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松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
ザイオン共和国で起きた、モーフィアスによる
「食育革命」
の影響を受け、日本にも
「日本あかるい食育党」
が誕生しました。
と想像してみてください。
(ザイオン共和国およびモーフィアスについてはここをクリック)
「日本あかるい食育党」の党首(なぜかちょっとメタボ)の選挙演説を聞いてみましょう。
◆◆◆
有権者のみなさあん。
わたくし、このたび衆議院選挙に立候補いたしました、「日本あかるい食育党」総裁、佐久間象子です。
わたくし、
* 管理栄養士
* 栄養教諭
* フードコーディネーター
なんですよ。
それから
* 食育必死講座1級
* 食育プリーチャー
* 食育推進士試験ムラサキ合格(←?)
* 炭水化物のソムリエ
* 日本カルパッチョ協会認定カルパッチョ講師
でもあるんですよ。
だからというわけじゃありませんが、わたくし、食育ならだれにも負けません。
(思いっきり「だから」って言ってるよ、この人)
みなさん。
日本は食育の国だって知ってましたか?
え、知らない?
ああなるほど、知らないんですね。
じつは日本は食育の国なんですよ。
だから食育が大事。
言われてみれば、そう思うでしょう。(←思うの?)
そのことを知らない人が多すぎる。
年金問題なんて食育の問題に比べたら、そんなのもう。
食育の大切さ、ひろく国民のみなさまに知らせなきゃ。
そう思って立候補したんですよ。
(年金問題を見下してるよ、この人)
日本は朝ごはんの国だって知ってましたか?
日本は朝ごはんの国なのです。
だから朝ごはんを食べないと、日本は日本でなくなるんですよ。(←そうなの?)
石油の値段が上がってる?
なにを言ってるんですか。
そんなの、地産地消しないからダメなんですよ。
国産の食べものを食べればフードマイレージが減って環境負荷も減って石油なんかに頼らなくったって何とかなります。
石油の値段が上がっても日本は大丈夫なんですよ。
でも朝ごはんを食べないで日本は大丈夫なんでしょうか?
(ずいぶんぶっ飛んだ質問です。返事に困りますね)
朝ごはんを食べるときは、家族団らんで、箸を上手に使い、いただきます・ごちそうさまを言うんです。
それが日本です。
知ってましたか?
家族団らんです。
個食はいけません。
命をいただくからいただきますなんですよ。
それに比べたら、防衛省の事務次官がああしたのこうしたの、大したことないじゃありませんか。
(そんなの比べろって言われても…)
みなさん。
食育って大事なんです。
それを広く伝えたい。
ニンジンにはリコピンがあるんです。
トマトにはナスニンがあるんです。
ナスにはビタミンC。
レモンにはカプサイシン。
トウガラシにはアリシン。
タマネギにはベータカロチン。
知ってましたか?
食育を勉強したら、こういうことが言えるようになるんです。
そしたら、凶悪な犯罪も減るんです。
素晴らしいとは思いませんか?
(野菜と栄養素の組合せ、1個ずつずれてるよ)
みなさん。
そして有機農業を大事にしましょう。
子どもたちをつれて有機農場に行きましょう。
命に触れて。
取れたての有機ピーマンのおいしさを伝えましょう。
知ってましたか?
それが日本です。
日本はお米の国です。
アイガモで作ったお米はおいしいんですよ。
お米のレシピはお任せください。
当選したあかつきには、国民のためにレシピを提供することをお約束いたします。
(欲しくありません)
日本あかるい食育党はこれからも国民の皆さんに食育の大切さを説いてまいります。
日本あかるい食育党。
わたくし、総裁の佐久間象子です。
佐久間象子。
佐久間象子。
みなさんの1票が、わたくしの食育活動の源泉でございます。
佐久間象子。
佐久間象子。
佐久間象子です。
佐久間象子を男にしてください。(←医者いけば?)
なにとぞ、なにとぞ。
皆さんの清き1票をお願いいたしまあす。
◆◆◆
<選挙結果 ★…当選>
★赤島幸雄(自民 新) 155,745票
★大池薔薇子(民主 新) 149,970票
葉竹乃木夫(無所属 新) 26,022票
小判ゆかり(無所属 新) 9,914票
(中略)
佐久間象子(食育 新) 6票
この結果に怒り狂った佐久間象子は、ますます食育に傾倒し、
「アーケイディア食育原理主義教団」
に入信、各地で
「学校給食の献立に異議あり!」
というビラをまくなど、「食育テロ」を起こすようになります。
人々は苦笑いをしながら、触らぬ神にたたりなしという呪文を唱えつづけましたとさ。
◆◆◆
<エピローグ>
佐久間象子の獲得した6票のなかに松宮園生が含まれているのではないかという疑惑があがっています。
本人は強く否定していますが、警察による取り調べが淡々と進められています。
松宮園生です。
サンクスギビング(感謝祭)・ホリデーと
呼ばれる連休が明けました。
アメリカもこれからクリスマスの準備に
入ります。
サンクスギビングからクリスマスまでの
約1ヶ月は
「ホリデーシーズン」
と呼ばれています。
家々はクリスマスのイルミネーションに
飾られます。
住宅街によっては街ぐるみでイルミネーション
を派手にしている場合があり、それを見物に
来る人々でさながらちょっとした観光地
みたいになっています。
ふだん人と別れるときの挨拶は
「Have a nice day.(よい1日を)」
だったり
「Have a good week end(よい週末を)」
だったりしますが、この時期はそれが、
「メリークリスマス」とか
「Happy Holidays.(楽しい連休を)」
とかに替わります。
昨年の今頃ですが、クライアント企業がクリスマスパーティーをするというので、余興(←死語)として日本のクイズダービーもどきを企画してあげたら結構ウケました。
(クイズダービー、昭和のクイズ番組ですけど、みなさんご存じですか?)
