松宮園生です。
警察のなかにメタボを取り締まる部門ができたとしましょう。
人呼んで「メタポリス」。
腹回り85センチを超えた男性が捕らえられるわけです。
むろん女性も取り締まりの対象ですが、女性の場合は
腹回り90センチが基準なので、検挙者の数は男性ほどではなさそうでした。
メタポリスの警官はピーポくんブランドのメタボメジャー(腹回りを測定する巻尺)を所持しています。
目を爛々と光らせた警官が、音をたててメタボメジャーを引き延ばしたり縮めたりしながら、獲物を探し求める姿に、人々は怯え、逃げまどいました。
しかし何といっても飽食の現代日本。
メタボの数が多すぎます。
メタポリスの警官の数も限られています。
このままでは十分な取り締まりができないと考えたメタポリスは、日本食育大学のロバート・シトピッチャン教授が開発した食育ロボット、「アンドリュー77型」を改造して使うことにしました。
どのように改造したかというと、電子頭脳のなかに「メタボセンサー」を組み込んだのです。
腹回りの大きな人がアンドリューの100メートル以内に近づくと、メタボセンサーが反応。
ただちに追跡を始める、という仕組みです。
これも天才ロバート・シトピッチャン教授の発明であることは言うまでもありません。
◆◆◆
繁華街をパトロールするアンドリュー。
おおぜいの老若男女が、往来していきます。
プシュー!
そんなアンドリューの耳から突如、蒸気が噴き出しました。
両眼が交互に点滅しはじめました。
メタボセンサーが反応したのです。
近くに、メタボがいる。
「あ、あたしじゃないわよね」
「お、オレじゃねーよな」
「わ、わしじゃないとよいがのう」
通行人が、不安な表情でアンドリューの動作を見つめます。
ゆっくりと周囲を見回すアンドリュー。
その眼が、歩きながら携帯電話で談笑している中年の容疑者をとらえました。
アンドリューの存在に気がついていないようです。
アンドリューは腹部にある格納ボックスからメタボメジャーを引き出すと、それを片手に100メートル13秒くらいの実力で走りはじめます。
蜘蛛の子を散らすように逃げ去る通行人。
容疑者は何が起こったのか分からないうちに、アンドリューのメタボメジャーを巻かれてしまいます。
「89センチ。大問題です。あなたを逮捕します」
言うが早いか、アンドリューは容疑者の上着の襟をつかみ、どこかへ引きずっていきました。
◆◆◆
市民側も負けてはいられません。
メタポリスに対抗し、「アンドリュー・レーダー」が開発され、飛ぶように売れました。
アンドリューがあなたの100メートル以内に近づくと、レーダーが反応。
ブルブルと震えて(=バイブレーションで)、あなたに合図を送ります。
メタボ気味なあなたは、ただちに逃げの態勢に入るというわけです。
アンドリューが早いか、人間が早いか。
日本列島のあちこちで、ロボットと人間の追いかけっこが展開されました。
かくいう僕も秋葉原でアンドリュー・レーダーを買いました。
赤・黒・メタルの3種類あったのですが、メタルにしました。
消費税込みで42,000円でした。
安くはありませんが、仕方がありません。
「ついでに佐久間象子レーダーも欲しいんだけど」
冗談で店員さんにそう言ったら、何を思ったか、店員さんは奥の倉庫から地震計を出してきました。
さて、買ったばかりのアンドリュー・レーダーを内ポケットにおさめた僕。
これでひと安心だと思っていたのですが…。
その後に、予想外の災難が待ち受けていたのでした。
(以下次号)
-----お知らせ-----
「食育プロデュース委員会」オフ会@大阪
今週土曜です。
テーマ:「食の資格について語ろう」
http://www.shokuiku-pro.com/modules/tinyd0/index.php?id=14
松宮園生です。
先日、萌え管理栄養士ナオコが食事指導をする、
「食育おねいさん」
という話を書きました。
http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/04/post_136.html
これ自体は妄想おとぎ話なんですけど…。
そしたら、東京でレストランをやっている「あいさん」
