松宮園生です。
昨日(30日)のことです。
「松宮さんって、年末の忙しいときに長々と呑気なブログ書いてて、
じつはけっこうヒマなんですねえ」
なんてメールを数通、いただきました。
ししし、失礼な。
ななな、何を言うか!
…なんて反論したいところですが、はい、ヒマっつーか、じつはその、アメリカの年末年始は日本みたいに「師走」状態ではございません。
正月の準備をする、なんてこともありませんで。
大晦日もフツーに仕事し、家に帰って夕飯食べるでしょう(←キムチ鍋の予定)。
忘年会もないし。
大晦日の夜はさすがにお祭り気分で人の集まるところに出かけ、集まったみんなでカウントダウンをします。
(僕の近所はゲイの方々がちょっぴり多いみたいなので、その後の「キス合戦」は逃げ回ることになるでしょう)
元旦はアメリカも祝日です。
日本同様、世の中の会社はお休み。
でもお休みなのは元旦だけ。
翌日(1/2)は、みんなもう、ごく普通に仕事をしています。
◆◆◆
話は変わりますが、イベントのご案内。
来年の3月に
「フーデックス」
という日本最大の食の展覧会が開かれます。
(毎年、3月くらいにやってます)
日本最大というだけでなく、食の展覧会としては世界第3位の規模です。
期間: 3/11(火) - 3/14(金)
場所: 幕張メッセ
ウェブサイト:http://www2.jma.or.jp/foodex/ja/index.html
かなり面白いし、情報収集とかにもなりますので、行ける方は行ってみてください。
オススメです。
僕もなんとかして行こうと思っています。
過去、この「フーデックス」の楽しみ方について文章をものしたことがあるので、ご参考に…。
↓
「世界の食べ物をタダで食べまくる悪の楽しみ」
◆◆◆
もひとつイベントのご案内。
「フーデックス」より少し早いですが、2月に
「健康博覧会」
という健康に関する大きな展覧会が開かれます。
自然食品とか、食事指導とか、あとサプリメントとか、そういう分野に興味のある方にはオススメです。
これも僕自身、何とかして行きたいと思ってます。
期間: 2/27(水) - 2/29(金)
場所: 東京ビッグサイト
ウェブサイト: http://www.this.ne.jp/
◆◆◆
皆様から叱咤激励をいただいて今日まで書き続けることができました。
ありがとうございました。
来年もまた、ご贔屓によろしくお願い申し上げます。
食育プロデュース委員会(www.shokuiku-pro.com)
松宮園生
松宮園生です。
パクチー好きの僕の夢は、生きているうちに
「パクチーによる太陽系支配」
を実現することです。
すなわち、
「パクチー太陽系連邦」
を建国するのです。
(いったい何歳まで生きるつもりなんだよ)
太陽系支配のあとは、権力を「日本パクチー狂会」の会長さんに譲り、
僕自身は
* 各惑星に呼ばれて講演活動をしたり、
* たまには銀河帝国の星々にでかけて宇宙の平和に貢献したり
したいと思います。
銀河帝国には、いろんな宇宙人がいるんだろうなあ。
(パクチーによる宇宙征服プランの詳細についてはここをクリック)
◆◆◆
地球から10光年の距離のところにテケテケ星があります。
人類よりも進んだ科学技術を持ち、地球になんどもUFOを送りこんでいます。
何の目的でUFOを送りこんでいるかというと、パクチーをこっそり持ち帰るためです。
テケテケ星人はパクチー好きなのでした。
そのテケテケ星人からメールが来ました。
あんたのブログを読んだよ。
「パクチーによる太陽系支配」のお手伝いをしたい。
今晩、あんたのアパートに行くから、会議をしよう。
掃除をして待て。
そんな内容のメールでした。
その夜、掃除が終わった僕のアパートの前に、宇宙船が降りたちました。
ノックがしたのでドアを開けると、テケテケ星人が立っていました。
テケテケ星人は、昭和中期に流行った宝ビニール(現タカラトミー)のあの「ダッコちゃん人形」が、逞しくなったような姿をしていました。
「ハイル・パックチー」と宇宙人は言いました。
「は、ハイル・パックチー」あわてて僕も答えました。
そのテケテケ星人、いきなり断りもなく僕のアパートに入りこんだかと思うと、冷蔵庫を開き、中をのぞきこみ、狂ったように笑いはじめます。
「な、何がおかしい」
「おかしい?」ダッコちゃん人形は急に真顔になりました。「そんなことは、どこにも書いてないぞ」
「は?」
「まあいい。たまには大目に見るとしよう」
「は?」
テケテケ星人は冷蔵庫を閉め、考え込むように腕を組みました。「久しぶりに来たのだが、立派になったもんだ」
「来たことがあるのか?」
「あるわけないじゃない。なんでそんなことを言うんですか」テケテケ星人は泣きはじめました。「ひどい。ひどすぎる」
僕は混乱しました。
泣きやむと、宇宙人はテーブルの上にぴょんと飛び乗り、仁王立ちになりました。「パクチーはどうする」
「どうするって? 欲しいってことか? ここにはないよ。買ってこようか」
「なぜ買うのだ」
「え? だってあんた、パクチーが欲しいんだろ」
「パクチーが欲しいのか? そんなことはどこにも書いてなかったが…」
「は?」
「まあいい。それはあとで思い出せば何とかなるだろう。ところでパクチーはどうする」
「だからここにはないってば」
「そいつは傑作だ」仁王立ちのダッコちゃん人形の両眼から、涙がこぼれました。「生きるのは素晴らしい」
テケテケ星人はテーブルから降り、またもや冷蔵庫をあけ、今度はくすくす笑いました。
「もう1回聞くけどさ」僕は言いました。「冷蔵庫の何がおかしい」
「あなたの冷蔵庫はおかしいのか?」
「おかしいわけねーだろ」
「じゃあ心配しなくていいじゃないか。ところで、これは何だ」テケテケ星人は、冷蔵庫のなかからアイスクリームを取り出しました。「バカにしているのか」
「は? それはアイスクリームだろ」
「バカにしている」テケテケ星人はアイスクリームをなめながら言いました。「許し難い暴挙だ」
「ただのアイスクリームだろ。どこがバカにしているんだ? てゆーか、人のアイスクリームを勝手になめるなよ」
「なんだと? 誰かがアイスクリームを勝手になめているのか? それは誰だ? なんとも許し難い暴挙ではないか」
「それはあんただろ」
それには答えず、宇宙人はアイスクリームをなめ続けました。
コーンまできれいに食べてしまうと、
「そうだったのか…。わたしがアイスクリームをなめていたのか。うーむ。許し難い暴挙だ。同情の余地はない。死刑に処すがよかろう」
テケテケ星人はポケットから毒薬のようなものを取り出すと、その液体をごくごくと飲みほしました。
数秒後、その体がコトンと倒れ、ぴくりとも動かなくなりました。
呆然と立ちすくむ僕。
「生きるのは素晴らしい」って、いま言ってたんじゃないの?
ふたたびノックがし、べつのテケテケ星人がアパートに入ってきました。
いやーな沈黙。
「ち、違うんだ」僕はあせりました。「この人が勝手に…」
「だから腹は空かせておくべきなのだ。あれほど言ったのに」宇宙人は溜息をつきました。「それにしても地球とは恐ろしい星だ。うまいこと言う」
動かなくなった仲間の死体(?)をひきずって、テケテケ星人は出て行きました。
◆◆◆
翌朝、またテケテケ星人からメールが来ました。
昨晩の会議が決裂したのは残念でならない。
今晩もういちど出向くから、それまでに白か黒か、はっきりさせておけ。
そんなメールでした。
(以下次号)
松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
繁栄にあぐらをかき、飽食をむさぼる先進国。
彼らに鉄槌を下すことにした全能の神様は、
「ウエルネス天国」
「メタボ地獄」
を作りました。
ストイックに生涯を全うしたらウエルネス天国行き。
飽食におぼれメタボのまま死んだらメタボ地獄行き。
一方、人間社会のほうでも
「メタボ基本法」
が可決され、メタボな人は
「メタボ刑務所」
に送られて保健指導を受けるようになりました。
「刑務所に送られてたまるか」と逃げ回るメタボな人々を、
「メタボ警察」
が執拗に追い回します。
このシリーズ(21世紀神様の悩み)は、そうしたちょっとすごく怖い時代を懸命に生きる人々を描く、壮大なヒューマン・ドラマです。
(そうだっけ?)