で、今年も何かそこそこ大掛かりな余興を企画してくれと言われています。
さて何にしようかな。
気前のいいことに、今年は企画料(小遣い程度だけど)をくれるそうです。
◆◆◆
この時期は(日本もそうだけど)ホームパーティーが開かれることが多かったりしますね。
アメリカのヘルシー系の料理雑誌なんかを本屋で立読みすると、今年は
「ストレスフリー(ストレスのない)パーティー食」
というテーマの記事が目立ちます。
ふうん、今年はそういうパーティーが流行りなんだ。
日頃ストレスを抱えているゲストの方々のために、ヒーリング効果のある食事を出してあげたりするのかな。
最初はそう思いました。
ところが読んでみると違ってた。
こういうことでした。
↓
「ホームパーティーなんて、実は面倒くさいのよね。料理作るのもヤ。ベジタリアンの人がいたらどうしようとか、考えなくちゃいけないし。後片付けもヤだし。ケータリングで済ませたいけど、そんなことしたらダンナがヤな顔するし…。ああ、考えただけで胃が痛い」
そう考える21世紀型ストレス主婦。
「今年も女房はパーティやりたいんだろうな。金がかかるからヤだなあ。胃がイテテテテ」
そう悩む21世紀型ストレス男性。
要は、けっこうみんな、パーティ開くのがストレスだと思ってるみたいです。
そんな本心はあんまり社交的でない人たちのための、
「準備・後片付けにストレスを感じず、かつ来客をがっかりさせないパーティ料理メニュー」
の提案記事でした。
つまり、ゲストじゃなくてホスト(ホステス)のためのストレスフリー食なのでした。
いろんなストレスがあるんだね。
ストレスも複雑化しています。
◆◆◆
会社がクリスマス・パーティを開く。
自社の社員だけじゃなく、その家族や友人、取引先の人々(+その家族や友人)も招いて賑やかにやる。
そういうパーティもアメリカではよくやってます。
「パーティ」と呼ばずに「レセプション」と呼ぶのが普通みたいです。
招かれた人たち(取引先の人々)は事前に招待状を受け取りますが、そこにも「パーティ」という言葉はなく、「レセプション」と書かれています。
その招待状の最後によく
「R.S.V.P」
と書かれています。
何これ?
ブランデーの名前?
最初は何のことか分からず困りましたが、
「出欠の返事をください」
という意味だそうです。
もともとフランス語のようなのですが、英語圏でも使われています。
さて、昨年そういう「レセプション」に出かけたときのこと。
年配の女性が立ち話をしていました。
久しぶりに会ったらしく、お互いの近況などを話していたようです。
その後、配偶者はどうしているかという話になりました。
「リックは先週亡くなったのよ」片方の女性が言いました。「夕食を作っている途中に、とつぜん心臓麻痺で倒れちゃって…」
「まあお気の毒。そうだったの…。それでどうしたの?」
「しかたがないじゃない。自分で作ったわよ」
松宮園生です。
(前回のあらすじ)
流しの料理人ラザフォードから、大量のフラックス
シードを2回も送りつけられた僕。
1回目はすぐに転売したのでよかったのですが、
2回目のは転売禁止になっていました。
そのため、アパートがフラックスシードの袋で
足の踏み場もないほどでした。
◆◆◆
フラックスシードは、アマニ(亜麻仁)ともいいます。
* フラックス=亜麻
* シード=仁(=種のこと)
です。
地中海地方原産の植物で、ヨーロッパでは「健康によい食べもの」として広く普及しているそうです。
日本人にはあまりなじみがありません。
日本人はゴマをよく食べますね。
じつはフラックスシードは、ゴマとよく似ています。
どちらも種を食用としています。
ゴマにはゴマ油があるように、フラックスシードにはフラックスシード・オイル(亜麻仁油)があります。
ゴマが日本人や中国人に愛されているように、フラックスシードはヨーロッパ人に愛されています。
おいしさ度・健康度も同じくらいの感じです。
たとえば
* 日本人ひとりあたりゴマを食べる量
* ドイツ人ひとりあたりフラックスシードを食べる量
この両者はほぼ同じだそうです。
カナダにサスカチュワン州というところがありまして。
ここがフラックスシードの最大の生産地らしく、サスカチュワン州の企業は何とかして日本人にゴマの代わりにフラックスシードを買ってほしいと思っています。
僕も相談を受けています、
しかし日本人に
「ゴマを捨ててフラックスシードを食え」
といっても難しいだろうなあ。
さて、アパートに送られてきた1トン分のフラックスシード。
25kg入りの袋が、40個もあります。
これをどうしようか。
ビールのつまみに食べました(旨い)。
シリアルに混ぜて食べました(ヘルシい)。
パンにまぶして食べました(旨い)。
しかし「在庫」はまだまだあります。
知り合いの日本人に配りました(わりと好評)。
浮気農家のジョン・ソイビーンに「何とかしろ」と袋を押しつけました(こいつは商売になるなら何でもします)。
でも「在庫」はまだまだあるのでした。
誰か買って。
または大量に食べに来て。
◆◆◆
そもそもなぜラザフォードがフラックスシードを送ってきたのかというと、こんないきさつがありました。
去年のある金曜日。
新しいクライアント(日本に食品を輸出したい会社)をラザフォードが紹介してくれるというので、いそいそと出かけた僕。
クライアントのオフィスまで2時間の長距離ドライブです。
僕のクルマ(ビューイック)で出かけました。
ラザフォードと僕は、交代で運転することにしました。
クライアントとの好意的な面談を終えた帰り道。
ラザフォードが運転する番でした。
エバレットというところにさしかかったところで、
「知り合いに挨拶をしたい。ちょっと寄っていいか。10分で済む」
とラザフォード。
「どうぞ」
僕が答えると、ラザフォードはハンドルを右に切ってフリーウェイを下り、エバレットの市街地に入っていきました。
彼がクルマ(ビューイック)を停めたのは街外れの製材所です。
「ここの社長が意外にグルメでね」ラザフォードは言いました。「ときどき仕事をくれるんだよ。お前も来るか? 紹介しよう」
ラザフォードと僕はクルマを降り、工場のほうに歩き出しました。
数歩と歩かないうちに、事件は起きました。
ガシャン!