という方から連絡をいただきまして…。
あいさんは、リアルで「食育おねいさん」無料サービス
を始めるそうです。
ていうか、もう始まってます。
サービス開始までのスピードの速さにベンチャースピリットを感じましたので、ここで紹介させていただきます。
◆◆◆
ここから先はマジで現実の話です。
あいさんの「食育おねいさんサービス」には、3人の「おねいさん」がボランティアで登場します。
<ドS嬢系おねいさん「アキラおねいさん」>
主にオーガニック食品を扱う商社レディ(26歳、独身)。
「全ての男は下僕」といって憚らない、慈悲深いお方だそうです。
<妹系萌えっ子「ユリおねいさん」>
調理専門学校に通うハタチになったばかりの女の子。
お酒、ものすごくイケルくちだそうです。
普段はこの2人のおねいさんが、携帯メールでアナタの食生活を評価してくれます。
3人めのおねいさんは誰かというと、言いだしっぺの「あいさん」。
ときどき出動だそうです。
魔女系ツンデレ「アイおねいさん」です。
(注:あいさんからの伝言です)
* 佐久間象子はいません(笑)。
* 100点になったからって写メが送られてくるかはわかりません。
◆◆◆
で、このサービスの受け方ですが。
まずは「おねいさん」専用メルアドにメールを送りましょう。
oneisan@caff-albireo.com
PCでも携帯でも大丈夫です。
実在するメルアドです、念のため。
件名にご自身のお名前を入れてください。
本文のところには、
* 軽く自己紹介を書いてください。
* 朝・昼・デナー(笑)の3食について「おねいさん」指導が入るので、いずれかの食事内容と、外食か自炊か、食事を摂った時間を入力してください。
* 最後に、どちらのおねいさんにアドバイスしてほしいかを明記。
あとは返信が来るまで楽しみに待つのダ。
(注:あいさんからの伝言です)
* 個人情報はあいさんが厳重に管理します。
* あくまで「遊び」感覚で楽しみながら食生活を見直すのが目的であり、医療行為ではありません。
* メールの受付時間は9:00-22:00。時間外メールは翌日扱いになります。
* おねいさんたちはボランティアでやっているので、多少のタイムラグはご愛嬌と考えてください。
* ユルくやりましょう。
◆◆◆
このサービスをホントに始めた「あいさん」のお店です。
Cafe & Bar Albireo(アルビレオ)
「からだがよろこぶごはんとイタリアンワインのお店」
* 有機農家さんから届く旬の有機野菜。
* オーナーのあいさん自身がお手伝いする地元の採れたて有機生産物、ハーブ。
* 堆肥にこだわる世田谷産の農産物。
など、地産地消を考慮した材料をふんだんに使用した、創作和風イタリアンの店です。
お店の住所:東京都目黒区目黒本町4-2-14 1F
営業時間:17:00-24:00(L.O 23:30)週末は時間延長あり
定休日:日曜日
以上です。
繰り返しますが、「あいさん」は実在し、あいさんのお店「アルビレオ」も実在し、ここで紹介した「食育おねいさん」サービスも本当に始まっています。
興味のある方はお試しください。
-----お知らせ-----
「食育プロデュース委員会」オフ会@大阪
今週土曜です。
テーマ:「食の資格について語ろう」
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こんばんは。
真夜中の食品安全ニュースです。
◆◆◆
最初に、輸入レモンから大量のアスコルビン酸が検出されたという
ニュースです。
本日未明、横浜の大黒埠頭にカリフォルニアから運ばれたレモン2万トンが到着しました。
到着した輸入レモンを抜き打ち検査したところ、大量のアスコルビン酸が出たとのことです。
輸入元の○×フレッシュ貿易株式会社は対応に追われており、まだコメントを出しておりません。
(画面が切り替わる)
大黒埠頭の現場から中継です。
ここに停泊している巨大な船。
大きいですよね。
今回入荷したレモンですが、この巨大な専用船「マリタイム・オーキッド」号によってカリフォルニアのフィトバレーから運ばれたものです。
