松宮園生です。
テケテケ村でイチゴ農家をしている小判大介君は、
僕の舎弟でもあります。
このあいだ、久しぶりに小判君とビールを
飲みながら昔話をする機会がありました。
こんな昔話を思い出しました。
◆◆◆
彼がまだ学校で農業の勉強をしていたころ。
小判君と僕はテケテケ村のはずれを歩いていて、大きな穴を発見しました。
直径が2メートル近くある穴で、恐る恐るのぞきこみましたが深くて底が見えません。
小判君がそのへんの石ころを投げ入れてみました。
穴の底に落ちるまで何秒かかるか測ろうとしたのです。
しかし、何の音もしません。
「ものすごく深い穴のようですね」小判君は言いました。「もっと大きい石を放ってみましょうか」
「そうしよう」
僕も賛成し、大きな石を見つけて2人で持ち上げました。
「これは石というより、ちょっとした岩ですね」
せーの、でその「岩」を穴に投げ込みました。
耳をすまして「岩」が底を打つ音を聞こうとしました。
小判君は腕時計を見ながら時間を測っています。
ところが、待てど暮らせど音がしませんでした。
「信じられない」小判君があえぐように言いました。「もっと大きいのを探しましょう」
もっと大きいの、といっても、なかなかそれらしいのは見当たりませんでした。
そのかわり、古くなってもう使われていない電柱が何本か、斜めになっていたのを発見。
小判君と力をあわせてそのうち1本を引き抜き、重たいのをずるずると穴のふちまで引きずりました。
「落とすぞ。自分が落ちないように気をつけろ」
「気をつけます。先輩も気をつけて」
やっとの思いで電柱を穴に投げ入れました。
しかしそれでもなお、音はしませんでした。
小判君と僕は顔を見あわせました。
そのときです。
突然、どこからか山羊が現れました。
ものすごい勢いで走ってきたのです。
その勢いのまま、山羊はわれわれの傍を通りすぎ、なんの躊躇もなく穴に飛び込んでしまいました。
唖然としました。
小判君も、目をまるくしています。
するとそこにミスミのジイサンが現れました。
(ミスミのジイサンについてはここをクリック)
「あんたら、わしの山羊を見なかったか? 白兵衛というんだが」
僕は、いま目撃した出来事を話しました。
山羊がすごい勢いで駆けてきて、穴に飛び込みましたと。
「うーん。それはウチの山羊じゃねえと思うな」ミスミのジイサンは言いました。「白兵衛の縄はそこの電信柱にしっかりくくりつけておいたからな、走って逃げるなんて、できねえはずだ…」