松宮園生です。
今回は牛乳の話です
白状すると僕は牛乳が苦手です。
体に良い・悪いではなく、単に苦手なだけです。
今回の文章は
「牛乳を飲め」
「牛乳を飲むな」
とは関係なしに、牛乳をネタにした話です。
◆◆◆
アメリカのテレビCMでこういうのがあります。
背の小さな子どもが牛乳をゴクゴク飲むと、またたく間に身長がニョキニョキ伸び、6フィート(約180センチ)になる。
たいへん分かりやすいCMです。
しかしベタです。
「ベタなCMだなあ」
思わず、つぶやきます。
するとその夜、夢のなかに牛乳の神様が現れました。
「松宮よ。そなたは牛乳を飲まぬらしいな。そんなことでは、大きくなれぬぞ。そなたも牛乳を飲め」
「神様」松宮は言いました。「それだけは勘弁してください」
「ならぬ。テクマクマヤコン、テクマクマヤコン、松宮は牛乳を飲ぉめぇ」
神様が呪文を唱えると、松宮は金縛りになりました。
どこからともなく牛乳パックが現れ、動きのとれない松宮の口に注ぎ込まれます。
松宮は泣きながら牛乳を飲み干しました。
するとどうでしょう。
松宮の手足がニョキニョキと伸びはじめたのです。
松宮はショックで気を失いました。
◆◆◆
目をさますとベッドの上にいました。
なんだか薄ら寒い。
それも道理、窓が開いています。
閉めなきゃ。
そう思いましたが、体が動きません。
それもそのはず、だらしなくニョキニョキ伸びた松宮の手足は、伸びすぎて部屋におさまらず、なんと窓から外に出ちゃってます。
いや、出ているだけでなく、その先も伸びているようなのです。
どこまで伸びているのでしょうか?
松宮が窓から外を眺めると、伸びた手足が近所の建物だの電柱だのに複雑に巻きついたり、絡まったりしているのが分かりました。
そのときです。
ん。
待てよ。
なんでベッドで横たわっているオレが、窓から外を見ることができたんだ?
いやな予感がしました。
おそるおそる振り返ります。
ベッドの上には自分(松宮)の胴体が横たわっています。
そこから手足が伸びています。
首も、伸びていました。
いつのまにか、ろくろ首になっていたのです。
胴体から首が、手が、足が、にょろっと伸びています。
それは胴体というより、タコ足配線に使われる連結ソケットのようでした。
なにかのマル秘バイオ実験に失敗したかのような、不気味な自分の姿に、松宮は悲鳴をあげました。
(参考映像:「遊星からの物体X」)
◆◆◆
ケタケタ笑ったり思考停止したりして1時間が過ぎました。
このままではいけません。
なんとか自分を落ち着けた松宮は、状況を把握しようとがんばりました。
まず、どの程度動けるのか?
首は、自由に動きました。
しかし、伸ばすことはできても縮めることはできませんでした。
現在、その長さは2メートルになっています。
2メートルの首の先端に、松宮の顔があります。
(参考映像:「遊星からの物体X」)
手足はダメでした。動きません。
だらしなく伸びたままです。
引っ込めようとしましたが、これもダメ。
ピクリとも動かない。
思い通りになりません。
ちなみに、手足の感覚もありませんでした。
まるで違う生きものになってしまったかのようです。
ベッド脇に置いてあった携帯電話が鳴りました。
手足の動かない松宮はジタバタしながら、舌で携帯電話のスイッチを入れました。
「もしもし。わしじゃ」
「その声は牛乳の神様」
「どうじゃな、牛乳の凄さが分かったろう」
「大変よく分かりました」松宮は涙声で言いました。「分かりましたから、元に戻してください。これでは化け物です」
「うむ。戻してしんぜよう。ただ、今はだめじゃ」
「どうしてですか。すぐに戻してくださいよお」
「そうしてやりたいんじゃが、お前がわしを掴んで離さんのでな、身動きとれんのじゃ」
「はあ? 僕は何もしてませんが」
「お前の右手が勝手にわしを掴んでおるのだ。お前、首は動くじゃろう。まだまだ伸ばせるはずじゃ。ここまで来い」
「どこですか、そこは」
「どこかの海岸なのじゃが、よく分からん。わしを掴んでおるのはお前の右手じゃ。つまり、右腕が伸びているのをたどって来るのじゃ」
というわけで、松宮は(正確には松宮の首は)自分の右手がどこまで伸びているのかをたどる冒険にでたのでした。
(以下次号)