大黒埠頭に到着したあとは、すべてこの倉庫に保管されています。
倉庫に入ってみます。
(倉庫に入る)
倉庫の中はレモンの爽やかな香りが充満しています。
少し暗いのですが見えますでしょうか。
ここにある何千何万という箱はすべてレモンの箱です。
抜き打ち検査が行われたのは昨日の夕方でしたが、検査早々からL体のアスコルビン酸が見つかったとのことで、関係者のあいだに衝撃が走っています。
◆◆◆
(再びスタジオ)
次のニュースです。
東京都の調べによりますと、都内のイタリア料理店の9割以上が、硫化アリルを含有した食材を意図的にスパゲティ料理に添加していることが判明しました。
添加している理由は、そのほうが味も香りもよくなるからだそうです。
これに関し、東京都板飯協会ははまだコメントを出しておりません。
東京都は、東京都板飯協会のコメントを待って、対応を検討することにしています。
(画面が切り替わる)
「銀座三越前に来ています。都民の感想を聞いてみましょう。…あ、すいません。ちょっといいですか? 硫化アリルってご存知ですか?」
「いえ、知りません」
「都内のイタリア料理店の9割以上が、硫化アリル含有食材を意図的にスパゲティ料理に添加しているっていうのもご存じないですか?」
「えっ、そうなの? よく分からないけど、怖いわねえ」
「硫化アリルってご存知ですか?」
「知らねーけど…硫化水素みたいな?」
「都内のイタリア料理店の9割以上が、硫化アリル含有食材を意図的にスパゲティ料理に添加しているのは知ってましたか?」
「まじ? やべーよそれ。さっきスパゲティ食ったばっかだし」
◆◆◆
(再びスタジオ)
政府広報です。
(画面が切り替わる)
「花子さん、このパン、全粒粉らしいんだけど、食べて大丈夫かなあ」
「太郎さん、心配だったら検査してもらったら? 食品分析センターに行けばやってもらえるよ」
「食品分析センター?」
「ええ。食品にどんな成分が含まれているか、詳しく調べてくれるところよ」
「そうなんだ、どこにあるの」
「全国8か所に事業所があるのよ」
「じゃあ。そのうちのどれかに頼めばいいんだね」
「各事業所と試験室はコンピューターネットワークで結ばれ、迅速に、正確に、きめの細かいサービスが提供されています」
「なるほど。…てか、誰に向かって話してるの?」
(数日後)
「太郎さん、検査どうだった?」
「うん、花子さん…。微量だけど無視できない量のセレニウムが検出されてさ…」
「ええーっ」
「おまけにマンガンまで検出されたよ」
「そうだったのね。食品分析センターに調べてもらってよかったわね」
「うん、よかったよ」
「この食品大丈夫かな? あれ? おや? もしかして? と思ったら食品分析センター。食品分析センターにお電話ください。待ってまーす」
「だから誰に向かって話してるの?」
◆◆◆
(再びスタジオ)
今日の報道で、食べものには危険がいっぱいだなーと思った皆さん。
種明かしをしましょう。
アスコルビン酸とは、ビタミンCのことです。
レモンを検査したら、ふつービタミンCは大量に検出されます。
硫化アリル含有食材とは、ニンニクのことです。
スパゲティ料理には、たいがいニンニクが入っています。
セレニウム、マンガンはともに体に必要な微量ミネラルです。
無視できない量のセレニウム、マンガンが検出されたら、ふつー文句はありません。
ではまた、明日のこの時間にお会いしましょう。
(会いません)
-----オフ会のお知らせ-----
次の土曜日、「食育プロデュース委員会」のオフ会を行います。
テーマ:「食の資格について語ろう」
参加者募集中。
http://www.shokuiku-pro.com/modules/tinyd0/index.php?id=14
松宮園生です。
「21世紀神様の悩み」シリーズもこれで第9話になりました。
(このシリーズの説明)
繁栄にあぐらをかき、飽食をむさぼる先進国。
彼らに鉄槌を下すことにした全能の神様は、
「ウエルネス天国」
「メタボ地獄」
を作りました。
* ストイックに生涯を全うしたらウエルネス天国行き。
* 飽食におぼれメタボのまま死んだらメタボ地獄行き。
現世でもメタボを迫害する動きが現れてきました。