背後で大きな音がしたのです。
振り返ってびっくり。
なんと僕の身長より直径の大きなタイヤを持つペイローダー(工事現場などで使われる、運搬用の大型機械)が、ビューイックに背後から激突していました。
もうすこし正確にいうと、ビューイックの後ろ半分が巨大なペイローダーの下敷きになっていました。
(オスのアフリカ象が、小柄なメスの鹿と交尾しようとして失敗し、鹿が圧死しかけている…)
自分のクルマが潰れているというのに、僕はそんなけしからん想像をしてしまったのでした。
ケガ人は誰もいませんでした。
ペイローダーも無事でした。
破壊されたのはビューイックのみ、ただし修理不可能です。
とりあえず僕は保険会社を呼び、あらわれた担当者に事故処理をやってもらいました。
保険金でクルマを買うことができるというので、そっちのほうもひと安心です。
ただ、保険金の額の問題で、前と同じビューイックを買うことはできませんでした。
格落ちの小型車になってしまいました。
つまり実質は、お金を損したわけです。
↑
ラザフォードはこの点を申し訳ないと思ったようです。
「あそこにクルマを停めたおれにも大いに問題がある」ラザフォードは殊勝にも言いました。「前方不注意なペイローダーが一番悪いんだが」
で、だいぶたってからですがお詫びにフラックスシードを送ってきたのでした。
(なぜそれがお詫びになるかは、前回をお読みください)
◆◆◆
書いてて思い出したのですが、その日はもうひとつ事件がありました。
名づけて「スピード事件」。
「クルマ大破事件」が起きるほんの2時間前のことです。
ラザフォードと僕は交代で運転をしていましたが、そのときもラザフォードの番でした。
何のきっかけだったか、ラザフォードが資産運用の話をし始めまして、そのうちぷりぷり怒りだしました。
前の年に購入した投資信託の成績が不満だというのです。
彼はFRB(連邦準備銀行)の金利政策が間違ってるとか、ブッシュ政権の経済運営スタッフは阿呆だらけだとか、アメリカにはろくなファンドマネージャーがおらんとか、いろいろまくしたてました。
(投資信託の成績が良ければ、逆に褒めちぎっていたに違いありません)
「言いたいことは言い終わったかい」僕は助手席で答えました。「じゃあ悪いけど、次はスピードメーターを見てくれ」
助手席の僕からはスピードメーターが見えなかったのですが、周りの景色が異常な速さで遠ざかっていくのを見れば、スピードを出しすぎているのは明らかでした。
案の定、後方から点滅するライトが迫ってきました。
パトカーです。
ラザフォードは「ちっ」と舌を鳴らし、さらにアクセルを踏みました。
スピードを上げてパトカーを振り切ろうとしたのです。
「おいおい、それはヤバいよ」
僕は大声を出しましたが、ラザフォードはますますスピードを上げました。
「やめろってば!」
ようやく、ラザフォードは我にかえった様子でブレーキをかけました。
「ついついカッとなっちまった」
ラザフォードはばつが悪そうにつぶやきました。
クルマを寄せ、おとなしく待っていると、警官がやってきました。
「何で止められたか分かってるかあんた」と警官。
「たぶんね」とラザフォード。
「免許証、見せてもらおうか」
黙って免許証を差し出すラザフォード。
警官は言いました。
「おれは明日から休暇でね。今日もそろそろ切り上げて帰ろうと思ってたんだ。それなのにスピード違反なんかしやがって。おまけに逃げようとしただろ、あんた」
「…」
「おれだって意地悪で取り締まりをしているわけじゃない。できればやりたくないんだ。帰りたいんだ。違反切符を切ったり書類を書いたりするのにどれだけ手間がかかるか、あんた考えたことあるか」
引き続きラザフォードが黙っていると、警官は続けました。「というわけでおれも早く帰りたい。あんたの言い訳しだいでは、見逃してやってもいい。どんな理由でスピードを出したのか言ってみな。今まで聞いたこともないような言い訳を言うことができたら、合格だ」
そう言われて、ラザフォードは少しのあいだ考えました。
それから、こう言いました。
「先週、女房が警官と駆け落ちしちまって。さっきは、てっきりあんたがその警官で、彼女を返しに来たんじゃないかと思ったんだ…」
「よい週末を」
警官は言い、パトカーは去っていきました。
松宮園生です。
(前回のあらすじ)
このシリーズは、食品の貿易に携わる
松宮が、皆さんの食卓に外国から
食品を届けるために、どんなに
不眠不休で地味な苦労をしているかを
激白するシリーズです。
聞くも涙、語るも涙の物語なのダ。
◆◆◆
日本に食品を「輸出」したい外国企業はいっぱいあります。
日本は食料の6割を輸入してますので、外国企業にとっては魅力的な市場です。
で、何をどーやったら日本人に食べてもらえるのか。
外国企業のそういう悩みに答えるのが僕の仕事です。
日本に食品を「輸入」したい日本企業もいっぱいあります。
彼らはよく海外に出かけては、
* 昼は「日本に輸入したら売れそな品物」をいくつもいくつも買いあさり、
* 夜はホテルに戻って吟味大会をしています。
で、吟味した結果、ぜひ日本に輸入したい品物があったとします。
輸入したいけど、相手の会社は日本への輸出に慣れてないみたいだ。
慣れてない会社に日本向け輸出のイロハを教えるのはしんどいな。
誰か教えてやってくれよー。
そういう企業の手伝いをするのも僕の仕事です。
つってもなかなか体力を使う仕事でございまして。
理由は2つあります。
1つめは、することが多くてやってもやっても終わらないことです。
2つめは、コミュニケーションがどきどきブラックホール化することです。
詳しく書きますと。
■「やってもやっても終わんねえ」
外国企業のお手伝いをするときに発生する現象です。
何をどうやったら日本人に食べてもらえるのか。
これはマーケティングの計画を立てることと同じです。
つまり僕は外国企業のために日本進出のマーケティング企画書を作って差しあげるわけですが、この「企画書」というものが曲者(←死語)でございます。
企画書は書いても書いても終わりがありません。
企画書の提出期限(〆切)が1週間後だとしましょう。
同業者(企画畑)の方なら賛成していただけると思いますが、提出期限(〆切)前に余裕をもって企画書ができあがるなんてことは滅多ありません。
ほとんどの場合、ギリギリに仕上がります。
なぜそうなるかというと、企画書のようなものは「これで完璧」という区切りがないからです。
いちど書いた企画書を見直してみて、改善しようと思えばいくらでも改善できます。
その気になれば、永遠に改善し続けることができます。
ですので、企画を考える人(プランナー)は、〆切ギリギリまで企画書を直し続けます。
気がついたら徹夜してます。
提出期限(〆切)が来てしまったという理由で、この「果てしない改善作業」に終止符が打たれます。
「完成したから」終わるのではありません。
「時間切れだから」終わるのです。
逆にいえば、提出期限(〆切)がなければ仕事は終わらないのです。
↓
「それって体キツくね?」
と思いませんか?
