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2008.03.24 01:13

しとちゃん PART-1

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松宮園生です。

食育は今ブームになっているのかそうでないのかよく分かりませんが、
たぶんブームなのでしょう。
いろんな人がいろんな活動をしたりしています。

政府とかそういう人たちは、食育に関して何をしているのでしょうか?
* 国は国でいろいろやってます。
* 都道府県は「食育推進計画」というのを作り、活動を始めました。
* 市町村は「食育推進計画」を練っているところのようです。

今回のテーマはこの「食育推進計画」。
ある市役所に勤める知り合いの女性からのメールをもとに、書かせていただきます。

◆◆◆

松宮准教授、こんにちは。
お久しぶりです。

わたしの部署にしとちゃんという男の子がいます。
大学を出て市役所に勤めて3年目です。

しとちゃんはココリコの田中さんに似てます。
身長もたぶん田中さんと同じくらいです。
なぜ「しとちゃん」なのかはよく分かりません。
新人の挨拶のときに、
「しとちゃんと呼んでください」
と自分から要求したんです。
なので、周りの人はみんな、彼のことをしとちゃんと呼んでいます。

アニメ好きなので、もしかしたらエヴァンゲリオンの「使徒」を意識してるのかも。
つまり「使徒ちゃん」というわけ。

しとちゃんは熱血漢(←死語、というか古語)なところがあります。
彼が大学4年のとき食育基本法という法律ができたんだけど、しとちゃんはそのことでなぜかスゴく興奮し、
「聞いて聞いて。食育基本法ができたんだ。やったー、やったー」
という意味の電話をすべての知り合いにかけたそうです。
ほぼ全員が引いたとのことです。

どうやらしとちゃんは食育を推進したくてたまらなかったらしいんです。
食育を推進するために市役所に就職したのでした。

就職初日。
「さっそく今日から食育だ! 行ってきまーす」
といきなりどこかへ出掛けたしとちゃん。
夕方になって帰ってきましたが、
「許可もなく外出するな」
と上司に怒鳴られました。

「食育基本法ができたんだから、市役所にいたらさっそく食育の仕事ができるぞ。腕が鳴るなあ」
なんて思ってたしとちゃんでしたが、そうは問屋がおろしませんでした(←死語?)。
食育基本法ができたにもかかわらず、市役所の仕事は何も変わらなかったのです。

はじめのうち、しとちゃんはこういう場面を妄想していたようです。
(以下、しとちゃんの妄想)
「しとちゃん」
「何でしょう、課長」
「食育基本法ができた。わが市も食育を推進したいと市長も言っている。君をこの担当に任命する。これが辞令だ。今日から食育の推進に全力を尽くしてくれたまえ」
「は、ハイッ」
(妄想終わり)

しかし実際には何も起こらず、市役所の誰ひとりとして食育に関わろうとはしなかったのです。
いきりたったしとちゃんは、市長に意見書を送りましたが、返事は来ませんでした。

◆◆◆

しとちゃんは知りませんでしたが、
「食育基本法ができたというのに、市は何をしてるんですか。食育を始めるべきです」
と市役所の窓口に詰め寄る市民団体がありました。
剛腕の管理栄養士、佐久間象子とその一派です(←またかよ)。
これをしとちゃんが聞いたら、どんなに喜ぶか。

市役所には
「佐久間象子対応マニュアル」
が存在していました。
今回も、職員はマニュアルに書いてあるとおりに対応しました。
どんな対応かというと、
「食育の推進は今のところ県の仕事です。まだ市の仕事ではありません。すみませんが詰め寄るなら県庁に詰め寄ってください」
県庁に罪をなすりつけるというものでした。

しとちゃんがこのことを知ったらさぞかし大騒ぎしたことでしょう。
「しとちゃんには言うな」
市役所の職員たちはそうささやきあいました。

しかし、この「佐久間象子対応マニュアル」は必ずしも間違っていませんでした。
というのは、
1)まず都道府県が食育の推進計画を作りなさい
2)次に市町村が食育の推進計画を作りなさい
と、食育基本法に実際に書いてあるからです。

市役所としては、
「県庁が食育推進計画を作るのをじっと待とう。市が先走って計画を作ったら県のメンツも丸つぶれになるかもしれん」
「だよな。それに、市が作った計画があとで県の計画と矛盾したら大変だ。作り直しになっちまう」
ということで、県庁から連絡があるまでは動きにくかったのです。

そういう意味では、ウチの市役所が食育活動に及び腰だったのも無理はないのです。
詰め寄るなら県庁に詰め寄ってくれ、というのも道理でした。

しとちゃんは市役所でなく県庁に勤めるべきだったのかもしれません。

◆◆◆

食育基本法には、
1)まず都道府県が食育の推進計画を作りなさい
と書いてあるわけですが、都道府県も四苦八苦していました。

それはそうです。
いきなり計画を作れと言われても、何をどうしていいやら。
お手本がない状態で計画を作らなければなりませんので、大変なわけです。
生みの苦しみです。

というわけで、食育基本法は2005年にできた法律ですが、すべての都道府県が食育推進計画を完成させたのは2007年。
つまり、2年もかかったわけです。
しとちゃんにはイライラ続きの2年間でした。

食育の推進をしたくてしたくてたまらないしとちゃん。
その姿をみて、わたしは何度も涙を流しました。
松宮さんにお願いして、彼を松宮さんの会社に雇ってもらおうと思ったことも何度もあります。
でも、しとちゃんが遠くにいくのが怖くて、できませんでした。

しかしついに、しとちゃんの出番が来ました。
県庁が、県の食育推進計画を完成させたのです。
それが完成したということは、次は市町村が計画を作る番になります。
しとちゃんの言葉を借りれば、
「やったー、やったー」。

しとちゃんはふたたび市長に意見書を送りました。
今度は市長から返事がきました。
しかたねえ、市としても食育推進計画を作るべい、よろしくたのんまっさ、という返事でした。

いよいよ、しとちゃんに春がきたのです。

(以下次号)

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