(例)
* 「メタボ撲滅同盟ニキータ」という秘密結社が、メタボの暗殺を始めました。
* 「メタボ警察」がメタボを捕えて「メタボ裁判」にかけ、有罪になると「メタボ刑務所へ」…。
* 萌え系管理栄養士の阿部マリエは大勢のメタボ男性を救いましたが、暗殺されてしまいます。
このシリーズ(21世紀神様の悩み)は、そうしたちょっとすごく怖い時代を懸命に生きる人々を描く、壮大なヒューマン・ドラマです。
◆◆◆
神様の手違いでメタボ地獄に行ってしまったアイドル栄養士、阿部マリエ。
彼女の2度目の命日がやってきました。
日本食育大学で行われた追悼イベントには1万人を超えるメタボ男性が集結。
あまりの暑苦しさに火災と勘違いし、119番通報をする近所の人がいたほどでした。
追悼イベントは涙をみせずに明るくやろう、という主旨のもと、
「阿部マリエ記念 第1回 アイドル栄養士コンテスト」
が行われました。
僕もその審査員の1人でした(※)。
そのコンテストで、栄えある初代チャンピオンに選ばれたのが、ナオコです。
管理栄養士ナオコ。
彼女はもともと
「月刊メタボマガジン」
の読者モデルをしていたころから
「ポスト阿部マリエ」
という呼び声が高かったのですが、ここにきてついにメジャー・ステージに上がったのです。
(※)ついついノリで審査員を引き受けたばっかりに、
「松宮園生は管理栄養士萌えだ」
という根も葉もない噂がたちまして、けっこう困っています。
◆◆◆
メタボ男性の心をわしづかみにする、管理栄養士ナオコの、その後の快進撃は…。
彼女がメタボ指導(特定保健指導)をしている銀座の「アルカトラス・クリニック」は、予約で半年待ち。
指導料も急上昇。
ただしこのクリニックには実は佐久間象子もいたりなんかして。
半年待ったあげくに佐久間象子に当たったときの衝撃は都市伝説と化しています。
(詳しくは→ 「保健指導ナウ! その3」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2008/04/3_24.html)
CDもリリースしました。
題して「メタボリック・ラブ」。
大企業がこぞって大量買いしたため、ミリオンセラーになりました。
ナオコ・ブランドのメタボメジャー(腹回りを計測する巻尺)が発売されました。
限定1万個。
父の日のプレゼント用にあっという間に売り切れ、ヤフオクで9万円の値がついています。
テレビCMに出てほしいという依頼も殺到。
* サ●トリーの「黒烏●茶」
* フ●ンケルの「●汁」
* 大●製薬の「SO● JOY」
あたりに彼女が出演しています。
日本食育大学の教授にもなりました。
プロフェッサー・ナオコです。
最年少教授です。
先を越されたショックで准教授の松宮園生が憤死したという噂も流れました。
(高校の世界史か)
◆◆◆
「管理栄養士ナオコ」フィーバー(←死語)に国民が踊っているころ…。
冷静に事態を見つめ、利用している人々がいました。
外国人投資家です。
先日、経済産業省が
* 管理栄養士ナオコの登場で2年以内に日本人成人男性の平均腹回りが10パーセント改善する
* その経済効果は40兆円
という予想を発表。
目ざとい外国人投資家がいっせいに日本企業に投資し始めたため、日本の株式市場が高騰しました。
「管理栄養士ナオコ、株式市場まで動かす」
そういう記事が新聞に載りました。
しかし、ここでの陰の主役は、外国人投資家です。
ナオコ萌えのメタボお父さん。
あなたが頑張ってお腹を引っ込めたら、会社の業績が上がり、株価があがり、外国人投資家が儲かるわけです。
あなたの給料もちょびっとは上がるかもしれない。
でも1番儲かるのは、外国人投資家。
目ざといのは投資家だけではありませんでした。
世の中には「格付(かくづけ)専門会社」といわれる会社がありまして。
たいがいは、外資系です。
彼らは、いろんな企業の財政状態を審査し、格付(等級づけ)しています。
財政状態の良い会社には良い点をつけ、公表する。
財政状態の悪い会社には悪い点をつけ、公表する。
こういうことをしています。
この格付専門会社が、ひそかにこんなリストを作っていました。
