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2008.04.26 11:48

食育至上主義人民共和国 その6

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松宮園生です。

いま世界中で穀物をはじめとする農産物が値上がり
していますね。
穀物は人類の主食です。
それが、足らなくなってきています。

食料生産国は、農産物の輸出を制限しようとしています。
「自国の食料資源を、やすやすと他国に売ってたまるか」
と思っています。
ところが、その国の農家からすると、
「外国に売ったら高く売れるのに、どうして制限するのだ」
ということになるわけで。
それでアルゼンチンあたりでは農家の暴動が起きたりしてます。

一方、食料輸入国も食料資源の確保に必死です。
G10と呼ばれる国のグループがあります。
食料を輸入している国が集まったものです。
http://www.shokuiku-pro.com/modules/newbb/viewtopic.php?topic_id=1104&forum=16&post_id=1387#forumpost1387
これら食料輸入国は、
「食料生産国が輸出制限をするのはケシカラン」
と思っています。

で、生産国と輸入国が、国際会議の場で毎日ケンカしています。
ここでいう国際会議とは、WTO(世界貿易機関)と呼ばれています。

◆◆◆

毎度おなじみザイオン共和国。

初代大統領モーフィアスは、若いころ日本に留学し、食育を専門に勉強しています。
その影響で、ザイオン共和国を食育大国にしようと考え、
* 軍隊も食育風
* 警察も食育的
* 法律も食育優先
* 教育も食育至上主義
そんな国作りを行いました。

ザイオン共和国については→ 「食育至上主義人民共和国 その1」
http://www.shokuiku-pro.com/production/2007/10/post_81.html

ザイオン共和国は人口の少ない国でしたが、それも幸いして食育改革は順調に進みました。
調子にのったモーフィアス大統領、今度は世界デビューをもくろみます。
「我が国がお手本としている国は日本だ。日本では食の資格が花盛りだ。あれを世界平和に活用しよう」
そう考えた彼は、国連の本部があるニューヨークにのこのこ出向き、会議でこんな提案をしました。

「食料輸入国の諸君。金さえあれば食料が手に入る時代は終わった。札束で食料生産国の頬を叩くのはやめたまえ。21世紀は金で食料を買う時代でなない」
「そんなこと言ってたら、餓死してしまうがな」と、イスラエル代表。
「餓死なんかするもんかい。あんたらは飽食してるんだろ。飽食のあげく、余ったら捨ててるだろ。飽食をやめて、普通の量を、捨てずに食べればいいじゃねえか。そしたら、自給率もあがるぜよ」
そう言ったのは、中近東からきた国連代表です。
「理屈の上ではそのとおりなんですけどねえ」と、日本代表が言いました。「国民がねえ、生活水準、下げたくないって言うんですよ。飽食、続けたいって」
「だったら、今までより高い金を払って、食料を買うんだな」ブラジル代表が答えました。「金さえ出してくれたら、ウチは売るよ。日本、嫌いじゃないし」
日本代表がぼやきます。「でもねえ…。肝心の金が、最近減ってきててねえ」
「金、払わないんだったら、売らない」
「そこを何とか」

「そこで提案だが。いい方法がある」もったいぶるモーフィアス大統領。「さっきも言ったように、21世紀は金で食料を買う時代でなない。心で買う時代だ」
「は? 意味、わかんねえ」スイス代表が言いました。「心で食料、買えるの?」
モーフィアス大統領はうなずきました。「我が国は日本の食育を研究し、政策に取り入れている。日本の食育はなかなか面白くてな、食べるときにイタダキマス、と言うのだ」
「イタダキマス?」
「命を頂戴します、という意味だ。人は、動植物の命をいただいて、食べている。その感謝の気持ちを表す言葉だ」
「へー、食べものに感謝するの、日本人は?」イギリス人が笑いだしました。「ヒマな国民なんだね」
「なんですと!」いきりたつ日本代表。「これは文化や価値観の問題です。狩猟民族のアングロサクソン人には理解できないんでしょうが」
「理解する気もねえよ」
と、憎まれ口をたたくイギリス代表。
「ウチも食べものには感謝する国じゃけえ」韓国代表が言いました。「日本の言い分はよく分かるのう」
「ちぇっ、くだらねえ」
「まあまあ」アメリカ代表がイギリス代表をなだめました。それから小声で「ここは引いておくほうが、オレたち白人の世界戦略もうまくくからさ」

