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松宮園生です。
今回の文章は、
食育度:★☆☆☆☆
(5点満点で1点)
です。
ようするに、
「こんなの食育の話じゃないんじゃない?」
とカクジツに叱られる内容です。
ご容赦。
◆◆◆
熱き血潮のたぎる、若き松宮園生が、テケテケ商事を辞めて独立したのは、今から5年前の早春のことです。
「今日から僕は青年実業家さ。日本一の食育会社を作って、ブイブイ言わせるぞ(←当時すでに死語)」
事務所を東京の渋谷に構えた松宮は、窓から見える夕陽に向ってそう叫んだのでした。
(西日の入る部屋だったんだね)
(夏がどんなに暑いか、このときは分からなかったんだね)
あれから5年。
僕も大人になりました。
じつは昨日、かつて事務所のあったところを偶然通りかかりました。
懐かしいなあ。
といいつつ、よく見まわしてみると。
周りの飲食店がほとんど入れ替わっていたのに驚きました。
噂に聞いてたけど、渋谷って浮沈が激しいんですね。
渋谷で飲食店をするのって、たいへんなんですね。
◆◆◆
5年前その事務所に入居した初日のことを思い出しました。
知り合いが開店祝いの花を贈ってくれたのです。
ところが花屋の手違いで、こんなメッセージが添えられていました。
「お悔やみ申しあげます。眠りが安らかなものでありますように」
僕はムカつきました。
花屋に電話し、釈明に来いとわめきました。
しばらくして花屋が菓子折りも持たずに手ぶらでやって来ました(←期待していたわけね)。
「えろうすんまへん」
オーバーオールを着たメタボ気味の花屋は、ごまかし笑いをしながら言いました。
「わての手違いで不愉快な思いさせてもてホンマ、堪忍堪忍。おたくの事務所開きの日に、すまんことしてもうた」
「なんで笑ってんだよ」
僕は花屋につめよりました。
「なんだその態度。気分わりいな。しかも手ぶらだし」
「すんまへん。わて、こんな顔してますさかい、笑(わろ)とるように見えてもうんやけど、人は見かけによりまへん。笑(わろ)とりまへんのや。ホンマ、反省してますねん」
手ぶらかと思ったら、花屋はポケットから何かを取り出しました。
「これ、お詫びの印でんがな」
手渡されたものを見ると、映画「食育残酷物語」の試写会の券でした。
しかも1枚。
「何だこれ? こんなもの、どうしろってんだよ」
しかし花屋はそれには答えず、
「おたくの社長はんにも、えろうすんまへん、これからも贔屓に頼んますわ、言うておくんなはれ」
いけしゃーしゃーと(←死語)のたまいました。
「何だと。自分で言えよ。てゆーか、社長はオレだっつーに」
すると花屋は頭をぽりぽりかきながら、
「ああ、そないでしたか。あんたが社長。へえ。あんたが社長ねえ。まあええわ。えろうすんまへん。堪忍な、堪忍な」
と言いました。
「バカにしてんのか」
「バカになど、しとりませんがな」
「じゃあなんだよ、その態度は」
花屋は溜息をつき、ハンカチで汗を拭きながら言いました。
「社長はん、そないに怒らんといてえな。誠実に謝っとるんやさかいに」
「あんたね。被害者はオレだろ」
「まあまあ、そう言わんと」花屋は落ち着いたものでした。「カッカする前にもう1人の被害者のことを想像してみなはれ。そっちのほうが気の毒や思うたら、腹も立ちませんがな」
「もう1人の被害者?」
「そうだす」花屋は言いました。「ええどすか、社長はんのところにお悔やみ状が行ったゆうことはやで、代わりにどこかの葬式でこんな電報が読み上げられとるちうことや。『おめでとう! 新天地で心機一転、成功を祈る!』」
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