「メタボ社員の多い会社リスト」
このリストが突然、高い値段で売れるようになり、格付専門会社(外資系です)も大儲け。
これまでは、
「メタボ社員の多い会社はダメ会社→ 株価も上がらない→ だから投資しない」
という考え方だったのですが、管理栄養士ナオコの登場でそれが一変。
「メタボ社員の多い会社はダメ会社→ メタボが改善したら、急に優良会社になる→ ダメがいきなり優良へ、つまり株価の上げ幅が大きい→ じゃあ今のうちに株を買おう」
となり、世界中の投資家がこのリストを欲しがったからです。
こうして、
「平和な日本人が狭い島国で浮かれているあいだに、ガイジンがちゃっかり稼ぐ」
という図式がここでも展開されているのありました。
(以下次号)
---------------お知らせ---------------
オフ会をしますので、よかったら来てください。
「食の資格について語ろう」
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松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
このブログに何度か登場している「アゴヒゲ」
という人物。
稼ぎの悪い「ダメビジネスマン」からお金を巻き
上げようと奮闘する、フリーランスのセールス
マンです。
巻き上げようとするアゴヒゲも情けないけど、
アゴヒゲに目をつけられるダメビジネスマンも
情けない。
僕は以前、この「アゴヒゲ」の標的にされていました。
アゴヒゲは、「新世紀エバンゲリ食品研究会」という団体も標的にしていました。
この団体、人間の遺伝子研究が進むと、
「遺伝子からみて、体によい食べもの」
「遺伝子からみて、体によくない食べもの」
が分かるんじゃないか。
そうなったら、その研究結果をもとに、体によい食べものを開発して売ろう。
という団体です。
アゴヒゲはこの研究会のメンバーだったのですが、どうもその、トンチンカンな発言が多いらしく、他のメンバーから煙たがられていました。
「誰かにアゴヒゲ退治をしてもらおう」
そう考えたメンバーたちは、松宮園生に白羽の矢をたてたのです。
依頼を受けた松宮は、「食品魔術研究所」のサマンサタバサ所長を、アゴヒゲと対決させようと考えました。
松宮園生の入れ知恵により、「新世紀エバンゲリ食品研究会」は、サマンサタバサ所長を顧問に迎え入れることを決めました。
しかし、当のサマンサタバサ氏が OK したわけではありません。
そこで、研究会のメンバーが「顧問になってください」というお願いをするために、「食品魔術研究所」に出向くことになりました。
誰が行くか。
研究会の会長は、アゴヒゲにその役を担ってもらうことにしました。
「だんだん、オレも頼られる存在になってきたな」
勘違いするアゴヒゲ。
立派な役を与えられて上機嫌です。
さっそく、「食品魔術研究所」にコンタクトをしたようです。
◆◆◆
オフィスで居眠りをしていると、電話が鳴りました。
「おう、松宮」アゴヒゲの声でした。「どうだい、相変わらずヒマかい」
「忙しいので、切ります。さいなら」
「あわてるな。ちょっと待てよ。『山鯨(やまくじら)』って知ってるかあんた?」
「イノシシのことだろ」
「なんだ知ってるのか。それならなおのことだ。『食品魔術研究所』のサマンサタバサ先生って知ってるか?」
「知ってるけど」
「今から会いに行く。あんたも来いよ」
アゴヒゲは、僕が陰で糸を引いていることを知らないはずです。
偶然、声をかけてきたようです。
まあそれならそれで、いいでしょう。
僕はアゴヒゲに同行することにしました。
アゴヒゲが、サマンサタバサ所長にコテンパンにされるのを見よう。
「食品魔術研究所」は学園都市、筑波にあります。
アゴヒゲと僕は秋葉原から「つくばエクスプレス」に乗り、終点の筑波で下車。
タクシーで10分ほど走ったところに、その建物はありました。
前も書いたように、そこの所長さん、人呼んで(←死語)サマンサタバサ氏、はクイズ魔でした。
クイズに答えられないと所員はクビ、来客はお茶も出さず追い出す、という人物だったのです。
アゴヒゲは、これに耐えられるか?