モーフィアス大統領は咳払いをして、
「イタダキマスに象徴されるように、日本の食育では食べものを大切にすることも教えるのだ。この、食べものを大切にする心を、お金の代わりにしてはどうだろうか」
「は? ますます意味、わかんねえ」とスイス代表。
「食べものを大切にする心。これを持つ人に、日本人は資格を与えているのだ」モーフィアス大統領は言いました。「日本には食の資格がたんとあってな、食の勉強をすると、資格がもらえるのだ」
「食の資格?」
モーフィアス大統領は、イタリア代表に向って言いました。「おたくには、ソムリエの資格があるだろう」
「それはウチでござる」フランス代表が大声をあげました。
「し、失礼」赤面するモーフィアス大統領。「ああいうのが、日本にはゴマンとあってな。※△アドバイザーとか、▽×エキスパートとか…。リストを作ったので、お見せしよう。ただしこのリストは、全体のほんの一部だ」

(モーフィアス大統領が作ったリストを見たい人は→
http://www.shokuiku-pro.com/modules/tinyd1/index.php?id=38

「へー、日本にはこんなに食の資格があるのかあ」
一同、溜息をつきます。

モーフィアス大統領は続けます。
「まだまだあるぞ。ほかにも、ソバリエとか、お米マイスターとか、いろいろな。こういう、食の資格を持った人に、優先して食料を配るシステムを作ろうではないか。たとえば、雑穀を食べたかったら、雑穀マイスターになる。野菜を食べたかったら、野菜ソムリエになる。お米を食べたかったら…」
「食生活アドバイザーは、何を食べることができるんだ?」
「そういう総合的な資格をとったら、総合的になんでも少しずつ、もらえるようにする。何でももらえるが、少しずつだ」
「ふむふむ」
「むろん、このシステムは、食料輸入国限定だ。食料生産国はそんなことはしなくていいが、食料輸入国すなわちG10の諸君はただちに、国内に食の資格を広めるのだ」

「なるほど、それはいい考えだ」
「そうしよう、そうしよう」
盛りあがる会議。

驚いたことにその提案はただちに国連の正式決議となり、条約が作られました。
数ヶ月後、G10各国は次々とその条約に正式調印したのです。

◆◆◆

ニューヨークの一角。
あるオーガニック・ヤキトリ・バーで、モーフィアス大統領と日本代表がカウンターに並んで座っています。
(店の客は、全員 SP です)

「いやあ、閣下のお陰で助かりました」日本代表が、モーフィアス大統領のグラスにオーガニック・地ビールを注ぎながら、言いました。「ウチには資格を取った人がすでに大勢いますからねえ、有利に食料をもらえますし。それに、日本の食育講座を輸入したいという要請が、G10諸国から来てましてねえ。これ、カネになりますよ」
「それはよかったですな。わたしも、留学先の日本に恩返しができて、うれしい」
「むろん、お礼はします。資格講座の売上の10パーセント、ザイオン共和国にお支払しますので」
「それはありがたい」
「まあひとつ、これからもよろしくお願いします」

両名は、軽く乾杯をしました。

「ときに相談なんですが、閣下」
「相談?」
「あの条約に調印してからというもの、松宮園生が仕事をくれ、仕事をくれとうるさくて」
「マツミヤ先生には世話になりました」
「いい人なんですけどねえ。仕事となるとヤヤコシイ人なので、ちょっと大人しくさせたいんですけど」
「何か、わたしに協力しろと?」
「はい。閣下の国で、あの人をしばらく預かってくれると助かるんですけど…」
「ふむ」

数秒、考えたあと、モーフィアス大統領は言いました。
「いいでしょう。預かりますよ」
「うわー、ありがたい」
「ただし、わたしからもお願いがある」
「は、何でしょう」
「先日から、サクマ先生が我が国に滞在しておられてな」
「佐久間象子ですか」
「さよう。なかなか帰ってくれないのです。何とかしてもらえないだろうか…」

 

 

 

<おススメの1冊>

「食料自給率のなぜ」
http://astore.amazon.co.jp/shokuikuprodu-22/detail/4594058248

食料自給率のなぜ (扶桑社新書)

 

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