◆◆◆
「最後の審判の日」時計(Doomsday Clock)
というのが本当にあるのをご存じでしょうか?
宇宙戦艦ヤマトじゃないけど、
「人類滅亡まで、あと××分」
というのを示す時計です。
シカゴ大学にあります。
「原子力科学者ブレティン」
という名前の科学雑誌がその時計を管理しています。
時計の針は進んだり後退したりします。
核戦争の可能性とか、地球温暖化などの環境問題とかを考慮して、
「人類滅亡まで、あと××分」
が決められています。
ちなみに、今日現在は
「人類滅亡まで、あと5分」
となっています。
本当に5分後に滅びるという意味ではありませんが、
「あと5分しかない、くらいに人類や地球のことを真剣に考えなさい」
ということを警告しているわけです。
◆◆◆
死んだばかりのある男が「メタボ地獄行き」を天使から宣告され、空港に到着しました。
これからメタボ地獄行きユナイテッド航空459便に乗るのです。
指定された搭乗口にむかって、男はしょんぼり(←死語)と歩いています。
「そんなに落ち込まないでよ、おじさん」見送りの天使が男の肩を軽くたたきました。「模範囚として認められたら、メタボ天国に行けるからさ」
「そんなこと言うたかて、わて、情けないわ」
男がなにげなく顔をあげると、コンコースの壁に無数の時計がかかっているのが目に入りました。
「時計がぎょうさんありまんなあ」男は言いました。「なんの時計でっしゃろか?」
「ああ、それはね」天使が答えました。「食育時計っていうんだ」
「食育時計?」
「神様が眉をひそめるような食事をしたら、時計の針が進むんだよ。暴飲暴食したりとか、ジャンクフードを食べたりとか、野菜を食べなかったりとか、寝る前に甘いものを食べたりとかすると、針が進む」
「そりゃまた、ごっつい時計でんなあ」
「あそこにロココ風のデザインの時計があるでしょ?」
「あれでっか」
「そう。あれはマザー・テレサの時計だよ」
「マザー・テレサでっか」
「マザー・テレサの時計はまったく針が動かなかった。彼女の食生活は完璧だったんだ」
「はあ…」
「それから、向こうに大きな振子時計があるの、分かる?」
「向こうの、あれでっか」
「あれはドクター・チイタッタという人の時計だよ」
「チイタッタゆうたら、ターザン栄養学で有名なアメリカの先生でおまんな?」
「えっ? ドクター・チイタッタを知ってるの?」
「知り合いに松宮園生いう変なやつがいてまんねん。その変なやつがチイタッタ先生、チイタッタ先生といつもやかましゅうて」
「へえ、そうなんだ。ドクター・チイタッタの時計はね、まだ2分しか針が動いていない」
「2分」
「要するに、今まで2回だけ、メタボな食事をしたことがあるってこと。あとは全部、立派な食事をしている」
「わてには真似できまへんわ」
「大丈夫。メタボ地獄に行ったらできるようになるから」
「ひー」
「そっか、おじさんは松宮園生の知り合いなんだね」天使が言いました。
「そうでんねん。恥ずかしうて言わんでおこう思っとったんやけど」
「その気持ち、わかるよ」
「そや。そういえば松宮園生の時計は、どれでっか?」
「うん、それがね」天使は言いました。「ここには、ないんだ」
「どこにありまんねん?」
「うん。近ごろは天国も温暖化しててね。神様のオフィスで、扇風機がわりになってる」
松宮園生です。
食育ロボは正式名称を
「アンドリュー77」
といいます。
日本食育大学のロバート・シトピッチャン教授
が開発し、玩具メーカーから発売されました。
少々、
「猟奇的な彼女」
タイプのロボットでしたので、そういう「プレイ」
が好きな人のあいだでヒットしたようです。
どのくらい「猟奇的」だったかについては
以下を参照。
「食育ロボ発進! 前編」
「食育ロボ発進! 後編」
◆◆◆
「なになに、食育ロボット? そりゃ便利なものができたなあ」
そう思ったのは地方自治体に勤める方々でした。
理由はこうです。
2005年に「食育基本法」が制定されました。
この法律により、自治体(県庁や市役所や町役場など)はそれぞれ独自に
「食育推進計画」
を立てることが決められています。
計画を立てたはいいですが、立てたら実行しなくてはなりません。
何を実行するかというと、
* 食育の教室
や
* 食育のイベント
などです。
こういうのは参加する側は「学ぶため・楽しむため」に来たりするわけで、もちろんそれでよいです。
が、開催する側はタイヘンです。
普段から人員不足で忙しいのに、食育までやりなさいと言われても人手が足りません。
ネコの手も借りたいです。
そんなところに、食育専門のロボットが発明されたわけですから、自治体の方々も大助かりというわけです。
さっそく購入し、
「食育料理教室」
の講師をやってもらうこととなりました。
名づけて
「地元の食材を食べよう。食育ロボット、アンドリュー先生のちょっぴりエスな料理教室(副題:ちょっぴりじゃないけど)」
◆◆◆
ところがです。
料理教室の当日の朝、トラブルがありました。
アンドリュー77が1人で開講準備をしていると、地元の食育ボランティア団体が文句を言いに教室までやって来たのです。
団体の代表と称する女性が、腕組みしてふんぞり返りながら言いました。
「あなたが食育ロボットね。わたくしは『食育の大切さを考える母の会』代表、佐久間象子です。管理栄養士です。管理栄養士であると同時に、栄養教諭の免許をもっており、フードコーディネーターの資格も持っています」
「管理栄養士であり、栄養教諭であり、フードコーディネーターでもある佐久間象子ですね」相槌をうつアンドリュー先生。
「それだけではありません。食育必死講座1級でもありますし、食育プリーチャーの資格も取っています」
「食育必死講座1級で、食育プリーチャーですか」
「それだけではありません。食育推進士試験はムラサキ合格しています」
「ムラサキ合格」
「ムラサキ合格が最上位です。次がキイロ合格。その次がアオ合格です」
「ムラサキ合格が最上位、次がキイロ合格、その次がアオ合格ですか」
「それだけではありません。炭水化物のソムリエでもあり、日本カルパッチョ協会認定カルパッチョ講師の免状も持っているのです」
「炭水化物のソムリエであり、カルパッチョ講師ですか」
「認定講師です。ただの講師ではありませんから」
「ただの講師ではなく、認定講師ですか」
「そうですよ」
「なるほど」とアンドリュー。「『食育の大切さを考える母の会』代表、管理栄養士、栄養教諭、フードコーディネーター、食育必死講座1級、食育プリーチャー、食育推進士ムラサキ合格、炭水化物のソムリエ、認定カルパッチョ講師の佐久間象子。その佐久間象子が何の御用ですか」
さすがロボット、記憶力は完璧です。
「何の御用ですか、ですって? 決まっているじゃありませんか。ロボットなんかに食育はできないと言いに来たんですよ」
「そうですか。言いに来たのですか。いま、佐久間象子は言いたいことを言いましたね。ということは、これで御用は終わりですか」
「なんですって」佐久間象子の腕に血管が浮き出ました。「あなた、誰にむかって話をしていると思ってるのかしら」
「『食育の大切さを考える母の会』代表、管理栄養士、栄養教諭、フードコーディネーター、食育必死講座1級、食育プリーチャー、食育推進士ムラサキ合格、炭水化物のソムリエ、認定カルパッチョ講師の佐久間象子にむかって話をしていると思っています」
佐久間象子の額から血がぴゅっと飛び出ました。「この出来そこないロボット! 市長に言いつけてやる。わたくしは市長とも話ができるんですからね。市長に話せば、あなたなんてすぐに潰されてしまいますわよ」
アンドリュー77の採用を決めたのはその市長さんなんですけど。
「ようするに佐久間象子はロボットが食育料理教室をするのを嫌っているわけですね?」と、アンドリュー。「いつの時代にも、機械化に反対する人はいます」
「食育の教室が機械化できるわけ、ないでしょう」
「確かに人間にしかできない食育教室はあります。しかしロボットで足りる食育教室だってあるのではないでしょうか」
「そんなの、あるわけありません」
「食育教室が終わったあとの生徒さんの感想を聞いてみてください。『あの先生、素晴らしかった。またあの先生に教わりたい』という感想をロボット講師が引き出すことはたしかに難しいです。人間にしかできません。でも『地元の野菜は美味しいね』という地産地消絶賛型リアクションを引き出すだけなら、わたしのようなロボットでもできます」