その通りです。
企画書はひとつだけ作るわけではなくて、同時に複数の案件を抱えるのが普通でございますし(そうでないとメシが食えません)、こないだ書いた企画書をクライアントの要望にあわせて書き直したりするようなこともあるものですから、〆切が次々やってきます。
次から次へとやってくる〆切。
漫画家か?
疲弊します。
へろへろです。
ほどよい加減で妥協して手を抜けばよいのかもしれませんが、クライアントのことを思えば手を抜けません。
「マツミヤの企画って、この程度か」
と思われたら商売は終わりです。
(もう終わってたりして)
■「コミュニケーションがブラックホール化する」
日本企業のお手伝いをするときに発生する現象です。
ものすごく日本っぽい理屈を、英語で伝えなくてはいけないけど、伝わらない。
これです。
日本企業の人は、自分が英訳する必要がないので、平気で異常な日本語を僕に投げてきます。
「そんなの関係ねえ」というギャグを、英語で伝えて笑わせろ。
みたいな難しさがあります。
(ちょっと違うか)
参考までに「そんなの関係ねえ」をムリヤリ英語で口語っぽく言うとしたら何と言うか、いくつかパターンを考えてみました。
* So what, you bastard? (それがどうした)
* What the hell does it have to do with me? (それが私と何の関係があんの)
* Doesn't matter to me. (どーでもいいよ)
* That's none of my fxxking business. (オレの知ったこっちゃないね)
* That's your problem. (あんたの問題だろ)
これで笑うガイジンはいないと思うけど、ガイジン相手にお金を貸してる人で、厳しい取り立てをしたい方は参考にしてください。
ワンポイント・レッスンでした。
話を戻して、ブラックホール化する事例をひとつ。
こんなメールが日本から来たりします。
「松宮様。お世話になりますなあ。例のニュートリション・バー(棒状になった甘いお菓子で、栄養素が添加されています)のことやねんけどな、食品衛生法で制限されちょる添加物が入っとったんよ。制限値は、全体の重量の1パーセント以下やて。ウチのほうで検査してみたら、0.95パーセントやった。いちおうセーフや。セーフなんやけど、もうちっと数字を下げたいねん。念のため0.5パーセントくらいまで落として製造してくれへんかなあ?。あと、価格は50セント下げてほしいんよ。先方さんと交渉たのんますわ」
こんな返事を書きました。
「テケテケ商事 大友様。もともとこの商品は生産量が少なくアメリカ国内だけで売り切れてしまいます。それを日本向けに買おうというので、売り渋る彼らを懸命に口説いています。もともと彼らは日本に輸出する気がなかったのを、われわれが口説いて輸出させようとしているわけですよね。この状況で値下げを言うのは困難ではありませんか。さらに、該当する添加物を0.5パーセントに下げるためには製造工程を変えなければなりません。製造工程を変えるとコストがかかりますので、彼らは嫌がるか、または値上げを要求してくるはずです。2重の意味で値下げは無理ではありませんか」
「松宮様。そこを何とか、武士道精神で切り抜けてもろたらよろし」
「大友様」僕はぶち切れていましたが、丁寧な返事を書きました。「日本人と違って彼らは合理的にものを考えますので、武士道とか人情とかは少なくともビジネスの世界では通用しないです」
「松宮様。さいですか。アメリカ人やもんなあ。ははは(ポリポリ)。ではこうしまひょか。10年の長期契約をすんねん。毎年コンテナ20本分の数量を買うと約束するんや。大量に安定して買ういうて約束してやったら、あいつら製造工程変えてくれるやろし、価格も下げてきよるやろ」
「大友様。分かりました。10年間安定して大量に買ってあげれることを約束できれば、彼らも考えを変えるかもしれません。では約束の証拠として、覚書に署名したものを送ってくれませんか。先方は貴社の社長の署名を欲しがると思います」
「松宮様。覚書? そりゃ無理や。書面を渡してもたら、約束果たさないかんやん」
「大友様。はあ? 約束をするんじゃないんですか?」
「松宮様。そりゃ約束してもええけどやな、できんかもしれんし…」
なんじゃそりゃ。
と思ってたら、追加のメールが来ました。
「松宮様。まあ、あんたには苦労かけるけどやな、あんまし細かいことごちゃごちゃ言わんと、とりあえず日本向けをやってみようや。まずは輸入して、売ってみる。すべてはそこからや。そんなふうに伝えてな。頼んまっせ」
そんなわけのわからん英語、話せるかい!
聞くも涙、語るも涙の物語でした。
(以下次号)
松宮園生です。
(前回までのあらすじ)
繁栄にあぐらをかき、飽食をむさぼる先進国。
彼らに鉄槌を下すことにした全能の神様は、
「ウエルネス天国」
「メタボ地獄」
を作りました。
ストイックに生涯を全うしたらウエルネス天国行き。
飽食におぼれメタボのまま死んだらメタボ地獄行き。
さらに神様は、人間界にも介入します。
「メタボ撲滅同盟ニキータ」
なる秘密結社に命令を下し、メタボな人を次々と抹殺してゆきました。
抹殺された人は、当然メタボ地獄行きです。
このシリーズ(21世紀神様の悩み)は、そうしたちょっとすごく怖い時代を懸命に生きる人々を描く、壮大なヒューマン・ドラマです。
(そうだっけ?)
◆◆◆
2XXX年。
国会で、
「メタボ基本法」
がついに可決されました。
メタボ犯罪を取り締まる法律です。
つまりメタボな人を裁判にかけ、有罪になったら
「メタボ刑務所」
に送り込むというキツーイ法律です。
メタボ刑務所では厳しい保健指導が行われ、メタボから脱却するまで出所できません。
そんなわけで、全国各地でメタボ裁判が始まったのであります。
メタボ警察がメタボな人を検挙し、被告人は「メタ専」弁護士を雇って裁判にのぞむのでありました。
◆◆◆
ある地方裁判所で判決が読み上げられました。
「被告人、松宮園生を3ヶ月の保健指導に処す」
傍聴席がざわめきました。
なんと日本食育大学の現役准教授が有罪判決を受けたのです。
本来なら人々をメタボから救うべき立場の人が、有罪とは。
実をいうと、保健指導や食事指導、食育を仕事にしている専門家のくせに、メタボ判決を受けた人は何百人にも達していました。
「実施する側の自己管理がなっていないじゃないか」
ということで、社会問題になってきていました。
そんな中、警察の手は「緑黄色の巨塔」日本食育大学にまで及び、まずは下っ端の松宮准教授の逮捕劇となったわけです。
しかし松宮准教授はこの判決を不服とし、無罪を主張して高等裁判所に控訴しました。
「いまのメタボ基準は厳しすぎる」
と主張するグループ(※)が弁護団を形成し、検察側と全面対決の姿勢を見せました。
裁判は政界をも巻き込み、泥沼化の様相を呈してきました…。
(※)2005年に日本肥満学会が
* 腹囲(へその位置で胴回りを測った数値)85センチ以上の男性はメタボ要注意!
