ホーム > マツミヤ倶楽部 >

2007.11.26 23:23

アマニ・ユニバース 後編

スポンサードリンク

松宮園生です。

前回のあらすじ)
流しの料理人ラザフォードから、大量のフラックス
シードを2回も送りつけられた僕。
1回目はすぐに転売したのでよかったのですが、
2回目のは転売禁止になっていました。
そのため、アパートがフラックスシードの袋で
足の踏み場もないほどでした。

◆◆◆

フラックスシードは、アマニ(亜麻仁)ともいいます。
* フラックス=亜麻
* シード=仁(=種のこと)
です。
地中海地方原産の植物で、ヨーロッパでは「健康によい食べもの」として広く普及しているそうです。
日本人にはあまりなじみがありません。

日本人はゴマをよく食べますね。
じつはフラックスシードは、ゴマとよく似ています。
どちらも種を食用としています。
ゴマにはゴマ油があるように、フラックスシードにはフラックスシード・オイル(亜麻仁油)があります。
ゴマが日本人や中国人に愛されているように、フラックスシードはヨーロッパ人に愛されています。
おいしさ度・健康度も同じくらいの感じです。

たとえば

* 日本人ひとりあたりゴマを食べる量
* ドイツ人ひとりあたりフラックスシードを食べる量

この両者はほぼ同じだそうです。

カナダにサスカチュワン州というところがありまして。
ここがフラックスシードの最大の生産地らしく、サスカチュワン州の企業は何とかして日本人にゴマの代わりにフラックスシードを買ってほしいと思っています。
僕も相談を受けています、
しかし日本人に
「ゴマを捨ててフラックスシードを食え」
といっても難しいだろうなあ。

さて、アパートに送られてきた1トン分のフラックスシード。
25kg入りの袋が、40個もあります。
これをどうしようか。

ビールのつまみに食べました(旨い)。
シリアルに混ぜて食べました(ヘルシい)。
パンにまぶして食べました(旨い)。
しかし「在庫」はまだまだあります。

知り合いの日本人に配りました(わりと好評)。
浮気農家のジョン・ソイビーンに「何とかしろ」と袋を押しつけました(こいつは商売になるなら何でもします)。
でも「在庫」はまだまだあるのでした。

誰か買って。
または大量に食べに来て。

◆◆◆

そもそもなぜラザフォードがフラックスシードを送ってきたのかというと、こんないきさつがありました。

去年のある金曜日。
新しいクライアント(日本に食品を輸出したい会社)をラザフォードが紹介してくれるというので、いそいそと出かけた僕。
クライアントのオフィスまで2時間の長距離ドライブです。
僕のクルマ(ビューイック)で出かけました。
ラザフォードと僕は、交代で運転することにしました。

クライアントとの好意的な面談を終えた帰り道。
ラザフォードが運転する番でした。
エバレットというところにさしかかったところで、
「知り合いに挨拶をしたい。ちょっと寄っていいか。10分で済む」
とラザフォード。
「どうぞ」
僕が答えると、ラザフォードはハンドルを右に切ってフリーウェイを下り、エバレットの市街地に入っていきました。

彼がクルマ(ビューイック)を停めたのは街外れの製材所です。
「ここの社長が意外にグルメでね」ラザフォードは言いました。「ときどき仕事をくれるんだよ。お前も来るか? 紹介しよう」
ラザフォードと僕はクルマを降り、工場のほうに歩き出しました。

数歩と歩かないうちに、事件は起きました。
ガシャン!
背後で大きな音がしたのです。

振り返ってびっくり。
なんと僕の身長より直径の大きなタイヤを持つペイローダー(工事現場などで使われる、運搬用の大型機械)が、ビューイックに背後から激突していました。
もうすこし正確にいうと、ビューイックの後ろ半分が巨大なペイローダーの下敷きになっていました。

(オスのアフリカ象が、小柄なメスの鹿と交尾しようとして失敗し、鹿が圧死しかけている…)
自分のクルマが潰れているというのに、僕はそんなけしからん想像をしてしまったのでした。

