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2007.11.22 16:33

タイヘンダン その2

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松宮園生です。

前回のあらすじ)
このシリーズは、食品の貿易に携わる
松宮が、皆さんの食卓に外国から
食品を届けるために、どんなに
不眠不休で地味な苦労をしているかを
激白するシリーズです。
聞くも涙、語るも涙の物語なのダ。

◆◆◆

日本に食品を「輸出」したい外国企業はいっぱいあります。
日本は食料の6割を輸入してますので、外国企業にとっては魅力的な市場です。
で、何をどーやったら日本人に食べてもらえるのか。
外国企業のそういう悩みに答えるのが僕の仕事です。

日本に食品を「輸入」したい日本企業もいっぱいあります。
彼らはよく海外に出かけては、
* 昼は「日本に輸入したら売れそな品物」をいくつもいくつも買いあさり、
* 夜はホテルに戻って吟味大会をしています。
で、吟味した結果、ぜひ日本に輸入したい品物があったとします。
輸入したいけど、相手の会社は日本への輸出に慣れてないみたいだ。
慣れてない会社に日本向け輸出のイロハを教えるのはしんどいな。
誰か教えてやってくれよー。
そういう企業の手伝いをするのも僕の仕事です。

つってもなかなか体力を使う仕事でございまして。
理由は2つあります。

1つめは、することが多くてやってもやっても終わらないことです。
2つめは、コミュニケーションがどきどきブラックホール化することです。

詳しく書きますと。

■「やってもやっても終わんねえ」

外国企業のお手伝いをするときに発生する現象です。
何をどうやったら日本人に食べてもらえるのか。
これはマーケティングの計画を立てることと同じです。
つまり僕は外国企業のために日本進出のマーケティング企画書を作って差しあげるわけですが、この「企画書」というものが曲者(←死語)でございます。

企画書は書いても書いても終わりがありません。
企画書の提出期限(〆切)が1週間後だとしましょう。
同業者(企画畑)の方なら賛成していただけると思いますが、提出期限(〆切)前に余裕をもって企画書ができあがるなんてことは滅多ありません。
ほとんどの場合、ギリギリに仕上がります。

なぜそうなるかというと、企画書のようなものは「これで完璧」という区切りがないからです。
いちど書いた企画書を見直してみて、改善しようと思えばいくらでも改善できます。
その気になれば、永遠に改善し続けることができます。
ですので、企画を考える人(プランナー)は、〆切ギリギリまで企画書を直し続けます。
気がついたら徹夜してます。

提出期限(〆切)が来てしまったという理由で、この「果てしない改善作業」に終止符が打たれます。
「完成したから」終わるのではありません。
「時間切れだから」終わるのです。
逆にいえば、提出期限(〆切)がなければ仕事は終わらないのです。

「それって体キツくね?」
と思いませんか?
その通りです。
企画書はひとつだけ作るわけではなくて、同時に複数の案件を抱えるのが普通でございますし(そうでないとメシが食えません)、こないだ書いた企画書をクライアントの要望にあわせて書き直したりするようなこともあるものですから、〆切が次々やってきます。
次から次へとやってくる〆切。
漫画家か?

疲弊します。
へろへろです。
ほどよい加減で妥協して手を抜けばよいのかもしれませんが、クライアントのことを思えば手を抜けません。
「マツミヤの企画って、この程度か」
と思われたら商売は終わりです。
(もう終わってたりして)

■「コミュニケーションがブラックホール化する」

日本企業のお手伝いをするときに発生する現象です。
ものすごく日本っぽい理屈を、英語で伝えなくてはいけないけど、伝わらない。
これです。
日本企業の人は、自分が英訳する必要がないので、平気で異常な日本語を僕に投げてきます。

「そんなの関係ねえ」というギャグを、英語で伝えて笑わせろ。
みたいな難しさがあります。
(ちょっと違うか)

参考までに「そんなの関係ねえ」をムリヤリ英語で口語っぽく言うとしたら何と言うか、いくつかパターンを考えてみました。

* So what, you bastard? (それがどうした)
* What the hell does it have to do with me? (それが私と何の関係があんの)
* Doesn't matter to me. (どーでもいいよ)
* That's none of my fxxking business. (オレの知ったこっちゃないね)
* That's your problem. (あんたの問題だろ)

これで笑うガイジンはいないと思うけど、ガイジン相手にお金を貸してる人で、厳しい取り立てをしたい方は参考にしてください。
ワンポイント・レッスンでした。

話を戻して、ブラックホール化する事例をひとつ。
こんなメールが日本から来たりします。

「松宮様。お世話になりますなあ。例のニュートリション・バー(棒状になった甘いお菓子で、栄養素が添加されています)のことやねんけどな、食品衛生法で制限されちょる添加物が入っとったんよ。制限値は、全体の重量の1パーセント以下やて。ウチのほうで検査してみたら、0.95パーセントやった。いちおうセーフや。セーフなんやけど、もうちっと数字を下げたいねん。念のため0.5パーセントくらいまで落として製造してくれへんかなあ?。あと、価格は50セント下げてほしいんよ。先方さんと交渉たのんますわ」

こんな返事を書きました。
「テケテケ商事 大友様。もともとこの商品は生産量が少なくアメリカ国内だけで売り切れてしまいます。それを日本向けに買おうというので、売り渋る彼らを懸命に口説いています。もともと彼らは日本に輸出する気がなかったのを、われわれが口説いて輸出させようとしているわけですよね。この状況で値下げを言うのは困難ではありませんか。さらに、該当する添加物を0.5パーセントに下げるためには製造工程を変えなければなりません。製造工程を変えるとコストがかかりますので、彼らは嫌がるか、または値上げを要求してくるはずです。2重の意味で値下げは無理ではありませんか」

「松宮様。そこを何とか、武士道精神で切り抜けてもろたらよろし」

「大友様」僕はぶち切れていましたが、丁寧な返事を書きました。「日本人と違って彼らは合理的にものを考えますので、武士道とか人情とかは少なくともビジネスの世界では通用しないです」

「松宮様。さいですか。アメリカ人やもんなあ。ははは(ポリポリ)。ではこうしまひょか。10年の長期契約をすんねん。毎年コンテナ20本分の数量を買うと約束するんや。大量に安定して買ういうて約束してやったら、あいつら製造工程変えてくれるやろし、価格も下げてきよるやろ」

「大友様。分かりました。10年間安定して大量に買ってあげれることを約束できれば、彼らも考えを変えるかもしれません。では約束の証拠として、覚書に署名したものを送ってくれませんか。先方は貴社の社長の署名を欲しがると思います」

「松宮様。覚書? そりゃ無理や。書面を渡してもたら、約束果たさないかんやん」

「大友様。はあ? 約束をするんじゃないんですか?」

「松宮様。そりゃ約束してもええけどやな、できんかもしれんし…」

なんじゃそりゃ。

と思ってたら、追加のメールが来ました。

「松宮様。まあ、あんたには苦労かけるけどやな、あんまし細かいことごちゃごちゃ言わんと、とりあえず日本向けをやってみようや。まずは輸入して、売ってみる。すべてはそこからや。そんなふうに伝えてな。頼んまっせ」

そんなわけのわからん英語、話せるかい!

聞くも涙、語るも涙の物語でした。

(以下次号)

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