* 腹囲90センチ以上の女性はメタボ要注意!
と提唱し、それが厚生労働省のメタボ基準としても採用されています。
ところがこの基準、
「男性の数字が女性の数字より小さいのはおかしい」
などといった批判を受けています。
最近の例では、東北大学の医学部が日本肥満学会の基準値に異論を唱えており、両者のあいだで激論が交わされています。
◆◆◆
「メタボ刑務所」に服役中の囚人は、刑務官(管理栄養士)の保健指導を受けます。
コミュニケーション上手な管理栄養士が刑務官に選ばれていますので、保健指導自体には人気がありました。
しかし毎朝6時に朝礼があり、
「脱メタ宣言」
を大声で合唱させられるのにはウンザリでありました。
こんな内容です。
↓
<脱メタ宣言(食事・食育編)>
作詞・作曲: 管理栄養士 佐久間象子(←誰?)
早寝早起き朝ごはん
神に誓ったその日から
あなたとわたしの本能寺
忘れ敵(かな)わぬジャンクの味を
忘れてみるのもテクニック
食で養生、大往生
ピンピンコロリと来たもんだ
オーガニックに全粒粉
カルタ覚えて紙芝居
家族団らん地産地消
レッツビギン、ラララ
レッツビギン、ラララ
まだまだ続くのですが、書いてて恥ずかしくなったのでここで止めます。
◆◆◆
「メタボ刑務所」での刑期(保健指導)を終えて出所するときは、こんなベタな場面が繰り広げられます。
↓
服役囚 「お世話になりました。おかげさまですっかり痩せました」
刑務官(=管理栄養士) 「もう2度と、こんなとこ来ちゃだめよ」
服役囚 「へえ。これからは心を入れ替えて真面目な食生活に励みます」
刑務官 「リバウンドしないでね」
服役囚 「決していたしません」
↓
服役囚は塀の外に出て、ベタにこう言います。
「ああ、シャバの空気はうめえなあ…」
「あなた」
振り向くと、妻が小さな女の子の手を引いてて立っています。
妻の目には涙が。
「お帰りなさい…」
「ただいま…」
見つめあう2人。
妻が娘に向かって言いました。
「あなたのお父さんよ。こんにちはって言いなさい」
しかし女の子は恥ずかしがって母親の陰に隠れてしまいました。
なんつて。
こんなん書いてて恥ずかしいのは、こっちだよ。
◆◆◆
実際には、前科のある人間が再犯する割合は小さくありませんでした。
メタボ犯罪との戦いはこれからも続くのです。
(以下次号)
松宮園生です。
帰国したら、次期テケテケ村の村長に
立候補しようと考えています。
当選したら、宮崎県知事みたいに、
テケテケ村のセールスマンとして
全国行脚してテケテケ村の宣伝に
はげみます。
その練習として、まず今回は
テケテケ村の産業のひとつ、
サプリメント産業について説明しましょう。
テケテケ村はキホン農業の村ではありますが、村おこしでサプリメントも作っています。
村の土産物店をのぞいてみてください。
土産物としてご当地サプリメントを販売しています。
品揃えはこんな感じ(↓)。
■商品名:「テケテケ眼力」
目のサプリ。
視力アップではありませんが、夜盲症を防いだり、白内障を防いだりするのに役立つビタミンAやルテイン(カロチノイドの一種)などが入ってます。
■商品名:「テケテケ脳」
記憶力のサプリ。
イチョウ葉のエキスが入っています。
イチョウ葉エキスのアレルギーを持つ人もいるので、飲むときは気をつけて。
■商品名:「テケメン」
ヌードルではありません。
前立腺ガンを防ぐと言われるノコギリヤシのエキスが入っています。
このあいだ、共和党の大統領候補がある著名な支持者と一緒に壇上に立ち、「私達2名のの共通点は前立腺ガンから回復したことだ」と自慢していましたが、なにが自慢なのか、意味不明でした。
■商品名:「初動テケテケ」
風邪じゃないけど、風邪の予感がしたときに向いているサプリ。
エキナシアというハーブのエキスが入っています。
ただし、毎日飲むのではなく、あれ?と思ったときだけ飲みましょう。
飲み続けるのはよくないと言われています。
■商品名:「日々テケテケ」
いわゆるマルチビタミン・ミネラルと呼ばれているものの類。
ビタミンAやらBやらCやら、カルシウムやらマグネシウムやらいろいろ入っています。
毎日飲む、日常生活サポート型サプリです。
■商品名:「緑黄色テケテケ」
野菜をすりつぶしたパウダーをベジキャップ(植物性のカプセル。かつては動物性のゼラチンで作ったカプセルが主流でしたが、最近はベジキャップが主流になりつつあります)に収めたもの。
食物繊維ほか、いろいろな機能性成分が盛りだくさん。
■商品名:「テケテケ・カルマグ」
カルシウムとマグネシウムの混合サプリメントです。
ところで、サプリメントに興味のある方は、知ってるお店に出かけ、サプリメントに含まれるカルシウムとマグネシウムの比率を調べてみてください。
ほとんどのサプリメントは、カルシウムとマグネシウムの比率が2:1になっているはずです。
しかも、
「カルシウムとマグネシウムが2:1というのは理想的な比率です」
なーんてもっともらしい説明もついていると思います。
↓
でもこれは理想的でもなんでもありません。
カルシウムとマグネシウムの原料を一度に集めようとしたら、たいていの場合、2:1で集まってくるからに過ぎません。
理想的とかそういうものではなく、実態は製造する側の都合です。
ネタバレでした。
■商品名:「テケテケ・デトックス」
体内毒素排出型サプリ。
セレン(セレニウム)酵母入りです。
なぜ酵母なのかというと、「酵母を使ったほうが効果が高い」というもっともらしい説明が書かれていたりしますが、ホントは作る側の都合です。
細かい理由は長くなるので省略しますが。
■商品名:「抗酸化テケテケ」
フリーラジカルを退治する抗酸化物質、ビタミンEやコエンザイムQ10が入っています。
アンチエイジング型サプリです。
ビタミンEもコエンザイムQ10も非常に酸化しやすい物質なので、体内に入るまで酸化しないよう、ソフトカプセルに包まれ密閉されています。
■商品名:「テケテケ・ハングオーバー」
ハングオーバーとは二日酔いのこと。
ターメリック(ウコン)とマリアアザミが入っています。
マリアアザミには肝機能改善物質のシルマリンが含まれています。
■商品名:「味わいテケテケ」
味覚障害によいとされる亜鉛。
