ホーム > 日本食育大学未来学部 >
松宮園生です。
日本向けに食品を輸出したい外国企業は
たくさんあります。
なんといっても日本は食料の6割を
輸入しているわけですから。
でも、日本に食品を輸出するのは
簡単ではありません。
国によって食品の法律が違うからです。
しかも多くの場合、食品の法律は複雑怪奇です。
食品の法律が複雑怪奇なのは、なにも日本だけ
じゃなくて、アメリカの法律だって複雑怪奇
なんですけど、要するに世界中どこにいっても
複雑怪奇なわけです。
さて、輸出先の国のそういう複雑怪奇な法律をちゃんとクリアしないと輸出できません。
(正確にいうと自分の国から発送するのはできますが、相手国が受け入れてくれません)
そういう法律の壁に悩む外国企業が僕のおいしいクライアントです。
難しいのは法律だけではありません。
法律の壁をクリアしたところで、
「で、そもそも売れるの?」
という問題に直面するわけです。
アメリカの市場と日本の市場は、当然ちがいます。
似ているところもありますが、異なるところもたくさんあります。その違いに悩む外国企業も、僕のおいしいクライアントです。
なーんて、合コンの席でエラソに言うと、
「面白そうな仕事、してるのね、ス・テ・キ」
となって、オトナの男の勲章すなわち「お持ち帰り」につながるわけです。
…そんなこと、いちどもありませんでした。
あまりに悔しいので、皆さんの食卓に外国から食品を届けるために、僕がどんなに不眠不休で地味な苦労をしているか、このシリーズでちょっと激白したいと思います。
聞くも涙、語るも涙の物語なのダ。
◆◆◆
この続きは次号に譲るとして、別の話をします。
家の近所(アメリカです)で日本人の佐藤さんという人が
「ミスター・シュガー」
というレストランをやっています。
佐藤 →砂糖 →シュガー
ベタなネーミングですけど、そこは追及するのをやめましょう。
第一、佐藤さんは日本を離れて数十年、イマドキの日本語なんて知りませんので、
「ベタ」
という言葉を説明するのは至難の技(←死語)です。
「ミスター・シュガー」という店は、日本風洋食屋でした。
要するに
* カレーライス
* ハヤシライス
* オムレツ
* エビフリャー定食
* カニクリームコロッケ定食
* チキンライス
* ビーフシチュー
あたりがメニューに載っているような店です。
開店当初は日本人客ばかりでした。
僕自身はよく通っています。
でもアメリカ人はなかなか来てくれませんでした。
皆さんにも賛成していただけると思いますが、この店で出してるメニューは、「洋食」と呼ばれる、じつは和食ですよね。
つまり、純粋な和食でもない、かといってアメリカ人が普通に食べている食事とも違う。
そこのところがなかなか理解してもらえず、アメリカ人が抱く日本食のイメージとはかけ離れていたために、初めの頃はなかなか客が増えなかったのです。
その「ミスターシュガー」も最近はそこそこ人気が出てきたらしく、ときどきは混むこともあったりします。
よかったよかった。
このあいだそこでランチをとっていたら、こんな場面に出くわしました。
初老の白人が1人でオムライスを食べてて、しょっちゅう佐藤さんに声をかけるのです。
最初、彼は太い声で「暑いのでエアコンを強くしてくれ」と言いました。
数分もすると、彼はまた言いました。「寒いぞ。エアコンを切ってくれ」
その後も、この人物は
「暑い。温度を下げろ」
「寒い。温度を上げてくれ」
を繰り返します。
何回も、何回も。
驚いたことに佐藤さんは文句も言わず、初老の白人から言われるたびに行ったり来たりしました。
そのうち怒り出すんじゃないかと僕は傍らではらはらしていましたが、佐藤さんは怒る気配もなかったのです。
食べ終わった白人がお金を払って店を出て行ったあと、僕は佐藤さんに聞きました。
「佐藤さん。辛抱強いのはいいけどさ、ああいう客の言うことを全部聞く必要はないんじゃない?」
「辛抱なんてぜんぜんしてないよ、松宮さん」佐藤さんはニヤニヤしながら言いました。「この店にはエアコンがないってこと、あんたに言ってなかったっけ?」