「ずいぶんな自信ねえ」
「地産地消を伝えるだけの教室ですから、ロボットでもできるのです。その証拠に、人間が講師をやってもギャラは安いでしょう。ギャラが安いということは、難易度が低いということです」
「あなた、よくもそんなことをヌケヌケと」
理屈で攻められ、いきりたつ佐久間象子。
一触即発の危機です。
映画「エイリアン vs プレデター」を連想したあなた。
その連想はまともです。
どっちが勝っても、人類に未来はたぶんない。
「ちょっとあなた、逃げるるのですか?」
佐久間象子を無視してふたたび料理教室の準備をはじめたアンドリューに対し、無視された佐久間象子が吠えました。
アンドリューは聞こえたのか聞こえていなかったのか、食材の数を数えたりしています。
「まあ。返事もしないなんて。何ですか、あなたは」
「何ですかと言われても困りますが、食育ロボット、アンドリュー77です」
「そんなことは分かっていますよ。なんでロボット風情のあなたがここにいるかと聞いているのです」
「ここで親子料理教室を開くのです。『野菜オムレツのカレー風味』をみんなで作るのです。あなたも参加しますか。2000円です」
「プロのわたしが参加するわけ、ないでしょう。わたしは管理栄養士、栄養教諭、フードコーディネーター、食育必死講座1級、食育プリーチャー、食育推進士ムラサキ合格、炭水化物のソムリエ、認定カルパッチョ講師なのですよ」
「それは知っています。さきほど伺いましたので」
「口の減らないロボットですわね。いったい何様のつもりなのですか」
「食育ロボット、アンドリュー77です。それより、御用がお済みなら帰っていただけませんか? 準備がたてこんでいるのです」
「そうじゃなくて!」佐久間象子はわなわなと震えだしました。「あなたなんかに食育はできないんですったら。食育ならわたくしがやります」
「他人の食育を妨害するつもりはありません。ですので、お構いなくご自由に食育をなさってはいかがですか?」
「食育はわたくしの領域なんです! わたくし以外の者がこの町で食育をすることは許しません。あなたはさっさと片付けて帰りなさい。あとはわたくしがやります」
アンドリューは初めて、佐久間象子の顔をまじまじと見ました。
「なるほど、人間の心理は複雑なものですね。そうですか。あなたはこの町の食育を独占したかったわけですね」
「そんなことは言ってないでしょう!」と佐久間象子。頭が熱を帯びているのか、上空の空気が揺らいでいます。「わたくしが言いたいのは…」
「見苦しいわよ、佐久間さん」
背後から声がしました。
年配の小柄な女性が立っていました。
「谷口先生…」佐久間象子がつぶやきました。「先生、どうしてここに…」
「佐久間さん。今日のところはわたしたちの負けです。いったん退却しましょう」
うなだれる佐久間象子。
谷口先生と呼ばれた謎の年配の女性は、アンドリューにむかって静かに言いました。
「アンドリューとやら。これだけは言っておきますよ。わたしたちに刃向って無事だった人はいないのです。よく覚えておきなさい」
立ち去る谷口先生。
「わたしたちを甘く見るんじゃないわよ」
捨て台詞を残し、それまでうなだれていた佐久間象子も谷口先生の後を追って去ってゆきました。
(以下次号)
松宮園生です。
日本食育大学を受験予定の諸君!
このあいだは模擬試験をやっていただいたが、今回は昨年の試験問題を紹介しよう。
ぜひチャレンジしてみたまえ。
◆◆◆国語・社会ミックス(100点満点)◆◆◆
以下の文章を読み、設問に答えなさい。
今年もあとわずかである。
いろいろあった1年だったが、お腹まわりが増えたのは我ながら情けない。
来年こそはダイエットしよう。
たしか来年の春から「特定検診・特定( a )」が義務化されると聞いている。
特定( a )の対象になったら、私生活にいろいろ干渉されて面倒らしい。
だからそれまでにお腹まわりを縮めないといけない。
いまは90センチあるから、干渉されないためにもなんとかしてこれをあと( b )センチ縮小しなければ。
…などと呑気なことを考えていたら、自宅に空き巣が入ってしまった。
窓ガラスにきれいに穴があいており、そこから鍵をあけて侵入したらしい。
セコムにしておけばよかったのだが、後の祭りである。
とにかく警察を呼ぶ。
ところが、待てど暮らせど警察はやってこない。
1時間も待ったろうか、ようやく警官が自転車でやってきた。
パトカーではなく、チャリンコでえっちらおっちら( c )やってきたわけである。
それも、キキキという甲高いブレーキ音のする自転車である。
「いやー、季節がら空き巣が多くて、手が回らんのですよ。遅くなりました」と中年の警官は言った。「ではまず調書を作りたいのでご協力お願いします。何を盗られましたか?」
「これです」わたしは待っているあいだに作成したメモを、警官に手渡した。
「恐れ入ります」警官は言った。「書きうつしますので、ちょっと待ってください」
「書きうつすの? そんなことしなくても『別紙』ということで添付しとけばいいんじゃないの?」
警官は目を丸くした。「いやあ、おっしゃる通りだ。お客さん、頭がいいですなあ。ひょっとして、東大出身ですか?」
「いや、東大出身じゃなくてもそれくらいは…。ていうか、わたしはお客さんではありませんが…」
「感銘しました」警官は言い、敬礼をした。「小官は市ノ瀬と申します。以後、お見知りおきを」
「はあ。山本です」
「では山本さん。盗られたものを順に教えてください」
「は? いま、メモを渡しましたが」
「そ、そうでした。はははは。この紙でしたね。なるほど、どれどれ…。主に、携帯電話と現金20万円、ですな。あとは年末ジャンボ宝くじが20枚と、映画のDVDですか」
「そうです。他にも大きいのがあるかもしれませんが、すぐに分かったのはこれだけです」
「なるほど。で、その携帯電話と20万円と宝くじとDVDは、どこにありますか?」
「は? 盗まれたわけですから、ここにはありませんが」
「そうですか。ここにはない、と…」つぶやきながら、調書に書きこむ警官。「ではまず携帯電話ですが、どうして持ち歩かずにご自宅に置いてあったのですか?」
「今日にかぎってたまたま置き忘れていました。悪用されるのが心配です」
「それは心配ですな。どこの電話会社ですか?」
「NTTドコモです」
「なるほど」調書に書きこむ警官。
「NTTコドモではありません」わたしは彼の書き間違いを指摘した。「そんな意味不明の子どもはいません。コドモではなくドコモですよ」
「おっと失礼。コモドでした」
「違いますってば。それでは大トカゲになってしまいます。ドコモですよ。ド・コ・モ」
「おっと失敬。ド・コ・モ…と」
「しっかりしてくださいよ、おまわりさん」
「頑張ります」そう言って彼はまた敬礼した。「現金ですが、どこに置いてあったんですか?」
「あれです。『20万円がたまる貯金箱』って書いてある大きなブリキ缶がありますよね。あれです」
「ゴキブリ缶、ですか」
「違います。ブリキ缶です」
「20万円がたまるって、そんな貯金箱があるんですなあ」
「見たことありませんか? 雑貨屋とかによく置いてありますけど。500円玉専用の貯金箱なんです。500円玉で満杯になったら、総額が20万円になるんです」
「ほお。で、缶切りで開いた形跡がありますな」
「缶切りで開けて、中身だけを盗っていったみたいなんです」
「中身は何だったのですか?」
「は? 中身は500円玉ですよ。いま言ったでしょう」
「あ、そうか。はははは。500円玉が、ジャラジャラと入っていたわけですな」
「そうです」
「ジャラジャラとね。…満杯だったのですか?」
「満杯でした」
「本当ですか? そんなこと言って、じつは半分しかなかったとか」
「し、失礼な。間違いなく満杯でしたよ。もう500円玉が入らなくなったので、2つ目の貯金箱に入れ始めたくらいなんですから」
「2つ目の貯金箱があるんですか?」
「ここにあります。犯人も2つ目があるとは気がつかなかったみたいで」わたしは冷蔵庫の奥に隠してあった2つ目の貯金箱を出してみせた。「こっちもすでに半分くらい入ってます。ほら、冷えてて重いでしょう」
「確かに、冷えててずっしり重いですな。半分くらい入っているということは、10万円くらいですかな?」
「そのくらいですね」
