本であって、知育、体育、徳育の基礎となるべきものです。様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践できる人間を育てることを目指すカフェテリアです」
と誇らしげに書かれていました。
なにやら、食育基本法のパクリ疑惑が濃厚だけど。
さらに、こう書いてありました。
「当大学の食育カフェテリアは、毎日の食事を通して、以下の点を身につけることを目的としています。
(1) 健康の維持・増進のために「何を」「どれだけ」「どのように組み合わせて」食べたらよいか
(2) どんなものを食べたら安全か危険かという「選食」の力
(3) 食に関する感謝の念
(4) 食糧や農業に関する問題、環境問題の認識
さらに、剛腕の管理栄養士、佐久間象子先生がメニュー監修しています」
むむ、こんなところにも佐久間象子が…。
しかも「剛腕の」というキャッチコピーつきで…。
佐久間象子、だんだんユビキタス化しています。
◆◆◆
取材はやぶさかではなかったのですが、地理的に遠いところなので、まず電話してみました。
松宮:お手紙拝見しました。学生食堂が食育カフェテリアに変身したそうですね。
大学:そうざます。だから多くの学生さんがわが校を選ぶざます。
松宮:なるほど。で、どういう点が、食育なんですか?
大学:メニューを健康的なものにしたざます。佐久間象子先生の監修なんざますよ。
松宮:なるほど。健康的なものにしたわけですね。ということは、今までは健康的ではなかったんですか?
大学:…な、なにを言うざます。今までだって健康的だったざますわ。メニューの変更なんか必要なかったくらいざますわよ。
松宮:メニューの変更が必要なかったくらい、健康的だったと。
大学:そうざます。
松宮:それなのに、メニューを健康的なものに変えたんですね。
大学:そうざます。佐久間象子先生の監修ざます。
松宮:(苦笑)食育なのは、そこだけですか?
大学:とーんでもございませんわ。他にもあるざます。うちの学食はね、レシートに食事バランスガイドのコマが表示されるようになってるざますのよ。食育バランスガイドはご存じかしら?
松宮:はあ、いちおう。
大学:コマを見ると、選んだメニューがバランスのよい食事内容になっているかどうかが分かるざます。
松宮:なるほど。
大学:わが校の食育カフェテリアは、こういう目的で作られているざます。
(1) 健康の維持・増進のために「何を」「どれだけ」「どのように組み合わせて」食べたらよいか
(2) どんなものを食べたら安全か危険かという「選食」の力
(3) 食に関する感謝の念
(4) 食糧や農業に関する問題、環境問題の認識
その声には、誇らしげな響きがありました。
◆◆◆
電話での会話はつづきます。
松宮:いや、ご立派な目的ですね。
大学:お分かりになったなら、取材に来るざます。きっと感動するざますよ。
松宮:メニューを変えたのと、レシートに食事バランスガイドが出るのは分かりました。他には?
大学:は?
松宮:他にはどんな工夫をされているんですか?
大学:妙なことを言うざますね。他にはございませんけれども。すでに十分、食育的ざんしょ?
松宮:でも食育カフェテリアの目的は4つあるんですよね。
大学:そうざますわ。(1)健康の維持・増進のために…。
松宮:いや、繰り返さなくても結構です。その4つの目的を達成するために、食育カフェテリアに変身したわけですよね。
大学:もちろん、そうざますわ。
松宮:レシートに食事バランスガイドをつけたことで、たしかに1番目の目的には合ってますよね。
大学:そうざんしょ。健康の維持・増進のために「何を」「どれだけ」「どのように組み合わせて」食べたらよいかがこれで分かるざます。
松宮:他の3つはどうなんですか?
大学:は?
松宮:2番目の、「どんなものを食べたら安全か危険かという「選食」の力」は、これで身につくんですか?
大学:は?
◆◆◆
松宮:いや、ですから…。おたくの大学では、学食メニューを健康メニューに変えて、食事バランスガイドをレシートに載せるようにしたわけですよね。
大学:そうざますよ。
松宮:そうすることで、「どんなものを食べたら安全か危険か」が分かるようになるんですか?
大学:そんなわけないざんしょ。食事バランスガイドを見たって、安全か危険かなんて分かるわけないざます。
松宮:ですよね? 安全か危険か、というのは、食事バランスガイドを見たって分からないですよね。じゃあ、2番目の目的のために、どんな工夫がされているんですか?
大学:は?
松宮:何もしていない、とか?
大学:…な、なにを言うざます。わが校を侮辱するざますか?
松宮:とんでもないです。目的が4つあると言われたから、それぞれどんな工夫がされてるのかなーと思って、聞いただけですよ。
大学:あきれた殿方ざますね、あなたという方は。聞いていいことと、悪いことがあるざます。
松宮:(苦笑)質問を変えましょう。3番目の「食に関する感謝の念」はどうですか? 食育カフェテリアではどんな工夫が? 学食メニューを健康メニューに変えて、食事バランスガイドをレシートに載せたら、食に関する感謝の念と理解が生まれるんですか?
大学:そんなわけないざんしょ。食事バランスガイドを見たって、「食に関する感謝の念」が育つわけがないざます。
松宮:そうですよね。僕もそう思います。で、3番目の「食に関する感謝の念」を育てるために、何をしているんですか?
大学:まあハレンチな…。あなたのような失礼な方に、返答するつもりはないざます。
松宮:ハレンチ? それって死語じゃないですか?
大学:黙らっしゃいざます。
松宮:(苦笑)4番目の「食糧や農業に関する問題、環境問題の認識」はどうですか? 学食メニューを健康メニューに変えて、食事バランスガイドをレシートに載せたら、食料や農業に関する問題とか、環境問題の認識の役に立つんですか?
大学:キーッ! なんざますかあなたという人は。佐久間象子先生を呼ぶざますわよ!
佐久間象子を呼ばれてはたまりませんので、丁寧に詫びて電話を切りました。
「またやっちゃったなあ」
僕はひとりごとを言いました。
ついつい、ツッコミ癖が出てしまいました。
これでまた、敵が増えたわけです。
やれやれ。
でも皆さん、これだけは信じてください。
あの大学の人、本当に「キーッ!」って言いましたよ。