建物に入ると受付嬢がいました。
「新世紀エバンゲリ研究会のアゴヒゲと申す者。このあいだクイズに正解したので、サマンサタバサ所長にお会いしたい」
すると、受付嬢が言いました。
「次のクイズを出しますので、見事正解していただいたらおつなぎいたします。日本で初めて、食育という言葉を使った人は誰でしょう」
「明治時代の陸軍漢方医、石塚左玄先生です」
落ち着いて答えるアゴヒゲ。
「お見事です」と受付嬢。「ではご案内しましょう」
「さんざんトレーニングしたからな」
アゴヒゲが、得意そうにつぶやきました。
◆◆◆
サマンサタバサ所長は見るからに学者、という風貌の人でした。
「用件を聞くまえに、クイズだ」ソファに腰掛けるなり、所長が言いました。「まずあんたに聞く」
「えっ、僕が答えるんですか?」
「そうだよ。まずあんたから答えなさい」
「い、いえ」僕は言いました。「自分はこの人のお供で来てるに過ぎません。クイズなら僕ではなくこのアゴヒゲに出してください」
「勝手なことを言うな。2人で来たら、それぞれがクイズに答えるのがここのルールだ」
「はあ…」
「ではクイズ。日本の外食産業の売上規模は、全部で何兆円くらいになるか」
「えっと」天井をみながら思い出そうとする松宮。「た、たしか、年間25兆円から30兆円のあいだだと思いますが…」
「まあいいだろう」サマンサタバサ氏は今度はアゴヒゲに向きなおりました。「次はあんた。世界最大のバナナ生産国はどこだね」
アゴヒゲはわが意を得たりという顔で「バナナ輸出国ということならエクアドルですが、バナナ生産国ということならインドです。インドのバナナ生産量は年間1500万トン。2位のエクアドルの倍です」
「ふん。よく勉強しておるな」所長は卓上の内線電話を手にしました。「あーもしもし。わしだが。来客がクイズをクリアしたのでな、お茶を持ってきてくれ」
お茶が運ばれてきました。
「クイズはこれで終わりというわけではないからな」所長はおごそかに言いました。「打合せ中にもまだまだ続けるぞ。油断しないように」
アゴヒゲは「望むところです」と答え、僕は「えーっ」と言いました。
アゴヒゲに同行してきたことを、僕は後悔していました。
もともと、
アゴヒゲがクイズに答えられない
↓
サマンサタバサ所長に顧問をお願いするというミッションが失敗する
↓
アゴヒゲは責任をとって新世紀エバンゲリ研究会を脱退する
ということを期待して仕組んだ陰謀だったのですが…。
同行してきた僕にまでクイズ攻撃があるとは、計算外でした。
もし、ミッション失敗の理由がアゴヒゲではなく僕だった場合、アゴヒゲは研究会を脱退しないでしょう。
松宮、危うし!
(以下次号)
---------------お知らせ---------------
オフ会をしますので、よかったら来てください。
「食の資格について語ろう」
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松宮園生です。
「食育による国づくりをめざす」
という方針の国、ザイオン共和国。
そのザイオン共和国にも諜報機関があります。
諜報機関。
アメリカでいえばCIA。
イギリスでいえばMI6(007すなわちジェームズ・ボンドがいるところ)。
イスラエルでいえばモサド。
ザイオン共和国では、オラクルという名前がついています。
諜報機関といえばスパイ。
エージェント、とも言ったりします。
スパイといえば合言葉。
合言葉といえば
「山」
「川」
が有名、というか定番、というかお約束です。
しかしさすがに、そんな単純な合言葉をまともに使うスパイは実際にはいませんね。
「え、そうなの?」
と思った現役スパイのあなた。
マジですか?
実際には、合言葉としては
「今年の夏のピュージェット・サウンドは暑かった」
「去年のインディアン・リバーほど暑くはない」
といった、練られた感じのものが使われたりするわけで(たぶん)。
じゃ、ザイオン共和国のスパイは、どうかというと。
こういう合言葉を使っていました。
「穢(けが)れたネズミを食え」
「神は夏を見た」
「なんだそりゃ?」
と思ったアナタ。
ごもっともです。
そんなふうに思うのも無理はありません。
なぜこんな言葉になったのでしょうか。
現場のスパイは誰も知りませんでした。
ていうか、
「コンピューターでランダムに決めたんだろう」
くらいにカルク思っていました。
というわけで、ザイオン共和国のスパイは世界のあちこちで
「穢れたネズミを食え」
「神は夏を見た」
を合言葉に暗躍していたのです。
そんなある日。
日本の公安当局と作戦会議をするために日本に立ち寄ったザイオン共和国のスパイが、死亡するという事件がありました。
スパイの名を、アンダーソン君としましょう。
アンダーソン君は、暗殺されたのでしょうか?