その亜鉛酵母のサプリです。
さっきのセレン(セレニウム)同様の理由で酵母が使われています。
以上です。
商品名はどうでもよいですが、使われている物質(成分)がどのような効能効果が持つのかはマジメに書きましたので、よかったら覚えちゃってください。
知ってるとトクです、たぶん。
◆◆◆
サプリメントを開発する専門家のことを
「フォーミュレーター」
といいます。
どんな物質(成分)とどんな物質(成分)とをどのように組み合わせ、どんな魅力を持つサプリメントを開発するか。
これを考える人のことです。
フォーミュレーター(formulator)とは「フォーミュレート(formulate)する人」という意味。
フォーミュレート(formulate)とは、「成分などを組み合わせて新しいものを作る」という意味です。
つまり、いろんなビタミンとかミネラルとかフィトケミカルとかを組み合わせ、なにかの目的を持ったサプリメントを作る、ということです。
ただ単に組み合わせるだけではありません。
もしかしたら組み合わせた物質同士が、どうしても混ざり合わなかったりします。
あるいは、混ざり合ったら毒になるかもしれないし。
混ざり合ったら爆発するかもしれません。
そういうのもちゃんと、考えながら開発するのです。
アメリカには
「独立してフリーで仕事をするフォーミュレーター」
がたくさんいます。
彼らは、サプリメント販売会社から商品開発の依頼を受けます。
「報酬としてン万ドル(ン100万円)払うから、なにか質の良いサプリメントをわが社のために開発してくれないか」
という依頼です。
とくに昨今は、ある種の「非凡な」サプリメントを作ってほしいという依頼が多いようです。
(もはや非凡とは言えなくなった例)
* 美肌サプリメントなんて、いまじゃどこにでも売ってますね。たいがい、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEにコラーゲンかガンマ・リノレイン酸を加えたものが多い。
* よく眠れるサプリメントも平凡になりましたね。メラトニン(ホルモン)を使うか、バレリアン(きわめて臭いハーブ)あたりが使われています。
* 花粉症予防のサプリメントも多いですね。トマトの抽出物を使っているものとか、ケルセチン(フラボノイドの一種)を使っているものとか。
(非凡な例)
* 浮気現場をごまかすサプリメント。ソッコーで言い訳を考えることができるように、脳のエネルギー源であるブドウ糖が、あっという間に脳に吸収されるようなサプリ。
* オヤジギャグを言ってしまったあとのサプリメント。「あの恥ずかしさを忘れてしまいたい」人のために気分を落ち着けるセント・ジョンズ・ウォート(ハーブの仲間)が入っています。
こういう、非凡であり、かつ、生活に密着したサプリメントの開発が望まれています。
通常のサプリメント会社(販売会社)は、自社工場を持っていません。
ですので、フォーミュレーターは知り合いの工場(サプリメント製造工場)と相談しながら、クライアント(販売会社)のためにサプリメントの新商品を開発していくわけです。
彼らの収入はよく分かりませんが、サプリメントの商品開発はなかなか高度なスキルを要求されるので、それなりに多くのお金をもらっているんじゃないかと思います。
日本では「フリーのフォーミュレーター」は極めてまれです。
日本でフォーミュレート能力を持っている人は、たいてい、どこかの製造工場に所属しています。
ところが、サプリメントが日本に普及してくるにつれ、フォーミュレーターの数が不足してきているみたいです。
その証拠に僕のところに
「フォーミュレーター、探してくれんかのう。あんた(松宮)が自分でやってくれてもええんじゃけど」
という問合せが、日本のサプリ製造会社からときどき来ます。
もちろん僕はフォーミュレーターではありませんので、あんたが自分でやってくれと言われても困るのですが。
じつはテケテケ村もフォーミュレーターが不足しています。
今後はもっと不足するんじゃないかと思っています。
誰か、この仕事に興味のある方いたら、ご一報ください。
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松宮園生です。
カジノに来てます。
浮気農家のジョン・ソイビーンと一緒です。
(ジョン・ソイビーンが以前カジノに来た時の話はここをクリック)
最近羽振りのよいジョン・ソイビーンは、
贅沢にもファーストクラスか何かで来たようです。
食うのが精一杯の僕はアラスカ航空のマイレージが貯まっていたのを使い、エコノミークラスのしかも窓側でも通路側でもない真ん中の席で泣きながら来ました。
アメリカでカジノというと、
西のラスベガス
東のアトランティックシティ
が有名ですが、ジョン・ソイビーンと僕が来ているのは
リノ
という街です。
ラスベガスと同じネバダ州にあります。
ラスベガスに比べたらいくぶん地味なところです。
とはいえ、リノもカジノとしては立派です。
リノに着いたら、空港ロビーにいきなりスロットマシンが並んでいます。
いろんな人がスロットマシンに興じています。
よくみると年配の人が多い。
掛け金が5セント(日本円で6円から7円)の台の前で、いつまでもジャラジャラやっています。
それを尻目に僕なんかは宿泊予定のホテルに移動し、そのホテルのカジノで少ない小遣いをさらに少なくするために頑張るわけです。
ジョン・ソイビーンとはホテルで待ち合わせをしました。
バイオ燃料用のトウモロコシが売れて売れてしょうがない彼は、なんだか昔よりも服装がよくなったみたいです。
ジョン・ソイビーンがカジノにいることは奥さんには内緒です。
なぜ内緒なのかはよく分かりません。
理由を聞いても教えてくれないので。
ホテルのレストランで夕食をともにした後、彼は言いました。
「マツミヤ殿。ここから先は自由行動といたそう。拙者のことは気にせずに、ブラックジャックにでもに興じるがよいでござる」
そして驚いたことに、その夕食をおごってくれました。
ジョン・ソイビーンを観察していると、日米の農家ってぜんぜん違うなあと思います。
日本の農家さんって、
「農業を守る。土地を守る」
