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松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
繁栄にあぐらをかき、飽食をむさぼる先進国。
彼らに鉄槌を下すことにした全能の神様は、
「ウエルネス天国」
「メタボ地獄」
を作りました。
ストイックに生涯を全うしたらウエルネス天国行き。
飽食におぼれメタボのまま死んだらメタボ地獄行き。
さらに神様は、人間界にも介入します。
「メタボ撲滅同盟ニキータ」
なる秘密結社に命令を下し、メタボな人を次々と抹殺してゆきました。
抹殺された人は、当然メタボ地獄行きです。
このシリーズ(21世紀神様の悩み)は、そうしたちょっとすごく怖い時代を懸命に生きる人々を描く、壮大なヒューマン・ドラマです。
(そうだっけ?)
◆◆◆
2XXX年。
国会で、
「メタボ基本法」
がついに可決されました。
メタボ犯罪を取り締まる法律です。
つまりメタボな人を裁判にかけ、有罪になったら
「メタボ刑務所」
に送り込むというキツーイ法律です。
メタボ刑務所では厳しい保健指導が行われ、メタボから脱却するまで出所できません。
そんなわけで、全国各地でメタボ裁判が始まったのであります。
メタボ警察がメタボな人を検挙し、被告人は「メタ専」弁護士を雇って裁判にのぞむのでありました。
◆◆◆
ある地方裁判所で判決が読み上げられました。
「被告人、松宮園生を3ヶ月の保健指導に処す」
傍聴席がざわめきました。
なんと日本食育大学の現役准教授が有罪判決を受けたのです。
本来なら人々をメタボから救うべき立場の人が、有罪とは。
実をいうと、保健指導や食事指導、食育を仕事にしている専門家のくせに、メタボ判決を受けた人は何百人にも達していました。
「実施する側の自己管理がなっていないじゃないか」
ということで、社会問題になってきていました。
そんな中、警察の手は「緑黄色の巨塔」日本食育大学にまで及び、まずは下っ端の松宮准教授の逮捕劇となったわけです。
しかし松宮准教授はこの判決を不服とし、無罪を主張して高等裁判所に控訴しました。
「いまのメタボ基準は厳しすぎる」
と主張するグループ(※)が弁護団を形成し、検察側と全面対決の姿勢を見せました。
裁判は政界をも巻き込み、泥沼化の様相を呈してきました…。
(※)2005年に日本肥満学会が
* 腹囲(へその位置で胴回りを測った数値)85センチ以上の男性はメタボ要注意!
* 腹囲90センチ以上の女性はメタボ要注意!
と提唱し、それが厚生労働省のメタボ基準としても採用されています。
ところがこの基準、
「男性の数字が女性の数字より小さいのはおかしい」
などといった批判を受けています。
最近の例では、東北大学の医学部が日本肥満学会の基準値に異論を唱えており、両者のあいだで激論が交わされています。
◆◆◆
「メタボ刑務所」に服役中の囚人は、刑務官(管理栄養士)の保健指導を受けます。
コミュニケーション上手な管理栄養士が刑務官に選ばれていますので、保健指導自体には人気がありました。
しかし毎朝6時に朝礼があり、
「脱メタ宣言」
を大声で合唱させられるのにはウンザリでありました。
こんな内容です。
↓
<脱メタ宣言(食事・食育編)>
作詞・作曲: 管理栄養士 佐久間象子(←誰?)
早寝早起き朝ごはん
神に誓ったその日から
あなたとわたしの本能寺
忘れ敵(かな)わぬジャンクの味を
忘れてみるのもテクニック
食で養生、大往生
ピンピンコロリと来たもんだ
オーガニックに全粒粉
カルタ覚えて紙芝居
家族団らん地産地消
レッツビギン、ラララ
レッツビギン、ラララ
まだまだ続くのですが、書いてて恥ずかしくなったのでここで止めます。
◆◆◆
「メタボ刑務所」での刑期(保健指導)を終えて出所するときは、こんなベタな場面が繰り広げられます。
↓
服役囚 「お世話になりました。おかげさまですっかり痩せました」
刑務官(=管理栄養士) 「もう2度と、こんなとこ来ちゃだめよ」
服役囚 「へえ。これからは心を入れ替えて真面目な食生活に励みます」
刑務官 「リバウンドしないでね」
服役囚 「決していたしません」
↓
服役囚は塀の外に出て、ベタにこう言います。
「ああ、シャバの空気はうめえなあ…」
「あなた」
振り向くと、妻が小さな女の子の手を引いてて立っています。
妻の目には涙が。
「お帰りなさい…」
「ただいま…」
見つめあう2人。
妻が娘に向かって言いました。
「あなたのお父さんよ。こんにちはって言いなさい」
しかし女の子は恥ずかしがって母親の陰に隠れてしまいました。
なんつて。
こんなん書いてて恥ずかしいのは、こっちだよ。
◆◆◆
実際には、前科のある人間が再犯する割合は小さくありませんでした。
メタボ犯罪との戦いはこれからも続くのです。
(以下次号)