ザイオン共和国と日本とは友好国どうしです。
日本のスパイがザイオン共和国のスパイを暗殺するとは考えにくい。
では誰が?
食育の推進を恐れたメタボ大国アメリカが、刺客を送り込んだとか?
地産地消が広がって日本の食料自給率が上がるのを恐れた農業大国アメリカが、刺客を送り込んだとか?
いろんな憶測が飛びました。
ザイオン共和国は2人目のスパイを日本に派遣し、最初のスパイ、アンダーソン君の死因を探ろうとしました。
◆◆◆
2人目のスパイ、名をスミスとしましょう。
彼はスパイと呼ばれるのが嫌いで、自分のことをエージェントと呼んでいます。
エージェント・スミスです。
日本での調査を終えたスミスが、ザイオンに帰国し、オラクル本部に出頭しました。
オラクルの長官は、彼を見るなり目を丸くしました。
「まあどうしたの、あんた。ずいぶん痩せたわねえ」
「長官」スミスはサングラスを外して言いました。「あんた、いったいどういうつもりなんすか」
「何が?」
「どぼけんでください。あんた何人のエージェントを日本に送ってるんですか? しかもヘンな連中ばかり」
「何人って、あんたしか送ってないわよ。あんたが帰ってきたから、いまはゼロよ」
「いいえ。何百人と送ってるはずだ。そこらじゅうにオラクルのエージェントがいましたぜ」
「バカね。そんなわけないでしょう。なんで友好国の日本にそんなたくさんエージェントを送る必要があるのよ。ていうか、だいたい、ウチのエージェントってそんなにたくさんいないでしょ。ザイオン共和国の人口が40万人しかいないことを考えたら、わかるじゃない」
「それはそうなんですが…」焦るスミス。「でも日本はエージェントだらけだった」
「なんで、エージェントだと思うの?」
「オラクルの合言葉を使ってたからです」
「え?」
「そこらじゅうで、こう言われたんすよ。『穢れたネズミを食え』」
「…」
「しかたがないので」スミスは続けました。「こっちも反射的に合言葉を返すわけですが、そしたらみんな、急にヘンな顔をして、よそよそしくなって、おれの食事をとりあげてしまうんだ」
「食事をとりあげる?」
「そうです。何度も食事をとりあげられました。手をつけていないにも関わらずです。どうなってんだ、あいつら」
長官は天を仰ぎ、それから溜息をつきました。
「あんた、そこらじゅうで『穢れたネズミを食え』って言われたって言ったわね」
「ええ、そうです」
「それさあ、『穢れたネズミを食え』(Eat a dirty mouse)じゃなくて、『いただきます』って言われたんじゃないの?」
「へ?」
「で、あんたは反射的に合言葉を返した」
「ええ、そうです」
「それねえ、あんたは『神は夏を見た』(God saw summer)って返したんだろうけど、日本人には『ごちそうさま』って聞こえたんじゃないの?」
「あっ」
「みんなが『いただきます』って言ったとたんに、あんたが『ごちそうさま』なんて返したら、そりゃ、相手は気分悪いわよ。食事を取り上げられるのも無理ないわね」
「ちくしょー、そうだったのか」うなだれるスミス。「でもヒドイっすよ長官! なんでそんな紛らわしい合言葉にしたんですか」
「してないってば。もともと合言葉は『いただきます』『ごちそうさま』だったのよ。我が国は日本の食育をモデルにしてるんだから、無理もないでしょ。それを、頭の悪いあんたたちが、覚えられないものだから、勝手に英語でいいやすい言葉に変えちゃったんじゃないの」
(ダジャレで英単語を覚える日本の受験生と、同じかい)
「そうだったんすね。それで納得がいきました」スミスはつぶやきました。「アンダーソン君が、飽食の日本でなぜ餓死したのか…」
---------------お知らせ---------------
オフ会をしますので、よかったら来てください。
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