「ふむふむ。で、最初の貯金箱のほうですが、缶切りで開けられていますな。缶のまま持っていけばいいのに、犯人のやつ、わざわざ時間をかけて開いた。なぜだか分かりますか?」
「なぜなんですか? 教えてください」
「東大出身なのに、分からないのですか?」
「分かりません。ていうか、東大出身じゃないし」
「そうですか。まあ無理もありませんな。小官にもよく分からんのです。あとで署のほうに聞いておきましょう」
わたしはずっこけた( d )。
「山本さん、とおっしゃいましたな?」警官は言った。「プライバシーをお聞きするのは心苦しいのですが、調書に書かんといけませんので、山本さんご自身についてお尋ねします」
「はい。ていうか、わたしは山本ですけど」
「はあ。分かっておりますが。それが何か?」
「調書には山下って書いてありますよ」
「ありゃりゃ、本当だ。小官としたことが」
「しっかりしてくださいよ」
「しっかりします」また敬礼をした。「えっと、では性別をお答えください」
「は? 見てお分かりのとおり、男ですけど」
「本当ですか。最近は、見た目だけで判断つかない人が増えたもんですから」
「それはそうかもしれないけど」わたしはムッとした。「正真正銘の男ですよ」
「男なら、自分が男かどうかなんてそんな細かいこと、気にせんでください」
「は? 意味不明なんですけど」
「はははは。まあとにかく。年齢とご職業を教えてもらえませんか」
「41歳です。職業は、食育をしています」
「ショクイク? なんですかそれは」
「食べるという字に、育てるという字で、食育といいます」
「こうですか?」
「逆です。それでは育食(イクショク)です。いくらなんでも、そんな間違え方はないでしょう。わざとですか」
「いえいえとんでもない」敬礼。「で、その食育という仕事は、いったいぜんたい何ですか?」
「食育というのはですね。( e )」
「へえ! なるほど、よく分かりました。なんとまあ素晴らしい仕事をなさっておりますなあ。いやあ、若いのに大したもんだ」
警官がまた敬礼をした。
わたしは顔を赤らめた。「恐縮です」
「では署のほうに電話してまいりますので、しばらくお待ちいただけますかな?」
「分かりました」
いやー、立派なお仕事をなさっておられる、儲かりもしないのに感心感心、とつぶやきながら、警官は出ていった。
儲かりもしないのにというのは一言余計である。
が、全体的におだてられていい気分になったわたし。
だが、いつまで待っても警官は戻ってこない。
おかしいな、と思って窓の外を見ると、ちょうどそこに小型のパトカーが止まった。
現われたのは小柄だがちょいと色っぽい婦人警官である。
( f )によく似ている。
わたしは興奮して玄関に飛びだした。
「山本さん?」
「ハイッ! 山本です」
「××署です。ごめんなさい、遅くなっちゃって」婦人警官が上目づかいで言った。「空き巣が続いちゃってたいへんだったんです。でも一生懸命お世話しますから、許してくださいね?」
「ゆ、許します!」思わず気をつけの姿勢をとるわたし。「ていうか、お、お世話って何ですか?」
ふくらむ期待。
しかし突然、わたしは気がついた。
「さっきの警官は誰だったんだ?」
あわてて家の中を見回す。
やられた!
10万円入りの、2つ目の貯金箱が消えていたのであった。
次の瞬間、すべての光が消えて真っ暗になった(←小泉八雲か!) ( g )
(完)
<第1問(60点満点)>
( a ) に入る漢字4文字を答えなさい(5点)。
( b ) に入る数字を答えなさい(5点)。
( c ) 「えっちらおっちら」は死語か。理由をつけて答えなさい(5点)。
( d ) 「ずっこけた」は死語か。理由をつけて答えなさい(5点)。
( e ) のなかに、適切な説明を100字以内で入れなさい(30点)。
( f ) に入る適切な有名人を答えなさい(5点)。
( g ) 「小泉八雲か!」このツッコミの意味を答えなさい(5点)。
<第2問(40点満点)>
この話の教訓は何か。「食育」という単語を必ず使用し、200字以内で答えなさい。
(なお、この話はフィクションです。主人公の山本光一と松宮園生とはマジでなんの関係もありません)
松宮園生です。
このあいだ仕事でニューヨークまで行って帰ってきました。
僕は西海岸住民ですので、ニューヨーク(東海岸)は3000キロのかなた。
行くのも大変、泊まるのも大変、帰るのも大変。
いろいろあってドエライ疲れました。
ニューヨークで出会ったベジタリアンの人からこんな話を聞いたので、ご紹介します。
<塀の中のベジタリアン>
僕の印象ではベジタリアンは(なんとなく枯れているので)犯罪をしないと思っていましたが、犯罪をするベジタリアンもたまいにはいるそうです。
ベジタリアン囚人は服役中でもベジタリアンを貫きたい人が多く、
「刑務所の食事をベジタリアン・メニューにしろ!」
とだいぶウルサイとのこと。
それまで肉食だったのに、服役中にベジタリアンに変わる囚人も増えているらしい。
(1)「自分を抑えられなかった」ために犯罪を犯した人は、本心では「自分を抑えたい」と思っている
(2)ベジタリアン・メニューに変えてみたら、「自分をコントロールしやすくなった」
(3)だから、これからは食事で自分をコントロールしたい
専門家の話ではそういう理屈だそうです。
刑務所からすると、
「なになに? ベジタリアン・メニューに変えたら、囚人が自分をコントロールできるようになってくれんの? 要はおとなしくなってくれるわけだな。そりゃあ、ありがてえ」
というわけで、喜んでベジタリアン・メニューに変える。
そんな傾向が出ています。
というわけで、
* 一般アメリカ市民があいかわらずジャンクフードにはまっている一方で
* 刑務所メニューはどんどんヘルシー化している
という不思議な現象が進んでおります。
刑務所のヘルシーメニューのランキングも公表されていました。
第1位:アイダホ州
(メニュー例)
* レンティル豆のメキシコ風パイに豆腐のパテを載せたもの
* 大豆ソーセージ入り野菜ラザニア
* 野菜のホットケーキ
* 野菜のビスケット
* 野菜のプディング
第2位:マサチューセッツ州(←僕の師匠のチイタッタ先生が住んでいます)
第3位:ペンシルバニア州
そんなことまで公表されている米国のベジタリアン文化。
なんだか奥が深そうです。
(参考記事)
「ベジタリアン・ババア」
「萌えトマト」
「ベジコン」
◆◆◆
話は変わりますが、僕の旅行悲話を聞いてください。
今回、ニューヨークに行くのに 直行便が満席だったのでシカゴ経由(シカゴで飛行機を乗り換えます)で行くことにしました。
西海岸からシカゴに行くときは、雷に気をつけなくてはいけません。
途中に、雷の多発地域を飛ばなくてはならないのです。
(たまに竜巻も発生します)
案の定、僕の載っていたシカゴ行きの飛行機も雷に行く手を阻まれまして、迂回したり旋回したりしているうちに、シカゴ(オヘア空港)への到着が大幅に遅れてしまいました。
乗り換えの飛行機(ニューヨーク行き)の出発まであと20分です。
「なんだ、20分あれば大丈夫じゃん」
と思う方もいらっしゃるかと思いますが、いちどシカゴのオヘア空港に行ってみるよろし。
ビックリします。
ドでかい空港です。
あれは空港というより、ひとつの都市ですね。
地下鉄も走っているし、商店街もあるし。
飛行機をおりたときに、乗務員から
「お客さん、走ってください。乗り遅れないように」
と言われました。
荷物を抱えて全力疾走。
あっちを曲がりこっちを曲がり、地下鉄に乗ったり降りたりして、乗継便のゲート(搭乗口)にギリギリ間に合ったわけです。
搭乗口で僕は言いました。
「あのー。荷物を預けてあるんだけど、荷物の乗継は大丈夫ですか?」
「とにかくお乗りください、お客様。すぐに出発しますから」と、係員のオネエサンが言いました。「荷物はなんとかします」
で、言われたとおりニューヨーク行きの飛行機に乗りこみました。
最後の乗客だったようで、すでに機内は満席です。
みんながジロジロ僕を見ています。
窓側の座席に座りました。
ふー。
「お待たせいたしました。まもなく離陸いたします」
そういう機内アナウンスがあり、機体はゆっくりと動きはじめます。
(飛行機が離陸前や着陸後に地上を走ることを、英語では「タクシー」といいます。←トリビアでした)
なんとか乗ることができて一息つき、窓の外を眺める僕の目に、あるものが映りました。
