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2007.11.10 01:14

タリボン

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(注意)
食事中には読まないことをオススメします。

◆◆◆

テケテケ村でイチゴ農家をしている舎弟の小判大介が、仕事に余裕ができたのか、突然アメリカに遊びに来ました。
理由は分からないのですが、さっきから
「浮気農家のジョン・ソイビーンを紹介しろ」
とやかましい。
でもこの僕が、そんなメンドクサイことをするはずがありません。
小判大介の要望は、黙殺です。

まあしかし、友が遠方から来てくれるのは喜ばしい話です。
観光案内でもしてあげましょう。

そんなわけで、小判大介と連れだってロサンゼルスの繁華街に出かけた僕。
繁華街の一角にある、有名な自然食品店をぶらぶらしていたときのこと。
その店を仮に
「食育原理主義の店 タリボン」
と呼ぶことにしましょう。

同じ自然食品店でもホールフーズ・マーケットあたりは内装も近代的。
雰囲気も清潔で居心地がよいのでけっこう「安心して遊べる」。

しかしタリボンはぜんぜん違います。
入った瞬間、
「あ」
思わず声が出ます。
敵に追われているスパイが、隠れようとしてそのへんの空き家のドアをあけたら、そこにも追ってがいた。
そんなときの
「あ」
になんとなく近い。

たちこめる妖気。
嗅いだことのない不思議なアロマ。
ビミョーに静かな店内。
至るところにいるのに、気配のしない店員たち。
明るいのか暗いのかよくわからない店構え。
「IN(入口)」と書いた立て札はあるのに、「OUT(出口)」の立て札が見当たらない。
仏像、立ってます。
そんなたたずまいです。

怪しいもの好きの小判大介はタリボンが一目で気に入ったらしく、さっそくお土産選びを始めました。

小判大介がアメリカにいることはテケテケ村の全員にバレています。
つまり彼は全員からお土産を期待されているわけです。
あの、扱いにくい「ミスミのジイサン」も例外ではありません。
ムスっとしているくせに、お土産がほしいのです。
もしお土産を買わずに帰国したら、いろいろ都合の悪いことが起きることでしょう。

ですので、お土産をどうしようかと悩んでいた小判大介にとっては、タリボンはまたとない「漁場」なのでありました。

小一時間かけてお土産を選んだ小判大介。
イグサで編んだような買い物カゴが、有機とかそういうのなんだろうけど正体不明の食品でいっぱいになっています。

そのときです。
「松宮さん、これ、どういう意味ですか?」
サプリメントっぽいのが並んでいる棚のところから、小判大介が手まねきをしています。
「アンチ・パラシテって何ですか?」

見ると、その棚には大きく
「ANTI PARASITE」
と書いてありました。
ローマ字読みをすれば「アンチ・パラシテ」ですけど、英語読みをすると「アンタイ・パラサイト」です。

うげ。
寄生虫対策のサプリメントだ…。

「き、寄生虫ですか?」
小判大介も目を白黒(←死語)させています。
「そんなサプリメント、あるんですか? しかもこんなにたくさんの種類が?」
「オレもこんなの、初めて見たよ」

寄生虫対策サプリの棚は、両手を広げたくらいの幅で、2メートルくらいの高さがありました。
そんな棚いっぱいに、いろんな種類のサプリメントが並んでいたのです。
これはいったい何を意味するのでしょうか?

僕は冷や汗をたらしながら言いました。
「店の奥に、オーガニック野菜のコーナーがあったよな。きっとあれ、筋金入りのオーガニック野菜なんだろう」
「筋金入りのオーガニック野菜?」
「だから食べると、寄生虫が…」
小判大介の顔色が変わりました。「や、やめてください」
「ここで買い物をする人は、自然な食生活をするためなら、寄生虫がわいても構わないと思ってるんじゃないか?」
小判大介は黙りこみ、買い物カゴいっぱいに詰めこんだ商品を元の場所に戻し始めました。

この店で買い物をする人は、ロサンゼルスのなかでもわりと生活が豊かで、ロハスっぽいライフスタイルをしているはずです。
ある意味、最先端の人たちなんだけど。
その最先端の人たちは、寄生虫を受け入れる気持ちになっているんだ…。

意気消沈して店を出た小判大介と松宮。
西海岸のさわやかな夕陽がまぶしかったのが、唯一の救いでありました。

読者のみなさま、ゴメンナサイ。
今回はショックのあまり、オチ無しです…。

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