という熱い思いにかられている人がけっこう多かったりするし、
「農業は金儲けではない。儲けるために農業をするというのはイカン」
みたいなセリフをよく聞きます。
農業が、そのまま根性試しとか人生修業とかの場になっている感じです。
それに比べてジョン・ソイビーンのあっけらかんとしていることといったら。
人生修業も何もありません。
この男は「農業は金儲け」と割り切っています。
で、儲かったら株を買ったり、経営コンサルタントに相談して儲かりそうだったら設備投資をしたり、それでも余裕があったらラスベガスやリノに来て「蓄財」に励むわけです。
いいんだか悪いんだか。
その晩、僕は3時間ほどブラックジャックに挑戦し、勝ったり負けたりを繰り返して飽きたので、ホテルの部屋に戻って眠りました。
翌朝、ジョン・ソイビーンから朝食の誘いがあったので再びレストランで待ち合わせをしたところ…。
「夕べは事件があって、浮気をしそこなったでござる」
と、昨夜の出来事を語り始めました。
◆◆◆
ジョン・ソイビーンはルーレットに挑戦していました。
負けてもよいでござる、と鷹揚に構えていたのが良かったのか、その日は勘が冴え、どの番号に球が来るのか、ピンとくる瞬間がときどきあったようです。
3勝2敗くらいの勝率を続ける彼のところにはチップが集まり、気がついたら隣に魅力的なブロンド女性が座っていました。
「ピナコよ。よろしく」
ブロンド女性はそう言って、ジョン・ソイビーンに握手を求めました。
しばらくすると、ピナコは言いました。
「ねえ。あなたのパワーを分けてくれないかなあ。いま全財産2000ドル(約26万円)持ってるんだけど、これを思いきり増やしたいの。チマチマ分散投資するのは嫌。どれか1つの数字に賭けたいの。次は何番が来るか、教えてくれない?」
ジョン・ソイビーンは答えました。
「そなたの年齢と同じ番号に全額賭けるとよろしいでござる。当たれば36倍でござるよ」
ピナコは笑いながら
「いい加減なことを言うのね。わたしが何歳かも知らないくせに」
「だまされたと思ってやってみるがよいでござる」
数分後…。
ピナコがその場で失神してしまいました。
◆◆◆
(朝食の場面に戻ります)
「えっ、どういうこと?」僕は聞きました。「何があったの? なんで気絶したの?」
「実はでござる」ジョン・ソイビーンは言いました。「そのピナコなる女性は、28番のところにチップを全部、置いたでござる。されど、実際に来たのは36番でござった」
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松宮園生です。
仕事柄、毎日メールが200通くらい来るのですが、
今日はそのなかにこういうのが2通、混じっていました。
紹介します。
◆◆◆
(1通目)
松宮園生様。
日本食育大学に松宮さんのメルアドを問い合わせたら、
個人情報だというのにあっさり教えてくれましたので、メールを書いてます。
あたしの名前は「サトミ51」と言います。
フリーの殺し屋です。
ニキータ検定の1級も持っています。
あっでも安心してくださいね。
今のところ松宮さんを狙っているのではありませんから。
依頼がないかぎり、大丈夫です。
依頼がないかぎり、ね。
じつはあたし、ある食育の教団から
「マ○○ナルドのお得意様トップ50人」
「吉○家のお得意様トップ50人」
というリストを渡されました。
単純に合計すると100人なんだけど、両方に名前の載っている人が12人いますので、実際には全部で88人。
「食育の敵にダメージを与えるために、この88人を何とかしろ。言ってる意味はわかるな」
というのが、その食育教団からの依頼だったの。
今日までに29人、達成しています。
あと59人。
でもだんだん難しくなってきました。
どうやらマ○○ナルドと吉○家に気づかれたらしくて。
彼らも用心棒を雇って、あたしの仕事の邪魔を始めたんです。
許せない。
言っとくけど、あたしはただの一度も、仕事をしくじったことはないのんよ。
このこと忘れないでね、松宮さん。
松宮さんは食育の味方でしょ。
だったら手伝ってくれるよね。
報酬ははずむわ。
まさか断らないと思うけど、もし断ったら、明日の合コン、犠牲者が出るわよ。
明日の朝、も一回メールするから、携帯オンにしておいてね。
サトミ51
◆◆◆
(2通目)
松宮先生
はじめまして。
マ○○ナルドで食育担当をしております、ジャッカル米山と申します。
ご相談がありまして。
世間では私どものことを「食育の敵」と考えるフシがありますが、たいへんな誤解でございます。
私どもは食育の教材を必死に作っておりまして、学校の教育現場で実際に活用いただいております(←松宮コメント:これホントです)。
また、本国アメリカでは、私どもは「ファイブ・ア・デイ」と呼ばれる健康増進運動の役員をしています(←これもホント)。
果物の普及にも貢献しておりまして、世界最大のリンゴ消費者はマ○○ナルドでございます(←これもホント)。
にも関わらず、世間の食育オタクはわが社を目の敵にしているのでございます。
先日、CIAから連絡がありました。
「アーケイディア食育原理主義教団」というところが、「サトミ51」というオカマの殺し屋を雇って私どものお得意様のお命を狙っているというのです。
調べてみますと、たしかに私どもの大切なお客様が何人も、謎の死を遂げておりました。
そりゃ、私どもを憎いと思う人はいますけれども、殺人はいけませんや。
CIAも困ったものです、暗殺を防げないなんて。
これでは何のために多額のワイ…政治献金を出しているのか分かれしまへん。
まあ、CIAを苛めてもしかたがありませんので、私どもは屈強なボディーガードを集めたり戦略核兵器を用意したりして警備体制を強化することとしました。
名づけて
「マヌーバー・イン・ザ・ダーク」。
ただし、私どもも無用な殺生は好みません。
できるだけ平和に解決したいという思いは、ブッシュ大統領よりも強い。
(それって強いの? というツッコミはしないでください)
ですので、アーケイディア食育原理主義教団に話し合いをしたいと申し入れております。
そこで相談です。
松宮先生には、この交渉団のリーダーになっていただきたい。
報酬は弾みます。
普段から