エディー・バウアー製の僕のトランクです。
いまごろ届いたらしく、僕のトランクを抱えたオニイサンと、飛行機の荷物係のオニイサンとがなにやら会話をしています。
首をふったりしています。
どうやらこういう会話らしい。
「おーい。最後の荷物が到着したぞ。これを乗せてくれ」
「無理だよ、もう。飛行機はほら、もう動き始めている(タクシーしている)」
というわけで、飛行機は離陸しました。
僕は自分のトランクが置き去りにされるのを目撃したトホホな状態で、ニューヨークに向かったのでありました。
皆さん、メリー・クリスマス。
松宮園生です。
難関、日本食育大学を受験予定の諸君!(←死語)。
入試まであと2ヶ月ですね。
実力だめしの模擬試験にチャレンジしてみましょう。
◆◆◆国語(100点満点)◆◆◆
以下の文章は「食の世界のスーパーパワー その3」(松宮園生)からの抜粋です。よく読み、設問に答えなさい。
内科医チイタッタ先生は、かつてネスレ社と契約していました。
そのチイタッタ先生のところに、若いネスレ社員が青ざめた顔でやってきたそうです。
ネスレ社員が言いました。
「先生。僕って異常なんでしょうか?」
「何があったんですか?」
「胃腸がおかしいんです。このあいだニンジンスティックを食べたんですけど、トイレにいったらニンジンスティックがそのまま出てきました」
「ふむ。それで?」
「リンゴを食べたんですけど、そしたらリンゴがそのまま出てきました」
「ふむ。それで?」
「ドライヤーズ(アイスクリーム)を食べたんですけど、そしたらドライヤーズがそのまま出てきたんですよ! 心配でなりません。僕は何を食べたらいいでしょうか?」
チイタッタ先生は穏やかに言いました。「何も心配いりません。ウ○コを食べなさい」
<第1問(語彙力。20点満点)>
最後の伏字(○)にあてはまるカタカナ1文字を答えなさい。
<第2問(読解力。40点満点)>
「ドライヤーズ(アイスクリーム)を食べたんですけど、そしたらドライヤーズがそのまま出てきた」ときのネスレ社員の気持ちはどのようなものだったか。100字以内で説明しなさい。
<第3問(想像力。40点満点)>
このあとネスレ社員はどのような返事をすると思うか。あなたの考えを100字以内で述べなさい。
◆◆◆数学(40点満点)◆◆◆
<第1問(高次方程式。20点満点)>
Aさんの BMI は n (エヌ)です。Aさんの体重(kg)に 100 を足したら、ピッタリAさんの身長(cm)となります。さて、Aさんの身長・体重を n を使って表しなさい。
「そんなことどーでもいいよ」と思うかもしれませんが(いやマジで、どーでもいいんだけど)、たまには我慢して考えなさい。
<第2問(幾何学。20点満点)>
三角形ABCで、AB=AC とする。C から AB におろした垂線が AB と交わる点を H とするとき、「メタボリック・シンドローム」という言葉の意味を答えなさい。
◆◆◆理科(60点満点)◆◆◆
<第1問(知識の正確さ。各20点。40点満点)>
(1)ポリフェノールとは何か。100字以内で説明しなさい。
(2)賞味期限と消費期限の違いをせっかくだから100字以内で説明しなさい。
<第2問(好奇心。20点満点)>
マルチタイプ(さまざまな栄養素がミックスされている)のサプリメントで、女性向けのものには含まれているが、男性向けのものにはしばしば抜かれているミネラルの代表格はなーんだ。
2つ挙げなさい(各10点)。
◆◆◆社会(100点満点)◆◆◆
<第1問(食育活動の目的。各30点。60点満点)>
あなたは食育活動をすることで「誰に」「どんな」影響を与えたいとマジ考えていますか。
(1)「誰に」について、分かりやすく100字以内で説明しなさい。
(2)「どんな」については、
「いままで××だった(before)のが、わたしの力で××に変わる(after)」
という表現を用いて100字以内で説明しなさい。
<第2問(身のまわりの食育環境の把握度。各10点。40点満点)>
(1)あなたが住んでいる都道府県の食育推進計画はどのようなものですか。他の都道府県と比べて特徴が分かるように100字以内で説明しなさい。
(2)あなたが住んでいる市町村の食育推進計画はどのようなものですか。隣近所の市町村と比べて特徴が分かるように100字以内で説明しなさい。
(3)他国と比べて日本の食育の特徴は何か。またなぜそのような特徴が生まれたのか。あわせて100字以内で説明しなさい。
(4)食育基本法が制定されたのは2005年6月10日である。その日、あなたはどこで何をしていたかを答えなさい。(←テケテケ警察署からの出題です)
◆◆◆英語(100点満点)◆◆◆
<第1問(リーディング。50点満点)>
次の文章を訳しなさい。
Fruit and vegetables help set you up for a healthier lifestyle.
Best of all, there is so much variety to choose from, all year long, there's enough to keep even the fussiest eaters happy.
To get the best health benefits, your 5 A DAY portions should include a combination of a variety of fruit and vegetables.
That's 5 portions altogether, not 5 portions of fruit and 5 portions of veg.
Here are 5 great reasons to eat 5 portions of fruit and vegetables A DAY:
* They're packed with vitamins and minerals.
* They can help you to maintain a healthy weight.
* They're an excellent source of fibre and antioxidants.
* They help reduce the risk of heart disease, stroke and some cancers.
* They taste delicious and there's so much variety to choose from.
<第2問(英作文。各6点。30点満点)>
次の日本語を英語にしなさい。
(1) てやんでえ、地産地消は死語じゃなくて立派な現代語じゃんよ。
(2) ビタミンCは熱に弱いんだよ。そこんとこよーく考えて、調理すんだぞ。
(3) 日本食は世界でブームみたいなんだけど、何人(なにじん)だか知らないけど怪しげな寿司なんか作っちゃってさー、笑える。
(4) 当店ではこのたび、安心安全な食材にこだわり、メニューを一新しました。
(5) だからといって「今までは安心安全な食材にこだわっていなかった」という意味じゃねえぞ。
<第3問(英作文。20点満点)>
ガイジンから
「日本人は食事の前後に手をあわせてなにやらもごもご言ってる人が多いでござるが、ありゃいったいなんでござるか?」
という意味の質問を受けました。
その質問にたくみな英語で答えなさい。
◆◆◆
国語 100点満点
数学 40点満点
理科 60点満点
社会 100点満点
英語 100点満点
合計 400点満点
受験生予想平均点 150点
合格安全圏 250点
×月×日 月曜日 快晴
今日から教いく実習生のお姉さんが
やってきました。
大学生です。
こばんゆかり先生とゆう名前なのだ。
ごはんじゃなくてこばんだ。
かん理えいよう士だ。
まなべかおりさんにちょっと似ています。
食育の先生になるそうです。
やさしい先生だと思うし、楽しみだ。
はじめてのじゅ業もたのしかったです。
宿だいはないのがせめてものすくいだ。
<今日勉強したこと>
体にだいじな3大えいようそというのがあるのだ。
きん肉はたんばくしつ。
エネルギーはたん水化ぶつ。
いろんなはたらきのししつ。
明日は7大えいようそを教えてもらいます。
お母さんに3大えいようその話をしたら感心していました。
◆◆◆
×月×日 火曜日 晴れ
朝、しょくいん室でさわぎだ!