ケガ人は誰もいませんでした。
ペイローダーも無事でした。
破壊されたのはビューイックのみ、ただし修理不可能です。

とりあえず僕は保険会社を呼び、あらわれた担当者に事故処理をやってもらいました。
保険金でクルマを買うことができるというので、そっちのほうもひと安心です。

ただ、保険金の額の問題で、前と同じビューイックを買うことはできませんでした。
格落ちの小型車になってしまいました。
つまり実質は、お金を損したわけです。

ラザフォードはこの点を申し訳ないと思ったようです。
「あそこにクルマを停めたおれにも大いに問題がある」ラザフォードは殊勝にも言いました。「前方不注意なペイローダーが一番悪いんだが」
で、だいぶたってからですがお詫びにフラックスシードを送ってきたのでした。
(なぜそれがお詫びになるかは、前回をお読みください)

◆◆◆

書いてて思い出したのですが、その日はもうひとつ事件がありました。
名づけて「スピード事件」。

「クルマ大破事件」が起きるほんの2時間前のことです。
ラザフォードと僕は交代で運転をしていましたが、そのときもラザフォードの番でした。

何のきっかけだったか、ラザフォードが資産運用の話をし始めまして、そのうちぷりぷり怒りだしました。
前の年に購入した投資信託の成績が不満だというのです。
彼はFRB(連邦準備銀行)の金利政策が間違ってるとか、ブッシュ政権の経済運営スタッフは阿呆だらけだとか、アメリカにはろくなファンドマネージャーがおらんとか、いろいろまくしたてました。
(投資信託の成績が良ければ、逆に褒めちぎっていたに違いありません)

「言いたいことは言い終わったかい」僕は助手席で答えました。「じゃあ悪いけど、次はスピードメーターを見てくれ」
助手席の僕からはスピードメーターが見えなかったのですが、周りの景色が異常な速さで遠ざかっていくのを見れば、スピードを出しすぎているのは明らかでした。

案の定、後方から点滅するライトが迫ってきました。
パトカーです。

ラザフォードは「ちっ」と舌を鳴らし、さらにアクセルを踏みました。
スピードを上げてパトカーを振り切ろうとしたのです。

「おいおい、それはヤバいよ」
僕は大声を出しましたが、ラザフォードはますますスピードを上げました。
「やめろってば!」
ようやく、ラザフォードは我にかえった様子でブレーキをかけました。

「ついついカッとなっちまった」
ラザフォードはばつが悪そうにつぶやきました。

クルマを寄せ、おとなしく待っていると、警官がやってきました。
「何で止められたか分かってるかあんた」と警官。
「たぶんね」とラザフォード。
「免許証、見せてもらおうか」
黙って免許証を差し出すラザフォード。
警官は言いました。
「おれは明日から休暇でね。今日もそろそろ切り上げて帰ろうと思ってたんだ。それなのにスピード違反なんかしやがって。おまけに逃げようとしただろ、あんた」
「…」
「おれだって意地悪で取り締まりをしているわけじゃない。できればやりたくないんだ。帰りたいんだ。違反切符を切ったり書類を書いたりするのにどれだけ手間がかかるか、あんた考えたことあるか」
引き続きラザフォードが黙っていると、警官は続けました。「というわけでおれも早く帰りたい。あんたの言い訳しだいでは、見逃してやってもいい。どんな理由でスピードを出したのか言ってみな。今まで聞いたこともないような言い訳を言うことができたら、合格だ」

そう言われて、ラザフォードは少しのあいだ考えました。
それから、こう言いました。
「先週、女房が警官と駆け落ちしちまって。さっきは、てっきりあんたがその警官で、彼女を返しに来たんじゃないかと思ったんだ…」

「よい週末を」
警官は言い、パトカーは去っていきました。

人気ブログランキング ← 応援クリックおねがいします。

  • ブックマーク:
  • このエントリーを含むはてなブックマーク
  • BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマーク
  • この記事をクリップ!
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • この記事をChoix!
スポンサードリンク

関連記事:12件

コメントを投稿