「食育オタクはダサい、昭和っぽい」
と食育原理主義をバカにしている先生のことですから、まさか断られることはないと信じております。
しかし不幸にも、もし引き受けていただけなかった場合は、先生をアーケイディア食育原理主義教団の一員とみなし、
「マヌーバー・イン・ザ・ダーク」
の標的といたします。
具体的には、明日の先生の合コン現場を空爆いたします。
私どもは日頃から世界最大の穀物会社カーギルと親しくしておりまして、カーギル社が持っている人工衛星で先生の行動の監視を始めております。
空爆など、お茶の子さいさいでございます。
(カーギルについて詳しく知りたい人はここをクリック)
明日の朝にもう一度、携帯メールします。
それまでに本件を熟慮していただき、
* 引き受けて多額の報酬をもらうか
* 断って空爆されるか
を決断してください。良い返事をお待ちしております。
ジャッカル米山
◆◆◆
僕は溜息をつきました。
マジかよ…。
明日の合コンは「お持ち帰り」無理そうだな…。
(中止しないんかい)
(つーか、悩みはそこかい)
食育というテーマでセレクトしています。
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松宮園生です。
僕の師匠であるドクター・チイタッタはサプリメントを
使って疾病予防だの治療だのをしている医者です。
ボストンとフロリダの両方で開業してて、
夏は涼しいボストン、冬は常夏のフロリダにいます。
羨ましいかぎりです。
ボストンには松坂投手がいます。
つまりボストン・レッドソックスの本拠地です。
松坂投手がワールドシリーズに出るというので、僕もチイタッタ先生を訪問ついでに地元のスポーツバーでゲーム観戦(チケットが入手できませんので、球場での観戦は夢のまた夢)を、と思ったのですが、先生に電話したら、
「ワールドシリーズ? 興味ねーよ。第一、オレはもうボストンにはいないもん。フロリダに来ちゃったぜ」
味も素っ気もない、チイタッタ先生でした。
(そうこうしているうちに、ボストン・レッドソックスはワールドチャンピオンになっちゃったね)
チイタッタ先生は食べるものにやたらとうるさく、レストランに入ったときなどは食材だの調理法だの調味料だの、店に質問しまくります。
(チイタッタ先生の厳しい取り調べについてはここをクリック)
こないだはこんなやりとりをしていました。
チイ「このエンダイブはどこの?」
店員「サニーマーメイド農園です」
チイ「ああ、あそこ。で、有機栽培か?」
店員「有機栽培の認証はついておりません」
チイ「おかしいな。サニーマーメイドはたいがい、有機だぜ」
そういって、彼はサニーマーメイド農園に電話をします。
チイ「ウィリアムいる?」
ウィ「ウィリアムです」
チイ「ドクター・チイタッタだけど」
ウィ「あ、先生。いつもどうも」
チイ「シープギャングパックていう店、知ってる?」
ウィ「知ってます」
チイ「いまそこにいる。あんたんとこのエンダイブをさ、ピュージェット・サウンド風にグリルして食べようとしてんだけどさ、あんたんとこのエンダイブは、有機じゃなかったっけ」
ウィ「じつはエンダイブはまだ有機認証が取れていません。ですが転換期間中でして、来月には期間満了なんです」
チイ「なるほど、そういうことか。だったらまあ、ほぼ有機つーことだな」
ウィ「認証はこれからですけどね」
チイ「オーケー、分かった。あんたは真面目な農家だからな。信用して、有機とみなして食べることにしよう」
ウィ「恐縮です」
↑
こんな具合に、産地まで電話してメニューを吟味するようになりました。
さて、医者としてのチイタッタ先生には
「お気に入りの工場」
があります。
医者と工場って、何の関係があるのでしょうか。
しかも「お気に入り」とは…。
その工場とは、ピッツバーグにある
「マクミラン・ラボ」
という、サプリメントの製造工場です。
チイタッタ先生は「メガビタミン」と呼ばれるやりかたでクライアントの疾病予防や治療をしています。
要するに、薬を使わずにサプリメントを使って医療をします。
ですので、自分が処方するサプリメントの品質には非常に気を遣っています。
サプリメントは専門の工場で作られますので、どの工場が作ったサプリメントか、というのも重大な問題です。
アメリカにはサプリメントの製造工場が400くらいありまして。
たいがいはカリフォルニアとニュージャージーに集中していますが、チイタッタ先生の眼鏡にかなった工場「マクミラン・ラボ」はピッツバーグにありました。
ここの社長ローレンは俳優のマイケル・ダグラスがニヤけたような顔をしてまして、クルマの運転中に後ろを振り向いてギャグを飛ばし、前方不注意もはなはだしい人物です。
僕は自分より運転の心構えがなっていない人間を初めて見ました。
しかしなんと、そんな彼の工場は医者のあいだで評判がよいのです。
ここで作られたサプリメントは最近、日本のクリニックでも使われています。
以上、チイタッタ先生についての話でした。
◆◆◆
サプリメントって本来、「(足りないものを)補う」という意味です。
日本で「サプリメント」と呼ばれているものは、アメリカでは「ダイエッタリー・サプリメント」と言います。
「ダイエッタリー(=食事の)」という言葉がくっつきます。
こないだ一時帰国して気づいたんだけど、日本ではいろんな言葉に「サプリメント」とか「サプリ」とかをくっつけているケースが多いですね。
(例)
テレビ・サプリメント(なにかの番組の名前でした)
サプリメント・チョコレート(何が違うかというと、カカオが多いみたいでした。←それで?)
サプリメント家具(補強材のことみたい)
サプリメント煎餅(天然の塩を振っているのでミネラルが多いそうです)
サプリ醤油(大豆を使っているからだそうです。←それって普通じゃん)
サプリメント女優(そう呼ばれて、嬉しいのかな)
サプリンガー(正義の味方だそうです。強いのか?)
サプリ農家(意味不明)
サプリTシャツ(意味不明)
サプリタイガー(意味不明)
サプリメンター(何かの資格だそうです。何の資格かは不明)
(以下次号)
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