太ったおばちゃんがきて、こばん先生をいじめてる!
僕はすがい君と見に行きました。
「ちょっとかわいいからって、食育をあまくみるんじゃないわよ。それになによそのかっこう。教しはジャージとスリッパでいいのよ」
と、おばちゃんが言いました。
こばん先生は
「ごめんなさい、ごめんなさい」
とあやまっています。
教とう先生は知らんぷりしています。
なんだろう。
おとなの事情だろう。
チャイムがなったから僕たちは教室に帰りました。
先生だいじょうぶかな。
今日も食育のじゅぎょうがありました。
<今日勉強したこと>
3大えいようそのほかにビタミンとミネラルがある。
あわせて5大えいようそだ。
人間は鉄も食べるのです。
鉄はミネラルだ。
お母さんにビタミンとミネラルの話をしたらたいへん感心していました。
◆◆◆
×月×日 水曜日 曇り
朝、しょくいん室でいち大じだ!
ふたたびだ!
太ったおばちゃんが10人くらいきて、こばん先生をかこんでる!
こばん先生が
「ごめんなさい、ごめんなさい」
と泣いています。
きょうとう先生が
「まあまあ」
と言ったのに、
「あんたはだまってなさい」
と言われてふきとんでしまいました。
ぜったいぜつめいです。
「おばちゃんたち、誰。なにしてるの」
とすがい君がきいたら、
「この女の食育はにせものよ。たいせつなことを教えないで、えいようのことばかり教えている。きのうあれほどもんくを言ったのに、またえいようのことを教えるなんてねえ。それは悪いことです。この紙をお母さんに渡しなさい」
と言われました。
おばちゃんがくれた紙には、
「食育の大切さを考えるははの会」
早ね早おき朝ごはん
いただきますごちそうさまはあい言葉
家ぞくだんらん
地さん地しょう
食のたいせつさを伝えましょう。
みんなで食育をもりあげましょう!
と書いてありました。
その日は食育のじゅ業がありませんでした。
こばん先生が早びきしたのである。
僕は家に帰ってお母さんにおばちゃんの紙を渡したら、
「食育の大切さを考えるははの会って、なんだかしょうわのきもった母さんみたいねえ」
と、にがわらいしていました。
しょうわのきもった母さんてだれだろう?
◆◆◆
×月×日 木曜日 曇り
3げん目はこばん先生の食育の時間でした。
きのうのおばちゃんたちが教室にはいってきて、じゅ業さんかんみたいに後ろに立ちました。
うでをくんでいます。
こばん先生はオドオドしています。
今日はえいようその話はしませんでした。
というのは、カルタをみんなでやったのでした。
おばちゃんたちが作ったカルタなのである。
でも少し悲しかったです。
「て」のふだを、すがい君とさかした君がとりあってけんかしました。
さかした君が勝ったので、すがい君は泣きました。
僕はさかした君よりすがい君なのに。
じゅ業が終わったあと、こわいおばちゃんたちが
「ほらね。えいようその話をするより、カルタをしたほうが子どもだちの目がキラキラしてるでしょう? これこそ食育よ」
とこばん先生にせっ教をしました。
それから、こばん先生はおばちゃんたちにどこかに連行されました。
おとなの事情だろう。
<今日勉強したこと>
日本ごには、あいうえお、のほかに、いろはにほへと、というじゅんばんがある。
カルタで勝つのには、はじめからねらうふだを決めて、ねらったふだはぜったいに取る。
お母さんにカルタの話をしたら
「で、どんなくをおぼえたの?」
「く?」
「先生がよんでくれたでしょ?」
「そんなのぜんぜんおぼえてないよ」
「食育カルタなのに、くをおぼえなかったのねえ」
お母さんはあきれていました。
カルタに勝つのにいそがしくて、くはよく分からなかったよ。
それが現実というものなのだ、あけち君。
◆◆◆
×月×日 金曜日 雨
今日も食育の時間におばちゃんたちが後ろに立っていました。
うでをくんでいます。
こばん先生は今日はジャージを着ています。
きのうまでよそいきのきれいな洋服を着ていました当の本人が、今日はちまよったか、ジャージで、スリッパをはいています。
今日もえいようその話はしませんでした。
というのも、こばん先生は紙しばいをしたからです。
おばちゃんたちが作った紙しばいです。
ニンジンとピーマンが旅行する話です。
すききらいをなくすために旅行する話です。
つまんなかった。
いつも見てるテレビにくらべたら、絵もへただしストーリーもたいくつだし、こういうのを子どもだましというのだ。
えいようその話がいいのにな。
お母さんが感心するようなことを勉強したいのに。
じゅ業が終わったあと、おばちゃんたちが
「それでいいのよ。やればできるじゃない。子どもだちの目がキラキラしてるでしょう? これこそ食育よ」
とこばん先生をほめていたので、うれしかったです。
ほっとしました。
<今日勉強したこと>
すききらいをなくすためには、旅行するとよい。
◆◆◆
おれは日記帳を閉じた。
部屋の整理をしてたら、はるか昔、7歳のころの日記帳が出てきたのだ。
そういや、あのころ、食育って流行ってたよなあ。
やたらと食育にうるさいおばさんたちがいたよなあ。
朝ごはん食えだの、
いただきますを言えだの、
ごちそうさまを言えだの、
箸を上手に使えだの、
やかましかったなあ。
「地元の野菜は世界一おいしい」
なんていうのも耳にタコができるほど聞いたなあ。
地産地消ってやつだ。
けど、隣の県にいるイトコに聞いたら、隣の県でも
「地元の野菜は世界一だ」
と言ってる食育おばちゃんがおおぜいいたようだ。
どっちが世界一なんだよ。
つーか、他の国といつ比べたんだよ。
お、3分たったな。
おれはカップラーメンのふたを開けた。
「あちちち」
指に湯気がかかったのだ。
ほとんど噛まずにカップラーメンを胃袋に流し込むと、こんどはコカコーラをごくごく飲んだ。
ふー。
ちょっとマンガ読も。
ちょっとだけ読んだら、こんどこそ勉強開始しなきゃな。
留年、したくないもんな。
でもちょっとだけ、マンガ読も。
ポテトチップスの袋を開けると、おれはマンガを持ったままごろんと横になった。
しかしアレだね、試験の日が迫れば迫るほど、ふだん読まない昔の日記を読んだりマンガを読んだりしていまうのは、なぜなんだろうね。
松宮園生です。
日本パクチー狂会
↑
ホントにある組織です。
僕は日本にいないので残念ながら活動には
参加できず、幽霊会員です。
世の中には
「男」
「女」
がいますね。
ほとんどの人ははどちからに属します。
「両方」
とか
「どちらでもない」
は、いるけれども少数派。
同様に、世の中には
「パクチー好き」
「パクチー嫌い」
がいると考えています。
「どちらでもない」
という中間の人はほとんどいないんじゃないかと思います。
「両方」
という人にはまだ出会ったことがありません。
要するに、パクチーは好き嫌いが明確に分かれやすい食材ではないでしょうか。
「日本パクチー狂会」
はパクチーを愛する人々による、健全な集まりです。
ただし僕自身は過激派でございまして、心のなかではひそかにこんなことを企画しています。
(1)「日本パクチー狂会」認定の政治団体、「日本パクチー党」を作る
(2)ザイオン共和国のモーフィアス大統領(ここをクリック)をそそのかし、資金援助をしてもらう
(3)総選挙に圧勝し、第1党となる。恐怖政治の始まり。
(4)高圧電流つき有刺鉄線で「パクチーの壁」を建設し、パクチー嫌いを隔離する
(5)パクチー爆弾を開発し、壁の向こう(パクチー嫌い地域)を爆撃する
(6)パクチー好き国家と「大東亜パクチー経済圏」を結成し、保護貿易を行う
(7)戦略パクチー兵器を開発し、非パクチー国家に侵攻する
(8)月面にパクチー前線基地を作り、太陽系支配の足がかりとする
(9)太陽系全域を手中に収めた後、冥王星を起点に銀河系進出を狙う
(10)銀河系の全惑星にパクチーを植えることを目的とし、行く手を阻む宇宙人たちを次々と撃破
(11)銀河パクチー帝国を樹立し…
はよ止めんかい!
