ホーム > 日本食育大学未来学部 >
松宮園生です。
(前回のあらすじ)
食育基本法が制定されたのが、なぜか嬉しくてたまらない
ハリキリボーイ(←死語)のしとちゃん。
でも市役所の同僚は、みんなちょっと引いちゃってる。
そんなしとちゃんを優しく見守る先輩からのメールを通じて、
しとちゃんの活躍を描きます。
◆◆◆
県庁から市役所に通達が来ました。
どんな通達かというと、
「県の食育推進計画が出来上がったのは知ってるな? その説明をしてやるから、ただちに県庁に参上し、ありがたく拝聴せよ。交通費は出さないけど」
という意味のことを、そのまま書くと喧嘩になるので、丁寧なオトナ文章に直した通達です。
しとちゃんはその「拝聴係」としてのこのこ出かけ、すっかり興奮して帰ってきました。
県庁からもらった説明資料を広げながら、しとちゃんは市長室に飛び込みます。
普通、飛び込んでから資料を広げるものですが、躁(そう)状態のしとちゃんは順番が逆でした。
しかもアポなしです。
市長はそういうのがキライな人でしたが、辛抱してしとちゃんの話を聞きました。
県の食育推進計画。
むこう5年間(だったかな?)、県庁が食育に関して
* どんな活動をするのか
* どんな目標を達成したいのか
を示すものです。
それはいいんですが、食育つっても漠然としてて範囲が広いものですから、何を計画していいものやらよく分かりません。
そのせいで、あれもやろう、これもやんなきゃ、という意見が無秩序に出てきます。
1つ1つの意見は、誰でも思いつくようなものです。
それをいくつも寄せ集めるわけです。
その結果、どこにポイントがあるのかさっぱり分からない「総花(そうばな)計画」ができあがります。
どの都道府県も似たり寄ったりの総花計画しか作れませんでした。
まあ、似たり寄ったりの総花になるのは、ある程度しかたのないことです。
食育計画で他県との違いを際立たせるのは至難のわざですし。
そもそも競争するわけではないので、他県と違うものにしなくちゃならない理由もないですし…。
そんなわけで、しとちゃんが市長に見せた県の資料は特筆することもない平凡なものでした。
「どうせこんな感じだろう」
と市長が想像していたとおりの内容でした。
しかし興奮して語るしとちゃんはそんなことお構いなし。
市長は心のなかでイライラしながら、顔色は変えずにしとちゃんの説明を聞きました。
ところで、県が食育推進計画作りを終えた今、今度は市町村が計画を作る番でした。
県の計画の一部を担う形式で、市町村の計画を作る。
これをするわけです。
計画を作るプロセスは法律、つまり食育基本法により定められていました。
どういうプロセスかというと、
1) 有識者を集めて「食育推進会議」を開く
2) 「食育推進会議」のメンバーが「食育推進計画」を作る
3) それを市民に公表し、市民からの意見を募る
4) 市民からの意見を参考に、「食育推進計画」を加筆修正する
5) 市長のハンコをもらう
6) 市議会で承認してもらう
7) 総理大臣に報告する
つまり、まずは「食育推進会議」を開かなければなりません。
というわけで、しとちゃんは
「食育推進会議を開きましょう!」
と市長に詰め寄り、市長は
「分かった分かった、じゃあ進めてくれ」
面倒臭そうに答えたのでした。
「やったー!」
しとちゃんは勇躍して、「食育推進会議」のメンバーを集める作業にとりかかりました。
◆◆◆
しとちゃんがわたしに話しかけてきます。
「食育推進会議のメンバーは誰がいいと思います?」
「そうねえ」わたしは答えました。「食育に関係のある人、ってことでしょ?」
「そうなんです。でも考えたらいろんな人が思い浮かんじゃって」
「食育って漠然としてるから、いろんな可能性があるわよねえ。思い浮かんだ人、みんな呼んだら?」
「そうします!」
しとちゃんは嬉々として市内を駆けまわり、メンバーを集めてきました。
顔ぶれは以下のとおり。
* 食育指導士
* 食育インストラクター
* 健康・食育マスター
* 野菜のソムリエ
* 雑穀マイスター
* ソバリエ
* 茶ムリエ
* お米マイスター
* フードコーディネーター
* フードアナリスト
* オーガニック・コンシェルジュ
* 管理栄養士
* 栄養教諭
* 保育士
* 医師
* 保健師
* 教育委員会の委員
* 食品メーカーの部長
* JAの課長
* 漁業組合の役員
* 大手スーパーマーケットの社員
* 自然食品店の店長
* 料理人
* 料理研究家
* グルメ評論家
* 米農家
* 野菜農家
* 農業コンサルタント
* 市民農園をやってる人
* 飲食店チェーンの役員
* 婦人団体のリーダー
* 地産地消団体の役員
* 商店街の組合世話人
* 八百屋
* 魚屋
* 肉屋
* フード・ジャーナリスト
* 郷土食研究家
* 児童心理学者
* しとちゃん
ふう。
以上、総勢39名になりました。
しとちゃんは豪華キャスティングを達成して有頂天。
映画「クローバーフィールド」ばりの混乱が待っているとはつゆ知らず。
市長がじつはすっかり白けているのもつゆ知らず。
わくわくして眠れないしとちゃんなのでした。
そして、食育推進会議開催の日がやってきました。
(以下次号)