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2007.08.20 23:21

グッバイマム

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松宮園生です。

世界最大の自然食品店ホールフーズ・マーケット。
いちど入ったら、ワクワクしてついつい長居してしまう店、
ホールフーズ・マーケット。

(ホールフーズ・マーケットについては↓をクリック)
「農業コンチネンタル その2」
「農業コンチネンタル その3」

先日、そのホールフーズ・マーケットをうろうろしてたら、日系人とおぼしい初老の女性に日本語で声をかけられました。
「あなた、日本から来た日本のかたね?」
「そうですが」
「ああやっぱり」女性は言いました。「ああやっぱり日本人。その心を閉ざしたような歩き方。母音の発音が下手そうな口元。屈託だらけのあごの形。日本人ねえ」
「そうですか」僕はムッとして言いました。「ところで何か御用ですか」
「何でもないのよ。あなたが息子に少し似てらっしゃるからついつい見とれちゃったの」
「そうですか」僕は冷たく言いました。「ではごきげんよう」

惣菜売場でまたこの女性と会いました。
「ここの惣菜、おいしいのよねえ」女性は言いました。「コーシャー・フードはお好き?」
機嫌が直っていたので、僕はふつうに返事をしました。「わりと食べますね」

コーシャー・フードというのは、ユダヤ教の戒律にもとづいて作られている食品のことです。
いっときブームになり、ユダヤ教とであるなしに関わらず、売れてました。
惣菜売場にも、コーシャー・フードのコーナーがあり、僕はその前に立っていたのです。

「あなた、お名前は?」
「マツミヤといいます」
「ホントにあなた、ゲイリーに似てる」
「あなたは日本人ですか?」
「ええ。コウノといいます。愛媛の生まれですけど、20歳のときにこっちに来て、こっちで日系2世のローレンと結婚しましたのよ。でもホント、あなたゲイリーに似てる」
「ゲイリーって、息子さんの名前ですか」
「ええ。ゲイリーは昨年イラクで亡くなりました」
「そうでしたか。お気の毒に…」
気の毒ではありますが、それ以上話すこともなくなったので、女性と僕は互いに会釈をし、それぞれの買い物をつづけました。

レジのところでこの女性と再び出会いました。
僕の前に、並んでいたのです。
女性は、ハンカチで目を拭いていました。
「あのー」無視するわけにもいかず、僕は話しかけました。「元気出してくださいね」
「あなたを見てるとゲイリーのことを思い出して」と、女性は言いました。「お願いがあるんだけど、聞いてくれるかしら」
「なんでしょう」
「わたしが出ていくときに、ママ、また明日、って叫んで手を振ってほしいのよ。ゲイリーがよくやってくれたから」

しばらくして、買い物袋を抱えた女性は、僕に微笑みかけました。
「ママ、また明日!」
と、僕は大声で言って手を振りました。
女性はうれしそうに、ホールフーズ・マーケットを去って行きました。

僕が買ったのは惣菜2種類とミネラルウォーターだけでしたが、レジ係が言いました。
「129ドル(約1万5千円)です」
「えっ? たったこれだけで129ドル? なにかの間違いでしょ」
「間違いではありません」レジ係がおごそかに言いました。「先ほど、あなたのお母さんが、あなたが全部払うからと言ってましたよ」

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