◆◆◆
パクチーは呼び名がいろいろあるのでヤヤコシイですね。
初めてパクチーを食べたとき、当時のガールフレンド(←たまにはいるんだよ!)から
「中国パセリ」
という食べものだと教わりました。
次のガールフレンド(←たまにはいるんだよ!)は同じものを
「パクチー」
と呼んでいました。
当時は
「タモリのボキャブラ天国」
という番組が始まったばかりで、芸人さんではなく一般視聴者からの投稿を紹介していたと思いますが、そのときに
「インパク知(ち)」
という言葉が使われてて、僕の頭のなかでは
「パクチー」
「インパク知(ち)」
がごっちゃになっていたものよ。
その次のガールフレンド(←たまにはいるんだってば!)は同じものを
「コリアンダー」
と呼んでいました。
当時、
「サラマンダー」
てな題名のB級SF映画をさかんにテレビで宣伝しておりまして、
「コリアンダー」と「サラマンダー」の区別があまりつきませんでした。
そんなわけ、あるかい!
その次のガールフレンド(←たまにはいるんです!)は中国語での読み方を教えてくれたのですが、
「サンツァイ」
だったか
「サンチャイ」
だったか
「チャンサイ」
だったか
「チャンツァイ」
だったか
なにかビミョーに違う発音だったか
どれだったか分からなくなりました。
↑
じつは今でも混乱しています。
調べるなり人に聞くなりすればすぐわかる話ですが、面倒なのでほったらかしです。
◆◆◆
さて、「日本パクチー党」の銀河系支配の第1歩として、東京は経堂というところに
パクチー専門料理店
ができたといううわさが、ザイオン共和国に拉致されている僕の耳にも入ってきました。
先月オープンしたそうです。
拉致されていますので、自ら食べに行くことができません。
誰か行ったことある人がいたら、様子を教えてください。
後半です。
お手数でも、必ず前半(12月15日アップ)をお読みに
なってから、続きをお読みくださいまし!
◆◆◆
人々の不満がついに爆発します。
イル16世が30歳のとき(=ピエールも30歳)、政治犯を
閉じ込めていたシャルル牢獄を市民が襲撃しました。
革命の始まりです。
政治犯を解放した市民軍は、今度は王都プリウスに
進軍します。
大勢の国民が武器をもって合流し、プリウス郊外で
政府軍と激突。
プリウス市民も革命軍に参加し、政府軍はこっぱみじんに
打ち破られます。
革命軍は宮廷を占拠。
イル16世もマリー・パトリシアも捕えられてしまいました。
捕えられたとき、イル16世は中国から伝わった餃子の64個目を食べていたとされ、マリー・パトリシアは若い貴族を裸にして手錠をかけようとしていたと言われています。
しかしこれは、あくまでうわさです。
ピエールの屋敷にも革命軍がやってきました。
ピエールは抵抗せずに降伏。
革命軍は彼を、彼自身の屋敷の地下牢に閉じ込めました。
そこへ、捕えられたイル16世も移送されてやってきました。
2人は向かい合った牢屋に幽閉されました。
移送されてきたときのイル16世は、狂乱状態だったといいます。
食べていた餃子はとりあげられ、そのあと何も食べない(食べさせてもらえない)まま、移送されてきたのでした。
ピエールの知る限り、眠っているときを除いて、イル16世が10分以上「なにも口にしていない」状態だったことはありせんでした。
そんな国王が、革命軍につかまり、ピエールの屋敷に移送されるまでのあいだ、なにも食べものを与えられなかったということです。
それが、狂乱状態の原因でした。
ピエールの自伝によると、
「食物を与えられなかった陛下の目は、アヘン中毒者の禁断症状そのものだった。陛下は宇宙全体を呪いの言葉で埋め尽くすかのような叫び声をあげ、あまりの異常さに革命兵士のなかには嘔吐する者までいた」
そうです。
地下牢に入ってからも、国王の狂乱状態は続きました。
食事は1日に2度、粗末なものを与えられるだけです。
それでも食べているあいだはおとなしくなるのですが、食べ終わると「腹が減った」「腹が減った」と暴れはじめます。
しかし国王に忠実なピエールは、万一のときの備えをしていました。
王のための美味な保存食を、あらかじめ屋敷の地下に蓄えてあったのです。
自分自身が囚人であるために、その保存食を国王に渡すのが難しかったのですが、あるときチャンスが到来しました。
彼らを監禁している革命兵士のなかに、容姿端麗なピエールに恋をする男がいました(ピエールも男です。念のため)。
ピエールはその兵士をたらしこむことに成功しました。
兵士に命じて、保存食がイル16世のところに運ばれるようにこっそり仕組んだのです。
王は与えられた食べものをがつがつと口にほうりこみます。
その動きは飢餓の子どもそのものでしたが、王の体型じたいは飢餓の逆で、とんでもなくメタボでありました。
◆◆◆
国王の裁判が行われました。
狂乱するのを避けるため、国王には特例で食事が与えられ、彼は食べながら裁判を受けました。
死刑の判決がでました。
死刑の判決が出たというのに、国王はなんの反応もしませんでした。
ひたすら食べ続け、いまここで何が起きているのかをまるで理解していないようでした。
マリア・パトリシアも死刑の判決を受けました。
彼女はイル16世の処刑の前日に、ギロチンの露と消えました。
彼女は巨大な刃が落ちてくる直前まで、
「なんで自分がこんな目に遭わなければならないのか」
と怒鳴りつづけたそうです。
翌日はいよいよ、イル16世の死刑執行の日でした。
その日の早朝。
牢番の長(おさ)がやってきて言いました。
「イル16世陛下。陛下の処刑は1時間後に行われます。最後のときを安らかなお気持ちでお過ごしなさいますよう」
食事が支給されました。
最後の食事というわけです。
食べはじめたイル16世を尻目に、牢番の長(おさ)は部下の牢番たちともども、静かに立ち去りました。
向かい合った牢屋にいるピエールは、泣きながら国王に声をかけました。
この25年間のお礼と、自分も遠からずあの世に参ります、あの世でまたお会いしましょう、ということを言いたかったのですが、うまく話すことができませんでした。
嗚咽がでるばかりでした。
すると、それまで「最後の食事」をしていたイル16世の動きが、はたと止まりました。
彼の眼が宙をあらぬようにみつめ、顔がゆがみはじめます。
やがて、口がヘビのように大きく開かれ、数秒後、あの
「ずずずず、ずずずず」
という音がピエールの耳に届いたのでした。
23年前の、あの音…。
ピエールはその場にへたりこみました。
「ずずずず、ずずずず」
は続きます。
ほどなく、イル16世の口から黒いぶよぶよした塊が、ゆっくりと吐きだされてきました。
「ずずずず、ずずずず」
吐きだされた黒い「何か」が地面でとぐろを巻いています。
いつまでもいつまでも吐きだされてきます。
その量は、イル16世の体の大きさを超えていました。
なんと、その塊には「目のようなもの」がありました。
「目のようなもの」は、格子のすきまからピエールをまっすぐ見据えます。
凍りつくピエール。
やがてその黒い塊は、
「ずずずず、ずずずず」
という音を相変わらずたてながら格子をすりぬけて牢屋を出てきました。
こっちに来る!
ピエールはそう思いましたが、体を動かすことができません。
しかし黒い塊は方向を変え、
「ずずずず、ずずずず」
と地下のさらに深い闇へと消えていきました。
しばらくして、牢番が数人やってきました。
「時間です、陛下。刑場にお連れせねばなりません」
それまで口をぽかんと開けていたイル16世が、目をまるくして突然こんなことを言いました。
「ど、どうして僕はここにいるの? ここはどこ? 母上はどこ?」
その声や話し方は、30男のものではありませんでした。
子どもの言葉遣いです。
「なんでこんな暗い所にいるの? そなたたちは誰? ピエールはどこ? かくれんぼはどうなったの? ピエールは?」
「陛下! かくれんぼは終わりました。ピエールはここでございます」
ピエールは叫びました。
しかしイル16世はピエールを見て言いました。
「おまえはピエールじゃない。おまえは大人じゃないか。ピエールはどこ? ピエール! いたたたた。痛い、痛い!」
突然、腹部に手をあててうずくまります。
彼は、涙をポロポロこぼしながら、か細い声で、痛い、痛い、ピエール助けてと訴え続けます。
牢番の長(おさ)が決然と言いました。
「陛下、覚悟をお決めください。仮病を使おうとも、もはや逃れるすべはございませんぞ」
部下の牢番たちが、腹痛で動けないイル16世の肥満した体を牢から引きずり出し、ピエールの前から連れ去っていきました。
国王のすすり泣く声が、いつまでも残りました。
ピエールが親友イル16世の姿を見たのは、それが最後でした。
◆◆◆
ピエールはその後、裁判を受けましたが、死刑をまぬがれ、国のはずれにある小さな家に監禁されました。
政治に関わっていなかったことが、彼の命を救ったようです。
監禁された家で、彼は33歳のときに病死しました。
彼の死因については、とくに怪しい点はなかったとされています。
ピエールの自伝の原本は、プリウス博物館に展示されています。
自伝の最後に「得体のしれない黒い塊」のイラストが描かれており、このイラストが見えるように展示されています。
博物館員の説明によると、ピエール本人が描いたのではなく、腕のよい画家に描かせたものだそうです。
リアルな不気味さとあまりの迫力に、気分を悪くする人も少なくないとのこと。
You Tube にそのイラストが出ているといううわさも聞きましたが、まだ見つかっていません。
(「ビッグイーター」 完)
松宮園生です。
今回と次回は今までとちょっと毛色の
違う話です。
◆◆◆
イボンヌ朝最後の王、イル16世。
彼は非常な大食漢(大食い)としても
知られています。
そもそもイボンヌ朝は豪華絢爛を
きわめた王朝でした。
歴代の王のもと、毎晩、宮廷で
酒池肉林がくりひろげられました。
食文化も発達し、大食いであることは
自慢できることでもあったようです。
なかでもイル16世の食欲は群を
ぬいていました。
ピエールという男がいます。
イル16世と同年同日に生まれたということもあり、5歳のときに遊び相手としてイル16世に仕えることになりました。
どうして貴族でも裕福な商家でもなく「平民」の生まれであったピエールが、イル16世の遊び相手に選ばれたのかはよくわかりません。
しかし彼は生涯の友としてつねにイル16世のそばにいたようです。
イル16世から絶大な信頼を得ていましたが、決して政治にかかわることはありませんでした。
そのピエールの自伝を読んでいたら、不思議なことが書かれていたのでご紹介します。
イル16世は子どものころ、食が細かったそうです。
ほとんどの料理には手をつけずに残してしまいますし、味に工夫をこらした甘いお菓子にもあまり興味を示しませんでした。
宮廷での毎晩の宴会も、彼にとっては苦痛でしかありませんでした。
当然、当時の宮廷人とは思えないほど痩せていました。
王と妃は王子のことをたいへん心配しました。
ところがある日を境に、それが一変します。
イル16世(当時はイル王子)が7歳のとき、2人は貴族の子弟数人を交え、宮殿の広大な庭でかくれんぼをしていました。
貴族の子弟の1人が鬼(探す役)で、王子とピエールは連れだって花壇の裏に隠れました。
ピエールがふと振り向くと、今の今まで一緒にいた王子がいなくなっています。
ピエールは王子を探し始めました。
すると、別の花壇のかげから
「ずずずず、ずずずず」
という音がします。
本能的に危険を感じたピエールは、音をたてないようにこっそり、音のするほうに這っていきました。
花壇の隙間から奥をのぞきこんだピエールは、息をのみました。
王子が気を失って倒れています。
そこに得体の知れない黒いぶよぶよの塊が、覆いかぶさっていました。
王子よりも大きな、黒い塊です。
王子の口は大きく開かれています。
黒い塊は、王子の口から体内に入ろうとしているのでした。
「ずずずず、ずずずず」
という音は、その音だったのです。
ピエールは震えが止まらなくなりました。
やがて黒いぶよぶよは、王子の体に完全に入ってしまいます。
あんな大きなものが入ったにも関わらず、不思議なことに王子の体型は変わりませんでした。
王子は目をさまし、何事もなかったかのように平然と起き上がりました。
「腹が減ったな」
王子はつぶやきます。
腹が減った、という言葉を王子が口にしたのは、おそらくこれが人生の最初でしょう。
彼はかくれんぼのことなどすっかり忘れた風情で、宮殿のほうに歩きだしました。
◆◆◆
王子が変貌したのはそれからでした。
それまで食が細かったのが、とつぜん食欲の権化にようになりました。
出された料理を次から次へと平らげ、とどまるところを知らなかったのです。
急激な変化に周囲は驚き、医者の診察まで受けましたが特に変わったことはありませんでした。
それまで食の細さを心配していた王も王妃も、今度は王子の異常な食欲を心配するようになります。
王子は眠っているとき以外は、ほとんど絶え間なく食べ続けました。
宮廷での宴会でも、人々が目をみはるような食べっぷりでした。
当然、みるみる太りました。
当時の宮廷人は、宴会で美食を追及するために大食いをしていました。
大食いなのはイル16世だけではなかったのです。
大食いを続けるために、
「食べては吐き、吐いては食べる」
ということをするのが普通でした。
王子も食べたり吐いたりを繰り返すようになります。
吐いてはいますが、それでも体は太ります。
ピエールは引き続き、王子の遊び相手として仕えています。
あのとき花壇で目撃したことを、彼は誰にも言いませんでした。
怖くて言えなかったのです。
王子にも。
10年が過ぎました。
17歳になったとき(=ピエールも17歳)、王子は結婚をしました。
相手は隣国からやってきた、1歳年上の美女、マリー・パトリシアです。
王子の結婚をきっかけに、ピエールは王都プリウスの一角に大きな屋敷を与えられ、そこに住みながら宮殿に通うようになりました。
それまでピエールは宮廷の外に出ることがまったくありませんでした。
5歳のときに宮仕えを始めて以来、一度も出たことがなかったのです。
外に出てみて、ピエールは驚きました。
あれほど豪華絢爛な宮廷の様子に比べ、プリウスの市民のなんと貧しいことか。
王侯貴族や一部の恵まれた商人をのぞけば、そこにあるのは貧窮でした。
人々はボロ雑巾を身にまとい、今日の食べ物を求めて市内を徘徊していました。
イボンヌ王朝に対する無言の怨嗟の声も、ピエールには聞こえてくるように感じました。
数ヶ月後、父王が亡くなりました。
王子は即位してイル16世になります。
王となった彼は、ますます食べるようになりました。
国家予算を使って食べるわけですから、生半可なものではありません。
来る日も来る日も豪勢な宴会をもよおし、食べては吐き、食べては吐きを繰り返しました。
国の政治は臣下に任せ、自分は食べること以外にあまり関心を示さないようになります。
妃のマリー・パトリシアは食べてばかりの夫を軽蔑しはじめます。
さっさと寝室を別々にし、美しい宝石と、高額な衣装と、イケメン貴族との浮気にうつつを抜かすようになりました。
民衆の間でが貧困と食料不足が広がっているという話を聞いたときに
「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」
というセリフを彼女が言ったという話は有名です。
本当に彼女が言ったのかどうかは分かりませんが、このセリフがプリウス市民のあいだにうわさとして伝わると、市民はますますイボンヌ王朝を憎悪するようになりました。
(以下次号)